3階の化粧品売り場のイメージ
西武池袋本店は7月9日、大規模改装の第1弾として化粧品売り場をリニューアルオープンする。これまで1階と2階の一部で展開していたコスメフロアを3階に移設。フロア構成と動線の見直し、空間体験型サービス導入、ラグジュアリーブランドとの連携強化など、多角的なアプローチにより、売り場を単なる物販の場から「ブランドの世界観を体感する空間」へと進化させる狙いだ。
化粧品売り場の改装は15年ぶりで、今回の移設の背景には、館全体のリニューアル戦略がある。同店は現在「ラグジュアリー・食品・コスメ」の3軸を柱とした再編が進行中で、3階はかつてのファッション中心から化粧品主軸のフロアへと転換する。これにより従来の横長かつ細い1階の売り場から、正方形に近く視認性と回遊性の高い売り場を3階で実現でき、より快適なショッピング体験を提供する。12月には1階にフレグランス売り場を開設する予定で、売り場面積は1、3階合わせ1970平方メートルとなり、改装前の約1.4倍に拡大する。想定ターゲットは従来の30〜40代に加え、新規導入ブランドをフックに20代後半から30代前半のミレニアル層の取り込みも狙う。
3階は4つのゾーンで構成
若江純身そごう・西武マーチャンダイジング部コスメ担当部長
共用キャビンやイベントスペース「ビューティールーム(仮称)」
「クレ・ド・ポー ボーテ」の施術イメージ
3階の化粧品売り場は“美のテーマパーク”をキーワードに、「ブティック&ラグジュアリー」「スキンケア」「メイクアップ」「ライフスタイル」の4つのゾーンで構成。売り場面積1700平方メートルに、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「グッチ ビューティ(GUCCI BEAUTY)」「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」など新規導入の7ブランドを含む47ブランドを集積。ブランドごとに色彩や演出を変えた世界観を展開する。「売り場の統一感を保ちながらも、ブランドの個性を最大限に生かす空間設計とする」(若江純身そごう・西武マーチャンダイジング部コスメ担当部長)のが特長だ。既存ブランドに関しても、「シセイドウ(SHISEIDO)」「コスメデコルテ(DECORTE)」「イプサ(IPSA)」「SK-Ⅱ」「M・A・C」など28ブランドが最新デザインのカウンターを採用する。
顧客体験を重視する中で、ラグジュアリーブランドはカウンターにとどまらず広いブティック型店舗を展開。一例として「ディオール(DIOR)」はスキンケアやメイクアイテムに加え、最高級ラインのフレグランスをそろえるほか、スパ体験ができる個室を用意。アクセサリーやサングランスなども扱う予定で、メゾンの成り立ちが体感できるなど、ブランドの世界観に没入できる設計となっている。そのほか、「シャネル(CHANEL)」「ラ・メール(LA MER)」や「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」など6ブランドが施術用の専用キャビンをカウンター内に設置。ブランドを問わず利用が可能な共用キャビンやイベントスペース「ビューティールーム(仮称)」も併設し、季節限定イベントやブランド体験も随時実施できる体制を整える。「3階という立地の利点を生かし、時間をかけたカウンセリングや施術など、百貨店ならではのラグジュアリーな体験を打ち出す」。
体験価値を訴求する一方で、滞在時間が短い訪日客や、事前に購入製品が決まっている国内客のニーズに応えるため、「コスメデコルテ」「シセイドウ」「クレ・ド・ポー ボーテ」「ポーラ(POLA)」「イプサ」「ファンケル(FANCL)」は、“クイックカウンター”を導入。限られた時間でも効率的な購買行動をサポートし、混雑緩和や接客の効率化を図る。
今冬にフレグランス売り場を開設
1 階のフレグランスブティックゾーンのイメージ
従来の化粧品売り場があった1階に今冬をめどに関東最大級のフレグランスブティックゾーンを開設する。売り場面積は270平方メートル。「アクア ディ パルマ(ACQUA DI PARMA)」「ゲラン(GUERLAIN)」「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」「ディオール オートパフューマリー」「バイレード(BYREDO)」「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」「ブルガリ(BVLGARI)」「メゾン マルジェラ 『レプリカ』 フレグランス(MAISON MARGIELA REPLICA FRAGRANCE)」「ロエベ パルファム(LOEWE)」など新規9ブランドを含む10ブランドを導入する。「今後は、1、3階の送客導線を強化し、香りとスキンケア、メイクアップを横断的に楽しめる売り場づくりを進める」。
3年内に売り上げ1.4倍に
新生化粧品売り場の売り上げ目標は、面積比と同様に3年以内で従来比1.4倍を目指す。客単価は現在平均1万2000円だが、高価格帯スキンケアや施術メニューの導入により、単価アップも見込む。さらに、オープンが控えているヨドバシカメラの集客との相乗効果も期待する。
再編第1弾として化粧品が先陣を切ったが、9月以降は地下1・2階の食品(菓子、惣菜、ギフト)、11月以降は2・4・6階のインターナショナルブティック(特選)および5階のジュエリー&ウォッチが順次開店予定だ。2026年1月以降には、地下2階の食品(生鮮、酒)、1階のインターナショナルブティック、7・8階のファッション&グッズ、ライフスタイル、イベントホール、アートギャラリーなどの新フロアも順次開く見通しで、段階的に全体像が明らかになる。