<インタビュー>茅原実里、声優とアーティスト、二つのフィールドで刻んだ名曲たちをオーケストラで | Special | Billboard JAPAN - Moe Zine

 声優・歌手として20年以上にわたりアニメ・音楽シーンを牽引してきた茅原実里が、billboard classicsと初めてタッグを組み、河口湖ステラシアターでスペシャルコンサートを開催する。
会場は、自身にとっても思い出深い場所。今回はその30周年記念という節目に立ち会う、特別なステージとなる。
これまで多くのライブでファンと熱狂を分かち合ってきた彼女が、今あえて選んだのはオーケストラ編成のライブ。演出からセットリストまで深く関わり、「今だからこそ届けたい音楽」を形にしていく。
休止期間を経て、再び歌と向き合うようになった理由。そして、自身にとっての声優と歌手の関係性。すべての想いをのせて、茅原実里が新たな一歩を踏み出す。

(Interview & Text:上村絵美|Photo:石阪大輔)

キャリアとともに変化したライブ観

── 今回、オーケストラ編成でのライブということですが、その選択にはどういった思いがあるのでしょうか?

茅原:ずっとバンドでのライブを続けてきたのですが、最近はそろそろ私にとっても、お客様にとっても「次のステージが必要かもしれない」という気持ちが強くなってきました。
そうしたなかで、オーケストラという選択肢が自然と浮かびました。

── それにはお客様の側の変化も、影響していますか?

茅原:あると思います。デビューして20年以上が経ちましたが、今でも一緒に盛り上がるライブは大好きですし、これからも続けていくつもりです。
一方で、私のライブに限ったことではないのですが、盛り上がるライブから一度離れると、なんとなく「戻りづらい」と感じることもあるのかなと思うようになりました。
今は「また戻ってこられる場所」を作っておきたいという気持ちもあります。子育て中だったり、仕事が忙しくてなかなかライブに通えなくなった方も、ふと余裕ができたときに「また行きたいな」と思ってもらえるような、そんな空間を作りたい。
その想いが、このオーケストラとのライブの根っこにあります。

インタビュー写真

“提供されるもの”から“自分の手で作るもの”へ

── 活動休止以降、音楽に対するスタンスにも変化があったと聞きました。

茅原:そうですね。以前は、与えられたものをシンガーとしてどう表現するか、というスタンスが多かったと思います。
それはそれでやりがいがあったし、楽しかったのですが、今は自分で選び、自分で構成を考えるようになりました。
自分の想いや価値観を音楽に込めるということを、意識的にやっていくようになったんです。誰かの指示に従うのではなく、自分が本当に伝えたいこと、届けたいことは何かを考えるようになりました。
何を歌うか、どんな順番で届けるか、どんな空気をつくるか。全部に意味を込めていて、すごく時間をかけて考えています。演出や照明にも、一つひとつこだわっています。

── セットリストを考えるうえで、大切にしたキーワードは?

茅原:“クラシック”という言葉ですね。これは西洋音楽のジャンルという意味だけでなく、「時を越えて価値が残っていくもの」という意味で捉えています。
私の歌ってきたアニソンも、きっと誰かにとっては“クラシック”になっているかもしれない。そんな想いで、“今、私が歌う意味”を持つものを選びました。

── どんな曲が今回のライブの候補曲に上がっていますか?

茅原:「Paradise Lost」や「雪、無音、窓辺にて。」「ハレ晴レユカイ」などは、まさにその象徴ですね。
当時の作品とともに愛され、今もなお心に残っているという声をいただきます。そういう楽曲を、今の私の声で、オーケストラの響きで届けたいという気持ちがあります。

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── セットリストを慎重に厳選しているとお伺いしました!

茅原:はい。たとえば「ハレ晴レユカイ」は、私にとっても、アニメファンにとっても大切な“アニソンのクラシック”。
これは絶対に入れたいと思いました。あとは、今年のライブで披露した新曲「Message」。ポエトリーリーディングを取り入れたロックバラードで、今の茅原実里の音楽性を知っていただける一曲です。
これをオーケストラでどう響かせるか。「TERMINATED」など、盛り上がれる楽曲も交えながら、じっくり聴くだけでなく、体でも楽しめるライブにしたいと思っています。

── アレンジにはどう関わっていますか?

茅原:原曲のイメージをアレンジャーの山下さんに丁寧に共有しながら、挑戦してみたいことをご相談しています。
「TERMINATED」は、イントロのストリングスが印象的なので、そこにクラシックの要素を融合できないか、とお願いしました。
自分の楽曲を、今の私の解釈で再構築していくのは、とても刺激的な作業ですね。

オーケストラならではの緊張感と自由

── オーケストラで歌う際に感じる、バンドライブとの違いについて教えてください。指揮者との連携や“間”の取り方など、独特の感覚がありそうですね。

茅原:オーケストラとバンドでは、感覚がまったく違います。オーケストラは音の厚みがすごくて、包まれるような感覚があるんです。バンドの音圧とはまた違って、立体的に響く。
指揮者の存在も大きいです。最初はタイミングを合わせるのが難しくても、回数を重ねるうちに自然と呼吸が合ってくる。その感覚がとても面白くて。
ちょっとした空白が持つ意味や空気感が、曲全体の印象を左右するんです。バンドでは、良い意味でノリや勢いで乗り越えられる場面も、オーケストラだとそうはいきません。繊細でとても興味深いです。

── リハーサルの仕方も、バンドとは違いますか?

茅原:まったく違いますね。原曲を大切にするという点では同じですが、バンドの場合はそれぞれの解釈やアイデアを持ち寄って、ディスカッションしながらサウンドを作り上げていきます。
オーケストラの場合は、譜面から意図を汲み取って、いかに正確に演奏するかという厳かな空間で、リハーサルでも緊張感が漂っています。大人数で一つのライブを作っているという喜びも感じますね。

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声優としての活動が、歌手・茅原実里を引き戻した

── 歌手活動休止を経て、再び音楽と向き合うようになった背景には、どんな気持ちの変化があったのでしょうか?

茅原:私は、もともと歌手を目指していました。でも、うまくいかずに悩んでいたとき、声優という道に出会って、そこから歌手としての扉も開いたんです。
2021年に歌手活動を休止したときは、本気で引退を考えていました。でも、そのとき頭に浮かんだのは、演じてきたキャラクターたちのことでした。だれかに引き継ぐというのは、どうしても想像できない──その気持ちが私を引き留めてくれました。
結果的に、声の現場に残っていたからこそ、また歌のステージに戻ってこられた。
そして、一度立ち止まる時間を持てたことで、あらためて音楽としっかり向き合えるようにもなりました。私にとってこの2つは切っても切り離せないもの。両方があって初めて、自分があると思っています。

── 今回の公演は、茅原さんにとってどういう意味を持っていますか?

茅原:私がオーケストラとのライブに積極的に取り組んでいることについて、冷静に受け止めている方……つまり距離を感じている方も、きっといらっしゃると思います。
普段応援してくださっている方の中にも、「オーケストラより、バンドとのライブの機会をもっと増やしてほしい」と感じている方も、一定数いらっしゃるはずです。
それでも今回、このスタイルに挑戦するのは、私自身にとっても、お客様にとっても、未来につながるたしかな意義があると信じているからです。
これまでの活動の延長線上ではあるけれど、どこか新しいスタートでもある。だからこそ、一つひとつの選択にちゃんと意味を込めて、それを丁寧に伝えながら、当日を迎えられたらと思っています。

今こそ“音楽”と向き合える時間を

── 改めて、今回のステージで皆さんに届けたいことを教えてください。

茅原:アニソンはサブカルチャーの代名詞とされてきましたが、今では、日本のアーティストが世界で活躍するための重要な鍵のひとつになっていますよね。
実際、私自身もたくさんのアニメ主題歌を担当してきたことで、海外でパフォーマンスする機会が増えました。現代のアニソンにおいては、いわゆるメインカルチャーとの境界が曖昧になってきているように感じています。
そんななか、日本を代表するアーティストの方々のコンサートを手がけられているbillboard classicsさんとご一緒させていただくということは、ある意味で、メインカルチャーとサブカルチャーが交錯する貴重な瞬間になるのかもしれません。
もちろん、私のパフォーマンスでお客様に楽しんでいただくことも大切ですが、あえて大きなことを言わせていただけるなら、アニソンというカルチャーの価値がさらに高まっていく——そんな瞬間を、お客様と一緒に創り上げられたらと考えています。

── 「河口湖ステラシアターでの公演」という点にも、特別な想いがあるのでしょうか?

茅原:はい。今回の公演で、私がこの会場のステージに立つのはちょうど30回目になるんです。
そして、会場も今年で30周年という節目。奇跡のようなタイミングですよね。コンサートのタイトルとなっている「ハーモニー」は、音楽的な調和を思い起こす言葉ですが、河口湖ステラシアターからインスピレーションを受けて名付けました。
この劇場は、古代ギリシャや古代ローマの時代の劇場をモチーフに設計されているのですが、当時の人々は、星と星がぶつかることなく動いていることを不思議に思い、この広い宇宙をひとつにまとめている力のことを「ハーモニー」と呼んだそうです。
30年という歴史のなかで、たくさんのアーティストや関係者の方々、そして地域の皆さんをひとつにしてきたこの劇場は、まさに「ハーモニー」という言葉を象徴する場所だと感じたんです。

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── どんな方に、今回のライブを楽しんでほしいと思いますか?

茅原:過去にもオーケストラとのコンサートの機会はありましたが、今回の公演は、内容も意味合いもこれまでとは異なります。
「いつもと違う編成で楽しんでいただく」という姿勢ではなく、新しいものを共に創り上げていく——そんな特別な時間を、お客様と共有したいと思っています。
だからこそ、最近ライブから少し離れていた方や、新たな一歩を踏み出したいと感じている方にも、ぜひこのステージから活力を受け取っていただけたら嬉しいです。もちろん、久しぶりに足を運んでくださる方も、今回が初めてという方も大歓迎です。
オーケストラだからといって“しっとりと聴く”だけではなく、盛り上がれる曲もちゃんとあります。「こんなライブもあるんだ」と思ってもらえるような時間にしたいです。

── 最後に、公演を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

茅原:今回のコンサートは、私にとって次のスタート地点です。茅原実里の“クラシック”を感じていただけるよう、心を込めて準備しています。
普段、盛り上がるライブに参加されている方にとっては、「オーケストラとのコンサートって楽しめるのかな?」と、不安に思われるかもしれません。
でも、まさに今回は、そういったところにも挑戦しています。その答え合わせを、一緒にできたら嬉しいです。河口湖ステラシアターで、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!

公演情報

公演情報

【billboard classics 茅原実里 Symphonic Concert “Harmony”】
2025年8月2日(土)
山梨・河口湖ステラシアター 
OPEN 16:00 / START 17:00

2025年8月3日(日)
山梨・河口湖ステラシアター 
OPEN 16:00 / START 17:00

出演:茅原実里
指揮:佐々木新平
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

チケット:
SS席(特典付き)44,000円、S席14,300円、A席8,800円、B席4,400円、車いす席14,300円
(全席指定・税込)

チケット販売スケジュール:
一般発売(先着):2025年5月17日(土) 10:00~

公演公式サイト:https://billboard-cc.com/chiharaminori2025

主催:ビルボードジャパン(株式会社阪神コンテンツリンク)、河口湖ステラシアター
企画:ビルボードジャパン、茅原実里、TSUNAIDE
制作:ビルボードジャパン
協力:バンダイナムコミュージックライブ、ホットスタッフ・プロモーション
後援:富士河口湖町、米国ビルボード、TOKYO MX、文化放送

<注意事項>
※本公演は特定興行入場券(特定チケット)として販売いたします
※未就学児入場不可
※枚数制限:おひとり様各公演1申し込み最大4枚まで
※車椅子をご利用のお客様は、車椅子席を購入ください。
※チケットはおひとり様1枚必要となります。チケットを紛失された方、または当日お忘れになった方はご入場できません
※チケット購入の際は、必ず公式サイトに掲載している注意事項をご確認の上、チケットをお求めください
(ご来場のお客様へのお願い:https://billboard-cc.com/notice/)

公演に関するお問合せ:
【山梨】ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077(平日12:00~18:00)

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