2025年6月28日、東京・Zepp Shinjuku。アイドルとダンスが本気でぶつかる新しいステージ「IDOL DANCE BATTLE『VERSUS』」が誕生した。出演はiLiFE!、いぎなり東北産、OCHA NORMA、カラフルスクリーム、Jams Collection、TEAM SHACHI、NEO JAPONISM、LarmeRの8組。グループの垣根を越えて集まった8人が、4人ずつのユニットに分かれて即席の”ダンスクルー”としてiLiFE!のあいす、いぎなり東北産の安杜羽加、OCHA NORMAの広本瑠璃、カラフルスクリームのみなみ、Jams Collectionの北乃咲久、TEAM SHACHIの坂本遥奈、NEO JAPONISMの辰巳さやか、LarmeRの七海花菜がショーケースやソロバトルで真剣勝負を繰り広げた。
【写真を見る】左から七海花菜(LarmeR)、辰巳さやか(NEO JAPONISM)、坂本遥奈(TEAM SHACHI)、あいす(iLiFE!)
スクリーンにそれぞれのメンバーが意気込みを語ったVTRが流れると、本イベントのMCであるぺこぱが登場し、8人のダンサーをステージに呼び込む。ブルーコーナーのチーム名はチームせんべい。LarmeRの七海は「緊張してます。今日終わったらすぐに寝たいと思います(笑)」、NEO JAPONISMの辰巳も「アイドルのダンスにフィーチャーしたイベントが新鮮なので、緊張とワクワクがあります。でもNEO JAPONISMの看板を背負って戦うつもりです」、TEAM SHACHIの坂本は「みんながドキドキしてると思うんですけど、チームBLUE全員でやってやりたいなと思います」iLiFE!のあいすは「ダンスだけなんですけど、みなさんとめちゃめちゃ盛り上がって先ほどのライブ以上に熱いイベントにしたい」と意気込んだ。
一方、レッドコーナーのチーム名は踊れるカワイ子ちゃんs’。カラフルスクリームのみなみが「踊ったらこいつやるぞってところを見せたいですし、関西一を取りに行きます!」と宣言し、Jams Collectionの北乃は「緊張してます。みんなのことをメロメロにさせちゃいます」、いぎなり東北産の安杜は「今は”かわいい”が流行ってる時代だけど、バキバキにダンスを決めてくれるみんなを信頼しているので、今日が楽しみです」、OCHA NORMAの広本は「OCHA NORMAとハロープロジェクトの代表としてここに立っているので、頑張ります!」と語った。
今回の勝敗をジャッジするのはBenefit one MONOLIZからCheriとHONAMI、MORTAL COMBATからBBOY Kakuの3人。チーム戦で行われる最初のショーケースバトルはYOASOBIの「アイドル」。先攻のチームせんべいは、個性もバックグラウンドも違う4人が集まったとは思えないほど、一体感のあるダンスを披露してみせた。曲が始まるとすぐ、客席から自然と手拍子が起こり、メンバーの緊張も少しずつほぐれていく。「アイドル」のポップさに彼女たちのシャープな動きが重なり、ステージの端から端までエネルギーが伝わってきた。とくにサビで全員がしっかり揃った瞬間の高揚感は格別で、それぞれの表情にも”やり切るぞ!”という気迫があふれていた。
後攻はレッドチームの踊れるカワイ子ちゃんs’の登場。曲が始まった瞬間から、観客のボルテージは一気に上昇。手拍子やコールが前方だけでなく会場の後方まで響きわたり、その熱気にメンバーも思わず笑みがこぼれる。4人は息の合ったフォーメーションでステージを縦横無尽に駆け抜け、とくにキレのあるダンスと表情の豊かさで観客をグイグイと引き込んでいった。メンバーそれぞれが自分らしい見せ場をつくりつつも、決して自己主張が強すぎることはなく、お互いを引き立て合う絶妙なバランス。サビでは観客も思わず体を揺らし、曲が終わる頃には会場全体が一体となっていた。観ている側も思わず笑顔になってしまうような、そんな”楽しさ”と”パワー”が画面越しにも伝わる、まさに圧巻のパフォーマンスだった。
ソロバトルパートに入ると、会場の空気は一段と引き締まった。グループ戦とは打って変わって、今度はステージに立つ一人ひとりの「個性」と「本気」がまざまざと浮かび上がる。課題曲もジャンルもバラバラ。誰もが知る人気曲を、それぞれのアイドルが”自分だけの表現”で踊り切る瞬間は、会場を見守る観客にも心地よい緊張感と高揚感をもたらしていた。
Ado「唱」を披露した坂本と北乃は、堂々とした存在感と爆発力のある表現で魅せた。坂本はダイナミックな動きと繊細な手先の表情が印象的で、会場の視線を一身に集めた。北乃もまた、”内に秘めた熱”が一気に弾けるようなパフォーマンスで、曲の持つ勢いと鋭さをしっかりと体現していた。
Mrs. GREEN APPLEの「ダンスホール」を担当したみなみとあいすは、楽しさとグルーヴを全身で表現。みなみは観客と一緒に踊っているような一体感を生み出し、思わず手拍子が広がった。あいすはリズムの緩急を巧みに使い分け、まるで曲と遊んでいるかのような軽やかさ。2人とも自然体の笑顔が印象的で、ステージに立つ喜びがストレートに伝わってきた。
ちゃんみな「ハレンチ」を踊った七海と安杜は、それぞれ違った色気と表現力で観客を圧倒。七海はクールな佇まいの中に、時おり見せる鋭い目線や仕草で「大人の余裕」を感じさせた。一方の安杜は、まっすぐなパッションと大胆な動きで楽曲の世界観を塗り替え、”アイドルの枠”を越えた表現に挑んでいたのが新鮮だった。
Creepy Nuts「オトノケ」では、広本と辰巳がそれぞれ自分らしさを存分に発揮。広本はキレのあるステップと抜群のリズム感で楽曲の難易度を感じさせない安定感を見せ、辰巳は攻めの姿勢と挑発的な視線で観客を一瞬で引き込む。2人のアプローチは違えど、どちらも”このステージでしか見られない”一瞬を残してくれた。
無事にパフォーマンスを終え、まずチームせんべいの坂本は「ここまでみんな一人ひとりかっこよくて、ぶつけ合っている姿が感動しました。最高でした!」、あいすは「横で待っている時に勝手に体が動いちゃうくらいみなさんの踊りがすごくて、ライブの時より喉が枯れそうです(笑)」、七海「もう終わっちゃうって寂しいなって。でも悔いなくやれたの楽しかったです」、辰巳は「体で表現するのはすごく素敵なことだし、大好きなことなんだなって改めて感じました」と振り返る。
そして、踊れるカワイ子ちゃんs’の北乃は「楽しい時間だったので一瞬で過ぎちゃいました 。緊張しましたが見てくださる方の温かい声援で頑張れました。貴重な経験でダンスがより好きになりました」、みなみは「アイドルにダンスは必要ないと思って10年やってきたのですが、今日この8人がアイドルにダンスが必要だと証明したと思います!」、安杜は「こんなに一生懸命ダンスを見せてくれるアイドルがいるんだなって再確認できたことが、本当に私のアイドル人生で大きな光となりました」、広本「ここに集まってるみなさんは、見ながら尊敬って言いたくなるダンスをされるからすごく楽しくて今日この日があってよかったです」ととしみじみ語り、会場には温かい拍手が包み込む。
バトルの後、審査員のBBOY Kakuが「マジでジャッジしたくないです(笑)」と感想をこぼす中で、いよいよ勝者が発表される。審査員の票が割れる接戦を制したのは踊れるカワイ子ちゃんs’。チーム名を呼ばれたメンバーたちは思わず顔を見合わせ、仲間同士でたたえ合うその光景は、ライバルを超えた”最高の青春”そのものだった。
この日、Zepp Shinjukuから誕生した「IDOL DANCE BATTLE『VERSUS』」は、”踊れるアイドル”が当たり前になる未来への大きな一歩を刻んだ。歌やMCだけでなく、ダンスを武器に自分らしさを表現し、グループの垣根も越えて本気でぶつかり合う彼女たちの姿は、次世代アイドル像の象徴となるはずだ。観客の記憶に強く残るこの体験が、これからのアイドルシーンをさらに切り拓いていくに違いない。
IDOL DANCE BATTLE「VERSUS」で、ひときわ大きな歓声を浴びていたのが――OCHA NORMAの広本瑠璃、いぎなり東北産の安杜羽加、Jams Collectionの北乃咲久、カラフルスクリームのみなみによる”踊れるカワイ子ちゃんs'”。アイドル界の枠を超えて集結した4人が、その卓越したパフォーマンス力と唯一無二のチームワークで見事優勝をつかみ取った。
ダンスが大好きという情熱を胸に、グループも事務所も違う4人が「踊れるカワイ子ちゃんs’」として結束し、短期間で”本気のアイドルダンス”をぶつけ合った今回のバトル。勝敗を超えて、それぞれの中で大きな意味を持ったステージを終えた今、それぞれの言葉で語ってもらった。
──本日のパフォーマンスを終えて、率直な感想を教えてください。
みなみ「ダンスが好きなみんなと一緒にステージに立てて、大好きなダンスをたくさんの方々に届けられたことが、とても嬉しかったです。幸せな気持ちでいっぱいです」
安杜「私の中で、ダンスだけはどうしても諦めきれない思いがずっとありました。でも、アイドルとして求められるスキルの中で、ダンスが評価される機会は意外と少なくて、ずっと心のどこかで引っかかっていたんです。それでも諦めたくないという気持ちが強くて。正直、ひとり無人島にいるみたいな感覚だったんですけど……今回、まるでその無人島に助けが来てくれたような、そんな気持ちになりました。本当に救われたと感じています。出会いに感謝ですし、このメンバーに出会えてよかったなと心から思います」
北乃「このお話をいただいたのは、私がデビューする前だったんです。最初は”自分にこんな大役が務まるのか”と思って、すごく不安で……。でも、やっぱりダンスが大好きだから、これは素敵な機会だと感じて参加を決めました。ここまでやってこられたのは、この3人のおかげだと思っています」
広本「本当に、羽加さん(安杜)もおっしゃっていましたが、私たちもダンスが好きで。でもアイドルとして活動していると、どうしても歌やビジュアル、ダンスといろいろな要素を両立していかなくてはならない。その中で、ダンスだけが見てもらいきれていない部分も正直あって……。そこを自分自身もっと伸ばしたい、見てもらいたいという思いは皆さん共通だったのではないかと思います。今回、こうした機会をいただけて、それぞれの心の中にあったダンスへの情熱や闘志を引き出していただけたこと、そして何より、みんなと出会えたことが本当に嬉しいです」
──こうしたイベントをきっかけに、アイドルダンスにももっと注目が集まると良いですね。
安杜「そうですね。今回のパフォーマンスで、少しでも風穴を開けられたんじゃないかなと思います」
北乃「かっこいい!(笑)」
安杜「でも、勝敗は本当に”企画”の中だけの話だと思っています。ダンスに本当の勝ち負けはなくて、それぞれが全力を出し切ったことに価値がある。みんな本当に素晴らしかったと、心から思います」
取材・文=川崎龍也
HOMINIS