2025年現在、ファッションブランドと日本のアニメーション作品のコラボレーションは、日常のこととなっている。日本のブランドやセレクトショップだけでなく、「ロエベ(LOEWE)」や「グッチ(GUCCI)」のような世界的なラグジュアリーブランドが日本アニメとコラボすることに、驚くこともなくなった。
【画像】「コスパVSビューティービースト」の「美少女戦士セーラームーン」スウェット
だが、1980年生まれの筆者が青春時代を送った1990年代、ファッションとアニメの間には非常に大きな隔たりがあった。誤解を恐れずに言えば、日本アニメはファッションから最も遠い存在だった。そんな時代に、世界に先駆けて「ファッション × アニメ」を打ち出した日本のデザイナーズブランドがある。それが「ビューティビースト(beauty:beast)」だ。
下記のルックは1990年代にビューティービーストが発表したコレクションである。「機動戦士ガンダム」「デビルマン」「美少女戦士セーラームーン」といった日本アニメをモードに取り込んだクリエイションに、ファッションに敏感な日本の若者だけでなく、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やジョン・ガリアーノ(John Galliano)といった、世界をリードするファッションデザイナーまでもが虜になった。
ビューティービーストは、メンズファッション誌「ファインボーイズ(FINE BOYS)」の1999年2月号の「好きなブランド」の人気投票で、「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」などの名だたるブランドを抑えて1位を獲得した、名実ともに1990年代の日本を代表するデザイナーズブランドである。そんなビューティービーストが、いかにして「ファッション × アニメ」という先駆的なクリエイションを打ち出したのか。デザイナーの山下隆生に、その生い立ちまで遡って話を聞いた。
山下隆生
「beauty:beast」
1966年長崎生まれ。1987年「第1回丸井デザイナーオーディション」参加。1990年「beauty&beast clothing」設立。1994年にパリコレクション、1995年に東京コレクションへ参加、1998年AWコレクションでは「COSPA VS beauty:beast」を協業で発表。2000年に国内でのブランド展開を休止し、展開の場をヨーロッパに移す。その後、国内外の様々なブランドのクリエイティブディレクションやデザイン提供を行う。 現在は「beauty:beast」のクリエイティブディレクターとデザイナーを務める。