これまで、ウィメンズに比べて控えめな存在とされてきたメンズ・ファッションウィーク。1972年にスタートしたフィレンツェの「ピッティ・ウォモ」に対し、ロンドンが初めてメンズ・ファッションウィークを開催したのは2012年、ニューヨークは2015年と、その歴史はまだ浅い。ウィメンズのロンドン・ファッションウィークが40周年を迎えたという事実からも、その違いは明らかだ。
けれど近年、その構図に変化が訪れている。ファッションがジェンダーを超えて広がる今、メンズとウィメンズの境界はますます曖昧に。実際、多くのブランドが性別にとらわれない表現を重視するようになり、メンズのランウェイにウィメンズルックが登場する光景も、すっかり定着してきた。
プラダ2025-26年秋冬メンズコレクション
プラダ2025-26年秋冬メンズコレクション
さらに注目すべきは、メンズ・ファッションウィーク自体がトレンドの発信地として存在感を増しているということ。プラダ(PRADA)、グッチ(GUCCI)、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)といったビッグメゾンのメンズコレクションが、ウィメンズと同様にファッション業界の熱い視線を集めているのだ。
情報過多になりがちなウィメンズに比べ、メンズウェアに宿る“研ぎ澄まされたシンプルさ”が今、あらためて注目されている。頼もしいニット、計算されたテーラリング、そして迷いなく選べるスリッポン。そんな引き算の美学が、新しいスタイルのヒントになっている。
その好例が、2025年秋冬のプラダのコレクション。次々と登場する、現実的で着たくなるルックの連続の中で、ひときわ印象的だったのが、ふくらはぎにフィットするスリムなトラウザーだ。『VOGUE RUNWAY』のルーク・リーチが“キュレートされたカオス”と表現したこのショーの中で、シャープなシルエットが一貫して存在感を放っていた。長らく続いたオーバーサイズ旋風の余韻が残るなか、プラダは明確に次のフェーズへと舵を切ったのだ。
アルチュザラ2025-26年秋冬コレクション
アルチュザラ2025-26年秋冬コレクション
もちろん、プラダのルックをそのまま再現する必要はない。大切なのは、このトラウザーに象徴される“ムードの転換”を、自分のスタイルにどう落とし込むかということ。たとえば、キックフレアパンツのように裾にかけてさりげなく広がる細身の一本や、ダーツ入りのハイウエストパンツなど、選択肢は意外なほど多彩だ。