「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」が8月8日に全国公開される。劇場版32作目となる同作ではインドが舞台に! しんのすけたちカスカベ防衛隊が歌って踊って嵐を巻き起こす、シリーズ史上初のダンスエンタテインメント作品が誕生した。
今回の主役は、カスカベ防衛隊の中でも謎の多いボーちゃん。ある恐ろしい秘密に触れたことで、ボーちゃんが【暴君(ボーくん)】に豹変してしまい……。果たして、しんのすけたちは友情パワーでボーちゃんの暴走を止められるのか!?
本特集では、ゲスト声優として参加したバイきんぐの小峠英二と西村瑞樹にインタビュー。「ウフーン」と「アハーン」しかセリフがなく苦戦したという小峠、子供と一緒に観に行きたいとウキウキの西村に、収録エピソードや見どころを聞いた。
取材・文 / 岡本大介撮影 / 山口真由子
「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」予告編公開中
自分の出演作を子供と一緒に観に行くという夢が叶う(西村)
──「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」へのゲスト出演、おめでとうございます。オファーを受けた際の率直な気持ちからお聞かせいただけますか?
小峠英二 昔から「映画クレヨンしんちゃん」は観ていましたし、好きな作品も多いので素直にうれしかったです。
西村瑞樹 僕はまたいつかアニメの声優をやりたいと思っていたので、「やった!」という感じです。
小峠 それ本当か?(笑)
西村 いやいや、ちょいちょい言ってたでしょ。自分の出演作を子供と一緒に観に行きたいという夢がありましたから。それが叶うと思うと、すごくうれしいんですよ。
──「クレヨンしんちゃん」は国民的コンテンツですが、これまでどんな印象がありましたか?
小峠 テレビアニメやマンガはあまり通ってこなかったので、映画のイメージが強いですけど、子供から大人まで楽しめるように綿密に計算されている印象ですね。特に今回、自分が出演するにあたって改めてしっかり観たんですけど、ギャグのセンスやテンポも本当によくて、思わず笑っちゃうし、レベルが高いなと思い知らされました。例えば今回の映画でも、しんのすけが「おかえリーマンショック!」ってボケて、ひろしが「恐ろしいこと言うなよ~」ってツッコむやり取りがあるんですけど、めっちゃ面白いですよね。アフレコ前にチェック用の映像を拝見したんですが、あのくだりは何回も観ちゃいました。
──確かに5歳児とは思えないワードセンスですよね。
小峠 そうそう。もしリアルで子供が言っていたら本当に爆笑するだろうなって。子供向けだけでなく、大人世代が笑えるギャグがちりばめられているのがすごいですよね。
西村 僕は小峠さんの言う「笑い」はもちろん、しんちゃんたちの家族愛や友情みたいなところに惹かれますね。
小峠 まあ、お前はそうだろうな(笑)。
西村 別にいいでしょ。特に僕が好きなのはひろしとみさえの夫婦愛で、よく喧嘩もするけど、ちゃんとお互いに愛し合っているのが伝わってくるじゃないですか。ひろしも決めるところでは決めるし、理想の夫であり父親だなあと憧れます。子供ができてからは、ひろしのことをより尊敬するようになりました。
──野原家と西村家を比べて、共通点はありますか?
西村 どうですかね? たぶんですけど、僕の嫁さんは、みさえがひろしを思うほどには僕のことは好きじゃないかもしれません(笑)。
小峠 それは間違いないな。
──(笑)。西村さんのお子さんとしんちゃんに似ているところはありますか?
西村 僕の息子もませてるんです。先日、買い物中に女子大生6人組が歩いてきたんですけど、息子が「わあ! 女の子がいっぱい!」って急にテンションが上がったんです。まだベビーカーに乗った3歳児ですよ?
小峠 それは将来が心配だよ、本当に(笑)。
台本をくまなく探しても「ウフーン」と「アハーン」だけ(小峠)
──今回、小峠さんは旅のガイドをするインド人のウフンアハーン役、西村さんはやる気のない雑貨店のバイト君役での出演ですが、演じたキャラクターにどんな印象を持ちましたか?
小峠 僕の役は、名前の通りセリフが「ウフーン」とか「アハーン」しかないので、正直不安しかなかったです(笑)。どこかにちゃんとしたセリフがあって、それを僕が取りこぼしているんじゃないかと思って台本をくまなく探したんですけど、やっぱり「ウフーン」しかなくて(笑)。まあ、一応ちゃんとやろうとは思いましたけど。
西村 そりゃそうだろ。ちゃんとやらなきゃ(笑)。
小峠 そうは言っても難しいんだよ。家で練習すると言っても、セリフは「ウフーン」か「アハーン」の2つしかないんだから。練習するモチベーションが湧かないんだよ!(笑)
西村 それで言うと、僕が演じたバイト君は普段のコントではやらないキャラなので、楽しかったですね。物静かでテンションが低くて、気だるい感じが新鮮でした。
──収録はいかがでしたか?
西村 ついつい声が大きくなっちゃうのをなんとか抑えるのには苦労しましたが、比較的スムーズに収録できたんじゃないかと思います。でも小峠さんは苦戦してましたよね? 僕らは個別で収録したんですけど、小峠さんは予定の時間を過ぎてもなかなか戻ってこなくて、ようやく戻ってきたときには灰のようになっていましたから(笑)。あれは何があったんですか?
小峠 難しいんですよ、やっぱり。「ここはもっとテンション低めのウフーンでお願いします」とか、「ここはもっとうれしそうなアハーンで」とか。……いや、わかんないですよ。「ウフーン」のバリエーションなんかそうそうないんだから(笑)。
てっきり「なんて日だ!」の「ナン」で起用されたと思いました(西村)
──今回の映画の舞台はインドです。お二人はインドに行かれたことはありますか?
小峠 2人ともないんですよ。よく「行くと人生観が変わるよ」なんて言いますから、一度は行ってみたいんですけどね。
──行ったら何をしたいですか?
小峠 僕は現地の人の生活を観察したいですね。普通に牛が街中を歩いているとか聞きますし、いったいどんな生活を送っているのかに興味があります。あとガンジス川も見てみたいかな。
西村 見るだけ? 入ったりは?
小峠 ガンジス川って澄んだ水ではないじゃない? だから見るだけ。
西村 僕は入ってみたいですね。せっかくなんだから、ザブーンと。
小峠 勝手にしろよ(笑)。僕は絶対に嫌ですね。
──ちなみに今回声優に起用された理由を、ご自身ではどのように考えていますか?
西村 僕はてっきり「なんて日だ!」の「なん」が「ナン」っていう意味だからかなと。
小峠 そんなわけないだろ!(笑) まあ僕は、「ストリートファイター」シリーズのダルシム(インドでヨガを極めた達人)に似てると言われたことはありますけど(笑)。
西村 手足が伸びそうですよね。「ヨガファイア」とかも出そう。
──(笑)。ちなみに、お二人で旅行に行くなんてことは?
小峠 絶対にないですね。これはマジで(笑)。趣味嗜好がまったく違うんで。
西村 ガンジス川に入るか入らないでさっそくもめ出すくらいですから、まあ難しいでしょう。
小峠 西村と2人きりで旅行に行くときが来たら、それはもう「引退」です!(笑)
ボーちゃんは芸人で言うと天才肌タイプ(小峠)
──今回の映画ではボーちゃんがクローズアップされていますが、どんな印象を抱いていましたか?
小峠 ボーちゃんは面白いことをテンションを上げずにボソッと言うので、芸人で言うと天才肌タイプかなと思います。
西村 コンビの芸人さんではなかなかいないタイプかもしれないですよね。トリオで言ったら「中ボケ」みたいな感じ。
小峠 うーん、そうか?(笑)
──普段はおとなしいボーちゃんが「暴君(ボーくん)」になってしまう展開となります。もしお二人が「暴君」になれたらやりたいことは?
小峠 西村の実家を破壊したいですね(笑)。やっぱり日頃の恨みつらみがありますから、バッキバキに壊すと思います。
西村 僕は小峠さんをメチャメチャにするネタを作って、ひっぱたき回します。
小峠 「ネタを作って」って、お前はネタ作らないだろ!
西村 「暴君」なんだから、そりゃ作家さんに作ってもらうでしょ。言っておくけど、あなたの意見は1mmも通らないですから。何しろこっちは「暴君」なんで。
──どちらも相方を苦しめるために力を振るうんですね。
小峠 そうですね……なんでコンビ組んでるんだろう?(笑)
──あの、今回の映画のテーマは「友情」なんですが。
小峠 (笑)。完全にミスキャストですよ。
──劇中では、ボーちゃんが「僕の何を知ってるの?」と言い放つシーンが印象的です。お二人がお互いの意外な一面に驚いた経験は?
西村 小峠さんはこう見えてけっこう寒がりで、部屋のエアコンの設定温度はいつも28℃なんです。
小峠 お前の設定温度が低すぎるんだよ! もう本当に嫌なんですよ。一緒の楽屋で過ごすときに、いつの間にか西村がエアコンの温度を下げて。こいつが楽屋から出ている間にまた僕が温度を上げてみたいなことをずっとやっていて。あのくだらない攻防はなんなんだよ、もう嫌だよ(笑)。
西村 あとこれも意外なんですけど、小峠さんはグロに弱いんです。ロケでサザエの壺焼きが出てきたときに、爪ようじでぷりんって中身を取り出すじゃないですか。当然、最後に肝も一緒に出てくるんですけど、それを見て両手で顔を覆ったんですよ。こう見えてお嬢さんみたいなところがあって(笑)。
小峠 いいだろ、苦手は苦手なんだから。それで言ったら、西村はパンを食べないんですよ。これまでの人生において、自分の意思でパンを買ったことがない、パン屋でトングを握ったことがないんです。これってかなり珍しくないですか?
西村 いるでしょ? パンに興味がない人くらい。
小峠 いやいや、誰だって一度はパン屋でトングを握ったことはあるよ。お前はどうせ焚き火の炭くらいしかつかんだことないだろ?
西村 まあそうだけど、ただシンプルに「ご飯派」っていうだけで。
小峠 ご飯派でもたまにはパンも食うでしょ。ちょっと小腹が空いたとき、ご飯を食べるほどじゃないけど、おにぎりっていう感じでもない。そんなときはパンだろ?
西村 僕にはその選択肢はないです。
小峠 なんでだよ!
──でも家族の皆さんはパンが食べたいって言いませんか?
西村 ああ、家族はパン好きですね。だから家にホームベーカリーがあってパンを焼くんですけど、それは食べます。
小峠 食ってんじゃねえかよ!(笑)
西村 自分で焼いたパンは別だね。これがめっちゃおいしくて。
小峠 なんなんだ、このくだらない話は。
──(笑)。では、「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
小峠 インドが舞台ということもあって、景色もアクションもスケールが大きいですし、とにかくエネルギッシュです。演出や展開も、破天荒に見えて実はすごく綿密に計算されているので、誰が観ても楽しめる作品になっていると思います。我々おじさん世代の心をくすぐるネタもたくさん織り交ぜられていて、そういうところも面白いなと思います。
西村 いつもおとなしいボーちゃんが豹変するという、普段とは違う姿も見どころだと思います。テンポがいいし、1回では追いきれないほどネタもたくさんあるので、ぜひ繰り返し観ることをお勧めします。
小峠 確かにまったく停滞しないというか、常にストーリーが突っ走っている感じはありますね。
西村 なので、最低3回は劇場で観てもらいたいです。
──アニメ声優にはまた挑戦してみたいですか?
西村 もちろん、またやってみたいです。普段のコントとまったく違うキャラクターを演じるのはすごく新鮮ですし、もっといろいろなキャラを演じてみたくなりました。特にアニメの場合、リアルではできない面白さというか、アニメならではのキャラクター作りが必要になるので勉強にもなりましたね。
──小峠さんは?
小峠 僕は芝居が苦手なんですよ。コントは僕のままなのでいいんですけど。だから、まあ……(無言で首を横に振る)。
──(笑)。本当に対照的なお二人ですね。本日はありがとうございました。