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こんにちは、母さん 全世代必見 母親と息子の物語だけに収まらない、山田洋次監督らしい人情映画。フィッシャーズのシルクも出演



こんにちは、母さん 全世代必見 母親と息子の物語だけに収まらない、山田洋次監督らしい人情映画。フィッシャーズのシルクも出演

こんにちは、母さん

日本を代表する映画監督、山田洋次監督の最新作は、劇作家の永井愛の戯曲(要は舞台用の脚本)を原作にした映画。
実は2007年にNGKでテレビドラマ化されているもの。

主演は吉永小百合。
「母べえ(08)」
「母と暮せば(15)」
につづく、母3部作の集大成作品。
「母べえ(08)」「母と暮せば(15)」ともの吉永小百合が主演。

そして吉永小百合演じる母親の息子役に大泉洋。
水曜どうでしょうの藩士としては、観ないわけに行かない作品とも言える。

出演は
吉永小百合
大泉洋
永野芽郁
YOU
枝元萌
加藤ローサ
田口浩正
北山雅康
松野太紀
広岡由里子
シルクロード(フィッシャーズ)
明生(立浪部屋)
名塚佳織
神戸浩
宮藤官九郎
田中泯
寺尾聰

大手企業の人事部長の昭夫(大泉洋)は、幼い頃からの友人から同窓会の相談を受ける。実は同窓会を屋形船で出来ないか?というもので、母親なら知り合いがいるかも知れない…となり、久しぶりに実家に帰るのだった。じつは別居している妻から娘が家出をしており、昭夫の実家に行っているかも?というのもあったためだ

今はなき父親と大喧嘩をして出ていった手前なかなか素直に買えることがなかった昭夫だったが、母親(吉永小百合)が出迎えてくれたのだった。久しぶりにあった母は、髪を染め、すこしおしゃれをしている。

そんな母の変化にすこしとまいどいながらも、昭夫は実家での時間を過ごすが、おせっかいな下町の住民や娘との関係に少しずつ、自分が忘れていた「なにか」を思い出していく。

これぞ山田洋次監督が描く、日本の日常
古き良き時代から変わらない時間は、今の何かと時間に追われる時代だからこそ観ておくべき1本と言える。

見事すぎる人情劇は観ている側を優しい雰囲気にさせてくれる魔法のようだ

山田監督らしいカメラアングルと長回しのセリフ。
同じカット割りを何度も魅せつつ出演者を変えることによる変化を観る側に感じさせる演出はもはや山田イズムとも言っていいほどの安心感のある映像だ。
コメディでもあるし人情劇でもあるこの作品は、山田洋次監督の真骨頂とも言える1本だろう。

性善説ともいえる、人間性の肯定を徹底的に描き、この映画の中に悪い人が一人も出てこない。
これほどまでに「誰が観ても安心できる映画」はほんと少なくなった。
まさに貴重な1本と言えるだろう。

それでいながらも、不正規雇用であったり、大会社の組織体制の被害者とも言える希望退職者制度。なんでもかんでもコンプライアンス優先の大企業の体制など、今の社会に対するアンチテーゼ的な部分も「嫌味にならないように組み込む」手腕は流石である。

このあたりが、他の映画監督と違って
直接ではなく、間接的にかつ判りやすく、そしてユーモアを含めて映画にしている
というのは、さすが山田洋次監督!

キャスティングも絶妙
吉永小百合の上品すぎる感もある下町のお母さん。でも恋愛をしている女性はきれいになると考えると、さもありなんと納得してしまう演技の巧さ。
昔ながらの昭和時代の母親。どこか息子であっても1歩引いた雰囲気の丁寧な語り口調はさすがである。

でしゃばらない、目立たない、常に他人を思いやる
そういった雰囲気が見事にでていた。
アルバムにあったのは、大泉洋の本当の幼少期の写真の数々。
大学時代の写真はまさに「水曜どうでしょう」でボヤきまくるまで、あと数年の大泉洋である。

それらを観て、大泉洋を本当の息子のように思える…役作りをした吉永小百合の女優としての素晴らしさに脱帽である。

そして大泉洋
いまや日本のドラマや映画には欠かせない存在の一人。
あの ぼやきまくっていた、雪面の飛び魚を履いていた大泉洋が、山田洋次監督作品に出るのである。

演技はさすが、ボヤキシーンもさすが。
離婚と娘とのコミュニケーションに悩む姿はとても自然。
娘が永野芽郁という 可愛すぎるのもあれだが、吉永小百合の孫だと考えると
まさに隔世遺伝w

喋り方もどこか渥美清を感じさせるような 江戸っ子気質とかじゃなく、江戸弁でもないが、なんとなく渥美清を感じたのは自分だけだろうか?
ここは大泉洋なりに演技を寄せていったのではないかと思うのだがいかがでしょうか?

永野芽郁もますます演技がうまくなってびっくりした
吉永小百合の孫娘役だが、おおらかな下町を好きになり、おばあちゃんの家で過ごしたい…という孫娘が本当に可愛くて仕方ないだろう…ゆえに とても大切に育てているという雰囲気が感じられるほど、吉永小百合との自然な掛け合いと演技がみられたのも良かった。

寺尾聰もいい
吉永小百合演じる母さんが、恋をする相手だが、相思相愛なのに行動に移せない、ティーンエイジャーのようなピュアな役どころを見事に演じており、まさに イケオジの代表格ともいえる寺尾聰のかっこよさも観られる

そして何と言っても音楽が素晴らしい
映画を邪魔にしないのに耳に残る。
美しいストリングスのメロディがエンドロールとともに染み入る

さすがクラシックも手掛けている千住明である。
なんといっても「機動戦士Vガンダム」でアニメながらも強烈なインパクトが有るスコアで印象的だった千住明。

テレビドラマはもちろん
愛を乞うひと(98)
黄泉がえり(03)
この胸いっぱいの愛を(05)
追憶(17)
などなど映画でも数々の感動作の音楽担当をしている。

山田洋次監督作品に見事にマッチした音楽にも注目をしてもらいたい。

若い人には
YouTuberのフィッシャーズのシルクロードくんがでていることで少し話題かもしれない
彼も出演シーンは短いながらも強烈なインパクトを残している。

演技がめちゃくちゃうまいわけじゃないが、彼らしいキャラクター性を出している役どころで、
若い子なりにちょっとずつ成長をしている姿を見せている。
その姿にしたして、
山田洋次監督らしい、若者を応援する気持ちを大泉洋に語らせているといっても過言ではないだろう。

今の邦画で、ここまで
社会的大事件も、殺人事件も、起きないのに110分魅せ続けられる脚本を書ける人はどれだけいるのだろう?

なんてない日常を。しかも短い期間での日常を見事に描いた作品。

お母さんに対して距離を持っている人も、日常的に会っている人も、もう母親に会えなくなった人もいるかもしれないが、すべての人に観てもらいたい、母親のありがたみと優しさと、懐の深い愛情をもってくれる存在の尊さを感じられる1本になっている。

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