中田譲治

声優・中田譲治氏が生成AI画像で炎上 「無断生成AI反対」との矛盾に批判、未発売フィギュア疑惑も – coki (公器)

中田譲治中田譲治氏 公式Xより

「NO MORE 無断生成AI」を掲げていた人気声優が、自ら生成AIを使った画像を投稿し、批判を浴びている。『ケロロ軍曹』のギロロ伍長役などで知られる中田譲治氏だ。ハロウィンに公開した画像について、購入したフィギュアの背景をAIで加工したと説明したが、その後、未発売のフィギュアに酷似しているとの指摘が浮上。説明投稿も削除された。創作者の権利保護を訴えてきた中田氏に何が起きたのか。騒動の経緯を追うと、生成AIをめぐる声優業界の問題も見えてくる。

 

中田譲治氏が生成AI画像を投稿 「無断生成AI反対」と矛盾?

騒動の発端は10月31日。中田譲治氏がXに「Azrael or Treat?」という言葉とともに、ハロウィン仕様の画像を投稿した。満月やカボチャのランタンを背景に、鎧をまとった骸骨の騎士が立つ画像だ。描かれていたのは、中田氏が声を担当する人気ゲーム『Fate/Grand Order(FGO)』のキャラクター「山の翁」。中田氏は投稿の返信欄に「made by AI」と記し、生成AIを使用したことを明かしていた。

ところが、中田氏のXのプロフィール画像には「NO MORE 無断生成AI」というメッセージが掲げられていた。生成AIによる創作物の無断利用に反対する姿勢を示していた人物が、自らAIを使用したことで、SNSでは「反対しているのに使うのか」と疑問の声が相次いだ。中田氏の投稿は11月4日時点で460万回以上表示され、議論はファン以外にも拡大。AIの使用を最初から明示していたことを評価する声もあったが、これまでの主張との整合性を問う批判が広がった。

 

「購入したフィギュアを加工」説明後に未発売疑惑

批判を受けた中田譲治氏は11月1日、画像の制作方法を説明した。投稿によると、使用したのは公式に販売されている「山の翁」のフィギュアで、自身が購入したものだという。ハロウィンに合わせ、Xの生成AI「Grok」を使って背景を加工したと明かした。さらに、AIで作成したことは返信欄でも補足していると説明。一連の批判に対し、匿名の相手と議論する意思はないという趣旨の言葉も添えた。中田氏としては、既存のフィギュアを利用した背景加工であり、キャラクターそのものを新たに生成したわけではないという説明だった。

しかし、この説明を受けて新たな疑惑が浮上する。11月5日付のSmart FLASHによると、投稿画像に使われたフィギュアが、2027年2月発売予定のグッドスマイルカンパニー製「POP UP PARADE SP アサシン/“山の翁”」に酷似しているとの指摘がSNSで広がった。同商品は全高約33センチ、価格2万4000円の予約商品で、メーカーの公式サイトでも発売予定が確認できる。中田氏が実際にこの商品の画像を使用したかどうかは特定されていないが、「購入したフィギュア」という説明への疑問が強まった。さらに、中田氏は制作方法を説明した投稿を削除。Smart FLASHは所属事務所に画像投稿の意図や削除理由を問い合わせたが、回答期限までに返答はなかったという。

 

声優業界が反対する「無断生成AI」 

声優業界では、本人の声を許可なくAIに学習させ、別の言葉を話しているように再現する行為が問題になっている。声は声優にとって長年の経験と演技力によって培われた表現そのものだ。無断で模倣された音声が動画などで拡散すれば、本人が関与していない発言まで本人のものと誤認される恐れがある。声優の津田健次郎氏も、生成AIで無断模倣された自身の声を使った動画の削除を求めてTikTokの運営会社を提訴した。2026年9月30日には請求が棄却されたものの、声にもパブリシティ権による保護が及ぶとする司法判断が示され、注目を集めた。

中田氏が掲げる「NO MORE 無断生成AI」も、こうした創作者の権利保護を求める動きと重なる。そこで焦点となるのが、AIの使用自体と、他者の作品を無断利用する行為の違いだ。権利者の許諾を得た素材をAIで加工することと、他人の作品を無断で利用することでは、問題の性質が異なる。今回、中田氏は購入したフィギュアの背景を加工したと説明したが、画像の出所や加工に使用した素材の詳細は明らかになっていない。フィギュアを購入して所有することと、その画像や造形に関する著作権を持つことも別の問題である。権利保護を訴えてきた中田氏だからこそ、自身が使用した画像についても説明が求められる状況となった。

 

説明削除が招いた不信感 問われる創作者の姿勢

今回の騒動は、生成AIの使用をめぐる批判から、中田譲治氏自身の説明に対する疑問へと広がった。購入したフィギュアを加工したという説明は、本来、制作方法を明らかにするためのものだった。ところが、未発売商品との類似性を指摘され、説明投稿まで削除されたことで、かえって疑問を残す結果となった。中田氏がAIの使用を最初から公表していたことも事実であり、生成AIを利用したことだけで、これまでの権利保護に関する主張が否定されるものではない。重要なのは、どの素材を、誰の権利に配慮して使用したのかという点だ。

生成AIの普及によって、声優の声、イラストレーターの絵、フィギュア制作者の造形など、さまざまな創作物が簡単に加工・再現できるようになった。その利便性を享受する立場と、自分の作品を守る立場は、同じ創作者の中にも共存する。だからこそ、生成AIによる無断利用に反対する人がAIを使う際には、利用する素材や方法について一貫した姿勢が求められる。中田氏の画像の出所や説明を削除した理由は、現在も明らかになっていない。ハロウィンの一枚の画像から始まった騒動は、生成AI時代に創作者がどのように自らの権利を守り、他者の権利を尊重するのかという課題を突き付けている。