木か?シャンデリアか? 正体は逆さまのスカート
ショーは、無数のパールをつるしたシャンデリアのようにも、木のようにも見えるルックで幕を開けた。その正体は、逆さまにまとったスカートだという。角のように突き出した骨組みから揺れるパールが、どこか神秘的な雰囲気を漂わせる。


続いて現れたのは、レザーのライダースジャケットやドレス。一面に花のカットワークにパールをあしらい、ハードな素材に繊細な表情を与えた。燕尾服のジャケットには花を配したハーネスを重ね、紳士服のマスキュリンと花のロマンチックな要素や、硬さと柔らかさが、一着の中でせめぎ合う。

身体に絡み付く花
身体を縛り上げるように花を巻き付けたルックも強いインパクトを残した。身を守る鎧にも、自由を奪う拘束具にも見えるその姿は、守ることと束縛することが、紙一重であると感じさせた。


ヘアは、協業を続ける小西神士が手掛けた、貴族を思わせる縦ロール。モデルが歩くたびに大きなカールが軽やかに揺れ、口にはフラワーアーティストの東信が手掛けた花をくわえていた。可憐なはずの花が口をふさぐ姿は、美しさと息苦しさを同時に感じさせる。長谷川白紙による異質な効果音を織り交ぜたサウンドも重なり、見る者を奇妙な感覚へと引き込んでいく。
クラシックを崩す、実験精神
中盤は、胸元にプリーツを寄せたシャツやタイピンを留めた白いネクタイなど、貴族的な趣を感じさせるテーラリング。フリルやサスペンダーを取り入れ、端正な装いにひねりを加えた。リボンを幾重にも配したビスチェ風のハーネスもお目見え。さらに、レーザーカットで切り出した蝶のモチーフや、トランプカードを用いたスカートやドレスが続いた。ハートやスペードなどのマークをかたどったパーツをつなぎ合わせ、ドレスやハーネスを構築した。


二宮によれば、トランプや蝶は自身にとって普遍的なモチーフの一つだという。トランプの兵隊やハートの女王が登場する、不条理に満ちた童話「不思議の国のアリス」の世界を彷彿とさせた。

花で表現するパンク精神
安全ピンで花をかたどったハーネスも目を引いた。パンクの象徴である安全ピンによってロマンチックな花を描き出す。異素材を緻密な技術で組み上げ、服の形そのものを変えていく実験精神は、コレクションの随所に表れていた。


後半にかけては、素材の探求がさらに広がる。ネットを固めて色付けしたようなドレスや、ワイヤーで作った透明な花が身体から飛び出すようなピースが現れた。ラストを飾ったのは、波打つような細かなシワを幾重にも寄せたドレスで、赤い生花があふれ出す。

グレンソン、ハルタとの協業
足元には、英国の老舗シューメーカー「グレンソン(GRENSON)」とのコラボレーションによる、花のフリンジをあしらったローファーと、日本の「ハルタ(HARUTA)」との初の協業による、大粒のスタッズを配したスポックシューズを合わせた。クラシックな革靴にパンクの要素を取り入れ、端正な佇まいを崩している。

花に託した、言葉なき抵抗
二宮は具体的な政治問題には言及しなかったが、世界では今も武力紛争が絶えず、AIの軍事利用も危ぶまれている。今回見せた花をまとった鎧は、兵士の銃口に花を挿して非暴力を訴えた1960年代の反戦運動「フラワーパワー」を思い起こさせる。印象的だったのは、花を手に持たせるのではなく、口にくわえさせたこと。言葉を発しない代わりに、服そのものが語りかけてくるようだった。


ショーノートでは、「既存のルール」や「冷たい現実」に立ち向かうことにも触れている。社会の常識や同調圧力、決められた価値観に抗う姿勢は、従来の服作りの枠組みにとらわれず、新たな造形表現を追求してきた二宮のものづくりとも重なる。ブランド名が示す黒を軸に、花という可憐なモチーフを重ね、美しさの中に反骨精神をにじませ、「ノワール ケイ ニノミヤ」らしさが凝縮された今季のコレクションからは、世の中への問いかけと、自らの美学を貫く二宮の揺るぎない強さが感じられた。



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