掲載日
2026年10月5日
少数の成熟ブランドへの依存度が一段と高まり、消費者の期待も変化する中、国際百貨店協会(IADS)の加盟各社は、2025~2026年度に向けてメンズ売り場の抜本的な見直しに踏み切っている。アイテム数を闇雲に増やすのではなく、従来の主力ブランドを一層際立たせ、将来の成長ドライバーを発掘し、売り場面積の収益性を最大化するために、商品ラインナップの合理化へと舵を切っているのだ。
メンズ売り場におけるブランド乱立は終焉へ – Shutterstock
当該会計年度において、メンズファッションはIADS加盟社のビジネスモデルにおける安定した収益源となっており、全体売上高の平均13%を占める(グループによって6%から21%の幅がある)。一方でデジタル化は引き続き進展しており、ECがメンズ売り場の売上の平均22%を占めるまでになっている。
プレミアムセグメントの勢いをテコに
販売数量が一見安定しているように見える一方で、メンズ消費の構造そのものは大きく組み替わっている。同条件で比較すると、コンテンポラリーおよびプレミアムセグメントは急伸し、売上構成比は34%から43%へと拡大している。これに対し、ハイストリートおよびミドルレンジはわずかに縮小し、35%から31%へと低下。エントリーレンジはさらに落ち込み、12%から7%へと大きく減少している。一方で、ラグジュアリーおよびアクセシブルラグジュアリーは堅調さを維持し、両者を合わせて品揃え全体の19%を占めている。
メンズ売り場のベストセラーは、依然として不動の定番ブランドが押さえている。トップを走るラルフ ローレン、ヒューゴ ボス、トミー ヒルフィガーに加え、地域によってはラコステ、モンクレール、エンポリオ アルマーニ、リーバイス、ブルックス ブラザーズなどが名を連ねる。こうしたビッグブランドが売上ボリュームを支える一方で、その依存度の高さは、いまや大きなリスク要因ともなっている。1ブランドの失速が、部門全体の安定を揺るがしかねないからだ。
より研ぎ澄まされたセレクションへ
とはいえ、百貨店各社はすでに、ブランド数をむやみに増やす戦略からは決別している。ブランドの乱立は、かえって各ブランドの存在感を薄め、売り場1平方メートルあたりの生産性も損なっていたからだ。いま焦点となっているのは、主力ブランドの見せ方を一段と強化し、魅力的に演出することにある。
スイスの百貨店マノール(Manor)は、コンセッション形式の採用、インパクトのあるビジュアルマーチャンダイジング、そしてボスのビーチウェア・ポップアップのような期間限定イベントを活用し、ブランドポートフォリオを過度に膨らませることなく話題性を生み出している。
英国では、ジョン ルイスが売り場コーナーの改装や、インターナショナルブランド専任アドバイザーの配置によって、明確な業績向上を確認している。
ブルーミングデールズは、ブリオーニとブルネロ クチネリを起用し、高級テーラリングに勝負をかける – Shutterstock
同様のアプローチはメキシコのエル パラシオ デ イエロでも見られ、ホールセールで起用しているブランドアンバサダーは、汎用的な販売スタッフを大きく上回る成果を上げている。今後の成否を分けるのは、スケールアップのポテンシャルを備えたブランドを見極められるかどうかだ。カーハートのように、都市型の顧客層に自然とアピールするブランドもあるが、選択的な流通戦略が一気の拡大を抑制しているケースも少なくない。
メンズでもアクセサリーが成長ドライバーに
次世代の柱づくりに向けて、百貨店各社は3つの軸で戦略を展開している。ラグジュアリーおよびフォーマルウェア(ブリオーニ、ブルネロ クチネリ、トム フォード、ザ ロウ)、コンテンポラリーおよびライフスタイル(アーケット、フィルソン、A.P.C.、ドロール ド ムッシュ)、そしてストリートウェア(フィア オブ ゴッドと、そのディフュージョンライン「Essentials」)である。一方で、より尖った感度の高いブランドは、マーケティング上の差別化要因として活用されている。たとえばギャラリー ラファイエットは、アメリカ人デザイナーウィリー チャバリアに対し、オスマン大通りの旗艦店内に専用スペースと単独ウィンドウを用意。即時の収益性よりも、話題性と集客力というメディア効果を重視した取り組みを行っている。
さらに、成長ドライバーとして注目されているのがアクセサリーとアクティブウェアだ。各社が異口同音に指摘するのは、「いまや1ブランドだけでカテゴリー全体を牽引することはできない」という点である。真の“目的買い”の場として認識されるためには、品揃えに十分な奥行きと多様性が求められる。レザーグッズおよびバッグ売り場では、牽引役となるトゥミ(Tumi)やコーチ(Coach)に加え、スプレーグラウンド(Sprayground)やレインズ(Rains)といったブランドもラインナップ。一方で、グッチ(Gucci)、プラダ(Prada)、ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)といったラグジュアリーメゾンは、サンドクヴィスト(Sandqvist)のようなアーバンブランドや、ロンシャン(Longchamp)、ランセル(Lancel)、ル タヌール(Le Tanneur)といったヘリテージブランドと並列で展開されている。
多様な世界観から集う確立ブランド群
スポーツカテゴリーでは、ランニングシューズブランドのOnがメンズフットウェア分野のリーダーとして存在感を高めており、一方でルルレモン(Lululemon)がアクティブウェア市場を牽引している。その周囲には、サティスファイ ランニング、ディストリクト ビジョン、アークテリクス、ヴオリ、Rhone(ローヌ)といった高機能かつ専門性の高いブランドが集積し、一つのエコシステムを形成している。メンズ売り場はまた、多様な客層を意識して構成されている。メンズファッションの購入比率は女性が大きな割合を占めることが多く、レジ通過件数の半数以上を女性客が占めるケースもある。一方で、若い女性客が自身のワードローブにメンズシルエットを取り入れる動きも強まっており、これを受けて百貨店各社は、メンズフロア内のAmi ParisやAcne Studiosといったブランドで、サイズレンジの拡大に踏み切っている。
購買導線のレイアウトは、男性の購買心理に合わせて再設計されている – Shutterstock
百貨店にとって、購買力の制約を踏まえると、若年男性を惹きつけることはいまだ難題である。目が肥え、より選択眼の厳しい客層に応えるべく、小売各社はイノベーションを加速させている。マノールは、ハイパーコネクテッドなテストスペースで新進ブランドをローテーション展開し、ブルーミングデールズはエントリープライス帯のストリートウェアの品揃えを強化。また、一部の加盟社は、与信サービスの拡充や、バック・トゥ・スクールやバックパックといった入門カテゴリーをテコとする施策に取り組んでいる。
最後に、IADSのパートナーである小売調査会社Newstoresによれば、店舗の物理的なレイアウトは、実務的で目的志向の強い男性の購買心理に合わせて調整する必要があるという。男性客は一般的に、自分が何を探しているのかを明確に把握している。そのため、課題となるのは――購買プロセスをできる限りシンプルにしつつ、その途中で補完的な衝動買いを促す仕掛けをいかに組み込むか、という点である。