そうですね。『dialogue』では、いま何を着るべきかよりも、裸の自分をできるだけ早くさらけ出すことのほうが大事でした。だから、受け手の反応や評価は気にせず、いま自分にとってつくるべきものをつくった。そんな作品ですね。
──こうした「裸の状態」で出した今回のサウンドと、YOASOBIで生み出しているサウンドは、どちらが純粋な「Ayaseのサウンド」に近いと思いますか。
まず、今回は早く出すことを主眼に置いていたので、サウンドメイクの部分での実験はあまりやっていません。仮にもっと時間をかけていたら、多分サウンドの層も展開もどんどん厚くなっていって、音数も5倍は増えてると思いますね(笑)
──つまり、YOASOBIで試みているメロディーやサウンドの複雑性、ジャンルの横断性は、Ayaseさんの純粋な作家性ということですね。
そうですね。仮に最初のデモの段階で、ビリー・アイリッシュのようにミニマルな、引き算され尽くした楽曲ができたとしても、最終的には絶対に10倍ぐらい音数が増えてるんですよ。結局、自分で満足できなくて音を盛り盛りにしちゃう。ある程度は自分の中に正解があるんですけれど、これは完全に手癖、好みですね。
──ソロ作で原点に戻って再確認した部分もあるんでしょうか。
そうですね。YOASOBIの7年で何がいちばん変わったかというと、音楽では食えなかった時期、つまりカッコ付きで「(音楽家)」だったときとは違って、そう名乗ってもいい状態になれたことだと思うんですよ。ただ、音楽家としては、思想・思考・表現を含め全然変わってないな、と改めて思いましたね。

Photograph: Ton Zhang
ボカロに命を救われた音楽家が、AIに思うこと
──Ayaseさんの作家性を支えてきたものに、やはりテクノロジーがあると思います。過去にAyaseさんは、ボカロは自身の「命を救った存在」であるとも語っていました。それでは、人工知能(AI)はどうでしょうか。生成AIが音楽制作にも入り込みつつあるいま、テクノロジーと創作の関係はどう変わっていくと考えていますか。
AIの存在も、つくり手としてどちらかというとワクワクしています。楽しみにしている派だと思いますね。
──それはどういったところでなのでしょうか。
ぼく、本当に機械に弱いんですよ。説明書とか本当に読めなくて、アナログツールのように直感的に触れるものじゃないと、DAW(音楽制作ソフトウェア)も使い慣れてる「Logic」しか使えない。それがAIによって変わっていってくれるとうれしいなと思っています。
それに、ぼくがいちばん短縮されてほしいプロセスって音選びなんですよ。バスドラムのキックの音ひとつ選ぶのに丸一日かかるなんてことがザラにある。膨大な素材のなかから一つひとつ聴き比べて選んでいくわけですからね。
アイデアをもつクリエイターが選んでいくまでの「作業」の部分が縮まれば縮まるほど、生み出していくまでのスピードが上がる。これって日本の全体のクリエイティブのレベルを押し上げてくれると、ぼくは思ってるんですよ。