音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」としてリスタート。自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫っている。2026年5月後半の特集は、「NIAGARA TRIANGLE Vol.1 50周年 part-1」。伊藤銀次を迎え、『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』について深掘りしていく。
田家:こんばんは。J-POP LEGEND CAFEマスター・田家秀樹です。今流れているのは、伊藤銀次さんの「幸せにさよなら」。1976年3月25日発売、『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』の中の曲です。シングルとしても発売されました。作詞・作曲・編曲・歌・伊藤銀次さん。今年の3月に出た50周年盤からお聴きいただいてます。今週と来週のテーマは、この曲なんですが、今流れているのはアルバムバージョンで、来週はシングルバージョンです。
幸せにさよなら / 伊藤銀次
今からちょうど50年前、1976年はJ-POPの大きな節目になった年でした。この年にデビューしたアーティスト、この年に発売された歴史的名盤も多いんです。今年は折に触れて、そういう話をしていく年になりそうだということで、今週と来週も、このアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 50th Anniversary Edition』の特集です。
ナイアガラ・トライアングルとは何か? はっぴいえんどの大滝詠一さんが73年にイメージして、74年に発足したプライベートレーベルが、ナイアガラ。第1号アーティストがシュガー・ベイブで、最初のアルバムが75年4月に出た『SONGS』でした。5月に大滝さんの2枚目のソロの『NIAGARA MOON』も出てるんですね。去年の7月に、シュガー・ベイブの『SONGS』50周年の時に、伊藤銀次さんをゲストに、あのころの話をいろいろ伺いました。達郎さんは自主制作盤を作ったんですね、アマチュア時代に。『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』。このアルバムを大滝さんに教えたのが銀次さんで、そこからシュガー・ベイブにつながっていって、シュガー・ベイブがナイアガラからデビューしたという話は、去年いろいろ伺いました。でも、このナイアガラレコードを発足させたエレックレコードは、その後に倒産してしまって、76年からコロンビアレコードに移籍して、最初に発売されたのが、この『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』ですね。大滝詠一さん、伊藤銀次さん、山下達郎さん、3人のトライアングル。日本音楽史に残る巨人中の巨人。大滝さんが残した歴史的な遺産。82年には『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』が出ているんですが、この話は来月お送りしようと思っております。今週と来週は、この『NIAGARA TRIANGLE Vol.1 50th Anniversary Edition』の全曲紹介。伊藤銀次さんをお招きしております。こんばんは。
伊藤:どうも、こんばんは。よろしくお願いします。
田家:この「幸せにさよなら」はアルバムの中にも入っている。後ほどまた伺うことになるんですが、この50周年盤で思われることっていうのは、どういうことですか?
伊藤:まさか、ですね。1976年にこのアルバムを作った時に50年後に再発されるなんてこと1ミリも想像できませんでした。それぐらい山下君も僕も大滝さんもまだまだ世の中に知られてなかったし、自分たちが楽しんでやることだけでしたから。そういう意味では、非常に感慨深いものがありましたね。
田家:大滝さん27歳、銀次さん25歳、達郎さん23歳になったばかり。
伊藤:この当時、この3人のあたりの世代のミュージシャンの考え方は、子供に見られたくないというか、俺たちはいっぱしなんだ!と。いろんな音楽をわかってるんだみたいな、生意気な集団であったことは間違いないですね。もちろん音楽の仕事として売れたらいいなと思ってましたけど、何せ当時は本当に歌謡曲全盛でしたから。フォークはすでにかぐや姫とか、いろいろ人気がありましたけど、ロックとかポップスっていうのはまだ全然でしたから。ある意味あまり期待もせずにやってたっていうか。好きなことをやろうと。とにかく僕たちが好きな洋楽、アメリカの音楽、イギリスの音楽に僕たちしびれてましたから、そういう意味では3人とも共通してるんですよね。自分たちの思いの丈の音楽をやろうということで、その場所を作ってくれた大滝さんというのは、また素晴らしいなと思うんですね。
ドリーミング・デイ / 山下達郎
田家:作詞が大貫妙子さんで、作曲と編曲が山下達郎さん、ギターも達郎さんですね。ドラムが上原裕さんで、ベースが寺尾次郎さん、そしてピアノが坂本龍一さん。この達郎さん、ユカリさん、寺尾次郎さん、大貫さん、シュガー・ベイブですよね。でも、ユカリさんは、その前に銀次さんがお付き合いあったわけでしょう?
伊藤:ごまのはえが、ココナツ・バンクに大滝さんのサジェスションで変わったんですけど解散してしまいまして。その後、ハイ・ファイ・セットに僕とユカリ君が入ってたのを山下君が引き抜いて。僕たちは第二期のシュガー・ベイブのメンバーになったんです。ちょうどその後合流して、特にこういうタイプのドラムは、絶対ユカリくんでやりたいと思ってたと思います。
田家:達郎さんはライナーノーツに、この曲について、「このLPのために書き下ろした曲で、3年間、大滝さんと付き合って受けた影響を僕なりに表現したつもり」と書かれていましたね。
伊藤:どこを切っても山下君だと思いますけど(笑)。初めて聴いた時に、なんていい曲だと思いました。日本人でこういう曲を作れる人っていないなぁと思って、ちょっと驚いた記憶がありますね。
田家:一番強く感じたのはどこですか?
伊藤:AメロBメロっていうのは割とできるんだけど、♪ いつもあなたの言葉は … っていう、あそこのメロディーが出てくるってセンスがいいなと思います。