やはりファッションは楽しい!ベテランファッションディレクターは「プラダを着た悪魔2」をこう楽しむ 日々是流行(第17回) | JBpress autograph

やはりファッションは楽しい!ベテランファッションディレクターは「プラダを着た悪魔2」をこう楽しむ 日々是流行(第17回) | JBpress autograph

©2026 20th Century Studios. All Rights Reserved

プラダを着た悪魔

 映画「プラダを着た悪魔2」のロードショーが始まりました。前作「プラダを着た悪魔」は2006年公開。ストーリーはファッション業界でカリスマ的存在のアメリカ版『VOGUE』の編集長、アナ・ウィンターをモデルにした業界裏話です。実際にアナのアシスタント経験を持つローレン・ワイズバーガーの原作を映画化しており、リアルな話が見え隠れします。2006年の公開時の世界興行収入は約43億円でしたが最終的に劇場公開期間全体で約509億円を記録したスーパーヒット作品。公開後20年を経過していますが今観ても楽しめる作品です。

 

 前作ではファッション雑誌のエディターを夢見るアンドレア(アン・ハサウェイ)がトップファッション誌『ランウェイ』の悪魔のようなカリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントとなり扱かれ成長してゆくのですが最後は『ランウェイ』を去るという話。華やかなファッションジャーナリストという職業の裏側にある過酷な現実に迫りました。

左が「プラダを着た悪魔2」で再登場となったアンディ(アン・ハサウェイ)、中央はミランダ(メリル・ストリープ)、右はナイジェル(スタンリー・トゥッチ)

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現実の20年を想起させる続編

 私がミラノやパリコレに通い始めたのが1990年頃ですが、当時すでにアナ・ウインターは誰もが知る編集長でした。これだけ長く同じモード誌の編集長を続けているのはアナだけです。今回のPart2は、ミランダがグローバルな編集部長に昇進する中で話が進んでゆきますが、実際アナ・ウィンターも2025年9月、編集長という肩書きはなくなりチーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO)としてグローバルの全ブランドの指揮をとっています。

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 この20年間パリコレクションのあり方も変化しています。6年前にパンデミックが起こりファッションショーの発表にも制約が余儀なくされ、その時期を乗り越えようやくファッションの楽しさを蘇らせようという時期に、ロシアによるウクライナ侵攻、そして今回のイラン戦争です。それによって最も変化したのはweb媒体の躍進とインフルエンサーの出現です。

インフルエンサーと雑誌

 パリ(ミラノ)コレクションはあくまでビジネスの場であり、ファッション協議会に登録したジャーナリストとバイヤーが各メゾンにリクエストをして招待状をもらえます。ジャーナリストはコレクションを取材し、服を捉え、デザイナーの表現の源を探りながらその世界を媒体で読者に伝えます。VOGUEはその最前線のファッションを提案する雑誌です。映画の中の『ランウェイ』も同じく影響力のある紙媒体の設定ですが、スピード感を伴うweb媒体の躍進をさりげなく皮肉るシーンもあります。

 最近のコレクション会場にはアンバサダーやインフルエンサーが最前列に座り、全員がiPhoneのフォトグラファーとなり即座に「いいね」とアップしています。

 2019年春夏オートクチュールコレクションで「ヴィクター&ロルフ」が『NO PHOTOS PLEASE』というメッセージドレスをファーストルックで登場させました。時代を揶揄しながらも話題をまき起こした彼ららしいルックです。

 2025年10月、パリ26年春夏プレタポルテでは「ヨージ・ヤマモト」がプレスリリースに『レンズを通さず眼で見てください』という静かなメッセージを発信しました。

 ジャーナリズムはそのブランドのヘリテージや背景、デザイナーの企みや表現を受けて文章化し、また媒体はそれぞれの切り口で誌面を作ります。コレクションを初めて観る人がただ「いいね」だけで伝えるのは残念です。

 今回の映画では媒体とラグジュアリーブランドのやりとりも生々しく取り上げられています。

服を着る楽しみが描かれている

 とはいえ、やはりファッションは楽しい!そしてランウェイで新しい価値観のある美しさを発見すること、それを伝えることは大切。生物の中で自ら服を選んで着て生活するのは人間だけです。ファッションはどの人にも日常にときめきを与えられるはずです。

 

 映画の中のファッションピープルも服を通して自己表現しています。アンドレア(アン・ハサウェイ)が映画の中で着た服の数は約50着、ミランダ(メリル・ストリープ)は約30着だそうです。最近のファッショントレンドは、ブランドの新しい美しさにユニフォームや定番アイテムを加えてリアリティを表現する着こなしが旬です。映画でも登場人物はインフルエンサーと違いミックスコーディネイトで個人のおしゃれを表現しています。

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 今年2月に開催されたプラダのコレクションテーマは「INSIDE PRADA」普通ファッションショーは 約50人のモデルが1人1回1着ずつ着て発表しますが、今回プラダは15人のモデルを4回ずつランウェイに登場させました。4回のランウェイでは着替えるのではなく、コートやジャケットを1枚ずつ脱いでゆきレイヤリングを見せました。「服を着る」という行為は自身の歴史を表現すること。自分で買い足してきた服をコーディネイトして服を楽しみましょう。というデザイナーミウッチャ・プラダの自己肯定、自己決定の姿勢が伺われる魅力的なショーでした。

 

 映画ではブリジャートン家で大ブレイクしたイギリス出身俳優、シモーヌ・アシュリーがミランダの秘書役で出演しています。彼女のモダンな着こなしもキュートです。

 『ランウェイ』編集部では、日本の社会ではハラスメントとなる危険な毒舌会話が飛び交い爽快です。女性がキャリアを積んでゆくことの難しさや可能性をジャーナリズムを通して表現している、どなたでも楽しめる映画です。

「プラダを着た悪魔」はディズニープラスよりネット配信中。アナ・ウィンターのことをもっと知るには映画「メット・ガラ ドレスをまとった美術館」がおすすめです。