ファッションウィーク中のパリでエディターたちの注目を集めた、マチュー・ブレイジーによるシャネル(CHANEL)のクラシックパンプスの再解釈。さらに、ディオール(DIOR)でジョナサン・アンダーソンが打ち出したリボン付きピープトゥ、そしてバレエシューズやメリージェーンといった、本誌が「ドーリーシューズ」と呼ぶスタイルに注がれる熱視線からもわかるように、ファッションの振り子は今、端正でお行儀のよいスタイルへと大きく振れている。
批評家たちはこれを「保守的な美意識に対する挑発的な解釈」と評するが、実際にはコンサバに映る側面も否めない。そこで注目したいのが、アン・ハサウェイのスタイルだ。現在『プラダを着た悪魔2』(2026)と『マザー・メアリー』(2026)のプロモーション期間中にある彼女は、こうしたムードに逆らうかのように、ヴェルサーチェ(VERSACE)の黒のパテントレザーによる「アエヴィタス」プラットフォームパンプスを履き続けている。
ヒール高は16センチ超という圧倒的なボリューム。2022年頃に一大ブームを巻き起こしたこのシューズは、レディライクなスタイルが主流となった現在の空気の中では、ある意味で“場違い”な存在感を放つ。だからこそ、その選択はひときわ鮮烈だ。

『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』に到着したアン・ハサウェイ。
Gilbert Carrasquillo
アン・ハサウェイ、『マザー・メアリー』のアフターパーティーにて。
Aeon
ハサウェイが「アエヴィタス」を初めて履いたのは、2023年3月号の『ハリウッド・リポーター』の表紙だった。もともとはドナテッラ・ヴェルサーチェが手がけた2021年春夏コレクションの一足で、ショーではジジ・ハディッドやベラ・ハディッド、モナ・トゥガード、プレシャス・リー、ヴィットリア・チェレッティらが、ミニ丈ルックで海底都市のような幻想的なセットを歩いた。
コロナ禍のさなか、映像形式で発表されたこのコレクションを、批評家アンダース・クリスチャン・マドセンは「ロックダウン後のワードローブへの提案」と評した。その言葉どおり、このシューズはその後、アリアナ・グランデやビヨンセ、オリヴィア・ロドリゴ、サブリナ・カーペンターといったポップスターたちを魅了していく。