唯美人形『秘密』先行レビュー 〈耽美な世界で生きる〉3人組アイドルの美しさと危うさを体現した1stシングルに迫る | Mikiki by TOWER RECORDS - Moe Zine

〈耽美な世界で生きるお人形〉をコンセプトに活動する3人組アイドルユニット唯美人形(ゆびにんぎょう)が、2025年12月19日(金)に1stシングル『秘密』をリリースする。2022年7月のデビュー以来、初めてのシングルとなる本作には、今年8月に水城琉衣が加入して新体制となったグループの新たな物語のはじまりを告げる3曲が収められている。ここでは独自の世界観を築く唯美人形の魅力、そして各楽曲の聴きどころをリリースに先駆けて紐解いていきたい。


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〈耽美な世界〉で異彩を放つ3人組

ショート動画を起点にヒットが生まれ、音楽チャートの上位に食い込む楽曲も珍しくなくなった現代。そこでは状況が一瞬で理解できること、共感しやすい感情やキャッチーな言葉があることなどがヒットの条件として求められがちだ。

しかし、唯美人形はそうした流れとは違う場所にいる存在だ。彼女たちの楽曲や世界観は、初見ですべてを理解できるように設計されていない。歌詞の行間や映像の演出、ライブでの視線の使い方ひとつ取っても、明確な答えを提示するのではなく受け手に解釈を委ねているように感じられるのだ。そうした表現の余白こそが、リスナーを立ち止まらせ、一瞬の消費で終わらせない力になっているのではないだろうか。

また、唯美人形の掲げる〈耽美な世界で生きるお人形〉というコンセプトも、今のアイドルシーンにおいて異彩を放っている。アイドルと聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、〈可愛らしい〉〈元気〉〈癒される〉といったイメージだろう。もちろん、唯美人形の3人も女性らしい可憐さを持ち合わせているが、彼女たちはそうしたイメージが先行する世界ではなく〈耽美な世界〉で生きているのだ。

〈耽美〉とは、美を最高の価値としてひたすら追求し、その世界に没頭して陶酔することを指す言葉である。日々〈これが正しい〉〈これが可愛い〉と価値基準が提示され続ける現代において、彼女たちが追い求める最高の美とは何なのか。その答えを知ろうと覗き込むほどに、いつの間にか唯美人形の世界へと誘われていく。

 

独占欲が掻き立てられる“秘密”

そうした彼女たちの世界観をより鮮明に伝えてくれるのが、1stシングル『秘密』に収録された3曲だ。

まずは表題曲の“秘密”。愛する人とふたりだけの世界に静かに溶けていく様を描いたこの楽曲には、〈白いヴェール〉〈野薔薇〉〈きらめく世界〉といった、隠された花園へと誘われるような言葉が散りばめられている。また、〈これからずっとふたりで果てのない暗闇へ〉という一節には不穏さや危うさが滲んでいて、楽曲全体にミステリアスな余韻を与えている。

そんな歌詞を歌い上げる、紫月なな、蒼井メリッサ美華、水城琉衣の歌声は、思わず守りたくなる可憐さと、目を逸らした瞬間に消えてしまいそうな儚さを併せ持っている。MVでは洋館を舞台に、唯美人形の世界観が視覚的にも丁寧に描かれており、シーンごとに移ろう3人の表情に自然と視線を奪われる。見れば見るほど彼女たちの内面を知りたくなる一方で、すべてを知ってしまいたくはない、多くの人にその魅力が届いてほしいと思いながらもどこか自分だけの秘密にしておきたい、そんな独占欲が掻き立てられる1曲だ。

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