【令和のマストバイヴィンテージ】今買っておくべき名品は? vol.76 パタゴニア グリセード サンダー編 - Moe Zine

パタゴニアとフリースの切っても切れない縁

 ヴィンテージ愛好家の間で随一の人気を誇るアウトドアブランドが、パタゴニアです。当連載ではこれまでドリズラージャケットとパフボールベストをピックアップしてきましたが、今回紹介するのはヴィンテージパタゴニアのなかでも高い人気を誇るグリセード サンダーです。グリセードは商品名で、「滑る」という意味のフランス語「グリッサード(glissade)」が元となっていると思われます。グリッサードには、雪の斜面を登山靴のままで滑り降りるという意味もあるので、雪山などのハードなシーンでの着用をイメージして名付けられたのではないでしょうか。1980年代の後半から1998年までの約10年間製造されていたグリセードの一番の特徴は、フリースとナイロンのリバーシブル仕様であることです。

パタゴニア グリセード サンダー

グリセードにはフルジップとハーフジップの2種類がある

パタゴニア グリセード サンダー

 サンダーは、フリース面にあしらわれた縦に走る稲妻のような柄の通称です。パタゴニアのアイテムの多くは、発売されたシーズンによって色や柄が異なっているので、マニアは蒐集欲をくすぐられてしまうんです。グリセードにもたくさんのバリエーションがあります。例えばこのサンダーと同じ稲妻柄でベースカラーがグリーンのものは「スイカ」と呼ばれ、高い人気を集めています。

パタゴニア グリセード サンダー

サンダーは1997年秋冬シーズンに発売された

 軽く、暖かく、乾きやすいフリース素材。フリース素材を用いたアウトドアウェアは今でこそ当たり前の存在になっていますが、実はその立役者となったのがパタゴニアなんです。パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)は14歳ときに始めたクライミングにのめり込み、自身でピトン(クライミングのときに岩の隙間に打ち込む鉄製のくさび)を作るようになりました。これが仲間内で評判となり、徐々にビジネス化していきましたが、イヴォンはピトンが岸壁にダメージを与えてしまうことを懸念して、ピトン製造の事業を取りやめてしまいます。

パタゴニア グリセード サンダー

 その後、彼が注目したのがアウトドアアパレルでした。イヴォンがパタゴニアを創業した1970年代当時、アウトドアウェアには主にウールやコットンなどの天然素材が用いられていましたが、イヴォンが目をつけたのは化学繊維でした。彼は、1906年にアメリカのボストンで紡績工場として創業したモールデン・ミルズ社(のちのポーラテック社)と共同でフリース素材を開発したのです。その後両社は改良を重ね、パタゴニアはシンチラスナップTをはじめ、レトロXやR1など、フリース素材を用いた名作を数多く生み出しました。フリースはパタゴニアにとって特別な素材。パタゴニアのフリースアイテムに名作と呼ばれるアイテムが多いのは、こうした理由もあると思います。

パタゴニア グリセード サンダー

XLサイズは希少。米国製であることも嬉しいポイント

グリセードの「通」な着こなし方

 グリセード サンダーはヴィンテージパタゴニアのなかでもかなりの人気アイテム。実は、過去にパタゴニアが復刻版を発売しているんですが、残念ながら生地の質感や色合いがオリジナルとは全然違うので、今でもヴィンテージの価値は非常に高く、30〜60万円くらいが一般的な相場です。

パタゴニア グリセード サンダー

 先述したように、グリセードはリバーシブル仕様です。防寒性を考えると、無地のナイロン面を外側にするのがオーソドックスな着方だと思いますが、おそらくグリセードを着用するヴィンテージ愛好家の99.9%はフリース面を外側にして着ると思います。その理由はやはり、フリース面の「柄」がグリセードの最大の魅力だから。サンダーのようなレアな柄を見せびらかさず、あえて内側にして着たら格好良いと思いますが、僕自身これを着るときはやはりフリース面を外側にして着てしまいます。まだまだ洒落者としての精進が足りないのでしょうか(笑)。いつかサンダーを内側にして着られるような、心に余裕がある人間になれたらと思います。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭

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