9月19日から21日、ソウル城東区聖水洞は日本の音楽と文化を愛するファンが多く押し寄せた。ユニバーサル ミュージックが主催した『J-POP.ZIP 2025』は単なる音楽フェスティバルを超え、日本と韓国アーティストのコラボレーションや没入型展示、多彩な体験ブースまでが調和した3日間のフェスティバルだった。昨年、延南洞で開催されたイベントから規模と参加アーティストが大きく拡大し、J-POPファンには見逃せないステージと体験が繰り広げられた。無料で様々なプログラムが利用でき、ライブは有料での観覧となった。
【写真】ユニバーサル ミュージックが主催した『J-POP.ZIP 2025』の模様
9月18日、イベント前日に開かれたメディアデーでは、MCを務めるKangnamが華麗なオープニング映像とともにイベントのスタートを切った。この日のイベントにはユニバーサル ミュージックUSM邦楽マネージングディレクター浅井有、セガ(SEGA)「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のサウンドディレクターであり作曲家の大谷智哉、シンガーソングライターの Minsu と YonYon が参加し、華を添えた。
ユニバーサルミュージックの浅井は「『J-POP.ZIP』は韓国の観客が日本の音楽を直接体験できるように企画されたイベント」として「韓国のアーティストたちと共に、聖水でより大きな規模で開催することになり感謝する」と話した。
続いて「『J-POP.ZIP』が日韓文化交流の場になることを願う」と付け加えた。イベント初日、雨が降る悪天候にもかかわらず、数多くのファンがイベント会場の前に列を作った。SEKAI NO OWARIの記者会見とオープニングセレモニーはイベント開始前、抽選で選ばれた100人のファンが参加した。彼らの曲『最高到達点』と共に登場したメンバーたちは、韓国ファンの情熱に驚いたことを伝え、誠実さとチームワークを人気の秘訣に挙げた。 記者会見ではライブペインティングとエネルギー溢れるセットリストなど、韓国公演の特別な準備内容も明かした。
その後、3日間にわたるDJステージの初日が行われた。日本のボカロP/トラックメイカーhigmaは自身の楽曲と様々なダンスミュージック織り交ぜた、映画のような心揺さぶられるDJプレイを行い、韓国の彼のファンの心をつかんでいた。
続く日本のトラックメイカーHylenはワールドワイドなダンスミュージックと、自身が提供したVtuberやアニメソングの楽曲を横断する攻撃的なセットで会場を沸かせた。特に、ベースサウンドが強く鳴る彼の楽曲は本イベントでも特出して迫力が出ていた。ゲームサウンドトラックの作曲家やトラックメイカーとして活動するNorが登場。キャッチーさと攻撃力を織り交ぜた展開やエディットに観客は熱狂した。最後は日本で活躍しているAiobahnがトリを飾った。韓国の彼のファンは、繰り出されるトラックと能動的なパフォーマンス/サウンドに熱狂し、韓国/日本/カルチャー/ポップスをとても楽しんでいるように感じた。
今回のイベントではライブだけでなく、多様な体験型展示空間も用意された。アーティスト展示ゾーンでは、SEKAI NO OWARI、ヨルシカなどJ-POP代表アーティストのミュージックビデオや曲を鑑賞することができた。リスニングボックスゾーンは白いボックスの中で特定アーティストの音楽にだけ没頭できる空間で、観覧客はポストイットに感想を残しながら交流した。リリック&フォトゾーンでは歌の歌詞展示とフォトスポットが融合し人気を集め、SEGA/ATLUS ゾーンではゲーム体験と楽曲視聴体験を通じて景品としてNFCキーリングをもらうことができた。
THE MUSICゾーンではLP模型で直接トラックを選んで聴くことができる「LPライブラリー」、NFC プレイリストキーリング製作など風変わりな経験ができた。また日本の観光ブースも目を引いた。宮城県、長崎県のブースでは広報パンフレットを配布し、緑茶が有名な静岡ブースでは冷茶の試飲が、昨年韓国の航空会社・イースター航空の直行便が就航した徳島県/イースター航空ブースでは徳島ラーメンなどが景品として提供された。日韓交流おまつりのブースでは、だるまやこけし人形の紹介、日本の伝統的な遊びの体験も行われた。
他にもJ-POP.ZIPグッズ、SEGA/ATLUS のゲーム、ユニバーサルミュージックジャパンの CD·LP を販売するグッズゾーン、レッドブルとアサヒによるドリンクゾーンまで準備され、来場客の五感を満足させた。
ライブステージでは、blah、Miso、馬場智章がライブを披露。blahは暖かい音色と繊細な感情表現でバラードと日本の曲のカバーを披露し、観客を魅了させた。Misoは自らリミックスした椎名林檎の『丸の内サディスティック』を皮切りに、『happy』『T ake Me』『Let It Go』を歌いオーディエンスの大きな呼応を引き出した。馬場智章は、かねてから親交のあるジャズバンドDeep Mindのメンバーとともに舞台に上がり、華やかで真正性のある舞台を披露した。特に『88』ではループステーションを活用しレイヤーを幾重にも積み上げ、観客の目と耳を同時に魅了した。曲が終わる度にバンドメンバーの名前を呼ぶ馬場の細やかな心配りが印象的だった。
2日目、イベント会場のあちこちにはソニックグッズや衣装を着たファンが目についた。2日目のDJステージが始まり、まずは韓国インターネットダンスミュージックの重要人物mondaystudioがJpopのサンプリングソースを用いたダンスミュージックをプレイし空間を作っていく。続く韓国のトラックメイカーの ESAI は自身のKpopトラックからVtuberへの提供曲など彼のカルチャーを色濃く反映させたセットで会場を沸かせていた。Pure100%は本人のEDMトラックにマイクパフォーマンスを合わせアグレッシブなパフォーマンスを行う。彼は日本のクリエイターとも多くのコラボレーションをしており、その片鱗が見える時間であった。後半は日本のダンスミュージックレーベ
「SPRAYBOX」のメンバーGenick がパフォーマンスを行う。UK Garageを中心にインターネットミュージックやサブカルチャーを感じさせるプレイは渋谷を感じさせるものでもあった。
最後はセガ(SEGA)「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のサウンドディレクター/作曲家の大谷智哉のDJステージ、この日のハイライトとなる。『Super Sonic Racing』では観客皆が一緒に歌い大谷コールをするなど熱気が冷めやらず、これに応えるようにソニックが踊りながらステージ上に登場し観客を驚かせた。公演後にはサインイベントと写真撮影が行われ、ファンと直接触れ合う時間も用意された。
2日目のライブステージではWISUEとMinsu、アイドルグループLOONA出身のYvesが登場。WISUEは繊細で感性的なステージを、Minsu は『Ego Traffic』、『Islet』などで観客に力と癒しを伝えた。カバー曲ではMinsu が辛い時期に慰められたという imaseの『Have a nice day』を選んだ。Yves は『White cat』とヨルシカの『晴る』を歌いあげた。
そして2日目のトリは日本でニューエイジ・ポップミュージックを掲げ活動するKlang2Rulerからメンバー2 名によるユニットGyoshiChiiが登場。今年SNSで大バズリし、韓国でも人気の『Teenage Blue』をはじめ、『ララバイ』『飛行少女』などをアコースティックバージョンで披露。初の韓国公演にも関わらず、韓国語で観客とコミュニケーションを取り、さらにはIUの『Blueming』のカバーを披露するなど、現地ファンから大きな歓声を受ける中、9曲を歌いステージを終えた。
最終日のDJステージ、文園太郎がシティポップから日本語ラップクラシックまで原曲を子気味よくセレクト、昼の心地よい時間に流れるJpopでこの日の会場を作っていく。続く NordOstは本人の出自である日本のポップスやアニメソングを、オルタナティブなエディットをされたトラックと共にプレイ。彼が時間をかけて作り上げた空間は、聴いたことがあったかのような”エモ”が存在していた。続く DJ/トラックメイカーのillequal は Jpop をトラップ的解釈でプレイ。会場の若者が日本語曲で首を振っている姿もこのイベントならであるだろう。日本で活動する韓国のトラックメイカー/作曲家の Nika Lenz は自身の提供楽曲やエディットをプレイ。ゲームやアニメソングの万国共通性を感じる時間であった。
そして DJステージ最後はDJ WILDPARTY。最新のJpopから Vtuber・アニメソング、そしてSNS で使用されるフリー音源など、まさにウルトラボーダーレス。最後には満杯会場から大合唱が生まれるなど、本イベントを体現しているようなすさまじいプレイであった。
ライブステージで初Yeonwoo、ガールズグループDIA出身の JUEUN、YonYon、Crystal Kayが現場を熱く盛り上げた。Yeonwoo は、「ライブ会場で J-POP を歌ってみたかった」と話し、『ユイカ』の『好きだから。』とヨルシカの『ただ君に晴れ』を披露した。久しぶりにステージに上がり緊張すると言っていた JUEUN は、相変わらずの歌唱力で『Stay』『Easy Breezy』を歌い、最後には宇多田ヒカルの『First Love』で観客に大きな感動を与えた。韓国で生まれ、日本で育ったアーティスト YonYonは、韓国でのライブは今回が初めて。『Busy Girl』と『U』などを披露した。 YonYon はファンに「これから韓国に頻繁に来たいので口コミで広めてほしい」とお願いした。最後の曲『Old Friends』は、「日本の R&B アーティストSIRUP と成長する過程を振り返りながら作った意味のあるトラックだ」と明かした。
イベント最終日、最後のステージは Crystal Kay が飾った。客席は足の踏み場もない程に埋め尽くされ、彼女の人気と影響力を実感することができた。韓国の音楽番組でも歌ったことのある『恋におちたら』をはじめ、『hard to say』、『No Pressure』、『That girl』など6曲を熱唱した。Crystal Kay は、熱いアンコールを受けて再び登場し、『motherland』を歌いながらイベントの最後を飾った。観客は携帯電話のライトを振りながら応え、Crystal Kay は「韓国ファンの愛に感動した。また必ず戻って来たい」と伝えた。
3日間行われた J-POP.ZIP 2025 は単なるライブを越え、体験と没入、交流のすべて備えたイベントだった。日本と韓国のアーティストが一緒に作っていくステージ、展示や試聴体験、ファンとアーティストとのコミュニケーションまで、現場はまるで小さな日本の音楽文化祭そのものであり、J-POP の韓国内での人気と影響力を改めて立証する場となった。(writer : jun)
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日韓スター集結「J-POP.ZIP 2025」、ソウル聖水洞を熱狂の渦に