「数シーズン続いたノーメイクアップルックの時代を経て、メイクは再び戻ってきています」。上田が指摘するのは、今季ならではの華やぎの回帰だ。ツートーンで立体感を生み出すチークや、マットとシャインを巧みに組み合わせたリップ。「色を重ね、質感を対比させることで顔に彫刻的な陰影を生み出す」ことがカギになるという。

さらに今季は、オレンジのアイシャドウが新たな表情をもたらす。一般的に「腫れぼったく見える」と敬遠されがちな色だが、上田は「その腫れぼったさこそが可愛らしさであり、今のモードに通じる」と語る。必要に応じてブラウンのアイライナーで引き締めてもよいが、あえて重さを残すことで、日本人らしい奥行きのある眼差しが完成するのだ。「メイクは欠点を隠すのではなく、新しい魅力を引き出すもの。オレンジシャドウで作る“あえての腫れぼったい目もと”は、その象徴です」と上田は強調する。

ヴェネツィア映画祭に映えるメイクの秘密セイディ・シンク アルマーニ ヴェネツィア映画祭

アルマーニ ビューティのアンバサダーとして、ドージェ宮殿での特別なディナーに出席したセイディー・シンク。Photo: Virgile Guinard

今年のヴェネチア国際映画祭でも、アルマーニ ビューティが公式ビューティスポンサーを務め、ナタリー・エマニュエル、マディシン・リアンらがアルマーニのメイクでレッドカーペットに登場した。その場に立ち会った上田はこう振り返る。「レッドカーペットで映えるメイクは、異なるテクスチャーをどう組み合わせるかが重要。光を差し込み、影を添えることで、自然な立体感と華やかさが生まれ、見る人に強い印象を残せます」

マディシン・リアン ヴェネチア国際映画祭

マディシン・リアンは「ルミナス シルク チーク ティント シャイン #42S」と輝きのアイティントを合わせて、光をまとったような華やぎを表現。Photo: Jacopo Raule/Getty Images

ナタリー・エマニュエル ヴェネチア国際映画祭

ナタリー・エマニュエルのルックは「ルミナス シルク チーク ティント シャイン #62S」と「プリズマ グラス アイシー プランパー」を重ねた立体的なリップが主役。Photo: Jacopo Raule/Getty Images

印象的だったのはリップメイク。深みのあるカラーで輪郭を縁取り、中央に艶やかなグロスを重ねることで、光と影のコントラストを際立たせている。

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