Kビューティ、米国市場での勢いに逆風 トランプ大統領による25%関税で値上げは不可避か? - WWDJAPAN - Moe Zine

「ティルティル」COURTESY PHOTO ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が主導する新たな関税政策により、8月1日から日本と韓国に対し一律25%の関税が適用される見通しとなった。これは、米国でも存在感を高める韓国発のKビューティにとって大きな逆風となる。

Kビューティの製品は、2012年に発効した米韓自由貿易協定(KORUS FTA)により、これまで関税0%で輸出されていた。今回の方針転換により、価格競争力を大きく損なう可能性がある。「関税が導入されれば製品価格が上昇する。インフレを助長する要因にもなる」と語るのは、化粧品OEM企業アイラボズ(ILABS)や化粧品容器メーカーのモレ パッケージング(MORAE PACKAGING)などを率いるデヴィッド・チャン(David Chung)創業者兼最高経営責任者(CEO)。「ビューティ業界だけでなく、より広範な経済全体にとっても回復が難しくなるだろう」と懸念を示す。

Kビューティ躍進の要因は価格競争力

「ビューティ オブ ジョソン」×サンディー・リアン COURTESY PHOTO ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

Kビューティはここ数年で米国市場において再ブームを迎えており、「ビューティ オブ ジョソン(BEAUTY OF JOSEON)」「ティルティル(TIRTIR)」「メディキューブ(MEDICUBE)」「アヌア(ANUA)」「ミクスン(MIXSOON)」といった次世代ブランドがTikTokを中心にバイラルヒットを記録。中でも「ビューティ オブ ジョソン」は日焼け止めなどのヒットにより、20年の売上高3100万ドル(約45億円)から23年には1億ドル(約147億円)を突破し、今月にはセフォラ(SEPHORA)での取り扱いも開始する。

さらに、米化粧品小売大手アルタビューティ(ULTA BEAUTY)は今夏、13のKビューティブランドを新たに導入予定。「フィー(FWEE)」「カジャ(KAJA)」「ロムアンド(ROM&ND)」などをラインアップする。TikTok Shopでも、Kビューティは存在感を放つ。米データ解析・マーケティング支援会社チャーム・アイオー(CHARM.IO)によれば、「メディキューブ」は5月に410万ドル(約6億270万円)の売り上げで、同プラットフォーム内ランキング2位となった。

ニューヨークのアジアンビューティ専門店センティ センティ COURTESY PHOTO ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

こうした成長の一因となっているのが、Kビューティ製品の手ごろな価格だ。しかし関税の導入によって、米市場におけるその“手に取りやすさ”が脅かされる。ニューヨークでアジアンビューティ専門店センティ センティ(SENTI SENTI)を展開するウィニー・チョン(Winnie Zhong)共同創業者は、「どれだけ価格が上がるのかが最大の懸念。お客さまに負担を強いるのは避けたいので、値上げは最後の手段」と話す。同社は輸入型ビジネスであるため、倉庫スペースや家賃が高騰するニューヨーク市内での在庫管理がますます難しくなるという。

オンラインマーケットプレイス「ソコ グラム(Soko Glam)」やスキンケアブランド「ゼン アイ メット ユー(Then I Met You)」の創業者シャーロット・チョ(Charlotte Cho)も、「まだ状況が不透明なため、多くのブランドが様子を見ている」と述べる。「米国は、Kビューティブランドにとって最重要市場の一つだ。関税が導入されれば、小売や流通業者はブランド側にコストの負担を転嫁しようとする可能性がある。製品の値上げは避けられず、結果的に最も損をするのは消費者だろう」と続ける。さらに、「包装資材や原料をアジアから調達しているケースも多く、影響を受けるのはKビューティに限られない」とも指摘する。

関税にはある程度対処できるという見方も

「メディキューブ」COURTESY PHOTO ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

一方「メディキューブ」は、「大幅な値上げは避けられる見込みだ」と言う。ナム・ジュンヒ(Nam Junehee)=「メディキューブ」米国市場担当広報ディレクターは、「当社製品の多くは10〜20ドル(約1400〜2900円)の価格帯で、製造コストも比較的低いため、関税が導入されても競争力のある価格は維持できる」と話す。「値上げが消費者の購買意欲に大きな影響を与えるとは考えていない」とした上で、「企業の収益性には影響があるだろうが、最大の課題は関税そのものよりも、“先の見えなさ”にある。利益予測やマーケティング施策、グローバル戦略の見直しが迫られている」と説明する。

夜用シートマスクで知られる「ソンブン エディター スキンケア(SUNGBOON EDITOR SKINCARE)」のジョーイ・チャン(Joey Chung)広報ディレクターは、「一時的にコストが上昇する可能性はあるが、Kビューティの国際競争力は価格だけではない。継続的な製品イノベーションや独自の効果的な処方、トレンドへの迅速な適応力に支えられており、消費者からの信頼とロイヤルティが強みとなっている」と前向きに捉える。

本文中の円換算レート:1ドル=147円

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