ジャパンサステナブルファッションアライアンス(Japan Sustainable Fashion Alliance)は、6月30日、ファッション産業の循環型移行を加速させるための政策提言書を公表した。2030年度までに「手放される衣料品のうち、繊維 to 繊維リサイクルで5万トンを処理する」という政府目標の実現に向け、業界横断での議論と課題整理を踏まえた具体策を提示した。提言は、消費者庁、経済産業省、環境省に提出される予定。
【画像】ジャパンサステナブルファッションアライアンス、繊維 to 繊維など政策提言
繊維 to 繊維リサイクルの産業構造的課題
繊維 to 繊維リサイクルの最大の障壁は、技術そのものではなく、それを活かしきれない産業構造にある。たとえば、ポリエステルtoポリエステルのケミカルリサイクルや、反毛による再資源化技術はすでに商業レベルで存在しているにもかかわらず、活用が十分には進んでいない。その背景には以下のような課題がある。
・バージン材との価格差という根本的問題
本アライアンスの会員企業によれば、再生材はバージン材よりコストが高く、再生材を使用した製品は価格上昇を招きやすい。ファッション・アパレル製品は価格弾力性が高いため、消費者の支持を得られず、結果として企業も継続的な再生材採用が難しくなる。
・表示制度が反毛利用を阻む
反毛は有効な再資源化技術であるものの、複数素材混合による混率表示が困難という理由から法制度上の壁に直面している。現在、紡毛糸や空紡糸では「列記表示」が認められているが、主要な綿紡糸には適用されておらず、再生材利用が広がらない要因となっている。
・回収インフラの未整備
衣類回収の利便性にも課題がある。多くの自治体では衣類の資源分別が義務化されておらず、消費者がわざわざ回収ステーションへ持ち込む仕組みは利用率が上がりづらい。廃棄より簡便か同程度でなければ、古着回収への誘導は困難だ。
こうした構造的な課題を踏まえ、本提言書では、繊維 to 繊維リサイクルの実効性を高めるため、以下の7つの政策支援を政府に求めている。