米コティ、プレステージとマス部門を分割売却検討か 「グッチ」「バーバリー」など展開 - WWDJAPAN - Moe Zine

バーバリー ゴッデス オードパルファム

“バーバリー ゴッデス オードパルファム” COURTESY PHOTO ©︎FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

複数の情報筋によれば、米化粧品大手コティ(COTY)はプレステージ部門とコンシューマービューティー部門を分割して売却することを検討しているようだ。交渉は初期段階にあるとされるが、同社の広報担当者は本件について「噂や憶測にはコメントしない」としている。

コティのプレステージ部門は、「グッチ ビューティ(GUCCI BEAUTY)」「バーバリー ビューティ(BURBERRY BEAUTY)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」などを傘下に持ち、多くのブランドがフレグランスを中心に展開するが、一部のブランドでカラーコスメやスキンケアも取り扱う。コンシューマービューティー部門は、メイクアップブランドの「カバーガール(COVERGIRL)」「リンメル(RIMMEL)」「マックスファクター(MAX FACTOR)」など、マス市場向けのブランドを擁する。

香水中心のプレステージ部門
売却先にインターパルファムの名も

関係者によると、同社はプレステージ部門に関してインターパルファム(INTERPARFUMS)と交渉中だというが、インターパルファムの関心は「バーバリー ビューティ」と「ヒューゴ ボス」だけにあると推測されている。ただし、2023年にコティが発売した香水“バーバリー ゴッデス”は同社史上最大規模の新製品であり、「ヒューゴ ボス」も昨年欧州で下半期の男性用フレグランス売り上げの2位に浮上した。そのため関係者は、完全買収ではなく戦略的提携や合併の形態を取る可能性があると指摘する。インターパルファムは過去にも、1993年から2013年末まで「バーバリー ビューティ」のライセンスを保有していた。既に再契約を申し出ているともいわれているが、インターパルファムの広報担当者は「機会があれば常に検討する」と述べるに留めた。

「グッチ」はライセンス終了で
ケリングに統合の可能性

一方で、プレステージ部門の要である「グッチ ビューティ」もコティとのライセンス契約期限が迫っている。しかし、業界内では「グッチ」の親会社であるケリング(KERING)の下以外では短命に終わる可能性が高いといわれている。ケリングは近年ビューティ部門の拡大を進めており、「グッチ ビューティ」のライセンス契約終了後は、自社に統合する計画だと長年噂されてきた。「グッチ ビューティ」のライセンス契約の有効期間は50年とされ、28年にその契約が切れるといわれている。コティのスー・ナビ(Sue Nabi)最高経営責任者(CEO)は、23年に行われた記者会見で、ライセンス更新に関する議論は今後少なくとも5年は行わないと示唆していた。

マスブランド部門は減収
買い手探しが難航か

業界筋によると、コティ売却に関する最大の障壁はマス向けブランドを扱うコンシューマー ビューティー部門の買い手を探せるかどうかにあるという。同社の25年2025年1〜3月期(第3四半期)の売上高は、前年同期比6%減の12億9910万ドル(約1870億円)で、コンシューマービューティー部門の売上高は同9%減の4億6970万ドル(約676億円)の減収だった。これは、マスビューティ市場全体の需要鈍化を反映している。別の情報筋は、コティがアジアでコンシューマー ビューティー部門の買い手を見つけることを希望していたが、アジア地域の景気減速と米国との関税摩擦の影響により、この可能性はますます低くなっているとの見方を示した。

さらに、コンシューマー ビューティ部門はいくつかの課題に直面している。マスブランド市場はD2Cブランドとの競争が激化しており、投資家はマスブランドをラグジュアリーブランドほど魅力的ではないとみている傾向がある。それでも、コンシューマー ビューティー部門がプライベートエクイティの関心対象になる可能性があると指摘する情報筋もいる。しかし、全ての関係者が独占禁止法上の問題をはじめとするさまざまな要因から、コティの事業全体を単一の企業に売却するのは不可能だと考えている。ある関係者は、「コンシューマー ビューティー部門の買い手が見つかれば、フレグランス事業(プレステージ部門)は明日でにも売却されるだろう」と述べた。

ウエラの保有株売却の計画進まず
スー・ナビCEO退任の噂も

コティはまた、保有するヘアケア大手ウエラカンパニー(WELLA COMPANY以下、ウエラ)の残りの株式の売却も試みている。投資会社IGFウェルス マネジメント(IGF WEALTH MANAGEMENT)への売却提案で合意寸前まで進んだものの、23年10月に最終的に破談となった。コティは25年までにウエラの株式を完全に売却すると計画していた。

一方、コティのナビCEOの任期に関する業界の憶測も高まっている。一部の情報筋は、同氏が今夏にも退任する可能性があると推測している。ナビCEOはロレアル(L’OREAL)に20年間在籍した後、ビーガンスキンケアブランド「オルヴェーダ(ORVEDA)」を設立。20年にピーター・ハーフ(Peter Harf)前CEOの後任としてコティのCEOに就任した。

売却の可能性が高まる理由
背景に株価の急落、提携失敗も

複数の要因が重なり、コティが売却される可能性が高まっている。まず、同社の株価は大幅に下落している。年初来、コティの株価は30.7%下落しており、9.9%上昇したロレアルや、2.4%下落したエスティ ローダー カンパニーズ(ESTTEE LAUDER COMPANIES)とは対照的だ。さらに、「グッチ」のライセンス問題も懸念材料だ。このライセンス契約の終了は、コティにとって大きな打撃となる可能性がある。

また、5月には第3四半期の売上収益が減収となる中、保有していたキム・カーダシアン(Kim Kardashian)のビューティブランド「スキンバイキム(SKKN BY KIM)」の少数株式20%を手放し、7110万ドル(約102億円)の損失を計上した。 コティは22年に2億ドル(約288億円)を投じてカーダシアンのコスメブランド「KKW ビューティ(KKW BEAUTY)」の株式20%を取得し、共同でスキンケアとカラーコスメのブランド「スキンバイキム」を立ち上げた。しかし、これらの取り組みは以前ほどの成功を収めていないようだ。その後、3月にカーダシアンは自身の補正下着とアパレルの会社であるスキムス(SKIMS)を通じてコティが保有する株式を買い戻し過半数株式を保有するに至った。

もう一つの要因は、カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)がプロデュースする「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」も期待通りに伸びていないといわれている点だ。コティは19年11月に、約6億ドル(約864億円)で同ブランドの過半数株式を取得していた。ただし、同ブランドは昨年、香水事業への参入で好調な成績を上げている。

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