超高級ブランドの勢いに陰りが見える中、その空白を中堅ラグジュアリーブランドが埋めつつある。
高級ブランドの代表格であるLVMHモエ・ヘネシー・ルイヴィトンの1-3月期(第1四半期)決算は市場予想下回った。同社を巡っては、傘下のディオールが製造原価約60ドルのバッグを2800ドルで販売しているとの批判も出ている。一方、タペストリー傘下の「コーチ」は、ディオールやシャネルのバッグに比べると手頃な495ドルのバッグ「タビー」が人気を集めている。
世界経済の減速を背景に、消費者の関心は価格に見合った品質や価値に向かいつつある。こうした傾向の下、中堅ラグジュアリーブランドは、超高級ブランドやファストファッションに比べて経済不安の影響を受けにくいことが浮き彫りとなっている。
調査会社ユーロモニター・インターナショナルの高級品部門責任者、フルール・ロバーツ氏は「現在、ある種の反発が起きている」と指摘。消費者は製造方法やコストと販売価格とのバランスについて疑問を持ち始めており、価格の裏にある真の価値を見極めようとしていると語った。
裕福な消費者がより手頃な価格帯へとシフトする中で、中堅ブランドの好調が鮮明だ。「ケイト・スペード」ブランドも展開するタペストリーは、直近の四半期決算がアナリスト予想を上回り、通期の業績見通しも上方修正した。
スポーツウェアブランドの「サロモン」や「アークテリクス」を傘下に持つアメアスポーツも通期の業績見通しを最近引き上げた。「マイケル・コース」を有するカプリ・ホールディングスや、ヒューゴ・ボスもアナリスト予想を上回る業績となっている。
ラルフローレンも勝ち組に入るだろう。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、メアリー・ロス・ギルバート氏によれば、同社は幅広い価格帯を提供し、クラシックなデザインで魅力を保ち続けている。1-3月の既存店売上高は前年同期比13%増と、アナリスト予想のほぼ2倍となった。
一方、エルメス・インターナショナルや、グッチの親会社ケリングなど大手高級ブランドは、直近の決算シーズンでLVMHと同様に業績が市場予想を下回り、投資家を失望させた。
高級ブランドとは対極に位置するファストファッションも苦戦を強いられている。BIのシニアアナリスト、チャールズ・アレン氏は「厳しい市場環境が続いている」と指摘。「ZARA」の値上げなどが消費者を遠ざけているとの見方を示した。
原題:Mid-Tier Luxury Brands Are Surviving the Fashion Downturn(抜粋)