ジョナサン・アンダーソン「ディオール」新アーティスティック・ディレクター DAVID SIMS / COURTESY OF DIOR ©︎FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
「ディオール（DIOR）」は6月2日、4月にメンズ・アーティスティック・ディレクターに任命したジョナサン・アンダーソン（Jonathan Anderson）がウィメンズも率いることを明らかにした。5月29日に退任が発表されたマリア・グラツィア・キウリ（Maria Grazia Chiuri）の後任。アンダーソンはメンズに加え、ウィメンズのオートクチュール、プレタポルテ、アクセサリー・コレクションを手掛けることになる。まずは6月27日に2026年春夏パリ・メンズ・ファッション・ウイークで発表するメンズ・コレクションでデビューを飾り、初のウィメンズ・コレクションは26年春夏パリ・ファッション・ウイーク中の10月に披露予定。初めて本格的に取り組むことになるオートクチュール・コレクションは、来年1月に発表する。
就任に際し、アンダーソンは「ウィメンズとメンズ両コレクションのクリエイティブ ディレクターとしてメゾン ディオールに加わることを大変光栄に思っている。私は常に、このメゾンの豊かな歴史、その深み、そして心を動かす力にインスパイアされてきた。伝説的なアトリエとともに、この素晴らしい物語の次の章を作り上げていくことを楽しみにしている。また長年にわたるデルフィーヌ・アルノー（Delphine Arnault）とベルナール・アルノー（Bernard Arnault）の信頼と信義に、心から感謝の意を表する」と述べた。
一方、デルフィーヌ・アルノー＝クリスチャン ディオール クチュール会長兼最高経営責任者（CEO）は「ジョナサン・アンダーソンが、メゾンのウィメンズとメンズのクリエイションをリードしていくことを大変喜ばしく思う。10年以上前にLVMHグループに加わって以来、彼のキャリアをとても興味深く見守ってきた。私は、ジョナサンがムッシュ・ディオールの素晴らしいストーリーと彼が創り出したコードにインスパイアされた、クリエイティブでモダンなビジョンを私たちのメゾンにもたらしてくれると確信している。彼は、私たちのチームと素晴らしいアトリエに支えられ、創造性に命を吹き込んでいくことだろう」とコメント。彼女の父でもあり、「ディオール」を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン（LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON）を率いるベルナール・アルノー会長兼CEOは「ジョナサンは、同世代で最もクリエイティブな才能の一人。彼の比類なきアーティスティックなシグネチャーは、メゾン ディオールの歴史における次の章を綴る上で、極めて重要な財産となるだろう」と期待を寄せた。
英国が生んだ才能豊かなスターデザイナー
アンダーソンは、1984年英国・北アイルランド生まれ。俳優を志して18歳で演劇を学ぶために渡米するが、そこで舞台衣装に興味を持ち、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション（London College of Fashion）でメンズウエアを専攻。2005年に卒業後、「プラダ（PRADA）」で働き、08年に自身の名を冠したブランド「ジェイ ダブリュー アンダーソン（JW ANDERSON）」 を設立した。当初はメンズのみだったが、10年にウィメンズ・コレクションもスタート。ロンドン・ファッション・ウイークでコレクションを発表する傍ら、「トップショップ（TOPSHOP）」とのコラボコレクションや「ヴェルサーチェ（VERSACE）」のセカンドライン「ヴェルサス ヴェルサーチェ（VERSUS VERSACE）」とのカプセルコレクションも制作した。当時から「シェアド・ワードローブ（男女で共有するワードローブ）」の考えをクリエイションに取り入れるなど、新たな価値観を提案し時代をけん引するスターデザイナーとしての頭角を表していた。
そして13年9月、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン（LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH）に株式の46％を売却し、29歳の若さで「ロエベ（LOEWE）」のクリエイティブ・ディレクターに就任。遊び心あふれる大胆なアイデアやクラフトとアートへの愛を生かし、レザーグッズで知られるスペインの小規模なブランドだった「ロエベ」をグローバルなラグジュアリーブランドへと飛躍させた。また、17年からは「ジェイ ダブリュー アンダーソン」名義で「ユニクロ（UNIQLO）」と継続的にコラボコレクションを発表。近年は、「チャレンジャーズ（CHALLENGERS）」や「クィア（QUEER）」といった映画の衣装デザインも手掛けている。