動物が絶滅する原因はさまざまだ。地球の気候が変化したせいで、生き抜くことができなくなったケースもある。進化の過程でより優れた新種が誕生し、古くから存在する種が生態学的な地位から蹴落とされてしまう場合もある。
人間のせいで絶滅する動物もいる。このカテゴリーについてはさまざまな側面があるが、現時点では、人類が動物種にとって最大の脅威となっていると言って、ほぼ間違いないだろう。人間が自らの安全を守ろうとした結果、特定の種を根絶させてしまったケースもある。
その一例を、第1次世界大戦前のロシアで見ることができる。同国では、森林を農地や開拓地として利用するため、軍に対し、森林地帯から捕食動物を一掃するよう命じられた。しかしそのせいで、カスピトラ(Caspian tiger)が絶滅してしまった。カスピトラはかつて、西アジアと中央アジアの森林地帯などを支配していた捕食動物だった。
人間の行動が間接的に作用して、動物種が絶滅に追い込まれたケースもある。例えば、太平洋に浮かぶグアム島では、オーストラリアやパプアニューギニアを原産とするヘビ「ミナミオオガシラ」が、貨物に紛れ込んで島に侵入したせいで、森林に生息していた固有の鳥類の多くが絶滅に追いやられた。
人間が原因となった絶滅種のなかでも最も痛ましいのは、ファッショントレンドのために狩猟・捕獲され、絶滅に至ったケースだろう。北米で生息していた3種の鳥は、19世紀から20世紀にかけて、まさにそうした憂き目に遭った。その元凶となったのが、冒頭の写真のような婦人帽子だ。以下では、彼らの絶滅についてもう少し説明しよう。
カロライナインコ
鮮やかな羽根が帽子飾りとして人気を博したため、絶滅に追い込まれた米国南東部を原産のカロライナインコ(DeAgostini/Getty Images)
カロライナインコは色鮮やかな鳥で、かつて米国南東部に生息していた。悲劇的な末路をたどった原因は、人間による生息地破壊と乱獲だった。
目の覚めるような緑と黄色の羽根がもてはやされた結果、19世紀末から20世紀はじめにかけて、ファッション業界の需要が増して乱獲された。カロライナインコの羽根は装飾用として大きな需要があり、とりわけ婦人帽子の飾りとして人気を集めた。
エキゾチックな羽根飾りの需要急増に伴い、カロライナインコは狩猟や捕獲の対象となり、数が激減した。それと同時に、大規模な森林伐採と農地の拡張で、自然の生息環境が減り、繁殖できる場所も奪われた。
1900年代はじめには個体数が大幅に減少し、保護活動による努力もむなしく、1904年に野生では絶滅した。その後、オハイオ州のシンシナティ動物園で飼育されていた最後の1羽が1918年に死に、完全に絶滅した。
リョコウバト
リョコウバト(Rawpixel.com / Shutterstock)
リョコウバトは昔、北米で最も生息数の多い鳥類だった。数が激減した主な原因は、狩猟と捕獲、経済的利用だ。リョコウバトは、容赦なく狩猟・捕獲された。主な目的は食用で、大量販売されていた。羽根も、羽毛布団の材料などとして需要があった。
商業目的で大規模な狩猟が行われ、組織的なハト狩りもあった。かつては無数のリョコウバトが大きな群れを形成していたが、乱獲や生息地の破壊、移動パターンの混乱によって全滅に向かった。数が急激に減り始めたのは1800年代半ばだ。
もともとは、群れで空が覆われ、あたりが暗くなるほどたくさんいたにもかかわらず、狩猟によって絶滅に追い込まれた。最後の1羽「マーサ」は、オハイオ州のシンシナティ動物園(最後のカロライナインコを飼育していた同じ動物園)で飼育されていたが、1914年に死亡し、リョコウバトという種はこの世から消えてしまった。
オオウミガラス
オオウミガラス(Rawpixel.com / Shutterstock)
飛べない海鳥のオオウミガラスは以前、北大西洋の島々に生息していたが、狩猟によってゆっくりと悲劇的な末路をたどった。絶滅へと追いやられたのは、羽根や皮革、卵に需要があったからだ。
オオウミガラスは、ダウンジャケットやファッションのための羽毛や羽根をほしがるハンターにとって価値ある品だった。とりわけ、高価な帽子や衣類用として重宝された。オオウミガラスはさらに、その肉と卵のためにも捕獲され、数がいっそう減ることとなった。
また、オオウミガラスの営巣地だった一帯に人間が定住し始めると、生息地はますます荒らされた。こうした過酷な状態は18世紀と19世紀を通じて続き、19世紀半ばには、野生のオオウミガラスを見かけることはなくなっていた。1844年、アイスランド沖の岩礁で最後のつがいが殺され、絶滅に至った。
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サイエンス
1844年に最後の1羽が殺された飛べない鳥「オオウミガラス」の物語
(forbes.com 原文)