藤井 風、Official髭男dism、Omoinotake、日食なつこ……『EIGHT-JAM』特集前に考える、“ピアノボーカル”の存在感 - Real Sound|リアルサウンド - Moe Zine

 5月25日放送の音楽番組『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)は、ピアノボーカル特集。Official髭男dism、King Gnu、藤井 風などを筆頭に、近年勢いを増している“ピアノボーカル”に焦点を当て、そのテクニックを解説していくという。そこで本稿では放送に先駆け、ピアノボーカルのアーティストの代表曲、彼らの活動を振り返りながら、J-POPシーンにおけるその存在感を紐解いていきたい。

Taylor Swift – Look What You Made Me Do Cover

 まずは藤井 風。幼少期よりクラシックピアノを始めた彼は、12歳という若さでYouTubeへ演奏動画の投稿を開始。J-POP、クラシック、洋楽とさまざまな楽曲のピアノ演奏、2017年公開の「Look What You Made Me Do」(テイラー・スウィフト)のカバー動画以降は弾き語りも披露しており、最初の投稿から10年以上の時が経った今も、彼の歴史を辿ることができる。

 メジャーデビュー以降も、藤井はSNSを通したピアノ弾き語りの生配信ライブを行っているほか、2021年に神奈川・日産スタジアムで行われた無観客生配信ライブ『Fujii Kaze “Free” Live 2021』、2023~2024年の海外公演『Fujii Kaze and the piano Asia Tour 2023』、『Fujii Kaze and the piano U.S. Tour』など、“本人とピアノ一台のみ”のライブも多数開催。活動を追っていると、ピアノとボーカルというシンプルな構成で音楽を届けることこそが“藤井 風”というアーティストの原点であり、彼がそれを大切にしていることが伝わってくるのだ。

Fujii Kaze “Free” Live 2021 at NISSAN stadium

 藤井の弾き語りをあらためて振り返ると、たとえば『Fujii Kaze “Free” Live 2021』で披露された「きらり」は、跳ねるように疾走するピアノに軽やかなボーカルが重なることで、強靭なグルーヴが生まれている。時にはスタッカート気味に、時には美しいオブリガートを添えて、変化をつけながら楽曲を演奏する藤井。アップテンポな曲こそ弾き語るのは難しいはずだが、さらりとこなしているように見えるのは、彼が幼少期から音楽に触れることで鍛え上げられたリズム感があってこそだろう。一方、原曲でもメロディをなぞるピアノの音色が印象的な「死ぬのがいいわ」では、低めの音を重々しく鳴らして荘厳さを演出。藤井の弾き語りは、ピアノが単なる伴奏にとどまらず、歌と一体となっていることを強く感じる。

Official髭男dism – 115万キロのフィルム[Official Live Video]

 近年は、ピアノボーカルのバンドも存在感を放っている。ウェディングソングとしても多くの人に愛されているOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」は、藤原聡(Vo/Pf)のピアノの弾き語りで始まるのが印象的。全体を通してピアノの柔らかな音色がサウンドの中心にあり、大切な人との日常や未来を描いた楽曲を彩っている。

Official髭男dism – I LOVE…[Official Video]

 ほかにも、「I LOVE…」はホーンやシンセを華やかに取り入れながらも、1番サビやラストサビ前、アウトロはピアノの音色を際立たせることで、誰かを想う時の複雑な心情が表されているように思う。音域が広く、抑揚もつけやすいピアノは幅広い表現が可能で、サウンドを豊かなものにしてくれるのだ。

King Gnu – 白日 (Live Tour 2021 AW Tour Final at YOYOGI NATIONAL STADIUM FIRST GYMNASIUM)

 ピアノを含んだ編成のツインボーカルバンドと言えば、King Gnuが挙げられるだろう。彼らの名を一躍世間に知らしめた「白日」は井口理(Vo/Key)のボーカルとピアノの音色で幕を開ける曲で、その儚い世界観に冒頭から惹きこまれる。ほかにも、「ねっこ」や「カメレオン」など、King Gnuのバラード曲においてピアノは特に存在感を増しており、井口のウィスパーな歌声も相まってドラマチックな印象を与えている。

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