
“予期せぬ妊娠”をきっかけに孤立する女性たち 戸惑いと不安…家を飛び出した18歳女性から届いたSOS 全国からの相談は3000件超え 北海道当別町
多くの祝福で迎えられる、命の誕生がある一方で妊娠をきっかけに、周囲から孤立してしまう女性たちがいます。北海道当別町にある民間団体が取り組む、母子支援の現場を取材しました。
◇《”予期せぬ妊娠”で孤立…全国から相談3,000件超え》
思いがけない妊娠に直面し、戸惑いのなか、出産という現実に向き合う女性たちがいます。北海道当別町にある民間団体『こどもSOSほっかいどう』。
代表の坂本志麻さん(50)は、小さな命を宿すも、頼る相手を持たず、周囲から孤立する女性たちを支援しています。坂本さんによる母子支援の活動は、すでに25年になります。
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん(50)
「非通知電話で夜中で、もう陣痛始まって、電話を切ったら、もう連絡が取れないみたいな女性もいますし…。そういう段階で、初めてファーストコンタクトが来るかたもいらっしゃいます」
3年前、親が匿名のまま、育てられない子どもを預け入れる、いわゆる“赤ちゃんポスト”も設置。運営をめぐって、さまざまな議論がある中、3,000件を超える相談が、全国から寄せられています。
今年3月のことでした。すがるような思いで、道外から坂本さんを訪ねて来た女性がいました。
◇《高校卒業が間近に迫る中で”妊娠”判明…大きく揺れる心》
かえでさん(18歳・仮名)
「堕ろすぐらいだったら、子どもを殺して何事もなかったかのように生きていくぐらいなら、(おなかの子と)一緒に死のうと思って」
西日本のあるマチに暮らす、かえでさん18歳。高校の卒業式を間近に控えた今年2月。思いがけない妊娠が分かりました。
かえでさん(18歳・仮名)
「“堕ろすなら堕ろすでいいし”みたいな感じで、体を傷つけるのはこっちなのに…。“任せる”って、すべての決定権を投げ出されて、2人の子どもなのに…」
かえでさん自身は、避妊にも気をつけていたと話します。就職も決まっていた中で妊娠の判明…。途方に暮れる中、交際相手から告げられた不誠実な言葉は、かえでさんを深く傷つけました。
将来への希望を見出せず、相手との関係を断つと決めて、妊娠中絶も考えました。しかし、病院での診察を受け、大きく心を揺らすことになります。
かえでさん(18歳・仮名)
「エコー写真で胎嚢を見て、妊娠検査薬の線じゃなくて、赤ちゃんの姿を本当に見て、それで堕ろしたくないなって思って」「私の母は母で、シングルマザーの大変さが分かってるから“結婚しなきゃ手伝わない、結婚はしないなら堕せ”って」
シングルマザーで、子育てしてきた母親にとって、娘に苦労をさせたくない…そんな思いがあったのかもしれません。
ただ、わずかな所持金で、実家を飛び出したかえでさん(18)。行く当てもないまま、東京で数日間、野宿で過ごしました。
◇《3年前に”赤ちゃんポスト”開設…運営めぐる行政との対立も》
そんな中、偶然、SNSで見つけたのが坂本さんの支援活動でした。
かえでさん(18歳・仮名)
「SNSでニュースの切り抜きを見て、そこで存在を知って。電話かけた時に優しく話を聞いてくれて、そこで泣いちゃって…」
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん
「まずは無事でよかったなって。よく連絡くれたもんね」
かえでさんは、残り少ない所持金で夜行バスなどを乗り継ぎ、遠く離れた北海道へ向かうことを決めました。バッグには、東京で買った、安産祈願のお守りが結ばれていました。
妊娠や出産で孤立する女性たちを支援している、坂本志麻さん。北海道当別町にある自宅を拠点に活動し、3年前“赤ちゃんポスト”も設置しました。
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん
「人によっては、友だちにも言えないし、周囲にも言えない人もいます。実際に、誰も言わずに、独りで産んだ女性が連絡下さっています」
まだ“赤ちゃんポスト”が使われたことはありませんが、運用を巡って、行政との対立は続いています。そうした中、6人の赤ちゃんを、母親と対面した上で、受け入れました。
◇《小さな命を宿して北海道へ…孤立妊婦からのSOS》
かえでさん(18歳・仮名)
「養子に出せばいいじゃん…里子に出せばいいじゃん…って思えるほど(おなかの子どもに)無責任な判断はしたくなくて。できれば、自分の手で育てたいけれど」
実家を飛び出し、坂本さんを頼ってきたかえでさん。妊娠10週目に入っていました。
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん
「連絡くれてありがとうって思いました。ちゃんと、おなかの子どもを守ってくれて、守ってくれてたんだから」
坂本さんは、自身が受け入れた子どもらとの触れ合いを通じて、伝えたい思いがありました。
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん
「まずは素を見せてあげたいなと思いまして。正論とか表面的な話だけではなくて、子育てって苦労だけじゃなくて、喜びや楽しみがあるんだよって」
坂本さんは、かえでさんの母親とも話し、おなかの子の将来を考え、2人で話し合ってほしいと伝えました。
北海道当別町で、坂本さんのもとで、3日間を過ごしたかえでさん18歳。実家に戻る日、不安な表情が、まだ消えないかえでさんに、坂本さんは、励ますように言葉をかけていました。
こどもSOSほっかいどう 代表・坂本志麻さん
「大変そうに見えた?子どもと過ごすの?」
かえでさん(18歳・仮名)
「この人数だと大変そうに見えた」
独りで妊娠の悩みを抱え、たどり着いた北海道。かえでさんの心境に変化がありました。
かえでさん(18歳・仮名)
「自分の中でなかった選択肢を出してくれて、今後、母と改めて話すときに新しい選択肢ができたことによって、子どもと一緒に暮らす道が見えました」
彼女のバッグに結ばれた、安産祈願のお守り―。小さな命を守ろうという決意の現れです。
◇《新生児の遺棄事件がなくならない現実…孤立妊婦をどう支援するのか?》
世永聖奈キャスター)
この民間団体が3年前に設置した『赤ちゃんポスト』については、いまも、医療機関と連携していない点などから、行政側は、運用の中止を強く求めています。
堀啓知キャスター)
ただ、取材した18歳の女性のケースのように、思いがけない妊娠で孤立する女性にとっての“拠り所”になっている実態もあります。
世永聖奈キャスター)
予期しない妊娠や出産に思い悩む女性を支援する『こどもSOSほっかいどう』の代表・坂本志麻さんは「困ったときは匿名や非通知でもいいので、支援する病院や団体に連絡してほしい」と呼びかけています。
堀啓知キャスター)
新生児の遺棄事件がなくならない現状のなか、坂本さんが代表を務める団体には、この3年間で全国から3,000件を超える相談が寄せられているとのことです。
妊娠をきっかけに、孤立する女性たちを、単に、個人の問題と片付けるのではなく、小さな命を守るために何ができるのか?社会全体で目を向けるべき課題ではないでしょうか。特集でした。
2025年04月26日(土) 9時00分 更新
#北海道 #ニュース #HBC
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