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【短編ミステリー】白い闇/松本清張



【短編ミステリー】白い闇/松本清張

[音楽] 白い 闇松本 成長 1のぶ子の夫の誠一は昭和30バ年6月 仕事で北海道に出張すると家を出たまま 指導し た誠一は正規単勝をしていたそれで商売の 要件で度々東北の常磐地方や北海道に行く 大体の予定を立てていくが用事次第では 長引くことがあっ たそれは主従のことだからのぶ子は慣れて い たその時も予定より1週間ばかり過ぎた頃 は平気であっ た夫は間では決して伝法やはがきなどよさ ない人であったいつかのぶ子がその不満を 言う といいじゃないか俺はで歩いているんだ もの予定があってないようなものだ いちいちお前に知らしちゃいられないよ封 に帰ってくるのも楽しみなもの だろう夫はそういう言い方をしたのぶ子は そんなことってないわやっぱりちゃんと 知らせてくださった方が安心よと2度は 逆らってみたが夫は取り合わなかっ た実際夫は予報なしに帰ってきた夜から 23日などはのぶ子を極度に愛したそれが 夫の言葉を裏付けたようなものだった信子 の心がその実証を受け取ったと言っても いいこうして彼女は夫の出張の仕方に慣れ てしまっ たしかしいつも遅れても大抵45日であっ た7日以上という例はなかっ た誠一は晩に帰るか朝早くかだった それは列車の都合なのだ信はそれから夜と 朝玄関に近づいてくる夫の勢いの良い靴音 を数じまっ た上野に着く東北からの列車の時刻を考え ながら信子が不安に耐えられなくなって 春吉のところへ相談に行ったのは夫が変り そうな日より10日も経っていた は誠一のいである商事会社に務めてい た誠一はそやな性格なのに春吉はうきな 性質であっ たいなのに体つきまで 違う正一は18巻もある体格だが春吉は 痩せて13巻ちょっとしかなかっ たまるで女みたいだ ねそれを聞いて誠が笑ったこがある彼は2 つ下のこのいを日頃から多少小にしていた と言って決して悪意を持っているわけでは ないいわば春吉の従順さを愛していながら いくらか軽蔑していた春吉の方は聖地兄貴 のように見ているのか対象遠慮しそうにし てい たけめというほどではないが2人の性格の のだった誠一は酒を飲むが春吉は全く飲め なかっ た あいつ映画や小説が好きなんだっ てそれも女の子のようだと誠一はいこを 笑いたそうだった聖一は本も映画も嫌いで あっ た信子は夫を愛していたが夫の部屋にこれ という本が一冊もないことを寂しく思う ことが度々あった に満足してもそこだけが密着がなく空気の ように隙を開けてい た春吉がどんな小説を読むのかのぶ子は 分からなかったがそれなりに彼女は彼が 嫌いではなかっ た夫は無教養ではなかったが繊細さが まるで存在しなかった弱いが春吉には ともかく夫にないものがあっ た信子はそれに盆やりした行為を持ってい た俊吉のやつお前が好きなのじゃないか なある夜俊吉が遊びに来て帰った後夫は先 によってそんなことを言っ たバカ言ってるのねそんなことがあるもん ですかのぶ子は笑っていたが心ではかなり 慌てたそうかなどうもそんな気がするな 夫はからかうように言っ たのぶ子が老害したのは彼女にその 心当たりがあったからだ俊吉は確かに のぶ子の行を持って いるどうと言って俊吉にその表現がある わけではなかったしかしそれは女の感の ようなものでわかるの だ娘の頃何人かの男から受け取った同じ ような経験で 誠一 が双方であり ながらどこにそんな細かい目を持っていた かのぶ子はちょっとその時驚い た男にも勘ぬようなものがあるのだろうか いやよそんなこと言っ ちゃ信子は聖一の胸にぶつかっ た夫は信子を受け止めて声あげて笑った いこなども滋賀にもかけない笑いであっ たのぶ子は誠一と3年前に結婚して初めて 春吉を知ったのだった彼はくし目の立った 神をし1本でも額に乱れるとしなやかな指 で書き上げた無口で話せば小さい声を出し た正一にからかわれると言い返すことが できずにもの静かに笑ってばかりいた そんな時信子は春吉に登場し たしかし信子が春吉に行為を持っていたと いうのは愛情ではないそれは彼女に 生きれる夫の方がずっと好きであったただ この義のいが持っている夫にない部分に 微傷を感じてい たが春吉ののぶ子への柔らかい空気のよう な感情が 彼女に薄らのようにあく反射してその微少 を引き出したとは言えそうだっ たそのことは彼女にも意識のどこかに迷っ てい た聖地が予定よりも東海以上も帰ってこ ないとなると信はこれを春吉に相談したい と思っ た彼より他に打ち明けるものはいないのだ がそれが理由だがそれ以上の気持ちもあっ たつまり大げさに言えば彼に救いを求め たかっ たのぶ子は俊吉の会社に電話をかけ た に俊吉はすぐに電話に出 たのぶ子さんですかこないだどうも1ヶ月 も前に俊吉を遊びに来たその例を彼は言っ たしさんちょっと心配なことがあるのよ 店のものをはかりわざと外に出て公衆電話 を使ったのだがそれでものぶ子は相口を手 で囲って低い声で言っ た心配なこと何ですか俊吉の声が少し 変わっ た誠一が北海道に出張してもう178日も 帰らないのよいつま1週間ばかりで帰って くるのだ けど何も言ってこないのですか いつも出たっきりよでも大抵予定より遅れ ても34日ぐらいで帰ってくるの東海場 ってことはなかった わ俊吉は黙った信子は電話が聞こえなく なったのかと思ってもしもしもしと言った 後で考えて春吉のこの数秒の沈黙に意味が あったので あるもう少し待ってみたらどうですですか 俊吉がやっと言った え信子が羽の返事をすると北海道や福島県 の炭鉱に電報を打ってみましたかと彼は 聞いたいいえそれはまだですがそれじゃあ 問い合わせの電報を売ったらいいと思い ますその返事を聞かせて くださいそれで明日の晩も帰ってこなかっ たらがオタクに行きますまあ心配すること はないでしょう今晩あたりひょっこり帰っ てくるかも分かりません よ俊吉は力づけるような声で言った信子は 電話を切るとすぐに俊助の助言に従って 心当たりの炭鉱会社に伝法を打っ たなるほどこういう処置もあるのだ春吉に もっと早く聞けばよかったと思っ たしかし56前のの文を書いていると心細 さが胸に迫っ たその晩遅くまでのぶ子は待ったがやはり 聖地は帰ってこなかっ た連邦の返事は悪るに順々に来 た東北地方の4つの炭鉱からは成知は来た が2週間前に帰ったことを知らせたが 北海道の2つの会社からはが今回1度も来 なかったこととことを答えてき たのぶ子は不安でじっとしていられなかっ た悪いことばかりが想像された新聞では 外交員がよそで金を奪われて殺害された 記事がよく出ている時だっ た想像はその方に不吉に結びつい たもう1日帰ってこなかったらと春吉は 言ったがのぶ子には辛抱ができなかった 彼女は雨の中を赤い公衆電話までかけ た電話のおいてある店先ののき から甘だれがポタポタ落ちて肩にかかるの だが余計に清をめらし たまだ帰らないんですかと俊吉の声は初め から傷かわしそうであっ たまだですわ連邦の返事は来たわこうなる と信俊吉が頼りだっ たどうでし た東北の会社の方は2週間前に帰ったんで すって北海道の方はまだ1度も来ないと 返事してきた わ誠一さんはいつも東北の会社を回って 北海道に行くんですかそういつもはそう です の春吉はここでも黙った56秒ぐらいな間 があったもしもしああと彼は声を出した それではねとにかく今晩そちらに行ってみ ます行ってから話し ますそうすみませんじゃあお待ちしてい ます電話を切ってから信子は不に不審に気 がついた俊吉は行ってから話しますと言っ た変な言い方であった言ってから話すとは 何だろうそういえば俊吉の声には妙に決心 めいた響きがあっ た俊吉が来たのは暮れてからだった会社の 帰りらしく折りカバを下げてい たよく振りますねこれは店のものの手前 そんなことを言いながら奥に通った信子は 店から離れた奥の座敷に春吉のために食事 を用意していた彼はその前に座るなりまだ 何も連絡はありませんかと言ったやはり髪 を綺麗に分け真っ白いハカで額の汗を 押さえてい たありませんわどうしたのでしょう心配だ わ信子は向い側に座っていった金はどの くらい持って出たのです彼もやっぱり同じ ことを思っているいるのだろうと思うと のぶは同気が打ち始めたそうねしまは持っ て出たと思うわ そう俊吉はそれっきり黙った両肘を卓の上 に乗せ指を組み合わせて考え込んでしまっ た彼は顔を伏せ姿勢を固定したまま少しも 動かなかったその様子を見ると信子はまた 不安になった 俊吉が不吉な嫌なことを考えているように 思えてならなかっ たねえどうしたの でしょうのぶ子が我慢ができなくなって いった時俊吉がその言葉に引きずられた ように死体をあげ た顔をあげたのぶ子 さんと彼 はいい両膝を揃えて不に頭を下げた彼女は びっくりし たすまないことをしました今まであなたに 隠していまし た呆れた目をしているのぶ子に春吉は白場 を始めたそれが夫の正位に隠れた女がいる という事実だっ た 3信子は春吉の言うことが初めよくわから なかった夫にに女があると言ってもすぐ 時間が来なかっ た1年ぐらい前かららしいのです相手は 青森の女 ですまあの上級だそうですがねそら誠一 さんは北海道に渡るでしょう連絡戦の 待ち合わせ時間か何かでそこに飲みに行っ たのが女と会う機会だったらしいの です瞬吉の話を聞いているうちにのぶ子に もようやく様子が飲み込めてきた彼女は 自分でも顔色が白くなっていくのを覚え た信じられない わのぶ子は唇を震わしていったそう でしょう何にもそんな心当たりはありませ んでした かちっと ものぶ子は半なきになっていた何もないの だ彼女は瞬間にのあらゆる記憶を探った それは夫婦だけにしか知られない微細な 部分まで走っていたどこにも発見はなかっ たが急に発したそれが彼女を脅かした夫は 必ずと言っていほど予定よりにを送らせて 帰ってきた3日か4日いずれにいつもずれ ていたそれに以前からではあったが行った 先から決して頼りを出さない人であった 彼女は体が震えてき た僕が悪かったの です俊吉は身を縮めるようにしていった 誠一さんから口止めされていたのです悪い 悪いと思いながらつい言えなかっ たじゃああなたは早くから知っていたの ね実はいたというだけじゃない女から誠一 さん宛ての手紙が僕のとに来るのです つまり僕が誠一さんに頼まれて受け取り人 になっていまし たもちろんあて名は僕の同居人としての彼 の名から中身を見たことはありません電話 で知らせると誠一さんが取りに来ることに なっていまし た信子は俊吉に目を据えたああ も凶暴者だったの だ許してください僕が悪かったのです誠一 さんが戻らぬというあなたの電話を聞いた 時はっと思い出しまし たああそれで俊吉は電話口でちょっと黙っ ていた時があったの だのぶ子の目にすめられたように瞬きちう なれ た正さんに頼まれと嫌とは言えなかったの です何度もあなたに告白しようと思ったが だめでし たそれは分かるのだ春吉の性格からすれば 正一に抵抗することができなかったので あろう誠一にはそんな推しの強いところが あった春吉の方は誠一にやゆされても静か に苦笑しているだけの男で ある信子は夫に女がいるという現実が ようやく胸をゆすってきた世間話としては よく耳にすることだが遠くに効いていた その嵐が我が身を包もうとは思わなかった 彼女は暴風に息が詰まって倒れそうな自分 を意識し た泣いてはいけないここで泣いては俊吉に 恥ずかしいと信子は必死にこらえた春吉は 熱病にかかったように赤くなっている のぶ子のを見ないようにしておずおずと鞄 を下げて開けて1通の手紙を取り出して卓 の上に置い たこれですと彼は細い声で言った女から来 た最後の手紙 です誠一さんが出かけるのと入れ違いに来 たものですからこれだけが残りまし た信子は怖いものを覗くように手に取らず にそれを見た 薄い色のついた小型の封筒で春吉の住所の 横に夫の名が書いてあった下手くそ血 だっったし色のついた封筒も薄なかっ た辛いでしょうが中を読んでくださいと 俊吉は低く言っ た誠一さんが帰らないのと関係があるかも わからないのです僕は今度のことはどうも この女に関わりがあるような気がするの です が片をされるように信子は初めてそれに手 を触れた青森局のスタンプの字が読めた 彼女にいしい遠い距離感が切実に来 た震えそうな指で中の1枚の紙を取り出し た安でな便戦で地もまずく誤字があったが 文章はそれほどひどくはなかった こちらへおいでになるのが近いそうですが 1日も早くいらっしゃるのを楽しみに待っ ています是非相談したいことがあるの です前々からおっしゃっていたことは嘘で はないでしょうね今になって捨てたら一生 恨みますよあなたと一緒になることで胸が いっぱいですもうたまらないのです何もか も捨ててください 私は捨て身になっています奥さんは かわいそうですがこうなれば仕方があり ません世間から悪口言われても我慢します 私が働いてあなたを養い ますそれが辛抱できないなら一緒に死んで くださいあなたとなら喜んで死にます私に は他に希望がないのですからつこ のぶはぼんやりした恐ろしい文句だっ たあまりのいふ に実感までの距離に真空があった封筒の裏 には青森市ババ町サロン不要ないたどろ 常子と記してあったのぶ子はその文字が目 につくと不にその女がこの家の中に入って きたように思えたその顔まで浮かんだ 俊吉もそっと手紙を取って読んだ彼は のぶ子を恐れるように黙ってい たしさん誠一はこの女の人のとろにいるの でしょう か声が自分のものと変わって耳に聞こえ た俊吉は頭を抱えて何も言えないでい た私青森に行く わ人間にはそんな心理があるのか思わず口 からほとばしり出た言葉でその決心になっ た俊吉が苦しそうな顔をあげたのぶ子が 思いきり涙を流して泣き崩れるのは彼が 逃げるように帰った後であっ た 4のぶ子は翌日の夕方に列車で青森に立っ た列車の中では一睡もすることができ なかったこんな思いで一屋の旅を1人で 続けるとは なんという不幸で あろう虫厚いので窓は開けられていた窓の 外には何も見えぬ夜が耐えず速度を持って 流れてい た闇の底東北の光量たる光景が間のように かけているように思われ た暗い風が冬のように寒かった列車は一の ない駅に時々止まっ た中には名前だけ知って名があっ た遠いところへ来た心細さで息が苦しく なっ た前の座席の若い夫婦がのぶ子に東北弁で どこまで行くかと聞いたその夫婦 は寄りあって健康そうに眠っ た夜が開けて間もなく着いた駅に2人は 降りた駅名を見ると浅虫であったホムを 大股で歩いて2人の姿をのぶ子は後まで 忘れることはできなかっ た青森は寂しい街であった陰鬱な思い空が 屋根と道路の上に詰まってい た信子はババ調を聞きサロン不要を尋ねて いったそこは酒の喫茶店などが多い一角で あっ た朝早いのでどの店も通しめていた サロン不要は構えは大きいがつんだ姿で 眠ってい たのぶ子は目に収めて去っ た店は3時頃でなければあかぬであろう それは覚悟だったから信子は青森の町に さい出た空虚な見物人であった何を見ても 無職にしか映らなかっ たただ港に来た時関連絡線の黄色い煙が 煙突が彼女に初めて色らしいものを転じた 夫はこの船に乗って本土と北海道を往復し ていたのだそう思うと懐かしかった彼女は 2時間近くも船を眺めていた海には半島の 低い山がはうように突き出て見え たそれから3時が来るまでの56時間信子 は見知らない町 の行者であっ たしかし町を歩く人群れの中にふと夫に 会いそうな気がして胸が鳴ったりし たそんなことを思う自分が哀れであっ た腕時計が3過ぎた頃信子は朝来てみた 場所に戻っ たサロン不要はドアを開けていた信子は その前で足がすんだ同機だけが高く打って いるたどろつ子と女に対決するのが耐え られない気がしたああ春吉を連れてくれば よかったなぜ彼に頼まなかったのであろう 公開が波のように起きたその店の前を67 ども服して信子は目を積って突進するよう な気持ちで入り口を進ん だその時の印出な液に下されたような記憶 をはいつまでも忘れることができない たどろ常子は小太りの女であった目の縁が 黒ずみ小さなシが寄っていた唇は赤い赤い がのぶ子よりは確かに2つか3つと上に 見えたたどろ常子の方が信子より敵を荒に むき出し たいつも主人がお世話になってい ます信子が言うと と奥さん皮肉をおっしゃりたいのですかと 常子は顔を歪めていっ た誠一さんは私の方を愛しているのですよ あの人から奥さんのことを色々伺ってい ます奥さんはあの人をそれほど愛してい ないそうじゃありませんかあの人は私で なければならないの です信子は転したこの女からそんなことを 言われる通りはなかった自分が誠一を愛し ていないという独断をこの女はどうして 作り出しているのかあの人あの人と赤い唇 からまだなく出るのがたまらなかっ たばくれるかもしれないとあの手紙を用意 して持ってきたのだがそれを出す必要は 少しもなかった 私の気持ちも誠治さんに全部言っているの ですもう死んでもいいぐらいですあの人も そう言っています奥さん私がここまで来る のに随分苦しみましたけれどももう決心を つけまし たここですみませんと奥さんに謝っても 許してもらえないでしょうし私もそんな そらしことはしたくありませんもし申し訳 ないのですが奥さんどうかあの人のことは 諦めて ください彼女は宣言するように言った信子 は目の先が暗くなった相手の派手な色の ドレスの裾がぼやけて遠のいて見え た主人はどこにいるのでしょう か信子が涙を出して言う と存じません今私のところに来ていない ことは確かです と常子は薄い笑いをたわしながら言っ た本当を言ってくださいちょっとでいい から主人に合わせて くださいそれを聞くと田所つ子は顎そらし 声を出して笑っ た奥さは私を疑っているのですねアバル 東京から探しにいらして無理もないこと ですが本当に知らないのですよ でも疑われても仕方がありません わいいえあなたはご存知のはずですそこ までおっしゃったんですものお願いです から教えて くださいのぶ子の声は越の上を滑った常子 はそれを冷たく見据え たいい加減にしてください奥 さん彼女は落ち着いて突き放し たでたが何かと思って見ていますわこれ 以上疑いなら私のアパートでもなんでもや 探ししてください何度言ってもお分かりに ならないのですからそうしていただくより 仕方がありません ね 5のぶ子は病人のようになって東京に帰っ た体に重心がなかった意識が鈍り思考力が 遠いてたそれでも1番に俊吉のところへ 電話したいやあ帰りましたか俊吉の声は 咳き込んでいたどうでした結果 は今日来てくださいなお話します わのぶはそれで電話を切ったが俊吉の声を 聞いたので少しは元気が出 た夕方早く俊吉は急いできてくれたのぶ子 は俊吉の顔を見ると急に心が緩んで いきなり泣きだしてしまっ たどうしたんですダメでしたか俊吉は しょんぼりと言ったのぶは早く泣き山でば と思いながら自生ができなかったむせび声 が止めどもなく喉からこみ上げる た俊吉はその間黙り続けていたすみません こんなに取り乱してのぶは涙を吹いて顔を あげ た目がしびれていた ひえ俊吉は眩しそうに目を伏せ た向こうの女の人に会ってきました わのぶ子はやっとどうにか話し出した半分 は自然に俊吉に訴える気持ちになっていた 話が終わると俊吉は考えるように腕を組ん でいたがどうもその女は嘘をついています ねと言った やっぱりそうでしょうか私もそんな気がし ます がのぶ子は赤くなった目で春吉を見つめた 誠一さんはその女のところにいますね 間違いないと思います一層あなたが女の アパートに行けばよかったの にそこまでは決心がつきませんでしたわ 信子は俯いていったそうだそうすれば よかった たどろつ子は隠しているから強制を張った のであろう自分が弱かったあの時もっと 捨て身に出て女のアパートに行けば夫に会 たかもしれない少なくともその痕跡は 見つけたに違いなかっ た彼女は自分の強打に鞭を当てたくなっ た私あの時しさんにご一緒していただけれ ばよかったと公開しましたわえというよう に俊吉は目をあげたその目には思いなしか ある光が転じていたのぶはそれを敏感に 受け取って少し老前し た私だけではダメなのやっぱり男の方がい ないとわざわざ理由をはっきりするように 言っ たそいじゃあ僕が改めて青森に行ってみ ましょうか俊吉は込み勢い込むように言っ たえのぶ子は目を見張った本当ですの しさん1つの巧妙をのぶ子は感じ た自分はできなかったが春吉は男である 成功するかもしれなかったいやしそだった 彼女は春吉に連れられて照れくそうに帰っ てくるの顔が瞬間人目の前に見え たお願いしますわ是非お願いします わそう言ってくださるのどんなに ありがたいか分かりませんの よのぶ子は手を合わせんばかりだった いやあいこですからねしよがありませんよ こんな 時俊吉は長い指で髪をかき上げ照れたよう にそういてたったその後ろ姿を家の前まで 見送って彼の全量さをのぶ子はしみじみ 感じ たしかしその結果は3日経ってわかった 俊吉は元気のない姿で信子のとろへやって きた信子はその格好を見た時すでに失望を 知っ たやっぱりダメでしたたどろ常子というの は大変な女です ね俊吉は然と言った とても僕の手には合いません よ聖地さんとの中は実にはっきり肯定する のですからねそれもこちらに口を出させ ないぐらい偉い勢いで1人でのけを喋るん です女もはつましなるもんですか ね彼はすっかり簡単していたのぶ子は たどろつの太った体と熊のかかった目と 赤い唇から ほとばしるほとばしり出る早口を思い出し た春吉では無理だった彼女には常子の前に うろうろしている春吉の姿が目に見える ようであったすぐにも彼が夫を連れて帰る ことを空想した甘さが思い知らされ たともかく女のアパートまでは見に行き ましたよ俊吉は話を続け た六条と台所のある汚い部屋ですさあ一目 で分かるからこれで納得したろうと女はる んですなるほど誠一さはいませんでした 洋服も男物の着物もかかっていません まさか押入れまで開けるわけにはいかない から仕方なく引き下がりまし た信子は絶望してそれを聞いた春吉の乳な 性格からそこまでしてくれた努力は分から なかよくわかっ たでは誠一はあの女の人のところにはい ないいないの かしらしさんどう 思うじっと俊吉は彼女を眺め た僕の気のせいでは誠一さんはあの女と 一緒にいるように思いますねあのアパート にいなくてもどこか部屋を借りているん じゃないのか なそう思う のぶは狭い薄暗い部屋に女と一緒に ゴロゴロしている聖地を想像して情けなく なっ たあの女の強気はその後ろめたさを隠して いるのですよ何しろ死んでもいいという ぐらいに惚れているのですから知らない はずはありませんさすがの聖地さんも完全 に丸め込まれれていると思い ます大変な女ですよそうだこうなれば警察 に頼み ましょう警察にのぶはどきりとし た家でに捜索願いというやを出すのです そうでもしなければ承知がつかないと思い ますね我々で は 6こうして誠一のことは警察署に捜索願い を のぶは俊吉と一緒にその手続きに行っ たこの場合青森というはっきりした 心当たりがあるから簡単であろうとのくは 思っていたが結果は虚しかっ た2週間ばかりして警察署から呼び出しの 通知があったのでのぶ子が行ってみる と青森書の方から報告がありましたがねご 主人は向こうにはいらっしゃらないという ことです よど常いう女について調べたとあり ます係り川は書類を見ながら行った信子は 赤くなったこのような家庭の秘密が警察の 手で暴かれることが恥ずかしかっ た捜索願いなど出さねばよかったと思っ た何か犯罪というようなものが関係して いる恐れありません かかり川はそう聞いたのぶ子ははっとした 彼女が最初に感じた不安と同じ意味のこと をかかり感は尋ねているのであるしかし その想像はもうないのだ夫の行方は他所 つ子が絡んでいるジジであることは間違い なかったつ子が夫をどこかに隠しているの だのぶはそんな気遣いはないとかかりかに 礼を言って帰ったああこれで夫との間は 永久に立たれたのだと思うと 無限の悲しさが込み上げ部屋の中で長い こと泣いた体から力が抜けて自分の身が髪 のように薄くなったように感じられたその 夕方俊吉が来てのぶ子からその話を聞く といよいよ大変な女ですねたどろつ子と いうのは警察までごまかしたと見えますね と言ったそれから首を片向け てかしげ て警察は一般人から出した捜索願いなどと いうもの で本気でやってくれているのでしょうかね 他に仕事がいっぱいあるのでしょうどうも 僕はいい加減な調べ方としか思えませんね それもこれはよくある恋愛事件ですからね と感想を言った春吉が何気なしに行った よくある恋愛事件という言葉がのぶ子に 改めてショックを与えたそれは彼が書いた 後から大引き心に爪を立てた世間的には 平凡な事件である今まで彼女が本で読ん だり聞いたりしてその瞬間に忘れ流して しまった同じ出来事であっ たしかし現実に自分の身に降りかかって くるとそれがどんなに一生の重大事件で あるか初めてわか 今まで平気で見過ごしてきた他人の不幸が 一時に襲いかかって仕返しに来たように 思え たそれから長い日が流れたが聖一はついに 帰ってこなかった夫がバの悪そうな顔をし てひょっこり帰ってくるそんな期待を毎日 持ち続けたのぶ子だったが日の経過はそれ を水のように薄めついに心が固定して しまった それは生活のせいかもしれない夫がいなく なった後はのぶ子が店の商売を見なければ ならなかった店には前からいなれた雇い人 がいたからさしてすぐに困るということは ないそれでも彼女は商売を夫のいた時より は半分に縮めたがやはり気苦労があっ た彼女は何もかも忘れようと自分の心を みんな店の経営の努力に振り向けたいつか 夫が帰ってくる帰ってきたら褒めて もらおうそのような墓ない望みが意識の中 に流れてい たしかし昼の仕事が終わってしまうと空虚 が起こってき た心はそれほど簡単ではなかっ た1人になると冷たい空気が体を流れ 抜けるようであったいや昼間忙しい時でも 時々不に真空をを感じ た信子は自然に春吉を頼りにするように なったもはや彼女の周囲には春吉1人しか いなかっ た彼女がそれほど力にするだけの態度を 春吉は持ってい た俊吉はのぶ子を至ってくれ た彼の誠意が余計にのぶ子を頼らせ た太いせの夫の正一の前では弱々しく 大人しいとばかり彼女が思た吉は実は しっかりした内部を持っていたそれは ちょっと意外で彼女は今までの観察の錯誤 を知った永本だがやっぱり男だという感想 を新た新しく抱い た彼女の春吉への次第に増した傾斜はその 理由もあっ た俊吉はのぶ子の主な相談に乗ってくれ た彼のはのぶ子の心の支えになった適切だ し何でも真剣になってくれ た俊吉は1人でいるのぶ子を意識して夕方 来ても夜は吹けないうちに帰って行った 晩飯はどんなに進めても途中で済ませてき たのぶ子と2人きりで食事をするのを彼は 避けているらしかったその細かい心遣いが いかにも彼らしく彼女は微傷を感じ た春吉は56日来なかったことがある会社 に電話すると病気の届け出があって休んで いるということだった信はよほど彼の アパートに訪ねて行こうと思ったがそれを 思いとまらせる心のとめがあっ た春吉が独身でるということもだが彼が 自分に注いでいるある意識の反射がはその 行動をためらわせたのだそれに大変な危険 を予感し た俊吉はお前が好きなんだよといつか酔っ ていった夫の声が心に聞こえてきた俊吉が 久しぶりにひどくやれた顔をしてきた時 のぶは実際に嬉しかっ たご病気だったんですって信は心配そうに 見上げたええ胃が悪くなりましてね 参りました病なんです俊吉はまだ青い顔を していっ た行けませんでしたわ私よっぽどお見舞に 上がろうかと思ってたんですけどそうです か俊吉はじっとのぶ子を見たその目には 病後のせいか熱っぽい光が溜まってい た信子は不なもに出会ったように老廃して 顔を背けた ところが正一に関係のありそうな消息が 思いがけない事件の形でのぶ子に来たのは それから2ヶ月ばかりの後であっ た 7ある俊助から信子に電話がかかってきた ちょっと妙な話で仙台から人が僕を尋ねて きているのです誠一さんに関係したこと ですえ のぶ子は心臓が鳴った妙な話ってそっちに 行って話しますもう昼休みですから ちょっと下を抜けてその人と一緒に行き ます電話が切れて春吉が来るまでのぶ子は 胸を抑えたいぐらいの同機が打った夫に いいことではない悪い方に想像が働いた 30分もすると俊吉タクシーで1人の人物 を連れてき た30ぐらいの色の浅黒い丸い顔の男で あったきちんとダブルの洋服を着こなして どこかの会社の上空社員に見えたが出され た名刺は白純増とあり仙台の旅館藤若草主 と横に小さなカが吸ってあった白木純三は 丸い膝を揃えて信子に初対面の挨拶をし 突然来訪した詫を行ったいかにも旅館の 主人らしく丁寧な口の聞き方をし た実は私は他所つ子の兄でござい ます彼がこう言い出した時信ははっとした 白い細い目を静かに伏せてい たせが違うのは事情があって歯型のもので ございますが 私の実際の妹でございます私が東京に来 ましたのはおオタにお伺いするつもりは もとなかったのですがこちらの高瀬さんに と白きは横に座っている春吉の方を ちょっと見 た田さんをお尋ねしてお話を 伺いオタに上がる順序になったのでござい ます妹のことでは大変おたく様にご迷惑を かけているそうで高瀬さんに伺って初めて びっくりしたような次第です奥さんには誠 に申し訳がありませ ん深を詫び申し上げ ます白木は両手をついたわざとらしい ところは少しも見られない誠実のこもった 態度だったそれはのぶ子に分かるのだ彼女 はこれがどころつ子の兄とは思えない ぐらい効果を思っ たのぶ子さんと黙っていた俊吉が横で行っ たたどろつ子さんは亡くなったそうです よのぶ子はびっくりして目を大きく開いた あの田所つ子が死んだが彼女は立ちまち 田所つ子の太った幻影の後ろにある夫を 感じて怯え た妹はは青森県の戸だに近いおいらせの林 の中で死んでいまし た白元の穏やかな口調で言っ た死んでいたというのは死体で発見された のでございますご承知かどうか知りません が奥瀬の一体は太鼓からのブナの原林です 慣れたものでも一旦ま追い込んだら用意に 出られない密林でございます妹は渓流の奥 にある滝に行く途中の小道の外れで死んで いました発見したのは土地の人です2ヶ月 近くたった発掘したいでしたハンドバッグ の中にある持ち物で妹ということが知れた のでござい ますそばに転がっていたアドルムの空瓶で 雑だということが分かり警察でもそう認定 されまし たのぶ子は息を詰めた田所常子の誠一さん とならますどうにもならなくなったら 一緒に死にますという声が蘇って聞こえ てきいた信はブの原子林の中のどこかに 怠っているもう1つの死体を恐怖して描い た 妹は不幸なやで若いと家庭の事情で家を 飛び出しなんとなく身を持ち崩すまし て東京に行ったままでは今東京に行った までは分かっていましたが音信も長い間 普通でし た白木は相変わらず静かに話を続けたそれ が半年ほど前に突然に簡単なはがきをよし ました それが青森のサロン不要からでござい ますなんだまだこんなところにうろうろ 働いているのかと思い文句を読んでみます と私も近うち幸福がつめそうだと書いて ありましたそれならまあいい生のないやつ だったが幸せになれるならよかったと私は 安心しまし たその時すが青森に飛んで行ってやれば よかったのですが私も商売の方が忙しい ものだから返事のはがきをしただけ でつい気にかかりながら放っておきました ところとうとうこんなことになりまし たその私のはがきが常子の部屋にあった ものだから連絡が私の方にあって死体を 引き取りに行った次第でござい ます白木はそこまで話すとポケットから1 枚封筒を出し た私が妹の部屋を探しますとこれが出て まいりまし たかき損じのまま机の引き出しの中に 放り込んであったのでござい ますのぶ子は一目それを見て見覚えの他所 常子の字であることが分かった封筒の表に は東京都高瀬春吉様方 章まで書いてあって次の席という字を 間違えたのか決してあっ た関は誠一のせいなのである信はそれを 恐ろしいもののように眺め た 8妹の死の原因はなんかさっぱりわかり ません長いこと音信がないのですから事情 が分からないのは当然でございますそれで もしやその心当たりはないかと存じまして この封筒頼りに高瀬さんお尋ねして状況し たわけでござい ますお恥ずかしいような妹ですが死んで みるとかわいそうですので高瀬さんにお 会いして初めてこちらのご主人様とのこと を受けたまったような次第で全く驚きまし たいやも申し訳ないのないことでござい ますこうして突然にお伺いしたのはそのお 詫びを申し上げに参ったのでござい ます白木はそう話終わると改めてのぶ子に 頭を下げ た白木さんは恐縮されて僕にも謝られまし たしかし猫さんの自殺が誠一さんに関係し たことだったら僕にもなんだかその一旦の 責任があるよう です2人の手紙の仲介をしていたのを早く のぶさに言えばよかったの です俊吉はしげていっ た今更何を言われても始まらないそれより ものぶ子が怖いのは夫のことであるたどろ つ子が死んだとすれば夫もどこかで死んで いるのではないか彼女は田所常子のあの 手紙を出して白木に見せた 確かに妹の主席 ですと白木はそれを読み終わっていっ たこれで見ると妹がご主人に対して積極的 だったようです妹は元からそんな性格が ありました一旦思いつくと前後の利もなく カッとなる方でした妹が家でしてみよう 謝ったのはその性質のためでございます 大変なことをしてくれました白木の言い方 は妹を哀れむようでもありのぶ子に謝る ようでもあった俊吉はこの時会社の時間が 気になるからと言って先に中座して帰った 信子は次第に不安になったそれは今日まで 持ち続けた夫への気遣いとは別なもっと 暗い恐怖に近いものだっ たもしかすると夫は常こと上司するつもり で自分だけ生き残りどこかに逃げているの ではなかろうかこの想像は真実らしく思わ れた東北の見知らぬ土地を少水して彷徨っ ている夫の秘密めえた姿が中に浮かん だその不安な表情が出たのであろう白木が のぶ子の顔を見ていた は彼女の心をさしたように言っ た常子がそこで死んで以来私はその辺りの 土地一体を歩きましたつまり刑事がする ような聞き込みです何か妹の自殺に関係し た焼石が残っていないかと思ったからで ござい ます白きは出席という言葉を使ったがそれ が聖一のことを遠慮して指しているのが のぶ子に分かった彼女は耳に神経を集め た私は妹の写真を持ち歩き現場のおいらせ を中心とし てスカゆ蔦などの白田3六の温泉場 屋焼山のブラックそれから戸田の湖畔に ある旅館まで一軒一軒訪ね歩きましたこう いう女を見かけなかったかというわで ございます白きは続けた無駄でした誰も 知らないと言いました最も初夏で観光客の 多い季節ですから宿で見覚えがないのは 当たり前かもしれませんただスでは宿の 女中さんが常子の写真を見て見たような顔 だと言いましたがこれもぼんやりしたもの で当てになりません私はとどのそばのと いう旅館町にある駐在巡査所まで行きまし たこの駐在所は戸を管轄しているので何か 手がかりはないかと思ったのでござい ます信白木の熱心なのに少し驚いた やっぱりダメでした若い駐在巡査の話では 上司や自殺はかなり多いということでした しかし常子に関係のありそうなことは 何も聞き出せませんでし た信子はそっと息をついた白木の言い方は 兄聖一が自殺した形跡がないということを 含んでい た暇だったと見え巡査と私は少しの間 無駄話をしましたこの辺りは大した犯罪は 起こらない客の持ち物を盗んで逃げるこか たまに宿るよの踏み倒しがあるぐぐらいな ものだと言い出しましたそうそう宿量の 踏み倒しでは面白いことを聞き出しまし た今年の梅頃でしたか旅館に泊まっていた 男客が2人朝早くボートに乗って上を 渡り対岸にこぎつけて逃走したというの です よとろが違うと変わったことがあります私 は旅館を商売にしているだけにに普通の方 と違ってこんな話に興味がありましたまあ お客の警戒に参考になるわけでござい ます白木は長い話の最後にのぶ子の気を楽 にさせるためかそんなことを言ったりし た思わず長いお邪魔をしたと白けびた そしてこのような苦痛を妹が奥さんに与え て申し訳ないと何度も丁寧に行った彼は 帰りがけにふと思いついたように信子に 行っ たこんなことを申し上げては失礼かもしれ ませんが高瀬さんはご主人とおとこさんだ そうでございます ね信子がそうだと言うと白はちょっと ためらうようにしていた が奥さんもし高瀬さんと東北の方に いらっしゃるようなことがありましたた税 仙台にお寄りくださって私の家にお泊まり ください決して立派な旅館ではありません が完成なだけが取でございます松島あたり でもご案内しと存じますと言っ たのぶ子は冬を疲れて慌てた思わず顔が 赤くなった隠している悪いところを急に 見抜かれた時の老に似て 信は白木の細い目に初めてふを感じ た 9その年が暮れても誠一は帰ってこなかっ た生きているのか死んでいるのか検討が つかなかっ た春になったやはり夫の消息はなかった やがて失踪して1年になろうとしていた その観のぶは店の商売を続けていたそして 相変わらず春吉は彼女の静かな相談相手と してやってきた変化は起こらなかった しかし変化がないというのは表面のこと だった春吉の接近が次第にのぶ子の心を 平成でなくさせてい たがその同様は決して苦痛ではなかった むしろ当然の影に楽しみををしませていた 女の心理とはどういうのだろうとのぶ子は 思った夫のことは心にありながら春吉を 迎えようとする意識が動いて いる自分が非常に悪徳な女に思えて怖い ことがあっ た女というものはみんなこんな気持ちが あるものなのか自分だけが弱いのだろうか いやそうではないと 彼女は首を振った正位が悪いのだ夫が早く 帰らないのが悪いのだあなた早く帰って くださいあなたが早く帰らないと大変な ことが起こりそうなのよと信子はあえぐ ように夫を呼んでい た仙台の白木純増からは月に1度ぐらいは 自行見舞のような短い頼りがあった 時折りは向こうの名産品などを送ってき たりし たそれが彼の信子に対する妹の謝罪で あろうそして頼りにはご主人の消息は 分からないかと必ず書いてあっ た白木といえば信子は彼の細かい目の細い 目の強さを思い出し た長だが人の心をいくような目であっ た怖い怖いが彼の丸い顔には常識的な安定 があっ た信子は白木に安心したものを感じていた それが信頼信頼感というものなの だろう晩春というよりも生夏の光が強く なった頃ある日信子はまた白木純から頼り を受けと それはいつものはがきではなく体操重い風 書であっ たのぶはその手紙を長い時間かけて1人で 読んでそれ以上の時間で考え たそれから1週間ばかり経ってまたはがき が来 た今度は文明は簡単 で新緑の頃 で松島はいいから気晴らしに松島を見に来 ないかその時良かったら俊吉も一緒に誘っ てこないかというのだっ た信はその後俊吉が来た時にそのはがきを 見せ たねえ仙台の白木さんからこう行ってきた のよ行ってみようかしらと言った俊吉は それ呼んでそうですねあなたも去年から 大変だったから気分転換に行ってきたら どうですか商売の方は店の人がいるから ルースしてもいいでしょうと言った ええねえしさんのぶ君は少し恥ずかしそう に俊吉の顔に微笑したあなたもご一緒に 行ってくださらない白木さんにこう言って 進めていただいてるのだから会社のご都合 で悪い かしら目に媚びが出ていた 会社の方はの都合はどうにでもなります が俊吉は眩しそうな顔をしていた が顔は火がついたように明るくなってい た僕が一緒に行ってもいいでしょう か俊吉は蒸気したように言った嫌だわ しさん ね行きましょうよ信子は少し破いだじゃあ そうしますか僕は車から休暇を取り ましょう1週間 ぐらいそういう俊吉の唇には自然に嬉し そうな笑いがこぼれてい たいつにし ます来月がいいわ中頃 ぐらい来月ですか俊吉はちょっとと顔を しかめ た来月は6月だから雨が多いかもわかり ませんよもっと早くなりません か店が少し忙しいのよ来月のその頃でない とだめなのねえいい でしょうそうですかじゃあ仕方がありませ ん ね彼は諦めたように行っ たそれでは会社の方は今から願いを出して おきましょう他の奴に先起こされて行け なくなると困る から信は春吉地の楽しそうに帰っていく 後姿を見送っ たいつもの目とは違ってい た約束の旅行が実行されたのはこれも約束 通り6月の中旬であっ た春吉の心配した雨は当分降りそうに なかった 上の朝の10時に出る急行道のに乗ると 仙台には夕方の5時近い頃に 着くおよそ7時間の列車内で は日頃落ち着いていくらか取りまくいる 感じの春吉ものぶ子と座席が並んで嬉し そうに少々饒舌になってい た彼は沿線の風景で時々名所ののような ところがあると窓からさしてのぶ子に教え たしさんはよくご存知なのねこの線よくお 通りになった ののぶ子は聞いたずっと昔1度ここを通っ たことがあるきりですそれであまり詳しい わけではありません よ楽しそうな旅であったよそには夫婦か 愛人同士のように見え た方を打っておいたので仙台駅には白木 純三 がとろまで迎えに出ていてくれ たよくいらっしゃいましたお久しぶりで ございます白木は丸い顔に細い目を一層 補足して相変わらず丁寧に挨拶し た 10白純はに待たせた自動車にのぶ子と 春吉を乗せて走った市内の広い道路には 夕方の日が当たってい た藤若草は信子が想像したより大きな旅館 だっ た別館を立てたからといってまだ木の香り がしそうな新築の離れに通したなるほど 白木が完成だと言っただけに からは何の物音も聞こえなかっ た夕飯は白木とそのいかにも旅館の女主人 といった感じのほがらかなサクも混じって 4人で卓を囲んだその席では誠一のことも 田所つ子のことも誰も避けて触れなかった おは松島をご案内しましょう何半日もいれ ば見飽きますそれからどうなさいます かさは弱いらしくほりと酔った白木が2人 を見比べていっ たのぶ子も俊吉もまだその予定をはっきり 相談していなかっ た私青森から秋田に抜けて日本海岸を通っ て帰りたいと思いますわ途中でとどを見て 信子は言ったすると俊吉は渋い顔をした 日本海岸に出るのならそんなに遠くを回ら なくてもいいですよここから山形を抜けて 鶴岡に出てもいいしコースを変えて裏バダ に行ってもいいと思い ます裏番台もいいですよ彼はそう反対した そうかしらでも戸だこの今はいいんじゃ ない かしらとののは紅葉のある秋です よ白き屋2人の小さな争いをニコニコして 聞いていたがいやとだこは今頃もいいの ですよ心力が濃くなってねなあおいと隣の さ君に言いかけ たそうなんですよ奥様とあこの水の色の濃 というものはすごいぐらいでございます よまるで 今夜の合がをそのまま映したみたい新緑 ならそれが生えて一段と咲いてきれで ござい ましょうさ君は笑うとのびのびと明るい 愛嬌のある人だっ たそれじゃあとはこに決めましょうねえし さん信は言ったが俊吉はそうですねと煮え 切らなかったしさん前にいらしたことが あるのそいじゃあなたにはつまらない でしょうけれどいやないですまだ行った ことがありません がそれでは戸はともかくとして青森から秋 た回るという予定にしてはいかがです か白木が笑い ながら接中案を出したのでえそうし ましょうと俊吉はどいし た飯が住みお茶になって白木夫婦は雑談し ていたがお疲れでしょうからと早めに 引き上げ た女中が風呂を行ってき たしさんあなた先に行ってらっしゃい よのぶ子が言うと俊吉はええと同いて素直 に支度を始めた彼女は女中が去ると俊吉の そばに立っていきその耳元に小さな声で 言った しさん旅行中泊まる部屋は別にしましょう ね俊吉ははっととなったようだった彼は 明らかにショックを受けたようだっ た分かってくださるでしょうまだ限界が あるの よ彼女はできるだけ優しく子供でもなめる ように言ったまだというのは含みのある 言葉だ俊吉はその意味をに受け取ったに 違いなかった彼は失望したが勇気を出した ようだった首の頷き方がそれを表し た信子は洒落た広い部屋で1人で眠った 俊吉は遠い部屋で寝ているに違いない夜中 に雨の音を聞いたがこれは朝早く起きて みると宿の裏を流れる川の音であっ た信子が庭を歩いていると俊吉が浴のまま 庭に入ってき た朝の町を散歩していたんですと彼は言っ たその目は少し赤くなっていたので信子は 彼があまり熟睡していないことを知っ た朝飯を一緒に食べわると白木が丸い顔を 微傷させて入ってき たおはようございますでは松島までご案内 いしましょう自動車は待っていた白木のさ 君と女中とが玄関に見送った松島では海岸 よりも途中の高い展望所のようなところ から見る景色が良かった光を含んだ海に松 をの松を乗せた小さい島が少々煩わしい ぐらい感覚を置いて並んでい た白木はずがや塩釜なども案内し たそれが白木の精杯のサービスなので あろう夕方近くまで車を 乗り回し昼飯や休憩の時などこごまと心を 使った妹の謝罪を彼は心からしているよう であったしかし誠一のことも常子のことも 彼はのぶ子と俊吉の一緒にいる前では口に 出すのを やめるやはり 2人は最後の夕食をご走になって深夜の 青森行きに乗ったホームには白木夫妻が 見送ってくれ た本当にお世様になりましたご親切にして いただいてありがとうございました信発車 業まで礼を行ったいえどうもせっかくお 呼びしたのに行き届きませんでまたどうぞ ください白きはそういい列車が動き出して もいつまでも立って丸い顔を笑わせ手を 振ってい た二等しは混んでいてのぶ子と俊吉とは 離れてやっと席を取っ た信子は1人で窓を見つめていた去年と 同じ暗い景色が走ってい た彼女は涙を流し た白木のある低い声が耳から離れ ない 11青森には朝早くついたここはのぶ子 さんにとっては悪い思い出の土地ですね 俊吉が言った ええあんまり愉快じゃないわ信子は頷いた 駅前の広場には朝の美しい光が当たってい た後ろには発光出さが見え たこれからどうし ます秋田に行くのだったら広崎か大房に 温泉あたりで降りて疲れを休めていき ましょうか俊吉はのぶ子を覗き込むように 言っ たねえしさん私やっぱり戸だに行ってみ たいわせっかくここまで来たんですもの その景色見たいわ頑固のようだ けど信子は俊吉の顔を見守っていった声は 媚びて いるそんなに戸だこがみたいなら参り ましょう俊吉は心よく同意してくれた悪い わねしさん信子は木の独走に詫びた2人は 戸田行きのバスに乗ったそれも楽しい旅行 者に見えたバスは絶えず後輩の道を登った 勾配の カーブを曲がるたびに青森市が遠ざかり 沈んでいった津軽半島とき た下北半島の山々が 見えムワが大きな水溜まりのように鈍く 光ってい たかやの高原でバスはちょっと止まった 公園のように美しかった芝生のような草原 に はが 勝子は新緑を吹いていたここはもう開発 500m以上というところであっ た綺麗ねしさんこれからが楽しみだ わ信は草の上を歩き回りながら行ったそう ですね俊助はタバコをふしながら前面の山 を眺めていた何かぼんやり考えている格好 に それからのバスは長い時間で登り続け たブの木が多くなってき た渓谷にも森林にも緑が埋まってい たあらしさん雪よ信子は窓を刺した山には まだ設計が残ってい た風があるらしく山頂の雪は煙のように 立ってい た敵 ねえしかし緑はかなり少なくなっ て受賞は変化してき たそれだけ公所に登ってきたということな の だ時間が長いのでバスも乗客も疲労してい たねえとあこまでどのくらい乗るの かしらまだ3時間ぐらいかかるんじゃない のかな この次温泉があるって言ったわ ねスゆでしょそう疲れた わのぶ子は指で額を押さえ たその温泉で泊まりたいわ今夜 は俊吉はのぶ子の方を見たが急に微傷して い た昨日は夜行でしょよく眠ってないし本当 に疲れたわ3時間もバスに揺られたんじゃ たまらない わのぶ子は訴えたどこか言訳めいてい たスは山に囲まれたくぼ地のようなところ にあった大きいがひびて古い宿があるこれ 1件しかないので ある通された部屋に明治の文人大町慶月の 書が掲げた た風呂は広い浴場で男女一緒だというので のぶ子は遠慮し た俊吉はさっさと湯に入っ た胃よの匂いが強い湯ですよやがて濡れた 手ぬいをぶら下げて戻ると俊吉はそんな ことを明るく言ったが女中がとこのべに来 た時信子は部屋を別にしてくれと頼んだ ほっとしたようだが 俊吉はわざと知らぬ顔をしてい たねえここ面白いのよ宿の売店に大根だの ナパだの魚だのがあるのまるで市場みたい のぶ子が気をかけて少しはで言うとそう ですか自炊客があるからでしょうと言った だけで割にあっさりと自分の部屋に 引き上げていったそう不機嫌でもなかった 信はここに止まらなければならなかったの だそれは決められたことなの だ彼女は1つの考えを追っていたそれに 妨げられて眠りに落ちたのは遅かっ た朝になった俊吉はおはようと言って入っ てきた彼は十分ねたりた顔をしてい た1番のバスに乗りまし 俊助は朝食が済むとすぐに洋服に着替えた 実際彼は大またに両館の玄関を出ていっ たバスの停留所はすぐそこだった信子と 俊吉は再び登りを続けるバスに乗っ た窓の光景は青春に 等しい雪が歯の少ない林の下をまだに覆っ ていた季節感に錯覚を起こさせるような 考量さがあっ た水蓮沼の辺りからバースはやっと 1000mの標高を下りに向かった再び むせるような無やヒの林の心緑の中に 突き進ん だ辺りが限ったように暗くなっ た熱く重たくなったこのあのしみが因だっ た道は狭くバスは雪違うごとに交代し た木の枝がバスの屋根を叩き窓をわかば かすった山桜がまだ残ってい た大きな死や吹の燻製があっ た暗いしたお水が白く泡立って流れている 風景はおいらせ警告になっていた ああたどろつ子 はこの住の奥で死を迎えたのだ彼女の太っ た姿が嬉しそうにブの原子輪の中に消えて いく光景を信子は想像し た俊吉は目を閉じて心よ心地よく眠ってい た 12とは線で見物した水の色が異様に青い 青さは迫力を持ってい た随分深そうね信子は呟いたがガイドの声 は湖の1番深いところは中の海にあって 浸水380Mに近いと説明し た湖を囲んで山が流れていた美しい景色で ある 騎士には取りが泳いでい た遊覧線は途中に突き出た大倉半島や中山 半島を回り段階と森林の様々の名所を見せ て休屋に着い たある旅館に入った座敷からはコメが広く 見渡せ たいいところだわ来てよかった わのぶ子は眺めながら言ったが実はこの 旅館に決めるのも俊助との俊吉との間に 楽しい対立があったのだのぶ子は離れて うるの旅館にしたいと言ったが今度は春吉 がひどく反対し た湖面の斜め眺めはこちら がスト上だというのであっ た情報は今度はのぶ子が笑ってし たねえ俊吉さんと信は湖から振り返って いった花見の綺麗な微傷であっ た明日の朝早くこの湖の上をボートで出て みないきっと素晴らしいと思う わ俊吉はそののぶ子の顔を見つめて 生き生きしたをしてい た霧が深いですよ知っています か彼は楽しそうに言った素敵じゃないの霧 の湖を漕ぐ なんて彼女も口元の笑いを続けていっ た遊覧戦のガイドの声がマイクに向かって ここまで聞こえ たその夜ものぶ子は1人で寝た 夜が開けてすぐ信子はみくをしたそれが 済んだ時やはり着換えた瞬吉が静かに部屋 に入ってきた元気な顔をしてい たしさん早いのねうん行こうかその言い方 は今までにはなく少し乱暴だっ た張り切っているような調子であったボト は旅館のすぐ裏にいくつもついであった オールがさに乗った橋のように揃えてある 朝早いのでどこにも人影がなかっ た米を見ると霧が一面にしらしらと登って い た向こうの山のてっぺんが少し覗いている だけで視界の効かない海を見るようだった 空気は寒かっ た乗って くださいオールを握った俊吉は行った のぶ子は座った皮膚が寒いボトの上は水の 上を進み出したあかも行先を決定したよう にぐんぐん直線に進んだ前方の霧が水の上 を舐めるように張ってき た 冷たいのぶ子の体は震えた霧の中で顔もい 服も濡れていた指先がこえそうだった瞬は 口1つ ず顔を引きつって一心にオールを掴んだ手 を回転させていたのぶ子は声が出なかった 恋切りは2人を閉ざした1m先が白い熱い 車でぼかされていたボートとその近い周囲 の青黒い水だけが人間の視界に入っている 最大限であった理感も延感もも全く失われ 白い中の中を船は動いていたその動きも 次第に止まっ た俊吉がオールの先を自からあげたので ある自慢の綺麗な髪は放らに乱れていた彼 は目をのぶ子に焼きつけるように当ててい た何分間かそうしていたボートの動きは 緩まになりやがて水の上に吸いつくように 静止した夜のように静寂であった何も 聞こえず何も見えなかっ たしさんとのぶ子が寒いのか唇をふわせて いっ たここだったら声を出しても騎士まで 聞こえないわ ね春吉はこれに5秒ほど置いて明るくうん と言った当たりは相変わらず白い闇であっ たここだったらどんなことをしても分から ないわ ね春吉はまた5秒ほど間を置いてうんと 言った2人の目は中で絡み合っ たのぶ子は両手をしっかりボートの端に 捕まえて次を行っ たここ不快そうよ湖では日本で2番目の深 さですっ て人が落ちたら死体は2度と起き上がって こないんですって ね俊吉の返事は10秒ぐらい遅れたやはり 明るかっ たよく知っているね誰から聞いたんですか 今度はのぶ子が黙った気のせいかどこかで 水の音がしていた信子は耳を済ませ た白い霧が2人の闇を薄く流れ たしさんこの霧は6月が1番濃いのですっ て ねのぶ子は続けた返答はなかった緊張が 流れたその返事をするために俊吉は顎を しゃくっ たのぶ子さん後ろを見てごらん我々が来た 方 をその言葉に命令されように信子は 振り返ったそこも真っ白い霧の壁であっ たそれが背中に迫ってくるのを知って のぶ子は息を引い た僕らは霧の中に閉ざされて いるのぶ子が顔を戻したのを見て俊吉が 言ったあなたの言うようにこの霧は今が 一番深い おや何を認めたのか俊吉が水の上を見て いったあれは何だろう白いもが水の上に 漂っているのをのぶ子も認めた不気味な 恐ろしさが彼女を襲った春吉が1本の オールを突き出してその先に白いものを 拾い上げるのも声も出さずに見守ったああ ハカだこんなところにハカが流れていた 俊吉は手に拾い上げるとしずを絞り白い ものを広げてみた信子はをざめて教師した その白いハカが怖いので ある突然春吉がその濡れたものを突き出し たのぶ子さんこれ誠一さんのじゃないか なえとのぶ子は神経をふわせた よくごらんなさいこの隅に印刷した旅館の 名前に見覚えが あるのぶは冷たい白い布を受け取ったその 隅には血型の模様の中 に すずらん旅館と薄くなった青い文字が消え て残っていたのぶ子は目がくみそうになっ た夫の持ち物だった のぶ子が何何度も選択したから記憶にある の だ失踪当時もこのハカをポケットに入れて 出 た1年前に沈んだ夫の体からこのハカだけ が浮き上がってのぶ子の目の前に漂ってき た少量かと思って彼女は歯が震えてなった すると俊騎士が声をあげて笑った [音楽] 冗談じゃない1年前のものが浮くわけは ありませんよ僕がいたずらをしたの だあなたがちょっとお城を見た隙に水の上 にそれを投げ込んだん です僕も誠一さんと同じハカ長を持ってい たのです よ彼が北海道から帰った時土産に1枚分け てくれたの ですびっくりしたと見えてあなたの顔は 真っ青ですよ僕は平気でしょまさに逆です ねまた低く笑っ た気づいていましたよ僕は俊吉は静かにし 続けた平気で言っていると 同じ同じ口調であっ たのぶ子さんが仙台と青森でときを主張し た時から変だなと思っていまし たはっきり気がついたのはつゆに泊まり たいと言い出した時からですあなたはその 上ここで僕と誠一さんとが去年泊まったと 同じ宿に泊まろうと言いまし たあなたは僕に去年の6月聖地さんと同じ コースを復習させて実験しようとしたの です ねそれで僕を動揺させようとしたのです ねあなたはその実験の結果を確かめたかっ たの でしょう僕はそれに気がついたからわざと 平気な顔してうきうきとしましたどうです あなたは僕の表情から実験の効果を得まし た か勇したように僕が老廃しないのであなた は迷ったでしょうは それから万事承知でいいとしてあなたの 言うままに冒頭ここに声できまし たたどろつ子様あなた でしょう信子はようやく会いでい たあれは僕の女でした俊吉は頷き素直に 答え た 13僕の言うことなら何でも聞く女でした 東京のバにいたつ子をしばらく青森のバに 移らせて聖一さん宛てのあの手紙を出させ たのは僕の指示 ですのぶ子さんが大森まで尋ねてきたら こういえと教え込んだのも僕です手紙だけ では弱かっ たあなたがたどろつ子に実際に青森で会え ばあなたはもう疑いませんそれは成功でし た彼女は何も知らず僕と一緒になりたい ばっかりに動きまし たかわいそうにそれを殺したの ねはっきり言うと邪魔になったからです僕 は誠一さんとここに来た時は3日ばかり 休暇を 取り彼女を奥瀬の林の中に連れ込んだ時は 病気だと言って車を休みまし たそうですって ねのぶ子はなるほどあの時の直後に来た 春吉は少水していたと思い当たっ たのぶ子が思わずそうですってねと言った ものだから あああなたにこの計略を教えた人間ですね それも調べたのはと俊吉は叫ん だそれにしても僕は知りたいことがある その人間がどうして僕がこの戸の熱い朝の 中で誠一さんを中に突き落としたことが 分かったの かそれはお教えし ます信子はようやく立ち直っていっ たその人はつ子さんの死後地の原因を 確かめるためこの辺りを聞き込みに 歩き回りまし たその時ある旅館が2人の男客にボトで朝 早く宿りを踏み倒されて逃げられたことが 分かったの です事実もちょうど聖一が行方不明になっ た頃ですから不信を持ちまし たなぜ2人はボートで乗り逃げたか宿量の 踏み倒しでは ない湖の上で1人になったから宿に帰って は怪しまれるので対岸にボートを乗り捨て て逃げたのと考えたのです その人の推測と調査はそれから始まりまし たなるほど ホームズのような人です ね松島の正体は僕をここにおびき寄せる 誘い水でし た新吉は低く笑いのぶ子さんと彼は改めて 呼んだ今の僕の気持ちが分かります かわかります信子はきっとなって答えたで もそれに承諾できませ ん僕はあなたが欲しかったそれと誠一さん にはいつも劣等感を感じていまし た口説くいうことはない同期はそれ ですあなたはもうすぐ僕のものになる ところでしたもう少し待てばそうだもう 23ヶ月だったと瞬きちゃ笑うように言っ たあなたは聖地さんと結婚してからの僕 しか知らないが僕は戦時中広崎の連帯に 兵隊としていましたからこの辺りの地理は 詳しいの です6月になると朝このコメに深い切りが 立つことはもちろん知っていまし たあの時北海道に行正一さんを追って 彼から兼ねてよく聞いた福島県の炭鉱会社 を 尋ねそこにまだいた彼に会いここに誘って きたの です霧はまだ薄まらない依然として距離感 のない白い視界のだけの中に2人は体して い たのぶ子さん俊助はまた呼んだ 僕の今の気持ちが分かります かわかりますのぶ子は強く言っ たでもあなたと一緒にここで死ぬのは嫌 です僕はあなたを抱いて死にたいの ですそのためいいとしてあなたの実験に 乗ってここまでボトを漕いできまし た正一の時と同じにね [音楽] その同じことはあなたは試されたかったの でしょう聖治さは僕に誘われて好奇心を 起こし自分でこの辺りまでボートを漕でき ました よ僕は誠治さんの胸に拳銃を打ち込みまし た腕力では叶いません から音は遠い騎士に聞こえたかもしれませ んが何鳥でもったとしか思われなか でしょう拳銃はこの深い固定に捨てました 誠一さんと一緒に ねこう言うと俊吉は立ち上がろうとした ボトが激しく揺れ た行けませんあなたと死ぬのは嫌 です完成に落ちた信子は叫ん だ死んで くださいさんも僕が嫌いではないはずです 嫌いです嫌です嫌 です激しい声で投げ たそうですかあなたも卑怯です ね俊吉は完全に 立ち上がり足をめかせて近づいたボトが 一層揺れた霧が巻い たいやいや いや死んでください死んで ください急に水をかく俺の音が近く聞こえ た丸い顔をした白木純三 が信子に仙台で約束した 通り白い闇の中から煙るように現れた

短編ミステリー#ながら聴き #松本清張

30 Comments

  1. やっと1番乗り。
    本日休日.良き一日になりそうだ.今から拝聴。
    今朝は寝起き.落ち無いゾォ。

  2. おはようございます
    今日も🆙ありがとうございます
    茶々丸君かな😊
    可愛い声が聞こえました、朝から癒しです🍀

    夫が行方不明…闇の中のボート…
    他の作品にもあった様な…「0の焦点」を思い出しました。

  3. ひろみん、又々サムネのモデルに我が身を投げ出したのね⁉️相変わらず綺麗だよ🤩冒頭から興味をそそられるストーリー‼️うむ、いとこのシュンキチ❓ 何かあるぞ🤔ゆっくり楽しみますね🙋‍♀️

  4. いつも楽しく拝聴しております。この小説は、以前他の朗読で聞いた気がします。
    ストリーは、殆どわかっていましたので懐かしく思いました。ひろみんさんの声質は、清張の小説に合っているような気がしてなりません。
    ひろみんさんの一ファンより😊

  5. 本日の1着は光幸さん!🎉
    むっちゃんか美代ちゃんがだいたい1着🤣
    ダークホース的にやられました😂
    着順予想ははずれても
    楽しいヒロミンチャンネル😃

    夫が行方不明は私の大好物👍
    🎶 行ったきりなら幸せになるがいい〜 🎶
    歌うのはここまで‥
    この先歌うと戻って来ちゃう💦
    おちおち鼻歌も歌えませ〜ん😅

    茶々丸君も出演?
    これから楽しみます❤

  6. ひろみんチヤンお早うございます、駅路が来たから白い闇そろそろかなと思ったら来ました、痒い所に手が届くですね、
    清張先生は全国の行方不明者請け負い人ですね。
    さて千里チヤン見てるかな、続きにしようかと思ったのですが、他のリスナー様が分からずじまいになるので最初からにします、
    それでは短編ミステリー(恐怖の公園黒い影)
    昨日朝公園で散歩して来ました、なんか音がすると思ったら近くの木の三四メートルの所に野生動物、私の身体は固まり、ただ立ち尽くすだけ、周りには誰一人としていない、
    どうする私(恐怖で怖い方閲覧中止退散結構です、ここまでが昨日までの前半です)どうする事も出来ない私は、生きている最後に見た物をスマホに収めよう

    とサイドバックに手をやった、バックが無い、今日はショルダーだった、これが人生最大ミス、先日千里チヤンに散歩の時は野生動物に 注意だよと言われサイドバックに鈴を付け散歩に出かけたのですが、今回間違って鈴無しショルダーで出かけちゃったのよ、
    私は必死でわき目も振らず撮影開始、十数枚撮ったころ、視線に黒い影、距離約3メートルどうする事出来ない、私は開き直り影に近づく、影も近付いて来る、
    影とピッタリくっつく、写真の比べっこ私負けスマホと一眼レフカメラ比べても😢まして望遠、そうこうしているうちに周りにはスマホカメラマンがいっぱい、その群衆を尻目に、白黒赤の鮮やかで美しい野生動物は大声でケラケラ笑って飛んで行きました、おしまい、さあこの野生動物を当て下さい当った方は抽選でもれなく白い闇が🎯当ります😊

  7. ドラマ化されていたのを思い出しながら聞き入りました。ラストシーン、ハラハラしてほっとしたのをよく覚えています。ありがとうございました

  8. おはようございます😃もう生活の一部になっちゃって😂朝起きたらチェックして😅相方、今日は沢山登場😻癒される🎉この作品も、ドラマの結末とか、変えられてますねー🤔

  9. 出張が多い夫、好意を抱く夫のいとこ、そして夫の愛人…これはM氏得意のプロットですね。テレビドラマで見た記憶はありますが、原作を読んだことはないので拝聴が楽しみです。ヒロミンちゃん、ありがとう!

    ウチの夫も出張が多く、海外になると視察を含めると2ヶ月は帰国しませんでした。あの時は息子と二人で楽しかったなぁ。時々、夫の両親や私の実家が来るのはめんどうでしたが…。

  10. おそろしや〜。
    朗読のど迫力に震え上がりました。
    昼間で良かった。
    就寝時は松本清張より山本周五郎が平和です。

  11. ひろみんさん今晩 毎回楽しみに拝聴しています 朗読の中の信子さん成り切っていて可愛いてす 有り難う御座います😌

  12. こんばんは😊
    三分割して聴きました!
    以前、たしか⤴️だったような‥ 途中から思い出しました😊

    ボコッ💢
    バシッ💢
    ボコボコボコッ 💢💣
    お前ってやつは〜😡
    それでも人間か〜😡
    ネタバレになっちゃうから誰かは言えないね💦

    ヒロミンちゃん
    いつも🎁🚚ありがとうございます!
    ニャンコ🐈‍⬛🐈大活躍
    そろばん塾みたいな音してたね🤣

  13. いつも、こんなに大勢の方からコメント頂けることに感謝してます🙏💕
    全てのコメントに返信が出来ないかも知れませんが
    皆様に感謝してます🙏💕

    ありがとうございます🍀

  14. ありがとうございました。 面白かったです。
    ひろみんさんの朗読にはまりました。 声がステキ‼️

  15. いつもとても楽しみにしております。松本清張作品が大好きなのですが、ひろみんさんのお声が凄く合っていてとても引き込まれます。これからも清張作品どんどん読んで下さいませ❤

  16. ヒロミンちゃん
    こんにちは😊
    言いたい人には言わせておけばいいんだよ!
    ファイト!🙋
    お仕事頑張って💪

  17. 漢字の読み方の誤りというか言葉知識不足の部分が目立って気になります。
    例 間断なくをマダンナク
    〇〇館主を 〇〇館、ヌシ
    奥入瀬を オク イラセ
    他にもアクセントが間違っているので受け取る意味が一瞬間違えそうになります。

  18. こんばんは~🤗
    今回は、10回位は聴かせて頂きました❤
    有り難うございます❗
    このところ、久しく訪れていませんが、十和田湖から、奥入瀬……必ず青森に行った時は何回も走ります。八甲田山はまだ、雪❄が残っていますね。5月の十和田湖も濃い白い霧が深い時です。一回、十和田湖畔で泊まりました。七号線を秋田から八幡平を通り北上すると十和田湖、乙女の像も在ります😊。知ってる所は聴きながら、風景が目に浮かび、感慨もひとしおです。誰でもがそうでしょうね❗前にも聴いてとても印象深い作品でしたが、又、聴けてとっても嬉しかったです。❤

  19. 毎回UPを楽しみにしています。ひろみんさんのお声は癖になるんです。これからも宜しくお願いします❤️

  20. お疲れ様です。ドラマで見たこともあるし読んだ事もあるけど、ひろみんさんの朗読はやっぱりいいね!怖い男でしたね!恐ろしい!

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