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ボイスドラマ「春が。」第五話



ボイスドラマ「春が。」第五話

[音楽]
はが第5
話それは私が小学校を卒業したばかりの
ある春の日のこと
はあ太陽の日差しがキラキラと輝き川の
流れる音が優しく耳に
[音楽]
響く頭上にはあり一面に桜色の空が広がり
私は思わず簡単の声を
あげるすごく綺麗で気持ちがいいそう思い
ながらその美しい世界の中で目を閉じ
大きく深呼吸を
するやっぱり春が一番
好き温かくて過ごしやすいしこんなにも
綺麗な桜を見ることができる
からふっと息をついてコンクリートの橋の
上に落ちていく桜の花を
見つめる透き通るような淡いピンク色に水
に濡れて濃くなったようなピンク
色様々な桜色が散りばめられそれを見る
だけでも不安でいっぱいの心がほっと解き
ほぐされた気がし
た一体どんな子
だろう足元に転がる小石をお気に入りの
ピンク色のスニーカーでツンと小く
春休みの間会社の同僚の子をうちで預かる
ことにし
た数週間前突然お父さんから告げられ
たその子はお父さんの会社の同僚の息子で
私と同じ12
歳初めはそれしか情報がなかっ
たその時クラスの男子からからかわれる
ことに悩んでいた私はやっと小学校を卒業
するのに春休みの間も知らない男の子が
自分の家で暮らすのかと思うと憂鬱で
たまらなかっ
た最後はお父さんに説得されてしぶしぶ
納得したけど本当は今だってすごく
不安今日だってその子が家に来る日だと
いうのにあまりにも落ち着かなくて歩と
称して家を出てきてしまっ
たでも
柔らかい風が慰めるように私の頬を優しく
撫でる川の見が太陽の光をキラキラと反射
するのを見て私はもう一度小さく息を
つく知らない男の子を預かるという急な
決定になかなか納得しないでいると
お父さんは初めて重たい口を開い
たうで預かることになったその男の子は
お母さんをなくしたばかりだという
ことそして私のお父さんと同じ会社で働い
ているその子のお父さんは大切な人を失っ
たショックで男の子の面倒を見ることが
できない状態だという
ことその人は実家もすごく遠い上に転勤し
てきた土地で近くに頼れる人もいないだ
から今回うちでその男の子を預かることに
したということ
慎重に言葉を選びながらお父さんは私の目
をまっすぐ見て話してくれ
たスニーカーの底で小石を転がし私は
キュっと唇を噛ん
だその話を聞いた時硬いもので頭を殴られ
たような大きなショックを受け
た私のお母さんもつい最近まで重い病気で
入院して
もしかしたら自分もその男の子と同じ体験
をしていたかもしれ
ないそう思うと怖くてたまらなかっ
た他人のことなのに自分のことのように
悲しくて涙が溢れ
たお父さんも同じ気持ちだったのかもしれ
ないなかなか泣き止むことができない私を
そっと抱きしめながらお父さんは言った
お父さんは会社の友達とその子に早く元気
になってほしいんだだから
なお父さん
んその男の子の名前なんて言う
の橋の下を川の水がゆっくりと流れ
さらさらと心地よい音が耳を
撫でるそんな穏やかな空気を感じながら私
は唱えるようにそっと呟いた
とも蒼井
君その時数前の桜の花びらがふわりと中を
舞い目の前を横切っ
た1つ2つと花びらが橋の上に落ちていく
のを静かに目で追って
いくそのままなんとなく橋の先に視線を
伸ばすと遠目に同い年くらいの男の子が
立っていることに気がついた
いつからいたんだろうと驚く間もなくその
男の子と視線が交わり私は思わず息を飲ん
だ満会の桜の木々の中に佇むその男の子は
やんちゃですぐからかってくる同級生の
男の子たちとは違ってどこかそう明で計
なくなんというか
すごく
綺麗気づけば
自然とそんな言葉がこぼれてい
たそれが私と蒼井君の初めての
出会い満会の桜が咲く温かい春の日の
出来事だっ
た電車のこよい振動に揺られ小春は眠そう
になる目をうっすらと
開ける代々色と赤色が混ざった夕日が車窓
から見える海一面をキラキラと照らし
ゆっくりと水平線へ沈んで
いく
綺麗電車内はお盆で規制する人たちで混ん

いる小春は電車の入り口付近に立ち2泊3
日分の荷物を詰め込んだトートバッグを
ギュっと持ち直し
た1人暮らしの家から実家までは電車で約
1時間半
かかる帰ろうと思えばすぐに帰れる距離で
はあるけど今回のはゴールデンウィーク
以来でだいぶ久しぶりに感じ
た時々3つ年下の弟からいつ帰るとか
姉ちゃんもしかして彼氏できたとか親以上
に索するメッセージが届き小春はその度に
どう反応するかに困っ
たぼんやりしているといつの間にか車窓
から見える景色があたり一面の海から住宅
地へと変わっていた
あと1つ駅を過ぎたら実家の最寄り駅に
着く眠たい目をこすりながら小春は電車の
入り口に
寄りかかるどうやら今日の天気予報は
当たり
らしい夕方過ぎから雨が降るとテレビで
言っていた通り流れていく景色の絵に
ポツポツと雨粒が彩られて
いくそっと目を閉じ日に日に近づく旅行の
ことに思いをはせる
結局蒼いとの初めての遠出は友人たちも
一緒に行くことになっ
た悩みに悩んだあげく蒼いに聞いてみると
あうん分かったと彼はあっさり承諾し
たそれが少し意外で初めはほっとしたよう
な少し残念なような不思議な気持ちになっ
たでも遠藤やトマならともかく小がそう
言うならえ邪魔しないって話
ああ星は2人で
見ようまさか蒼いからそんな風に言われる
とは思っても見なくて初めはすごく驚い
たでも今は思い出す度にニコニコして
しまうそれから早速蒼いのバイト先に
みんなで集まって集合時間や場所何をする
かどこに行くかなど大体のことを決めた
あとは旅行の日を待つ
のみ初めはどうなるか分からなかったけど
大学生になって初めてみんなで行く旅行
すごく楽しみで今からとてもワクワク
する実家の最寄り駅の名前を告げる
アナウンスが
流れるはっとして小春はまぶを
開ける入り口にもたれかかっていた体を
起こしゴシゴシと眠たい目をこする
ごとんと鈍い音がするのと同時に電車の
進行方向に合わせて体が
揺れるプシュッと入り口が大きく開かれ
押されるように電車から
降りる数ヶ月ぶりの規制だからか見慣れた
駅の光景が少し懐かしく
感じるサラリーマンや制服姿の中高生遊び
がりの私服の女の子たちや手をついで歩く
恋人た
その中に紛れて階段を上がりICカードを
ピッと当てて改札口を
通る姉ちゃん
すると人ゴミの奥からビニールガを片手に
ブンブンと大きく手を振る弟陽介の姿が
見えた高校1年生にしては低身長の
158cmそれでも小春より少し背の高い
彼は高速違反の焦げ茶色の髪をワックスで
ツンツンとセットし少し大きめの上下
グレーの夏用のスエットを着てい
た気のせいかな合わないうちにまた髪色が
明るくなったような気が
する我が弟ながらちゃらいなと思いつつも
せっかく駅まで迎えに来てくれたので小春
はありがとうと言って傘を
受け取る介はとてもいいことをしてやった
とでも言うようにちっと満面の笑を浮かべ
た陽介
1人キョロキョロと周りを見渡しながら母
もしくは父を
探す帰る時間を母に連絡したら駅まで迎え
に行くねと返事が来たのでてっきり両親の
どちらかが迎えに来てくれるのかと思っ
た親父が車で待ってる雨で駐車場が開いて
なくてさああそうなんだ
だから早くと急にせかすように陽介が
早歩きで進んで
いくその背中を追う間にもそういえば
姉ちゃん彼氏できたと索してきたので
聞こえないふりをし
た今でこそ人なつっこい弟だけど中学生の
頃は絶賛反抗期中で必要さえ提言のこと
しか話さなかったただ1度だけがとき喧嘩
をした時一気に思いの竹を吐いてきたこと
があっ
た驚きながらもそれを数時間ひたすら聞い
ていたらすっきりした表情で姉ちゃん
ありがとうと言われ
たよくわからないけどそれ以来弟は主人を
慕う子犬のようになついて
くる陽介が持ってきてくれたビニール傘を
さして駅から少し歩くと見慣れた黒色の軽
自動車が道路の橋に止まいのが見え
た介が当たり前のように神部座席にドカッ
と座ったので小春は助手席のドアをそっと
開ける小春お
帰りただいま
お父さん目が合うなり運転席に座っていた
父が嬉しそうに大きな口を開い
た今日から仕事はお休みらしく黒の
ポロシャツに半ズボンというラフな格好を
している
相変わらずがっしりとした大きな体系から
は家族を支えるような包容力を感じさせ
ほっとした気持ちに
なる元気にしてたかうん
すごくそうかならよかった母さんが小春の
好きなオムライスとエビフライを作って
待ってる
ぞおいしそうな単語の数々に自然と気持ち
が用
する釣られてお腹がぐっとなったので慌て
て笑ってごまかし
た小春がシートベルトをしたのを横目で
確認し父が車を発信さ
せる車内でも聞こえるくらい雨音が激しく
なり車の窓が雨粒でいっぱいに
なるねえおやじ
うん姉ちゃん彼氏できたんだっ
てええす
食い打ちすぎて小春は思わず後ろを
振り返るいるともいないとも言っていない
のに勝手にできた前提で言われ内心ドキッ

するついでに反射的に漏れた父の鈍い声も
気になっ
たそんなこと一言も言ってませんじゃあ
なんで全然帰ってこないんだよそれって
彼氏ができたって証拠
じゃんどうして家に帰らないくらいで彼氏
ができたことになるのかそう思ったけど
何か言うとボケを掘りそうな気がしたので
何も言わないことに
する陽介は小春が帰ってこなくて寂しいん
だなそうなのあ
違う照れ隠しなのか後ろの弟をまじまじ
見つめていると犬がキャンと泣くかのよう
に違うと威嚇された仕方ないので小春は前
に向き直る素直じゃないんだからと
つぶやき
ながら
ああでもそうだな別に父さんはいいと思う
ぞ何
がいきなり改まった父の口調になんとなく
ぎこちなさを感じ手元に視線を
落とすそして体が少しだけ緊張
するその小春に彼氏ができも
だ父の優しい言葉にゆっくりと気持ちが
限るありがとうと心の中でつぶやきでもと
小春は
思う相手が誰なのか分かっても父は同じ
ことを言ってくれるだろうかなあ
小春

いや首を振り再び運転に集中するように父
が前を
見るやっぱり言え
ないいつの間にか誰も話さなくなり激しい
天音と車のエンジン音そして擦り切れる
ようなラジオの音だけが社中に
響く次第にそれが気まずく思えそわそわし
始める
とまうちはいつでも歓迎するから今度その
彼氏君とやらを連れてき
なさい小春はびっくりして父見るいいない
よえ彼氏がいるなんてそんなの全部陽介が
勝手に言ってるだけだよそうなのかバック
ミラー越しに父が陽介に
問う小春もちらっと後ろを見ると陽介は
もうどうでもいいとでも言うように肩を
すめたなぜだかわからないけど拗ねている
らしいはっと息をつき恐る恐るもう1度父
を見
その横顔は安心したような残念なような
よくわからない優しい笑を浮かべてい
たしてはいけないことを自分はして
いる不意にそんな気持ちに襲われ小春は胸
の奥がぎゅっと
なるお父さん
私赤信号で車がゆっくりと停車
するエンジン音がみ雨音がより大きくなる
あ俺は彼女できたおおそうかどんな子
だいつの間にか陽介と父が断捨し
始めるそんな2人の会話を小春はただただ
聞き流すしばらくして信号が青色に変わり
ゆっくりとエンジンがかかり
出す再び流れ出す景色から目を伏せ小春は
昔父に言われた言葉を
思い出す
小春とても言いにくいことなんだが胸が
張り裂けそうになり思わずキュっと口を
[音楽]
つむ蒼井君にはもう合わないで
ほしいざっ激しい雨と強い風が車体を
揺らすごめん
なさいその小さな声は静かに夕立ちの中へ
と消えていったtil

🌸全十七話 毎週日曜日 20時配信🌸

CV
友利蒼:清水惇也
筒井小春:芳川あり
筒井透:川口大樹
筒井陽介:大野葵
ナレーション:yukico

イラスト:円 (https://coconala.com/users/789510/​ )
キャスティング/音響制作:ミントボイス
(HP:https://mint-voice.com/​)
音響演出:yukico、ハル (X : halu_white)
総合演出:yukico

【作品紹介】
タイトル:「春が。」
(2019年光文社キャラクター文庫大賞 優秀賞作品)
原作:あまのはな

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ボイスドラマ「春が。」

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