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【朗読】「しぐれ傘」山本周五郎【一度は読みたい名作】



【朗読】「しぐれ傘」山本周五郎【一度は読みたい名作】

山本 清五郎しぐれ 笠恋の 草し佐屋島吉は女房の尺で朝酒を飲んでい たいつも4杯で機嫌よく酔うのが今朝は もう2本目を開けようとしているのに髭の 剃り跡の青い空太の下た顔は妙に冴えて 目玉の とあだ名のついている大きな両目はさっき から店の方を睨んではギラギラ光ってい たなんだもうねえの か上がるんです かもう1本つけてくれいいからつけてくれ なんだか酔いそびれて踏ん切りがつか なくっていけ ねえ女房のお金は傷かわしそうに亭主の 横顔をそっと見た むっつりと変に気の詰まった調子で3本目 を飲み始めると間もなく弟子の六蔵がやっ てき た親方川口町が見えまし たここへ通して くれそう言って東吉は女房に振り返っ たおめえ2階行っていねだって 親方行けねえめにそばから口出しをされ ちゃ話の筋が通らねえ言ってて くれでは外しましょうけれど 親方お金は素直に立ち ながら喪失はあの通りの気質で口べただ から頭ごなしにしっちゃだめですよあれに も何か考えのあることでしょう からそれが余なことだと言うんだいいから 行き ね吉は手弱女を継い だお金が2階へ去ると入れ違いに278に なる若者が入ってき た色の冷めた金島もめの合わせに山の行っ た小倉の帯を閉めて いる額の広い顎の張ったたましい顔だが ひどく青ざめていて一口に言うと極度の 神経消耗を思わせるがその目だけは深く 潜んだ鋭い威力を称えてい た名は 創出今江戸で恋の木彫りの名人と呼ばれて いる男 だ口重に挨拶をし てただいまはお使いでございました がちょいと話があって来てもらった手間を 欠かして済まなかった ないえ何このところしばらくブラブラして いるものですからそうか遊んでるのか遊ん でるというわけでもありません がまいいや1つどう だ当吉は逆月を洗って差し出し たありがとうございますが実は立ってる

もんですからどう か立っているへえ何か眼かけ か何がというほどのことでもありません が当吉地は黙って手Tapで1杯煽っ たそれから手に逆月を持ったまま何気ない 様子で相手を見 た実はな 導師ら夕べ国鳥の富田屋さんに呼ばれて 行ってきたお嬢さんが来月ご婚礼なさる そうでその祝に使う恋の置き物をおめえに お頼みなすったそうだ えおめえの恋は一掘って重量が相場だ国鳥 さんは根に構わず欲しいと おっしゃるそれおめえお断りもしたそう じゃねえ か へえ申し訳ありませ ん特長さんはそれでも是非欲しい佐屋 おめえから頼んでくれとこう言われてケっ てきた おめえも知っている通りおらは大事なお棚 だなそうしおめえ気持ちよく掘ってあげて もらいてえがどう だええそれは もう創出は窮屈そうに固く座った膝頭を 撫で ながら親方の口添えがなくとも掘りたいの ですがどう も掘れねえのか 親方どうかこいつはよそえお頼みくださる よう によそでいいなら国鳥さんでも頼みやしね どうしてもおめえの恋がごしもだから おいらを呼んでまでそうおっしゃるんだ おいらにも大事なお棚だがおめえにとって も富田屋は縁のねえお棚じゃねえぜそう だろう へえ何か気に入らねえことでもあるのか いえいえ 決してじゃあ掘ってあげねえオからも頼む からやってあげねえどう だ創出は低く頭も垂れながら目し た佐屋東吉は大工で ある親の台から常に弟子の230人は使っ ている立派な株であったが当吉は職人かぎ の厳しい父の手で弟子たち同様に不審場の 神なくの中から育てられ大抵の苦労は経験 してきて いるだからちょうど今から12年前1人娘 のお雪が7つの祝いをした年の冬親兄弟を なくした孤児の喪失を手元に引き取った時 に も孤児だからと言って差別をしちゃいけ ねえひれさせてもいけねえし不便をかけ すぎてもいけねえ皆と同じように決めどこ

は決めて面倒見ろと女房にも弟子たちにも 言い渡し た創出は103で佐屋へ引き取られたが 口数の少ない大人しい子供で仕事も 素晴らしくよく覚え178になった時は もう立派に1人前の職人の腕を持ってい たい当てた ぞ当吉はすっかり喜んでこれならよそから お雪の向こを探してくることあねと女房と も話し合ってい たすると十の年の春国蝶の富田屋という 端物どやの主人萌えもが訪ねてき た東吉地にとっては親の台から大事な 出入り先である用があれば無論こちらから 出向くところ萌えが自ら訪ねてきたので 驚いて会うと意外なことを聞かされたので あっ た創に暇をやってくれというので ある訳を聞く と創は誰も知らないうちに自分流儀の目張 を始めてい た他のもののネタ間遊ぶ間を盗んで コツコツとやっていたのが本来の才能に 恵まれてたのであろうめきめき腕が上がっ てことに恋を掘ると古今無類のものが できるようになっ たそこでようやく心を決め自分は目張に 本腰を入れてやろうと富田屋を訪ねて親方 への口利きを頼んだというので ある1人娘のむこまで考えていたのだが 当吉は事情を聞いて心よく承知し たそして川口町へ別に家を持たせて千年 目張をやらせることにしたので あるところが富田屋の言う通り3年目には もう恋の喪失と言って一日掘れば重量と いう飛び抜けた高値を呼ぶ立派な目張家に なったのであっ た富田屋はおめえにとっても縁のねえ家 じゃあねと言ったのは右のような事情が あったからで あるどうしたんだ嫌なのか王なの か親方誠に申し訳ありません が創はそこへ手をついていっ たどうかお棚は親方からお断り申して ください まし私はどうしても掘りたくないの です 藤吉はついに我慢を切らして叫ん だこれほど頼んでも嫌なら勝手にしあがれ 明人とか蜂の頭とか言われてのぼせて やがるてめえとはたった今縁を切った けれお親方そそれはあんまりけれというの にけらねえかつを見るのも尺だ2度とこの うちの敷はまたがせねえ ぞ手荒く逆月を放り出すと当吉は裾を払っ

て2階へ立ち去っ たそうしはまもなくぼんやりと佐屋の店を 出 たそれでなくとも青い顔は髪のように乾い て空雲のかかった鈍い日差しも眩しそうに 舞をしかめたまま力なく拾うように歩いて いくすると八丁堀の歌へ出た時後ろから 足早に1人の娘が追ってき た当吉の娘お雪で ある父親に似たのであろう鈴を張ったよう な大きな美しい瞳をして省い肌で濡れた ように赤いちんまりとした唇を持って いる年は10だがまだ17ほどにしか見え ないうしい娘だっ たそうさんそうさん待ってあお雪 さん創出は慌てて懐でを出し た娘は丸く膨れた胸を波打たせ ながらもう1度帰って蒼さんおっさんが いくらなめてもダメなのどうしてもおとっ ちゃんは怒って聞かないの よ私が悪いんです親方が怒るのは無理も ないこと ですそう思うなら帰ってちょうだいそして おとっちゃんに謝ってねそう さんそれができないん です導師は悲しそうに言っ た親方のおっしゃる通りに特長さんの仕事 をすれば勘弁して もらえるけれど私が悪かったと謝るだけで は親方は承知してくれやしませ んでは長さんのご注文をしてあげて よできればし ますどうしてできないの富田は蒼さんの ためにも恩のある人でしょ無理な仕事なら 別だけどそうさんでなければならない恋の 掘りもよどうしてお出来になれない の今は言えないんだお雪 さん喪失は意地な調子でぶすりと言っ たもも少し立てば分かりますけれども今は 何にも聞かないで くださいきっと分かる時が来ます から路地の 下もう下月であっ た川口町の路地の奥にある長屋の人まで 喪失は聞ずに埋まったまま丸の実を片手に 呆然と座っていた あれから50日 余りめっきり痩せの見える肩と頬骨の出た 顔が長いヒトロサをまざまざと語って いる長大の上には荒彫りした2寸ばかりの カエルが投げ出して ある喪失の目は飲み屋の生々しい荒彫りの カエルをぼんやりと見つめて いる 半年も前から取りかかって今日までに何十

となく掘ってみるがどうしても気に入った ものができないの だやはりだめ だ力のない声で呟いた 時ごめんくださいと言って訪れるものが あっ たそうしはぎょっとしながら慌てて掘った ものをとだえ 押し込むと生子を開けてで小さな風呂敷 包みを抱えたお雪が入ってき た今日は少し遅くなりました わ勤めて気を迎えるように微傷しながら 言ったけれど喪失はブスっと黙ったまま 答えなかっ た夕べお休みにならなかったの ね体が弱っていらっしゃるのに夜明かし などなすってはおです わまあ火も消えていますの ねお雪 さん喪失は冷たい目で娘を見 た今日まで何度も言う通り創出は親方から 感動されたも同然の身の上 ですこうしてあなたが面倒を見に通ってき てくださるのはありがたいがそれじゃあ私 が親方に住みませんどうか今日限り私の ことは捨てておいておく なさいまた始まったわそのことならもう前 に話は済んでいるはずです私の勝手で来る んですからそうさんにご迷惑はかけませ んそう言われればそれっきり ですそうしはすっと立ち上がっ たけれども私はこうやってあなたのお世話 になるのは嫌なんだ迷惑と言いたいくらい なんだそれだけは承知していてもらえます よそお父さんそれはあんまりよお雪は驚い てすり寄っ た私はこんな物知らずで満足にお選択1つ できないけれど少しでもあなたにご不をさ せまいと思って随分苦労しているわ迷惑だ なんてそんなあんまりだ わおゆきさん私は喪失は ね喪失はお雪のむせびあげる声に振り返っ て喪失は職人だ私は自分の命を仕事に 打ち込んでるんだこの仕事が満足にし 上がるまでは義理も人情も捨てているん だ職人には仕事の他に自分の気持ちを乱さ れるのが1番迷惑なんです よだ がと言ったが すぐだがこんなことを今更言ってもしょう が ねえ投げやりな調子でつぶやくとそのまま ふらりと外へ出ていっ た当吉から縁を切ったと言われて以来相思 は佐屋へ足踏みのできない体になっていた

がお雪はそれからも3日にあげず訪れては すぎもや家の掃除などこまごました 身の回りの世話をして くれるいつかは向こにという話のあった中 だ お雪のいじらしい心根は見るも痛ましい くらいであったが喪失の堅くな心は娘の 気持ちを察する営もないほど仕事に対する 情熱でいっぱいだっ たできるなら誰の目にも触れない山奥へで も行って全身を仕事に打ち込みたい仕事の 他には何にも考えたくないとさえ突き詰め て いることにこの頃では彼は自分に絶望して い た骨を削るような苦心をして掘るものが1 つとして満足な出来を見せてくれ ない俺はダメなの かそういう疑いさえ起こって いるこうなるともう自分を自分で縛るよう なもので平常から殻へ入ったサザエのよう な気質がますますうえうちへと引きこもり 仕事も気持ちも次第にに追い詰められて 身動きのならぬ状態に陥ってしまうもの だ喪失は今自分では気づかずにそういう穴 へはまって いる当てもなく甘いの街を歩き回って喪失 が帰ってきたのはもう日のつき始める頃 だっ たうへ入る途端に 親と呆れたのはお雪が安藤の元でせっせと 夕食の支度をしている姿だっ たおかえんなさい ましおゆさんお前まだいたのかもう日が 暮れたというのに何をしているん だ知っていますわでもいいのよかないうち でどんなに心配しているかしれません早く 帰らなく ちゃいいえ帰りませ んゆきは強くかぶりを振っ た私今日は帰らないつもりで出てきたん ですおっ母さんも承知なんですえ女将さん がご承知だっ てそう さんおよきは安土にそっぽ向いて座り ながらおとっさんは私に向こをもらおうと してい ます あなたも知っている八丁堀の相模屋さんの 銀次郎 さんあの人から話があってこの月内には 有能する運びになっているん ですだから私おっかさんと相談してうちを 出てきてしまったん ですそれじゃあなおさらだ話がそこまで

運んでいるのに今おゆさんがいなくなっ たら親方はどうなると思い ますいやいや もう何も言わない でお雪は両手で耳を塞い だ私16の年にっかさんから聞かされてい たことがあり ます蒼さんが私の夫になる人だっ てこんなことを言うのは恥ずかしいけれど 私は今日まで1日だっってそれを忘れた ことはないの よ今度の相屋さんとの話だって私が嫌だと 言いければおとっさんだって無理にとは 言わないと思う わただそうさんがあんなことから出入りし なくなったのでおとっさんはただ腹立ち 紛れに向この話など始めたんだ わそう さんもし私が嫌いでなかったらここにいて いいと言ってください ましそれでなければもう私死ぬばかりです 喪失はそっぽ向いたまま で私には何とも言えませ んと吐き出すように言っ た何とも言えませんいてもらっちゃ親方に 申し訳のないことになるさっきも言った ように喪失は仕事の他には何も考えたく ないんだ しそうさんいいと言っていてもいいって そうしは黙って戸棚を開け たその後ろ姿へすがりつくようにそっと 合唱したお雪は涙を吹きながら前後しいに かかっ たすると間も なくお雪さんと喪失が振り返って呼ん だあなたはこの戸棚の中のものに手をつけ ましたね あら忘れていましたわお雪は急いで近寄り ながらさっき杉立さんが見えましてね何か 掘ったものがあったら見せてもらいたいと いうもんですからお断れしなくては悪いと 思ったんですけれどそこにカエルの木彫り があったのでお見せしたん ですそれをそれをどうしまし た杉さんは大喜びでこんな素晴らしいもの をやっていたとはなかったこれで名人創の 呼び名がまた変わると一両を置いて持って いらっしゃいまし たあのカエルあれを売ったあれ をそうしはブルブルと身をふわ せおゆさんと行き詰まるような声で言っ たお前さんとんだことをしてくれたあれは まだ試し掘りで形もも何もついちゃいない 子供のおもちゃにもならないヤザなもの だでも杉さんは素晴らしい出来だ

と杉立は道屋だ骨董者のババには目が効く かもしれないが物の本当の値打を見る目は もっちゃいないあんな打物を喪失の柵と 言って人手に渡すくらいなら私は今日まで こんな苦はしてキアしないん だ私 そうさん私そんなことには気がつきません でし たお雪さんには分かるまい が創出は拳を握りながら言っ た男の仕事は命がけだ寸分も好きがある ものじゃないん だ今こそ言うがあの時国庁さんの注文を 断ったのは高い金が欲しいでもなく傲慢で もなかった 私はこれまで56年の間に87体の恋を 掘っ た木を聞い沈みごい離れ 群れすっかり掘りしてもう掘るべきものが なくなっていたこの上掘れば同じものが できるだから私は断ったん です訳を話さなかったのはこんなことを 言うと木に聞こえるからで今度のカエルが 立派に得得できたその時こそ親方にもお 話し申しお詫びをするつもりでいたん ですこれが職人の気持ちなん だ金にも何も変えることができない爪の 先ほどの嘘もない職人の気持ちなん だすみません私そこまで考えずについ あなたのお仕事を世間へ見せたくなっ て杉の置いて行った一を送ん なさい宗室は構わず立ち上がったそして お雪から二銀を2つ受け取るとそのままど へ降りて見返りもせ ずお雪さんこれでお分かりだろうあなたは こんなところにいる人じゃないやはり佐屋 の娘で安楽に暮らす方がいいん だどうかこのまま家へ帰って くださいそう言いながら外へ出 たもう日はすっかり暮れてい た夕飯時のざわついた路地を抜け出ると かぷはひっそりと暗く今にも降ってきそう な空は大江戸の街の日を移してにぶく 染まって いる喪失はまだ朝から食べ物を取ってい なかっ たそれでなくても弱っている体は足が フラフラするほど力の抜がして いるしかしそのよろめく足を踏みしめ ながら創は懸命に大賀町の道具や杉田や 竜五郎の店へ急い だ大名 屋敷旦那はおいでですか旦那はおや総さん どうなすったんです何かご用ですか 旦那がいたら呼んで

ください杉田の店先に立ったまま総はかし そうに同じことを言い続け た晩酌でもしていたらしい竜五郎は間も なく歯をせりながら出てきた がおいでなさい何か給養で もなんださっきの品あれを返していただき たいんですお預かりしたお金はここへ持っ てきまし たなんですいきなり そんなあれはまだ試しぼりでとても人様に お見せできるようなものじゃないんです ルスのものが知らずに出したんですから どうか返して くださいそいつは弱った なあ竜五郎は急いで座り直し た実はあれから帰りにほった様へおやり 申してねほったの殿様はは前から喪失さん の柵がお好きで集めていらっしゃるもんだ からついお見せしたところが大変な お気に入りで側近重量でお売り申して しまったんだ が売った重量でほった様 に喪失さんの気象で気に入らねえ柵を 手放すのは嫌だろうがどうだろう殿様は すっかり魚儀に目しているんだから今度 だけ目を積ってもらえまか金ならもう少し 割り戻しをするつもりでいる がほった様のお屋敷を教えておくん なさいお屋敷ってそれを聞いてお前さん どうしようと言うんだ ねいいから教えておん なさいそうしは唇をわなわなふるわしてい たほった立中の神の中屋敷を聞いて過ぎた よの店を出ると外はいつか年とぬかのよう にしれてい た男性橋を八丁堀へ戻り桜橋を渡って築地 へ急ぐ冷えてきた焼は身に染みるよう だ合わせの着流しきりだから濡れるに従っ て寒さは骨へ 通るしかし創出には何も感じられなかっ たほとんど中を歩くような気持ちでほった の中屋敷の門へたどり着いた時にはは肩 から裾までずっぷりと濡れてい たお頼み申し ます無論本源は過ぎているくぐり門を叩き ながら23度呼ぶと万子が窓を開けて覗い たなんだなんだご問を叩くやつがあるか なんだその方 はへえ川口町の喪失と申すものでござい ます是非お殿様にお目にかからなくては ならないようがありますのでどうかお 取り次ぎを願い ます何将にお取り次ぎだ と万子は呆れて目を向いた馬鹿なことを 申すな物を知らぬにも程がある町人の分際

でお神にお目通りなどとブレなことすと そのままには捨ておかぬ ぞいえこれには訳があるの ですヒはは必死だっ た私は恋の木彫りをする職人で喪失と言え ばお殿様もよくご存知のはず決して言われ もなくお目通りを願うのではございませ んそうお取り次ぎくだされば分かって いただけるの ですたえお神がご存知であろうと手続きを 踏まなければお目通りなど叶うわけのもの でないつまらぬことを申しても無駄だ帰れ 帰れでもござましょが私にとっては1大事 お殿様が行けなければせめてご用人様にで もお取り次ぎを願い ますうるさいやつ だ万子は舌打ちをし ながらもうご問言は当に過ぎて御用人もお 小屋へ下がっておられる取りついでやる から明日来い 明日へえ明日は何時にご問が開きましょう か八つ時 だ怒なるように行って番子屋の窓を手荒く しめてしまっ た喪失はその閉まった窓へすり寄り ながら八つ時でございますね八つ時で私は ここで待っておりますからご問の悪まで 待たせていただきますからどうか時が来 たらお取り次ぎを願います待っております から返事はなかっ た そうしはなおしばらく同じ源を繰り返して いたがやがて窓から離れると晩小屋の下へ ブルブルと震えながら身を持たせかけ た雨は依然として静かに降って いるわずかなひしは無論たみにはならず頭 から裾まで容赦なく振り付けて くる前の世から眠らず朝早く残りをすすっ た木の体は寒さと疲れと上にすっかり弱っ てしばらくもせぬうちに立っていることが できなくなりそうしはずるずると崩れる ようにかみんでしまっ たどのくらいの時が経ったであろうか顔に かかる雨がいつか止んでいるのに気づいて ふと振り合いでみると頭上に傘が差し掛け られている 傘 傘初めは何のことか分からなかっ たそれから静かに振り返ると右側に 引き取ってお雪が立っているのを見つけ た創はいきなりぎゅっと胸を締めつけられ たように感じ た切ないような苦しいような悲しいよう ななんとも引用のない感動がグイグイと胸 を締めつけ鼻の奥へツンと酸っぱいものが

突き上げてき た仕事の間に疲れたような一筋に突き詰め た喪失の感情の中へ生まれて初めて温かい 心の肌触りが染ったので ある創は目を覚めたような気持ち で お雪と言いながら立ち上がったお雪の全身 が震え たそ さん バカ堪忍し てこんな夜ふけになんだっ てだって 私お雪は蒼白になってい た私お前さんの女房だもの ばバカ風を引いたらどうするんだ堪忍し て立ち上がった喪失の胸へお雪は震え ながらしっかとすがりついた喪失はそれを 両手で抱きしめ た2人は気持ちなく愛抱き涙に濡れた方を すり寄せながらわな身をふわせ た 夜が開けて創と雪が門前に雨をよけながら 立っているのを見た時万子がどんなに驚い たか言うまでもない だろうまさか本当に夜しまっているとは 思わなかった彼らはその辛抱強さに打たれ てすぐその胸をかりへ通じ た要人この権田優は無論創の名を知ってい たので一応自分があって事情を出した上彩 を君に言上するとびの神はすぐに会おうと いうそこでごだゆは衣服を着替えさせた上 お前へ連れて出 た立中の神正道は上限 でこんだゆしばったことは許して やれ喪失だな許すちこう ちこう ブレーお許しとある ぞ権田ゆに押されて創出は恐る恐る執行し た昨日杉田より求めた品について願いと いうのは何だ遠慮はいらぬ申して みい恐れ入りまするはは勝手なことを 申し上げて恐れ入りまするがあの品を私目 にお戻し願いと存じます 返せというか おおなぜ だあれはまだほんの未熟なもので形もなっ てはおりませ ぬ私のルスに杉田が持っていきましたので 人様に見せられる品ではないのでござい ます世にはそう思えぬが のう恋の名人と言われる喪失には珍しい カエルと思う ぞ正道は微傷しながら行った創は懸命に思 をあげ

てお殿様の目にはそう見えもいたし ましょうがそれはお道楽だけのお眼鏡あの 品はまだ石くれも同然の打Directで ございます掘りました当人の私が申し上げ ますのでお手元へ差し置くべき値打ちは ございませんどうぞお下げ渡しください ます よ道楽だけの眼鏡 か正道は苦笑し ながらはっきり申すやつだなよしごんだゆ 昨日のカルを持って まれ はそうしそれほど申すならあの品は返して 使わそうただし約束がある 権田ゆの持ってきた文庫の中から木彫りの カエルを取り出して前へ置きながら正道は 改めて喪失を見合っ たこの品は返してやるがその前にその方が これなら良しと思うものを掘り上げてまれ そうしたらこれを下げ渡してやるがどう だはいしかしそれがいつできますこと やらいつでも良い2年でも3年でも待つ その間これは文庫に納めたまま決して人に は見せぬと約束して使わ そう恐れ入り まする創は初めてアドしたように微笑ん だそれでは私がお通りつまりまするまで どうぞあなたにもお見せくださいませぬ ようよしよし必ず見せずにおく ぞ私も必ず喪失の柵と目打って恥ずかし かららぬ品を仕上げ まするつきましてはお殿様には杉田より それを10勤にてお求め遊ばしたように 伺いまする がそれがどうかいたしたか そうしは多元から二銀を2つ取り出し て花失礼ではございますが私が次にお 目通りいたしますまでつまりその品の お下げ渡しを願いますまで10勤のうちへ 手付けとしましてこの一両をお 預かりこれこれブレなこと を権田ゆが業転して乗り出し た ほったは1万3000億だが定款のま思考 の大名で あるいくらなんでもその相手へ二武銀2つ 差し出すというのはどはれ だ権田優は顔色を変えたが正道は今あげに それを止め て捨ておけ権田ゆ面白いではないか世が 町人から一両の手付けを預かるというのは 初めてだ 面白い預かるぞ そ片の存じますこれで私も安心いたしまし たよも手付けを取ってアンドした

ぞ正道は声をあげて笑っ たそうしも笑っ た笑いながら質はにわかに胸が空闊と開け 体いっぱいに爽やか風の吹き通るのを感じ た一点に追い詰められていたのっぴきなら ぬ気持ちが正道の管轄無な態度にあって 一時に解放されたので ある懲が落ちたの だ針の先ばかり見つめていた目がその一瞬 に広い空を見たのであっ たこれだこれ だ 導師は心の中で叫ん だ俺は自分で自分を埋める穴を掘っていた ん だ穴から 出よう仕事はそれから だごんだ ゆ正道は用人の方を見 てどうだ世の商法は確かで あろうそう言いながらもう一度声高く笑っ 誠に奇妙な約束であるしかし創出はお前を 守備よく退出し たご問を出るとまだ古山のしぐれの中にお 雪が待ちかねていて走り寄っ たどうでございましたあなた お雪そうしは今度こそはっきりと力のある 声でお雪の名を呼ん だ大野町のの店へ行こうえおとっちゃんの ところ へ親方にあってお前を女房にもらってくる んだ喪失は改めて 出直す昨日までのうじうじした気持ちも いけなかったんだ今ほったの殿様にお 目通りをしてつづく感じた ぞ人間は心を広く持たなくちゃいけ ねえその日の職に不足しても心は大名の ように大きく持つんだ大名のような広い 大きな心持ちでやるん だ親方にあって何もかも話してそれから 始める ぞ嬉しいあなた ええ傘がかしいだ濡れる ぜそうしは手を伸ばして傘の絵を 支えるその手へ自分の手を重ねながらお雪 は濡れた瞳で男の目をうっとりと見上げ た振りしきるしぐれの町にようやく往来の 人が多くなり つつ OG

「一生に一度は読むべき名作」朗読チャンネルへようこそ🌙

時代の波に翻弄されつつも、己の技術と心に誇りを持つ一人の木彫り職人、鯉の宗七。彼の前に立ちはだかるのは、自己の技術への疑問と社会の期待。そして、そんな宗七を静かに見守り続ける一人の女性、お雪。彼女との出会いが、宗七の心に新たな色を加える。木彫りの鯉を巡る小さな世界で、宗七は何を見つけ、何を伝えようとするのか。職人の誇りとは、愛とは、人生とは。しぐれ降る町で紡がれる、心温まる再生の物語に、あなたもきっと心を打たれるでしょう。

【作品紹介URL】

【山本周五郎の紹介】
山本周五郎は、1903年6月22日に山梨県大月市初狩町下初狩に生まれ、1967年2月14日に横浜市で逝去した日本の小説家で、本名は清水三十六(しみず さとむ)。彼の作品は、江戸時代を背景とした時代小説や歴史小説で、武士の哀感や市井の人々の生活を描いたものが多く、特に『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』などの作品は高く評価されています。

周五郎は、清水逸太郎ととく(旧姓・坂本)の長男として生まれました。家業は繭、馬喰などの商売で、家族は武田の遺臣である清水大隅守政秀の後裔と自認していました。幼少期、明治40年の大水害で多くの親族を失い、家族は東京に移住しました。横浜市の西前小学校を卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店(質屋)に徒弟として入り、この時期に文学への関心を深めました。

1923年の関東大震災で商店が被災し、一時は関西に移り、地方新聞記者や雑誌記者を経験。1926年、「文藝春秋」に掲載された「須磨寺附近」で文壇デビューを果たしました。以後、途切れることなく多くの作品を発表し続け、日本の文学界における独自の地位を確立しました。

生涯にわたり、彼は「賞」と名の付くものはすべて辞退し、1943年には『日本婦道記』で直木賞を受賞するもこれを辞退しています。彼は文学において「大衆」も「少数」もなく、「純」も「不純」もない、ただ良い文学と悪い文学のみが存在するという信念を持っていました。

私生活では、1930年に土生きよいと結婚し、1945年には妻を病気で亡くします。その後、吉村きんと再婚し、横浜に転居しました。晩年は、横浜市の旅館「間門園」の別棟で作品を執筆し、1967年に肝炎と心臓衰弱でこの世を去りました。

山本周五郎の作品は、人間の深層を探求し、日本の歴史や文化に根差した独自の視点から描かれています。その文学的功績は死後も高く評価され、『山本周五郎全集』や『全集未収録作品集』が刊行され、1988年には新潮社により彼の名を冠した「山本周五郎賞」が創設されました。彼の作品は、今日でも多くの読者に愛され、日本文学の重要な一角を占めています。

【本チャンネルについて】
『聴く山本周五郎』チャンネルへようこそ。このチャンネルでは、日本を代表する文学者、山本周五郎の不朽の作品を、心を込めて朗読します。時代を超えて愛され続ける彼の物語は、現代にもなお響き渡ります。

私たちの朗読を通じて、山本周五郎が描く時代の風景、人々の心情、そして日本の美しさを、耳で感じ、心で味わってください。彼の作品には、人間の温かみ、悲しみ、喜び、そして生きる力が詰まっています。

山本周五郎の作品に触れたことがない方も、長年のファンもぜひこのチャンネルで山本周五郎の名作を楽しんでください。

◆チャンネル登録はこちら
@yamamotoshugoro

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1 Comment

  1. 素晴らしい、お話でした
    悲しくも、ブレない人生
    息子や、孫達にも 聞かせて やりたい、です。
    山本周五郎作品、
    ずっと 語りついで 下さい🙇‍♀️

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