Idol アイドル

【朗読】山本周五郎「磔又七」



【朗読】山本周五郎「磔又七」

山本 清五郎張り付け ま繁栄去年の 初中住田の川も人盛り過ぎたとある日の 昼下がり 57人という大勢の罪人が裸馬に乗せられ て鈴ヶ森の形状へ送られるべく京橋から芝 へとかかってきた 遠藤はそれを見物する群衆で湧きかるよう な騒ぎで あるどうだ恐ろしい人数だ な何しろ57人いぺに張り付けというのだ ご入国以来の出来事だ ぜ一体どんな悪事を働いたんだ ねおめえ知らねえの かどこにでもいる長の男がキャラは大阪型 の浪人で江戸の天下をひっくり返そうと いう不定無本をたみやがったのだそれがお 女将に知れて去年の夏お手当てになり鎧の お調べも落着したからいよいよ今日お 仕置きになろうというわけ さそいつは大それた奴らだないい手前ち やせろ人が何万人よったって徳川様の天下 はビクともするものじゃねえぞざは見 やがれ構うことねえ石をぶつけてやれそう だやれ やれ辻番の精子も聞かずバラバラと石を 投げつけるものもあっ たこの行列が宇川町に差しかかった時で ある人がきの中に揉まれながら罪人の列を 見守っている1人の若があっ た年は18か9であろう眉の剃り跡の青青 として胸の膨らみも固く片付き腰のし置き にどこやら未だ娘の名残りのありながら 鼻先染めた色っぽさが溢れるような 見なし何を探すか息を殺して人の肩越しに 罪人の列を見送っていたがやがて29番目 の馬が近づいてくるとそれに乗った男を 見るなり ああと低く叫ん だまたさんがまたさん が顔色を変えて我知らず前へ乗り出すと するあ押しちゃいけねえ押しちゃ 危ねえびっしりと詰まった人がきの動か場 こそ女は夢中で伸び上がり伸び上がり 恥ずかしさも忘れてまたさんまたさんと 呼びかけ た周囲の群衆は意外な声に驚いて一斉に声 のし方へ 振り返るそれを書き分けて1人の若者が姉 さん行けねと女の後ろから抱きとめ た 見ともねえ姉さんたら話して話しておれ 人中だ姉さんお行け ねえ振り切って前へ駆け出すとするのを男

は力任せに引き戻して後期の目を向ける 群衆の中へ紛れ込んでしまっ た志新撰座の目明かしで相模や松五郎と いう名を売った親分がい た去年の夏無本を立てた主島一兵木島人材 門ら一味の謙虚に波ならぬ手柄があったの で講義から志一円の元締め役をせつけられ て いる今日は主島一見の57名が仕置きに なる日で事件落着の祝いもかね松五郎の家 では一等が集まって酒盛りをしてい た昼下がりのこと下ぴきの金というのが 飛んできてタをちょっと呼んでおくん なさいという呼ばれて出てきたのは松五郎 の身内でも腕利きと言われた目抜きの達 苦み走った痩せ形のいい男 だなんだ 金帰っておくんね姉さんがおゆがどうした とまとにかく帰っておくん ね達は1度引き返したがすぐに出てくる金 と一緒に急ぎ足で片前の浦谷にある自分の 家へ戻っ たおゆどうかしたかと入ってみると髪も 乱れたまま泣きししていたおゆ がお前さんと羽をき てまたさんをどうしましたまたさん をまた必 をさっと達の顔色が変わっ たおゆは達を引きそえるようにし てまたさんは今裸馬に乗せられて鈴ヶ森へ 引かれて行きましたよ聞けば今日あの無 本人たちと一緒に張り付けになるという 話お前さん私を騙したんです かまあ待てこれには訳があるん だ言い訳はおいて くださいお前さんなんと言いましたまたの ことは引き受けた必ずご斜面になるように するとあれほどはっきり約束したじゃあり ませんかあの約束も嘘だったんですか 嘘じゃねえ確かにそう思ったの だそれじゃなぜご斜面にならなかったん ですまたさんにどんな罪があるん ですあの人は物ですよ木を掘って仏像を 作る職人ですよあんな大それた無本の一味 だなんてお嘘ですみんな誰かの仕組んだ罠 ですおゆま聞き ねえ達はおゆを必死になめ ながらま聞きねえということ よおめえにそう責められちゃ俺はなんと 言い訳のしようもねえがまたはおいらに とっても幼友達だどうかして助けてえと 思ってできるだけの運動をしてみ ただが行けなかった どうして行けなかったん ですおめえも知っている通りまたは主島

一兵に頼まれて完全音を掘っ たただそれだけだと思っていたからつを 頼れば音だけで住むと考えてい たところがその関前音の像をおでよく調べ てみると隠し道があって中に母様を呪う 文句がはっきり刻みつけてあったのだお ゆこれじゃだめだ誰がどんなに運動してみ たところでとても及ば ねえ嘘ですそんなことのある通りがあり ませ んおめえがいくらそう言ったところが女将 のお調べに曲のあるはずは ねもっと前に話そうと思っていたがお前の 嘆きを見るのが辛くて今日まで言いそびれ ていたん だそれはいつ頃のこと ですこの春 だでは私がこの家へ来る前です ねおゆは瞳の上がった目できっと達を 見つめたがやがて避けるよう に私はバカだったバカだったと上元のよう に叫ん だおゆみそりゃおめえどういうわけ だお前はきっとまたさんを助けてくれると 思っ たまたさんの命さえ助かるなら私なんか どうなってもいいと思っ てなんだ とは座り直し たそれじゃあ何かおめえはまた父を助けて いためにおいらのとこへ来たというの かお前だってまたさんを助けてやるという のを餌に私を女房にしたじゃないかいえ私 は知っていたちゃんと知っていてきたん です知っていたらどうん だ達の声も上ずってき たまた父を助けて見せると言ったのは本当 だけれどもできねえものはしち立ちをし たってできゃしねえおいらが嘘をついたん じゃねえ助からねえような事情があっての ことだどこへ出たって理屈の通る話じゃ ねえ かところがおめえは一体どうだおはどうだ よ達は膝を叩い た初めから早気のねえもの自分の焦れてい た男を助けてやると言われたからっ てそのために身を任せるなんざバタバタの すること だ嫌ってきらって嫌い抜かれて言い ながらまたさんがお縄になったと聞いた時 私は何でもする気になっ たこれがバタなら私はバタに違いありませ んバタだバタだそんなやは女房だとは思わ ねえ出てって くれ出ていけと言われ

たっておゆはむせぶように言っ た私は もう出ていける体じゃありはしませ んなんだ と達はぎょっとして振り返っ た女の 体それはもう考えるまでもないことであっ たおゆは背に波を打たせて泣いてい たお待ちくださいどうかどう か騒ぐな おじ悲でござい ますまたは縄を解かれるとともに衰弱し きった体のどこにこんな力があるかと驚く ばかりの腕力で役人へしがみつい た私はお仕置きを受ける覚えはありません 私は物資でございます無本人に頼まれて 仏像を掘ったのは悪うございましたけれど も 隠し道に久保様を呪う文句を刻み込んだ などとそんな大それたことは決していたし ませ ん誰かが私を落とし入れたのでございます それをご戦技くだされば必ずわかります どうかお仕置きだけはお許しくださいまし ご千技の住むまでは何年でも何十年でも おろの中におりますからどうか ええうるさい 話せそれでは片前の達をお呼びください あれなら私の証を立ててくれますどうか達 をお呼びください ましなんと申したところでこと決着に及ん だ今となってはもはや かわ諦めてお仕置きを 受けろ早くこのを柱へつけぬ か はさ神妙に しろ下役人が2人がかりで 引き離す嫌だ話して くれまたは狂気のよう にこんな理不尽なことがあるか罪もない ものを殺すなんてこれは人殺しだ人殺し だ神妙にしろ 必死に暴れもくのを駆けつけてきた同薬4 人がかりでシニに張りつけ柱へ縛りつけて しまっ た助けてくれ達を呼んでくれとわめき叫ぶ また今足の縄をかけ終わった下役人の1人 が諦めろよ またと耳へ口を寄せさい たおめえがいくら呼んだって達の来る気は ねえどうせ死ぬおめえだから教えてやるが な達はこの夏前におゆと一緒になり今は おめえのことなんか考えていられないの だくんななんですっ てまたは愕然と目を開けた

それじゃあの達はお弓 を諦めねえ成仏するんだ ぜまた父は仮面のような顔で中を睨ん だ鈴ヶ森の形状竹洗いの外はありの歯隙も なく群衆がめえて いるの老木を越して海が初中のカットした 午後の日を浴びて光っているそれを前に 57本の貼り付け柱がずらりと並んで立っ たまた7は真ん中の柱どっちから数えても 29番の柱へ括り付けられて いるそう だ今こそ分かった ぞまたは不に叫び出し たこいつはみんな達のこらえた仕事 だおいらの生きている間はお弓が自分に なびかないそこでおいらを片付けにかかっ たのだ ちくしまた七の歯はガチガチと なる隠し道の中に掘ったはずのない字がが 刻み込んであったという があの観音像をあげてから女将へ 差し上げる間にサクをしやがったのだ ん ためその時右の端の方でひいという 凄まじい悲鳴が起こっ た最初の1人が槍をつけられたので ある竹あいの外の群衆が風にそぐ笹原の ように揺れ た よし ほらこのまま死にゃしねえ ぞまた七には悲鳴も聞こえなかった揺れる 群衆も見えなかっ た ほらこの恨みを晴らさずにはおか ねたえこのから 張り付け柱の梅雨になって も生き変わり死に変わりたたって やる達のやを恨みに殺してやるん だその時グっ近くで悲鳴が起こっ たその声は岩をも通す鋭さでまたの耳を 襲っ た はまたはその声を聞いた同時に左の方でも 地獄の大教官かと思うばかりに人の心を 刺し感情をしびれさせるような悲痛な叫び が起こっ た呪ってやるぞ 達または喉を避けよとめえ たまた父は悪霊になって貴様を取りこして やる ぞ3度またの叫びを凌いでダの梅木が 聞こえてき たまたは気を失ってしまっ た誰か呼んでいるような気が

するかかに遠くの方で自分を呼んで いるしかしそれは夢ともつともつかぬ感じ でそう思ったままいつかしらまた根明の中 に意識を失っ たそれからどのくらい立ったで あろうエリスへ冷たいしくのたれるのを 感じてまたはふっ我に帰っ たその時また一しくぽたりと頬へ落ちた ものが ある染みる冷たい一点 だまた父はようやく冷めかかる意識の中 から軽減そうに目を開い た夜 だあたりはうしのように濃い闇で あるどうしたの だ思わず呟いて左右を見 た左にも右ににも張り付け柱が立って いる視力の弱った瞳を定めてみると白の 潮木を血に染めて警察された死体がかかっ て いるぞっとして我知らず飛びのこうとした がびくとも動かぬ手足に はまははっきり覚め た自分も張り付け柱にかけられているのだ そして自分だけは生きているの だ生きて いる私は生きている ぞまたは低く呟いた体を動かして見 た関節は凝って痛い頭もクラクラ するけれど塩木々には一転の血も ないまさにまは生きているのだ死をまかれ たの だ公設つるところによればこの日の処刑は 日没後に及んだと いう57人という大勢を警察するので疲れ きった経理は夜の闇に紛れたのと異常な 疲労で中央にいたまをついに残し忘れて しまったのであると いう ありがたいありがたいこと だ突き上げるように行っ たこれ も 日頃私が仏像を掘っていた利益で あろう最後に作った完全音菩薩に はことに心行を込めてあっ た神音のご だたげないこと だまたは溢れくる涙の中で声をふわせ ながら観音不問本を唱え始め た和地音族尿各衆等化街燃費間能力原則 記事心若草なく林業欲重My燃費感能力 当人だんだん ね一心に念仏していた時ふと形状の向こう の道へ長人の光が近づいてくるのを見つけ

た初めは仕置場の浮上役かと思ったが 急ぎ足に来るのを見ると夜道をかけての急 引役 らしいまたは大声にもしお願いでござり と呼びかけ た普通のものなら人たまりもなく腰を 抜かすか出なくとも夢中で逃げ出したに そういないしかし相手は夜道に慣れた飛脚 だった形状の中から呼びかけられて1度は ぎょっと立ちすくんだ がおじひでございますどうかちょっとお手 をおかしください ましま の2度の声 にだ誰だどこにいるとちちを差し出し ながら23歩寄ってき たこっちでござい ますどこだっ て張り付け柱の上に えさすがに飛脚もたじたじとなったが よほど合端な男と見えてなおも死後ほ進み 寄っ た見るとちまみれに警察された罪人の中に これだけは傷1つないまひの姿が 見えるほお前さん かはいお聞きお呼びでもございましょうが 今日ここで置きになったものの 1人私は物資でまた七と申すものでござい ます おおちょっと主催がございまして友達の罠 にかかり罪な気味で仕置きにかかりました が日頃しずる仏のごしか不思議にこうして 命を助かりまし たついてはこれから頭を丸め一生仏に捧げ て送りたいと存じますどうかお助け ください まし へえ不思議なこともあるものだ なあ飛脚もキーの単性を漏らし た張り付け柱の上へあげられながらたった 1人助かるなんて年代機にもね珍しい話 だなるほどおだとすればさぞかし仏のごし だろうガス私もこんな商売で日頃から仏 新人は欠かさねえ男だ1つ仏様のお手先を 務める気でお助け申し ましょうありがとうございます ありがとうまの声は換気に震えてい た飛脚はふっとちちを吹き消し たその明る朝で ある達が女房おゆと2人昨日の居酒の晴れ ぬ気まずい朝飯の前に向かっているところ へ下ぴきの金が飛んでき た兄はうち かお誰だ金 かおはようと口から首を突っ込んだまま兄

ちょっと顔を貸してくん ね今飯を食ってるが何かようか給養なんだ ちょっと表まで来てくん ね達は箸を置いて立っ た口で目くばせをした金は達を促して路地 の奥にある空地へ来る息をあせながら低い 声 で大変だ ぜままた七の野郎が逃げ たまたが逃げ た何の話だ そりゃまた七だよ昨日鈴ヶ森でお仕置きに なったまた室がいねえん だお仕置きになったものが逃げられる かそれが不思議なん だ金は息をついて 朝になって仕事場の人間たちが見回りに 行ったらまた父の姿が見えねえ張り付け柱 はそのままだが縛った縄は切られている おまけにね柱を調べてみると血の跡がねえ ん だななんだ とどうやらしき漏れになってたらしいその 場にまの着ていた仕事着も捨ててあったが これにも傷跡がねえんだこれでどうした すむをお届け申して今発砲へ手を回して いるがね兄と金は指をしゃくって気をつけ てくんねまたしの野郎あのことを感づいた と見えて張り付け柱の上から体操おを恨ん でいたという ぜあの ん だ俺に隠してもいけ ねえ金声を 潜めあの観音仏の隠し道へ再議長の吉蔵の 野郎に金をやって穏やかならねえ文句を 刻み込んだシらちゃんと知っていたん だどうした と怒っちゃいけねえおら兄に体をいるんだ 今日まで黙っていた以上はこれからだって 決して喋るこっちゃ ねえだがまた室の奴は引き変わり死に 変わり必ずおめえを恨みにしてやると言っ ていたそう だもし仕置き漏れで生きているとすると きっと兄の首を狙ってる ぜ達の顔は死人のように青ざめた また父がどうして気づかぬわけが あろう掘った覚えのない呪文が掘ってあっ たしかもあの仏像に手をつつけることの できるのは彼をあげた達の他に ない惚れにいたおの心がどうしてもまた から離れぬのを知った苦し まれまた父が無本人の島一兵に仏をを頼ま れて掘ったと分かった時これ幸いとばかり

あげた後それだけでは罪になりそうも なかったから馴染みの大工吉造に女を 明かして将軍家を呪う文句を刻み込ませ たもちろん達のつもりでは2年か3年の罪 ぐらいに考えていたところが意外にもまた は張り付けという 断罪これはしすぎたと気づいた時はもう どうにもしようがなかったので ある達は罪の恐ろしさにおいたいく晩も うされた苦しん だそのうち一方にはそれが幸いしたおゆは ついに女房になることを承知したので あるしかし彼女は心から達の妻になるは なかったの だまた父を助けてやると言われて身を殺し たの だ昨日それを確かめてある今日またまたの 生き延びたことを聞こうと はバ だバ だ達は思わず呟い たしかしその後から然と反する力が 盛り上がってき た何よくそどうせ乗りかかった船だ向こう が恨んで狙うならこっちは女の力で向かっ てやる仕置場からの縄抜けだひっとらえれ ば今度こそこっちの勝ちだ見 やがれと歯を食いしった 達よしわかったと金の方へ振り向い たおめえすぐに親分のところへ行ってくれ おいらも後から 行こうがってん だまたの野郎必ず探し出して見せる ぜ達青ざめた顔でにやりと笑っ た前代未もの事件は立ちまち江戸中へ 広まっていっ たは言うまでもなく街道筋欧州から髪型 まで水も漏らさぬ網が張られ た達は元より自分の命を狙われている 恐ろしさ狂気のように本訴したがついに また七の姿は発見されなかっ たそして年月が立っていっ た小方4年の母心のことで あるかずさの国九十久里浜の近くかさ一宮 の下宿のとある宿屋へゆ旅らしい中年の 夫婦がわらじを脱い だ男は目抜きの 達女房はあの時のおゆで あるあれからまさに15年経っ たその間に夫婦のには子供が3人生まれ達 はだんだんと腕を認められて5年後に相 松五郎が隠居するとその後目をもらって芝 一円の束をするまでになってい たこの度は長い間の御用れを休めようと 半月のお暇を願って夫婦ずれゆっっくりと

阿の誕生寺へ産をしてのを回りようやく 一宮へとやってきたのであっ た風呂を浴びてさっぱりとした達宿の浴衣 に丹前を重ねて息の良いコリコリするよう な刺身に水か何かをつつきながらお弓と 差し向かいで逆月を取り上げ たお前様方はお江戸でござります か9事に来た女がお海の方へ飯を出し ながら話しかけ た江戸は体操な賑いだそうで私らも死ぬ までにはいっぺん見物に出たいと思います がこうしてお江戸のお客様を見ると本当に 羨ましくてなりませ ん何住んでみれば江戸も防臭も同じことさ 時たまに来るおいらの方から見れば いそここいらが呑気で羨ましいくらいの もの だそんなものでございますか ねおいらもせいぜい稼いだらいつかこの 辺りへ辞書でも買って隠居するつもりさ その時は姉ちゃんよろしく頼む ぜかしこまりまし [笑い] た時に達はお弓の尺を受け ながら何か土地のことで面白え話はねえか の へえ何しろ返品なところで別に面白い話と いうのもございませんがあははそうそうお 珍しくはないかもしれませんがこんなこと がござい ます女は9字の盆を膝へつい てこの一宮の奥に七山という山がござい うんそこに今から123年も前のこと1人 の旅のお坊さんがいりを組んでお住まい なすったそう でそのお坊さんが妙なことにいりの中で仏 様のお像を掘りなさるの です仏像を掘 るってはいなんでも 米や麦は一切召し上がらず木のね草の実を 食べながら里へも出ずにこもりっきりで 掘っていなさい ますそれがまた高さ1畳もあるという 大きな仏様でもう4体は出来上がり今5体 目にかかっていなさるのでござい ます達の唇が急に引き締まっ たそれでその坊さは何というなだ ねお名前も知れずどこの方か何州の坊さか もわかりませんが近在の人たちは目商人と 言って体操進行しておられます だ年はいくつくらいだ ねさあ私も1年ばかり前に一度お参りをし た時ちらっと見ましたが髪も髭も伸び放題 乞食のようなお姿でよくは分かりませんが もう50の坂は越しているだろうという噂

でござりますだ よ50を越して いる去るもは日々にうしと言うが15年 経つうちにも1日として忘れることのでき なかったまの姿が女の話につれてありあり と思い出され たしかし50を越しているらしいと聞いて 達の胸のおきはやや静まったので あるおゆも同じこと話の始めにはてっきり またと思ってそれとなく見ると夫の表も 変わっていたからどうなることかと ハラハラしながら聞いていたが年の違いを 知って達と同様ほっとし た珍しい話を聞いた木食をしながら123 年も仏像を掘るとはよほど既得なお坊さん だ のさておいらも飯をもらおう か達は茶碗を取り上げ たその夜は早く寝 た歩き疲れで夢も見ずにぐっすり眠ったお ゆがあ朝目覚めたのは日がずっと高くなっ てからのことだっ た手洗いに立って戻ったが達の姿が見え ないどうしたのかと思って女に聞く と今朝早く七山へ行く道を尋ねていなさい ましたから大方夕べお話もした木食商人の ところへでもおいでになったのでござり ましょうはい軽く午前を上がっ てということだっ た七山 へお弓はぎょっとしたがすぐに身じくをし ながらでは私もちょっと行ってきましょう いえご飯は帰ってからいただきますから道 の分かるところまで案内を頼み ますへえかしこまりまし た女は急いで絵花へ降りて行っ たその頃達は七山の谷合に望んだ噂のいり を尋ねあててい た年の違いから1度はほっとしたものの 確かめずにはいられない気持ちから女房に は知らさず起き抜けに来たので ある尋ねあててみるとといりとは名ばかり 人里遠く離れた山太の杉林の中に元は 木こり小屋にでも使ったらしい胸の高い 一軒屋屋根は鎖柱は傾きまるで化け物でも 住みそうなひどい油屋で あるこいつは ひでえさすがの達もそうつぶやいて足を 止め たすると小屋の中から念仏の声が 聞こえる忍者民が子樹脂王楽西仏合神音 菩薩島民氏無人に菩薩 牛主 天竜やしけ 脱観音不問本である

達はそっと足を進めて脇毛の小窓から中を 覗い たいりの中は一方明かりで 薄暗いまず目についたのは壁に沿って暗示 された大きな4体の仏像で あるその前にほとんど掘り上げるとして いる1体があり1人の男が人物を唱え ながらのみを振っているのが見えた 筋になって破れた頃も発も髭も半ば白く なってのみをふう手足まるで枯のように 痩せ細っているだが念仏の声は力に満ち 正規に溢れてい たまた七 だ達はぞっとしながら呟い た やれているがあの 体つきあの声に謝りはないまた七 だまたがここに生きてい た達は全身の震えを感じ た15年の間探していた相手をとうとう 見つけたの だ目明かしとして何十人の古文を使う 身の上になってもうつに夢に命を狙われて いる 恐怖3人の子をなしながらどこかに ぴったりしないところのある夫婦の 中それはただまたがどこかに生きていると いう原因から来ていたので あるしかして今こそ彼を突き止め た達は小を離れるといりの前へ回ってとア を引き明け ながらまた し神妙に しろと叫ん だ念仏の声が旗と止ん だのみを持った手がぴくりと震えながら 止まっ た そしてまた室のやれはてた顔が静かに 振り返っ た誰だ 目抜きの立だしきからの縄抜け 教場今だまがれねえ ぞ 立達 か神妙にお縄を頂戴 しろ言いながら踏み込んだ達ぐいっとまた の肩を つむ右手に鳥を取っていきなりそこへ ねじ伏せ た長い間の木食 商人すっかり体の弱っているまは横便を床 へすりつけられたまま必死の声 でま待って くれ待ってくれ

達と悲痛に叫ん だどうか待って くれなるほど 私は仕置場から縄抜けをし たけれどもそれ以来頭を丸め世を捨てて この山の中へ引きこもって いる他に何の望みもない が物資として世に残る仕事がしたかったの だあれから15年 私はごち物を作ろうと発信して見てくれ ここに4体できて いるまたは震える手で指差し たあと1 体釈迦如来の像もこの通りもう少しで 仕上がるところ だ体もこの通り弱っている しごちにらすっかり出来上がれば生きて いる欲もないまた室 だすまないがもう 少しこのシカ如来を掘り上げるまで待って くれなら ねえ達はあけるようにかぶりを振っ た 女からじって鳥名を預かっている俺だ強情 持ちを突き止めて待てもクソもあるものか 行けねえと言ったらいけ ねえそこをおしてのお願い だできないところだろう がせめてあととかいや7日でも いい昔の友達のよみで どうかしばらく待って くれこの通り一生のお願い だこれが仕上がれば必ずお縄を受ける からくどいこの後に及んで虫のいい語たを 抜かすなさあ信明に しろわめきまたの腕をひねりあげる うまたは歯を噛みならし たた 達それじゃどうでも待てねえの か知れたことだ野郎動くな あ凄まじくうめえて羽をきようとする腰骨 タはぐいと膝頭で殺して素早く縄を打とう とした途端にお前さ待って おくれと叫びながら駆け込んできたおゆほ と驚く達の聞き手をつかんで女ながらも 懸命の力だっとまた下から 引き離すててめえ おとよろめく達の前へおゆはまた七を背に 囲ってすっくと立った 様子は表で聞きまし たおゆは青白い顔できと 言う7日の間待てというお 頼みどんな鬼だって待てぬと言えるところ じゃありませんお前さん私からも改めてお 願い申しますどうか待ってあげてください

ましもしそれでもいけないというな お弓を先に縛って くださいまたさんが強情持ちになったのも 元はと言えばこの私から起こったことおゆ も共にお名をいただき ますリンと言い放ったお弓の眉には一歩も 動かぬ決死の色が浮かんでい た達は呆然と手を下ろし たあたんたる部屋の中にしばしは3人の 荒い伊吹だけが聞こえてい たおゆは やがてお前 さんと低く愛願するように言っ た待ってあげてくださるでしょう ね達はふに速歩を向きながら頷い た あ 待ってあげてくださるんです ね仕方がねえお前までがそういう なら7日の間待って やろうほ本当 か ありがたいまたは狂気しながらひふし た ありがたいこの通りだ 達この通りだ 達は苦しに背い たやっぱりお弓は俺のものじゃなかっ た今は悲しい諦めが楽員のように生々しく 心に掘り込まれたの だ達は速歩を向いたまま鳥名をしまうと どこか寂しげな見なしで帯を締め直した 達は背いたまま でおらこれから江戸へ行って飯とりのお 差しを頂いて くる後のことおゆおめえに任せるから毎日 にも逃がさねえようにそばを離れずついて いろ意外な言葉に驚くおゆには目もくれず に行っ た6日時7日目に帰ってくるからそれまで に仕事をしまっておき ね 達この恩は忘れない ぞおゆまたの 体おめえに預けた ぜそれじゃあ私はここ に7日残ったぬかるなよ 言捨てると達は何やら言いたげなお弓には 見向きもせずいりを飛び出してそのまま山 を降りていっ た後に残った2人はしばらくそのまま 身動きもせずに行っ た不思議な巡り合わせで ある15年という年月は短くはないがなん という男の代わりよで

あろう地獄へにあるガキのように痩せ細っ た 体四重そこそこの身で髪は灰色になり目は 落ちとみ頬はこけこれが生きた人間かと 疑われるばかりの有様であっ たまたさすみませ んおゆは割れるように叫ん だそしてまた父の前へくれながら涼の多元 に声を包んで咳きあげ たお前をこんな姿にしたの もみんなみんな私というものがいたから です堪忍して ください許してください ましいいよいいよおゆ さんまたは静かに頷い たもう済んだこと だこうなるのもみんな約束ごとなん だあれから15 年達も随分苦しんでいまし たどんなに苦しんでも足りない 罪天罰のないのが不思議なくらいです がその罪も元はと言えば私にあるん です分かっている よ私も達のしたことを知った時 は七章までたたって恨み殺してやろとまで 考え たよくわかり ますもありませ ん しかし不思議に命を助かってみる とそんな恨みよりも大事な仕事があるのに 気づいたの だ達を1人殺したって何に なるそれより千年の後まで残る立派な仕事 をしてご理性で助かった命を ろそう決心をしたん だまの声には力が出てき た見て おくれ15年の間目近をしながら私はこの ごち如来を掘ったこの一体が仕上がれば私 はいつでも喜んで 死ねる私の体は死んでもこの如来は残るの だ物資また室の名は1000年経っても 滅びる時はないの だまた さんおゆはそれを遮っ たどうかここを逃げて ください 逃げろ何のために逃げるの だうちの人は戻ってき ます達はお前が生きている間は安心でき ないきっと戻ってきてお前をお縄にします どうか今のうちに逃げて ください私は逃げ ないもう逃げるようはないの

だ7日のうちに残りを仕上げれば妙にお縄 をいだくつもり だ今の私にはこれ以上生き延びる気持ちは 少しもないの だそう言っても私の気が済みませ んおゆ さんまたは静かに笑い [音楽] ながら打ち明けていってしまう がまたしは恨むどころか 今ではタのしてくれたことをありがたいと 思っているのだ よそれはどうして ですあんなことがなければ私は一生ダのり で終わったかもしれ ないそれが自分でも許すことのできるこれ だけの名作が それはみんな達のおかげだとも言えるの だ まそんなに までご地物を仕上げた後どうして送ろうか と暗示ていた がどうやらこれで先度も決まっ たこれからはもう安心して最後のが握れる の だまたはそう言うとのみと小槌を取って よろめく足を踏みしめながら立ち上がっ たそれからちょうど7日目で あるおゆの悲しい 海ぞく夜の目も合わさず仕事を続けたまた は6日目の夜から明け方にかけて手を休め ずに仕上げを急い だ濃いい背主上尿と若生明者 親族尊徳 下立頭胸の声だけが陰陰としていりの闇に 流れて いるお弓は隅にいんでまるで悟校でも刺す ようなまの姿を見守っていた 時は立っていっ た古いの闇はいつともなくうらんで谷合 から生いのってくる霧が小を忍び込んで 透明の日にもつれたのも しばしやがて東の方から赤赤と朝日の光が 差し始め た最初の日光がさっと流れた時で ある仕上げのみを控えで2散歩下がり ながらじっと仏像を見つめていたまた七 はできたと言ってのみと土を取り落とし たでき たでき た狂気のように震える叫びだっ たお弓は引きずられるように立っ てまたさん と呼びかけ たおゆさん見てお

くれごち物全部出来上がった よ15年がかりの仕事 がこれでようやくし上がったの だ ありがたい ありがたいまた父は溢れくる涙の中から 叫んだ みんな見仏のおかご だなかぜのん 菩薩照明人物をしながらひれ伏し たおは胸へ突き上げてくる感動に思わず また室のそばへ駆けよろうとしたがその時 いりの外へ23人の人の足音が近づいて くるのを聞きつけはっとしてそこへ 立ちすくんだ ここ か外で声がして雨を叩く 音 はいと答えておゆは雨戸を開け た表には顔見知の町回り同心森内中三と 組下の 1人横手に達が表を伏せて立ってい たおを見ると森内三 が物資また室はいるであろう な はい通るぞと言って内へ入っ た2人もそれに続いて 上がるおゆは先へ回ってひれ伏している また下の耳へ口をつつけるようにし ながら もしお役にが見えましたとささやい たまたは照明念仏をやめてお弓の顔を見た がその意味を悟ると静かに頷いて絵門を くいながら向き直っ た私がまた7にござり ますお手数をかけて申し訳ござりませぬお いでをお待ちもしておりまし たどうぞお縄 を森内中三は頷いて顔を 和らげ神妙じゃ今おのおたしを申し聞かし て やる慎んで賜るが 良い恐れいり まする その方 義仕置場より縄抜けをいたしたる 大罪きっと音にも及ぶべき ところ張り付け柱にかかりながら不思議に 処刑をまかれその後出家いたし同心健康に 目近をしつつ五体物を掘り上げし重き既得 の 至りかつは1度刑を行われたるものなるに よって特におしめされるところこれあり前 の大罪誤斜面遊ばさる以後お構い なしとある

ぞありがたくお受けをいたすが よい な何ご 斜面のけぞるばかりに驚くまた お弓も我れ知らず膝を乗り出し た森内中三は頷い てなおこれは未だご内定であるがと優しく 言っ た柴高に人寺を賜りその方の掘った五体物 を安置し生涯その寺の住職を申しつけ られるとのごない だ お仏を運ぶ者たちの諸費用女将の誤配と まで大体決まっている ぞ重ね重ねの意外さにまた七よりもお弓の 方が夢かとばかり呆れ た努力は報いられ たそがずしておか縁は注がれ た引きかが群がり起こってまたは富に 答える言葉もなくそこへ平服してむせび あげるばかりだっ たようやく登り始めた朝日の生き生きとし た精神な光が小から散々と差し込んでまた の灰色の髪を遠行のように照らしてい た の言葉通りまたのご物は江戸へ運ばれ高の 原へ治められ たそしてまたは目単勝と名乗って修正その 寺の住職として過ごしたと いう達はまもなく御用聞きをやめ裏へ 引き込んで勝になったが夫婦はよにくなり それからまた1人子が生まれてまず安楽に 用を送ったと伝えられて [音楽] いるM

朗読:古沢久美子

2 Comments

  1. 結果 ハッピーエンドで 良しなの? なんだかな😢と思っちゃいました。
    わたしは このおユミという女性 好きになれません。
    だって、女の愚かさ 一途さ、我儘さ 世の女性 みんな持ってるものを こうあからさまにされちゃって。
    周五郎先生 女性には ちょっと厳しい、と思う。

    わたしのせいで 二人の男が 争って、好きな男を助けるために もう一人のほうに 本人は(死んだつもりつもりにでもなったかのように)嫁に行ったのか〜い。
    女の 浅はかさと傲慢さを 感じずにはいられません。
    長い年月 夫のタツジは 良心の呵責と報われない愛に苦しみ、
    又七は友と 愛する女の裏切りに 絶望と怨念に苦しみ。
    でも、長い年月と 男のそれぞれ置かれた場所が人間としての器を広げた様に思います。
    でも おユミは 同じ場所で ずーっと苦しんでいたのですね。
    愚かかも
    だから 女は強い!
    変わらず一念通す
    最後は 納得の 周五郎先生。
    (女性に 敬意をお持ちですね)

Write A Comment