『魯山人の美食手帖』【北大路魯山人】 「握り寿司の名人」　朗読　解説　すき焼き　美味しんぼ

『魯山人の美食手帖』【北大路魯山人】 「握り寿司の名人」　朗読　解説　すき焼き　美味しんぼ

東京における戦後の寿司屋の繁盛は大した もので今では一の10倍もあるだろう魚と 飯が安直に一緒に食べられるところが時代 の人気に投じたものだろうしかしさて 食える寿司となるとなかなか 少ないこれは寿司屋に調理の理解がないの と安くして評判を取るために粗末になる からだろう現に新橋付近だけでも何百件と あるであろうこの中であげるとなると昔名 をなした新富その弟子の新富視点旧米下っ て寿司線暗いなものだろう安田幸彦さんが 看板を書いてるのもあるがこれは主人が 作家でないらしく全ての上で私の気にいら ない一体寿司のうまいまずいは何としても 魚介原料の問題で第一に素晴らしいマグロ が加わらなければ寿司を構成しないその他 本場物の穴子の煮方がうまいとか赤貝なら 毛皮の中型赤貝を使うとかでよ足は分けも なくわかるがとにかくまず材料が良くなく ては上等寿司には仕上がらないのりも良く なければいけないのはもちろんであるノり も分厚なものが薪に適するが熱いものには 良いものがないが分厚でありながら良い ものを備える必要がある米これは福島編が 一等で新潟のも使えるしかしその炊き 方程度が難しい酢は米と称するものが1番 で関西寿司の持ちうる知らずではだめだ飯 に3分好きくらいの色が尽くすがうまい それから飯の味付けは髪型式に米の中に 昆布砂糖などで色々噛みしては江戸前には ならない塩酢だけの味付けが本格である また飯の握りの大きいのは安物である 大きく握るものにろな寿司はない小にぎり が上等品となっている一等品は贅沢屋の 食べるものだから寿司に生姜をつけて食う のは必須条件であるがなかなか 難しい生姜の味付けに甘ずにひすい絵も あるが江前としての苦労が足りないさて こんなことをつぶさにえてる寿司屋は なかなかあるものではないただし先にあげ てみた34件の中にはあるしかしこれにも また色々長短があり一概には言えぬが実は これを見破るほどの食通もいないので商売 繁盛客にも分かる人は極めて少ない寿痛と 自称多少する連中も大抵はいい加減なハカ でそれならこそまた寿司屋も息をつつける というものである寿司は結局寿司屋が作っ てるか客が作ってるかということになる見 ているといい客はいい寿司屋に行き悪い客 は悪い点に行く寿司屋と客とはゴブゴブの 勝負で各点それぞれそれらしいのが来て いる近年は寿司屋も進歩して九兵衛の ごとき人の噂では愛川義助沖が講演して 近代感覚の素晴らしい店構えを作っている それがために従来にない客を揃えて寿司を

思わせているまた最高した新富寿司も今 までに見られないものを持って望んでいる これもまた寿司王国を示しているこんな風 に寿司屋は裁ではぐんぐんと万事に改良し 進歩を示しているしかしこれが一般向きの 店となってはなかなかそうもいかぬようで ある第1に客種に問題があるのだろう以下 1について各点主人の持つ寿司感の長短を 上に載せてみよう終戦後闇屋という業商人 が大活躍し取り締まりなど何恐れるところ なく日々東京に入り込んでちゃっかり商売 したものであった売り込み先は各方旅館 特に寿司屋を宛てにして新潟福島秋田など からたくましくも行商に来ていた東京では 首を長くして持ちこがれているという様子 が彼ら闇屋の目には鋭く映るのだろう 寿司屋を始めようが料理屋をやろうが担屋 にさえ頼めば米に不自由する都会では なかったこの頃の東京は見渡すところ寿司 やばかりの食べ物横長かと思わせるほどの 軒並みであったうのたけのこどころの騒ぎ ではないしかし我々が言うスシラシー司を 作る店は相太安く見当たるものではなかっ た我々とてのきな食って歩いたわけでは ないが通りがかりに横目で見て常駐下 どんな寿司を売る店か分かるのであるろ こうなるまでには大ぶ寿司台を払っている 心あるものは贅沢屋の評判ある有名点に 飛び込んで経験する他に近道はなかろうか と言って20歳や30歳くらいの青年期で はス減がどうのマグロの本場も間違いも などと見て取れるはずがないよかれあかれ 何でもかでもうまく食える大方の青年層は 分断に食えるばそれで大満足というわけだ から寿司屋の高兵はまず分かるまい寿司ダ は小遣線が会長に回るようになり年も40 の坂を超えようやく口がぜってきてからの ことになる飯を少なく握れのわさびを効か せのトロと中トロの中間が良いのという ようになってくるのはこの頃からでその 連中は昔だと茶の熱いうまいやを喜んで 寿司を味わったものだだが今日この頃の ものはいきなりビールだ竹寿司を酒の魚に 楽しんでいる寿いのアプレである戦後寿司 が立ち食いから椅子にかけて食うように なったせいであるこの傾向もなかなか勢力 があって上等の寿司屋はおか腹の腹ない 大形寿司を作って飲ませるように技を進め ついに1人前の料理屋になったからだ今1 つの神傾向は女の立ち食い腰掛け食いが 驚くほど増えてきて男と同じように私は トロがいいや赤がだウだと生息をやって 奮発させられることしばしばという次第だ 寿司においてはいち早く男女同権の世界に 負を進めたようだ島田の時代には売り物に

ならなかったご面想が口紅につくれない ハイヒールで堂々と寿司通仲間に侵入し はりを聞かす時代になってしまった昔なら ほとんど見られなかった風景である この調子では今にトマトの寿司コンビーフ の寿司サンドイッチの寿司とんかつの寿司 など総意操作がむやみやたらと現れ江戸前 を誇ったイ肌の寿司屋など後を立たねば ならなくなるだろうサンドイッチの寿司 だって本当に現れないとは限るまい飯と パンと同時に賞味できるからだ150年 くらいまでは京橋日本橋あたりの目抜きの 場所といえば相当や寿司屋もあり やかましい食いもあったその当時新橋駅 付近に千なりと名乗る佐野の料理職人が 度胸浴寿司や家業を始め大衆を相手にして いつの間にか職人中数人を異性よく顎で 使って三流寿司を握り出した千なりは デパートにマネて寿司食堂を作り数多くの テーブルを用意し1人前何ほどと低下の つくささ寿司を売り出したこは安直本位な ので世間にパッと広がってしまったそして ついには東京中二寿司食堂が氾濫して しまった江戸前寿司の誇りを失ったのは この時からであるさてスシ寿司にはどんな 特色があるだろう寿司ラシー寿司という からにはもちろん一流の寿司であって 気の毒ながら大衆の口に入る寿司ではない 今でもひさ握りが7つや積もられて50円 とか80円とかの縦看板もあるがこれから 話そうとする寿司はそんないかさもをさし て言うのではないただの1個が50円以上 100円の握りを刺すのであるしかしいさ もの多い中に良心的な本物も何ほどかあっ て私などは成果の食べ物に困りきっている 時など大いにそれで助けられ大船から暑さ を意図せず毎日のように新橋へと足を 伸ばしたものである 一流のマグロというものは最高の神戸肉や もがのうなぎを何倍か上回るほど値段の 高いものであるが食べてみればそれだけの 価値を持っていることは人々しく認める ところの事実なのだからどうにも仕方が ない私など健康への投資と考えて夏中一流 のマグロで暮らすことになるところでその 一流のマグロを常に備えて味覚の確かな客 を待ち構えているというのは花少ない常も 寿司屋を発見することはお客にとってまた 苦労の種である寿の上等もやはり材料が 問題である1西上のコニー型福島秋田鍋の 骨2歳上の素赤ず米ず3歳上の魚介類大体 において1番高価な相場のもの4歳上の ノウでの草を持って熱く作ったもの5歳上 のが姜の良品新生がは不可以上の材料さえ 整えばまずうまい寿司はできるのであるに

も関わらず最高の一手を打ちえないのが 一般の寿司屋である東京で見る寿司屋の 看板の全ては京阪地方においても同じ 握り寿司屋である限り皆が皆江戸前なる さじを特筆対処している江戸前の寿司と いうものはよほど注目に値し魅力にむもの らし 握りが自慢になるのは髪型寿司の不のみに 出し正規を書くところに比較してのことで あるあえて江戸前と書く遊園は髪型寿司と 江戸にぎりとの総意をはっきりさせ江戸前 が断然うまい点を認めその寿司を食べ させるんだというところにあるとにかく 江戸前寿司は日本中に有名になったわけで ある江戸前寿司の髪型寿司と異なるところ は材料味付け及び義法のにあるこれは言う までもないがまず第一は正規のあるなしで ある江戸前寿司は簡単でザックバランな 調理法を用いお客の目の前で息のいい ところを見せ関心させながら食べさせる ところに特色があるそれにマグロの脂肪が すこぶる濃厚でありながら少しも後口に 残らぬという特徴があってまさに東京名物 として近常花を添えているこの頃流箱寿司 は髪型のどこの地方にも流行ってはいるが 慣れ寿司を貴重とする調理に息のない やったさが即興に生きる江どっこにはとん と迎えられる様子もない私は当然のことと あえていかし思わないけだし江戸人と神人 との総意があるしかし今日どこにでもある 東京の握りを真似したいかがわしいものは 江戸前が残念がるみに江戸前寿司と看板に するす無責任さは席せねばなるまい何は ともあれ大阪の箱寿司が握りに圧倒された のは寿いの勝で寿司屋の負けであるこんな ありよを悔しがり片地を張って軽大阪明大 の寿司屋レが握り何者ぞとばかりやり始め たのが今日京大阪に見る大看板の握り寿司 であるがまるっきり問題になるものでは ないサマネというやつで国慶である いわんや他の地方のものは食えたものでは ないなくてはならぬしマグロを始め何1つ 材料になる適当な魚がないその点が最大の 原因となっているだが彼らにはそれが一向 に分かっていない私は京都に生まれた関係 で京阪のうまいものはおか知ってはいるが 江戸前寿司の気力あるうまさにはさすがの 国もカブトを脱がざるを得ないと入っても 江戸を専業としている今日の東京の寿司や 必ずしもうまいというのではない何事に よらず一概の論はよろしくないうにしても 寿司同様東京名物中の名物であるが今日 この頃では昔通りの日本位であるとは言い がいとはモーセ東京のウナは無視て役から 出し殻のようなもので決してうまいとは

言えないとよく関西のウナギ屋がけなして いるが聞に絶えぬ電飲水だこれは味覚の 本領をついた上での話ではなく無責任に 聞いた風なことを言っているだけのことで 論にならない進歩を知らないう屋として 気の毒なことだとしか思えないうなぎ屋だ からと言って決してうが分かるものでは ない例と言えよう東京のうにかかっては 大阪の原子焼きは無常健幸福せねばなる舞 それにも関わらず直焼きを誇るがごとき 笑うに絶えたる老と言うべく一刻も早く 改めねばなるまのみならず養殖のウギを 持ってうの論をぶつのは愚かと申すべき だろう寿司にしてもウギにしてもその材料 の量費間のみに頼ることが必要であろう 良い材料を使う寿司は高いのは当然だ効果 を呼ぶものにはそれぞれ理由があるその 理由をわきまえず単に金高のみに行して 驚くのは野暮である高い寿司には高いだけ の理由があってむやみに金歯刈り取るのは どこにもないようだ寿司の相場も実の ところ味覚に通じた客人が決めているとも 言える見つきの風格書道具材料及び原料 衛星設備その他職人女中にしても一流好み を狙い全てが金のかかった業体をしてさあ いかがと待ち構えているかいないかが うまい寿司まずい寿司安い寿司高いの別れ であるところで過な高級道楽食の店を新橋 界隈に求めて一体何元あるだろうか もちろん立ち食いそのままの体でよくでき ている店というならば何元でもあるには あるが実際には羊頭を掲げて苦肉を売る たいが大部分であることに近頃流行の ガラス囲いに材料を山と盛りお客さん いらっしゃいと待ち構えているような大 多数の店は寿司屋とは言いがい差詰新橋 あたりを例に私の趣味に合格する店は23 件であろうその1件に近頃立ち上がった 新富本店及び終戦後直に見開きした新富 視点があるこの本店はその昔意健康で名 なした名人寿司として有名なものであった がキリもおいてはの霊に漏れずついに十分 の正規は消え去ってしまったそれから見る と視点の主人みっちゃんは年齢40の 働き盛り相当の腕を持っているところから ようやく認められつつある本店の方は前述 のごとく赤実のおかはないが視点得意の 腕前は現在新橋の寿司屋としてはまず第一 に指をくすべきで本店の発は継がれたわけ であるしかし四天みっちゃんの方はうまい にはうまいが旧式立食系なる軒先の焦点で 強調であり粗末であり向きではないただ 幸福の喜びを感ずるのみであるしかし本店 の親父がジャズ調であるのに反し視点は自 田町というところで意も静かな一見容姿風

の歯がゆいまでに大人しい男毎朝魚がしに 出かけ帰るや直に仕込みにかかるEがたけ て客を迎えるまでには相当時間を用し生後 に間に合うことは極めて稀で2時頃表を 開けるのが日常となっている1人の小僧も 小女もいない1人きりの仕事だからである 妻女はあっても子供の世話か何かで23時 頃でなくては出勤しない茶を入れるくらい の手伝いで親父を助けるところが関の山で あるしかし一理一概あってそれなるがゆえ に全く1人芸の現れがあり個性的な点から 言えば申し分ないが手が回らぬという恨み が伴いその結果大切なの出来がいつも不 完全で私は何度注意したかわからないが今 もってその兵は続いている命取りだ次が西 銀座に素晴らしい店舗を持つ九兵衛である この店の主人は珍しく人物ができていて 寿司屋にしておくのには惜しいくらいの男 である幼少から寿司屋として育ってきた ためそれなりの寿司屋になっているがもし 大学でも出ていれば現在は少なくとも局長 時間は愚か大人級になっていたかもしれ ないともかく苦労を積んだ頭の良いできた 人物と言えようその気骨量意健康たきがま は今よ一心助けと言ってよいこちらがへな チョコでは送れを取って寿司はまずいかも しれないそんな男であるから気難し屋で 鳴っている愛川義助沖に早から認められ戦 中ことに戦後は川沖のひ大なるものがあ ようである寿司屋としての転倒は国際 寿司屋形式を排し一躍近代感覚に富む ところの新建築を持ってアゼたら閉める ものがあり高級寿司屋を説明してあまり あるものがあるしかし構はただ九兵と書い てあるのみ寿司屋とも何とも表現してい ない何知らぬものにはちょっと飛び込み にくい要素を停止ち俊順ついには素通り するものも少なくなかろうそれがため店内 にぶ客種は普通の寿司屋に見るようにA級 B級C級と混合していないのが特色である A級にあずばB級といった具合で夜となく 昼となく凄まじい勢いで繁盛この上もない おそらく東京にある寿司屋をしらみつぶし に調べても中夜これほど一流人が店内に 充満している店は九米をおいて他にはない であろうこれは寿司そのもののうまいこと も去ることながら米の人間的魅力に惹かれ てくるんだと見て間違いない頭がよく嫌み のない米の人そのものに惚れて通ってくる ものばかりと言って過言ではないしかし 設備は十分主人は面白いがしそのものの 作品価値をどの程度持っていくかを検討 するとこれを私は色々の点で救命しようと するのだがまずどこへ出しても決して遅れ を取るものでないということは確かである

しかし残念ながら新富視点に劣る天なしと は言いがたい材料種として魚介の目利きの 点においてはある程度みっちゃんが優れて いるように思うと言っても双方それぞれに 特徴があって米を高しては断然休兵が優れ ているのを買わせても彼がまさっている しとみっちゃんは魚を見ることに私は関心 しているなかなかの目利きであるがどうも の先と飯の炊き方は兵に劣ると私は見て いるその理由はみっちゃんという人物が 元来大阪京都で育っている人間であるため の先手にはどうも目の効かないところが あってたまに傷というところである用いる ところの素と言うと双方ともまず似たり よったりで大差はないがす加減となると赤 ばかり持ちいるみっちゃんに旗をあげて いいそこで両者の高を論ずるに当たりなく ては叶わぬマグロの場合を注目してみよう これはみっちゃんの毒男性であるただ飯の 握り方にはいかんな点がみっちゃんにあっ て第一大きすぎる恨みがあるキベのは贅沢 寿司として文句なし握り具合は程よい特色 を勇し酒の魚になる寿司であるもし九兵衛 がマグロの選択をさらにさらに減にし切り 方を応用に現在の倍くらに切ったとしたら それこそ天下無敵であろう彼には彼の寿司 感があって結局マグロはそう大きく切る ものではないという潜入感を信念として魚 の切り方には彼の気骨にも二貧弱な切り 具合が見られるおそらくそれは彼が幼少を 育ったミという寿司屋の影響によるところ が台であると考えられるこのミという 寿司屋はかつて内小島への出前何百人と いう出前を扱った寿司であるというから 名人芸を云々するよりもむしろ事業的に 成功した寿司屋であったように思われる そこで育ったのが九兵衛で彼に名人芸が あるとすればこれは承徳で主人から教えて もらったものではあるまいそれで魚肉を 薄く切る老酒が今に残っているものと思う およそ潜入感とは恐ろしいもので誰であっ ても1度身についた潜入感は容易に改め られないものである ある時寿司台の前にざす客が彼にもう少し 熱く切ってくれと希望を言った彼は寿司 ですからねと言い切った光景を私は隣席で 見たがついに彼は改めなかったマグロと いうものはむやみに厚切りするものでは ないという彼の信念が現れていて面白い そこへ行くと新富店は本店の主人に従って いたためかいさこの方にいせな名人派と いうものを受け継いでいるマグロの切り方 が第一それである戦後のこと魚がしに マグロが2本か3本しか来なかったと言っ て普通の店舗に入らなかった場合にもこの

店には堂々たるマグロが備えてあった他の 寿司屋ではそうはいかない九兵衛もマグロ となると平均してみっちゃんには及ばない この一心助けにしてこれはいかなるわけか と坂会議の念を抱かざるを得ないしかし 寿司は飯しの寿司だと言える胃の水加減が 悪かったりすれば結果は寿司になるべき第 一義が失われるうなぎ屋の飯寿司屋の飯は 生命であるこの飯をおろかにしたのでは 寿司にはならないよき飯を炊き夜寿司を 作らんとすれば1人仕事ではダメである 毎朝魚がしから持ってくる魚穴後回答には 色々手のかかる仕事が多い小肌のごとき いずれも寿司の種になるには小さな魚に 体操な手数がかかるこれを1人で処理する のは所詮無理であるこのように寿司屋の 下仕事はたくさんある四点みっちゃんの ように下仕事するもの皆無でそれを処理せ ねばならぬところに無理があるそのために Eがうまく炊けないという結果が生じて くるのだまにはがゆいような話である助手 数と使わない小女数と使わない 女房の手伝いすら大して受けないこれでは 仕事の伸びようはずがないこれだけの義量 を持ちながらこのままで小さく終わって しまうのは惜しいように思われるもっと 多くの人を喜ばせもっと多くの人を楽しま せたらどんなにいいだろうと思うが人間の 気量は別でこれ以上伸びなければ仕方が ないそこへ行くと急兵は全く違い性活発で ありその明解な性格に人はおか惚れ込んで 彼の店にお百度を踏みつつあるのが現状だ 寿司や九兵衛の魅力は大したものである 寿司の魅力すなわち人間の魅力である しかしここで我々が考えさせられることは 新富視点みっちゃんの場合遠慮の塊りの ごとくこごまとしながらド切った寿司を 作るということここが面白いところである のごとき堂々たる人間が必ずしもどぎった 寿司を作らないという点を我々は愛しく 考えるのであるかく見える人間が ふてぶてしい作品をなしたましい九兵衛の ごときがこまごまとしたみっちゃんに及ば ないという一点があることは一教彼ら両人 を作った教育環境が大きく影響している ものと考えて良いであろうしかし核の ごとき酒の飲める寿司ができたのは戦後で ある戦前は茶で寿司を食っていた何がそう させたかと言えばそれは寿司屋が椅子に 変わったせいである椅子がなければ昔の ように立ち食いをしていたであろうが現在 では立ち食いの店構えを持ちながら椅子を 置いている椅子があれば酒が欲しくなる これは終戦直後料理屋が不自由であり勢い 料理が高額であったから寿司で酒を飲む

ことついでに飯を食うことを酒飲みが発見 たのであるこれなら色々の魚が食えて飯も 食えるから料理として満点である高級料り 屋では自分の好きなものばかり食うわけに はいかないが寿司屋ではマグロ赤貝を食う というように色々なものが食えるこの点 食べ物の自由があるしってこれほど重宝な ものはないしかしこれは寿司屋と呼ぶより 自由料理屋と呼んだ方がふように思う従来 とは全く様式の異なった新日本料理が 生まれたの だ北王子土山人につい て北王子土山人1897年から 1966年は日本の文学者評論家小説家で あり幅広いジャンルで執筆したことで知ら れています彼は特に昭和時代初期から中期 にかけて職文化や日常生活に関するエセを 多く執筆しました北王子ロサ人の筆致は 軽妙でありながら深い洞察力とユーモアを 兼ね備えていました

「魯山人の美食手帖」「握り寿司の名人」　北大路魯山人
朗読　解説　すき焼き　美味しんぼ

東京における戦後の寿司屋の繁昌は大したもので、今ではひと頃の十倍もあるだろう
肴と飯が安直にいっしょに食べられるところが時代の人気に投じたものだろう
しかし、さて食える寿司となるとなかなか少ない
これは寿司屋に調理の理解がないのと、安くして評判をとるために粗末になるからだろう
現に新橋付近だけでも何百軒とあるであろう
この中で挙げるとなると、昔、名を成した新富その弟子の新富支店、久兵衛、下って寿司仙くらいなものだろう
安田靱彦さんが看板を書いてるのもあるが、これは主人が作家でないらしくすべての上で私の気に入らない
いったい寿司のウマイマズイはなんとしても魚介原料の問題で、第一に素晴らしいまぐろが加わらなければ寿司を構成しない
その他、本場ものの穴子の煮方が旨いとか、赤貝なら検見川の中形赤貝を使うとかで、よしあしはわけもなくわかるが、
とにかくまず材料がよくなくては上等寿司には仕上がらない
海苔もよくなければいけないのは勿論である
海苔も部厚なものが巻きに適するが、厚いものにはよい物がないが部厚でありながらよい物を備える必要がある
「米」これは福島辺が一等で、新潟のも使える
しかしその炊き方――程度がむずかしい
酢は米酢と称するものが一番で、関西寿司の用うる白酢ではだめだ、飯に三分づきくらいの色がつく酢が旨い
それから飯の味付けは、上方式に米の中に昆布、
砂糖などでいろいろ加味しては江戸前にはならない、塩、酢、だけの味付けが本格である
また飯の握りの大きいのは安物である
大きく握るものにろくなすしはない
小握りが上等品となっている
一等品は贅沢屋の食べるものだから
寿司に生姜をつけて食うのは必須条件であるが、なかなかむずかしい
生姜の味付けに甘酢に浸す家もあるが、江戸前としての苦労が足りない
さてこんなことをつぶさに心得てる寿司屋はなかなかあるものではない
ただし先に挙げてみた三、四軒の中にはある
しかし、これにもまたいろいろ長短があり
一概にはいえぬが、実はこれを見破ぶるほどの食通もいないので、商売繁昌、客にも判る人はきわめて少ない
寿司通と自称他称する連中もたいていはいい加減な半可通で、それならこそまた寿司屋も息をつけるというものである