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「暗がりの乙松」山本周五郎【一度は読みたい名作】



「暗がりの乙松」山本周五郎【一度は読みたい名作】

暗がりのお松山本 清五郎越になってすっと少子を開けるその まましばらく屋内の様子を聞きままして からそっとろ返し伸びれた途端に キリギリス裾もたも濡れ縁に隣の部屋から 錆びたいい声で歌い出すのが聞こえてきた またかのびのさじは舌打ちをしてすまった ここは伊豆の手前寺佐屋という当時宿の2 階だまだ駆け出しのこすっとのびの3は 江戸の仕事に足がついてどうやら体が 危なくなってきたから23年旅をかけて腕 を磨こうとわらじを履いて入ってきたのが この当場であっ たこの宿へついて遠かめ早くも見かけた目 が2つその1つは3日前にこのの佐屋の2 階の離れへ泊まり込んだ客のずっしりと 思い懐である旅へ出ての手始めサジは 気負ってこいつを狙っ たところがここに妙なことが起こったと いうのは宿の寝静まるのを待ってサジが 自分の部屋を抜け出す途端に隣の部屋で ハウを歌い出すものがあるそれがまた 不思議にサジの腹へビンと響いて どうにも足がすんでしまうのだ今夜もこれ で2度目になる ちくしサジは口しそうに呟いた高の知れた ハウタングレーがなんでこんなに払い 答えるんだか前提わがわから ねえ小をひねる耳へあけるように歌は続い たよく聞けば箱根から先には珍しいその節 であるとも言えぬ渋い節回し 様を待つよの窓のささ梅雨の気配も浅まし や朝の半の 小巻こっちが部屋を抜け出すと同時に不調 を合わせたように歌い出す相手こいつは ただ者でないぞと腕組みをした さじ待てよその節で文句はいつも キリギリスその節でキリギリス どこかで聞いたことのある文句だ ぞしばらくじっと考えていたが不にな 暗がりのお松だと膝を叩いたあいつだどう して今まで気がつかなかったろ江戸であれ ほど評判を聞いていたのにそうかこんな ところへふけんでいたの か暗がりの松といえば方3年8月になった ネズミ小僧吉の2代目とまで言われた オストであるネズミ小僧が警察されて ほっと息を抜いた初行や富豪の屋敷を狙っ ては目にも止まらぬ荒事をする有名な族で 何十人という取手に追われながらいつも その八でキリギリスをいい声に歌い残して 逃げるというのが木を好む江どっこに やんやと活されていたそれが3年ほど前 から姿を見せなくなったと思うと図らずも こんなところでサジの耳に止まったので

あるそれでわかったさじはうすいたお松も 離れを狙ってるんだそれで俺の抜け出る たびに邪魔をしやがるにちげえねこいつは おもしれえぞそうわかりゃこっちも1だ まだ駆け出しのさじが見事大松を出し抜い て見せようぜにやりと冷したのびのはまだ 聞こえている隣の歌へまるで挑みかかる ように顎をしゃくるとそのまま離れの方へ 猫のようにしんでいった隣の部屋の歌声が 旗と止んだバカ 野郎低い含み声が聞こえるとうとやり やがったかまだ若そうな奴だった が人の助け配がしてぼーっと有明の明りが かき立てられたそして低くパチリパチリと 何か打つ音がし 始めるほどなく離れの方で突然 ドタンバだと絶叫するのが聞こえた泥棒だ 泥棒だ真と寝詰まった宿のうへピンと響き 渡るわめき然とあちこちで客の置きでる 気配のする廊下を伸びの産地青くなって 逃げてきたしまったしまったと夢中で自分 の部屋へ入ろうとしたその途端に隣の部屋 の商事が開いてすっと手が出る素早くさじ の腕を掴むと若いのこっちへ入ん ね飯様ぐいと引き入れて後ろ手に生子を ピタリと刺す顎をしゃくってそこへ座れと 有明ハンドの前の座布団を示し た年は四にであろう浅黒い顔に眉の濃目に ちょっとすごみはあるが口元のしまった品 のある顔つき宿の浴衣に勇気の愛子の丹前 を重ねてヤグを跳ねた寝床の上へどっしり と座ったところはどうして立派な大所の 旦那という格好である枕本には寝酒の支が できていてその向こうに将棋版があった どうやら今まで1人をでいたらしいまあ いっぱいやんねえ男は落ち着いた手つきで 逆月をさした へ落ち着かなくちゃいけねえもうすぐ改め に回ってくるぜ さあ頂戴いたし ますさじは逆月を額へ持って行っ た男は酒を継いでやりながらじっとさじの 様子を見守っていたが 飲み終わって返す逆月を前の上へ置くと 将棋板を2人の間へ引き寄せてお前させる か ええほんの真似だけ で改めの目くらました真似でいいからやん なちょうど寄せにかかるところでこっちは この過去を切っていく手だお来たぜ手を 読む暇もなく3は角道を止め 廊下をこっちへガヤガヤと人声が近づいて くる部屋を1つ1つ改めている らしい男は手順でいっぱいやる とうん止めたかと彩らしく腕組みをした

そこへどかどかと足音が近づいてきてええ ごめんください まし声をかけながら少女を開け た宿のを始め78人の男たちが向こう八巻 に知りはり石棒を持ってずらりと並ん だおやおや体操な出発だな男は振り返って 何かあったのか いお騒がせして愛すみません今向こうの 離れへ泥棒が入りましたので順繰りに 見回っているところでございます がそいつつぶそうな何か取られなたか いいえ幸いとお客様が早く気づいたので別 に盗まれたものはありませんがどうやら外 から入った族ではない様子ゆえ念のために 改めておりますの でそうかいこっちはまたさっきから将棋に 夢中で何も知らなかっ た男は部屋を指さして構わないからこの 部屋も改めて行って おくれとんでもない梅田の旦那のお部屋 まで改めるには及びませんちょっとお耳に 入れていただいたばかりでへごめん くださいましそうかいそれはご苦労だった な亭主はイギに挨拶をして立ち去ったどう なることかと脇の下へ冷汗を書いていたさ は改めの人声が遠ざかりやがてへ消えて いくといきなり座布団から滑り降りて両手 をついたありがとう存じますおかげで 危ないところを助かりました暗がりの 親分なんだ と男の目がギラリと光った怒りなすっちゃ 困り ますさじは声を潜めてあしが仕事をしよう と部屋を抜け出すたに歌いなすったその八 しかも文句はギリギリス3年前に江戸から 足を抜きなすった暗がりのお松親分が5万 の歌江戸800夜長今でも知らねえものは ござ戦そうかいその蜂の キリギリスそんなに長通っていたかい そいつの大笑いだあまだ駆け出しで伸びの 3時というものでござんすが改めて親にお げがござん すなんだか言ってみねえこんなケチな青さ で大きには召しますねえがどうかコブにし てやっておくんなさいお願もし ます今の腕でか今な全くドジを踏みやした その代わり今度はハズれっこのね仕事をめ にかけやすそれを手札代わりにどうか そりゃこの土地かえつい街道向こうでござ んす相手はギロリとさじを見たがおら血を 見るなごめんだぜあしも江戸そちでさ 決してそんなブマなことはいたしやせん そうかじゃあなんだとにかくお前の腕を 見せてもらうとしよう話しはそれからだ おっと

さじ断っておくがおいらここじゃ梅屋で 通ってるんだ 正知でござんせ梅田の 旦那まあ忘れねえように 頼む暗がりのお松ではない梅田は艶のいい 顔を崩しながらゆいそうにそう笑うさじは 冷えた酒をぐっと煽ったとっぷり暮れた空 に夕月がかかっている風のない初夏の 黄昏れすぎ西の山々もり黒んで遠く近く 明りがまたたき始めている手前時の場から 南へ実調あまり離れたとある丘の懐で さっきから身を寄せ合ったまましめやかに 話しふけっている若い男女があった娘の方 は16か7であろうつれの野木こそ来て いるが色の白い丸ポチの愛苦しい顔立ちで 星のように緩みを持った目がじっと男の 横顔を見つめている聞くまではほらも知ら なかった だ娘はつぶやくように言ったずっと前から うちの苦しいことさしえていたがまさか こんなことになろうとはお主の聞き違い じゃあるまいの若者の声は震えている 聞き違いすることかよさ現に今日父さんが という金を持って帰っただあれが姉ちゃん の身代金だというだ姉ちゃんはどこへ行っ ただ か寝ずの世間兵とやらいう人が連れて江戸 の新吉原とかへ売られたと聞いただよほら もうそれを聞いたら姉がかわいそうで かわいそうで飯も喉へ通ねだ飛んだことに なったの 姉さは家のために身をうしただに妹のオラ が暗槓としてこんな何を言うだ若者はわる ようにさえぎっ たお主はまだやっと117でねえかどっち が身を売るとなりゃすまぬ言い分だが 姉ちゃんの行くが順当 だこんな時オにもっと解消祭ありゃなんと かして切り抜けるだにもそんなこと言わ ねえでくろほらこそもち座にすまねえと 思ってるだ何がすまねえことがあるだよ おじろのお姉さんなど持つようになった オラを嫁にもらったら世間できっとなんぞ かというに違いねそれを考えるとほらおい さきは思わず娘の手を握ったお主今から そんな心配してどうなるだたえ世間が何と 言おうと家のために身を売った姉ちゃん なら立派なものでねえかほら大りでお主を もらってみせる だじゃ嫌やしねえだのおいさこそオを 忘れるでねえだぞ娘は身をふわせながら 飛びつくように男の首へ手を回したむせる ような女の肌の匂いには胸をおかせつつ ひしひしと大いをたましい両腕で抱きしめ た若草の伸びる甘いそるような匂いが昼の

程よく群れあがった土の家とれあって若い 2人をボガの境いへ去るのだったこの丘を 鍛えだらだらと下ったところに土蔵に止ま 別の馬屋を一を守った大勝らしい人がある 前時から裏道にやってきたのさと梅田の 2人さは下の杉林の中に足を止めてあの うちでござんすと指さしたなんだい仕事と いうのは百勝家か100勝100勝でも 神畑の兵と言ってこの界隈じゃ名の知れた 物持でござんすお前ひどく詳しいの目を つつけるからにゃ洗ってありまさしかも 今日はちょいとまとまった生が入っている はず親分などがご覧なすったらほんの いたずら仕事かもしれませんがまお目見え の手土産代わりどうか見てやっておく なさいまやってみろへちょいとごめこを 盛りますサジはすっと杉林を出ていった そこから百勝家の主屋までは歩数にして ほんの12散歩だがこっちはこんもりしっ た杉林の暗がりで姿を見られる心配はない さじは畑の脇から横へ抜けてすっどの中へ 入っていっ た静かな酔いだどこか近くに腰水ぼりでも あるらしくかずの声がすんで聞こえる梅田 は懐から夜の梅という高中薬を取り出して ぷつりと前歯でかみわりながらいい酔いだ のと独り言を言った待つほどもなく家の中 から影のように抜け出してきたさじは音も させずに素早く杉林の中へ戻るふさの 胴巻き包をポンと叩いてぶ上しでござんし たあすだな親父は当場へ女房を迎えに行っ たですちゃんと時を計った仕事でござんす どうか大らすってと梅田へ手渡しをした だいぶ重い のお松はにやりと笑ってまさか石こじゃ あるねえ の切りもちが4つあるはずですもらって おくぜ最初からそのつもりでさは帰ってき た様子ですぜ丘の向こうから人が来るのが 見える逃げやしょやぶまあ待ちねえ梅田は 静かに精したどどうなさるん で急ぐには及ばねえまあ 落ち着け梅屋は胴巻きを納めて盗っとする 楽しみはなあさじ仕事をした後味を じっくり噛みしめるところにあるんだぜ なんだか足には点がいかねえすをくてその ままずらかるなんざ田舎での泥棒でもする こった盗んだ後で家の奴らがどんな慌て方 するかそいつをこうゆっくり眺めてる 気持ちが分からなけりゃ本当の商売にた 言われねえさじは気をされて黙ったみねえ 帰ってきたのは娘だ梅田屋は顎をしゃくっ た他の斜面を娘が1人家が気になる様子で 小走に降りてくるやがてどから入ったと 思うと間もなく部屋の生子へポーっとアド

の火が刺してきたお前大名屋敷へ入った ことがある か梅田が低い声で聞いたとんでもねえまだ そんなまあ聞きねえなんと言っても後味の いいな大名屋敷だ普段偉そうににしってる 侍どもが死を食らった弱しみてに目の色 変えて刀ひねくりながらかけ回るざ全く たまらねえ茶番だぜよっぽどおやんなすた でしょうねそれほどでもねえがのぬすっと するんなら大名か大所の金持ちだ日頃の さってる連中が青くなって騒ぐところを こうじっと見ている ちゃお よ梅田は向こうを見たどうやら親たちが 帰ってきたようだぜ街道の方から50余り になる百勝夫婦が帰ってきたちょうどその 時娘は火を入れた座敷の生子を開け広げて いたところでおとさんおっ母さんお帰りと 声をかけたおお今帰ったぞ主人の兵は縁先 へ回っておっ母が途中で足を痛めたでの もっと早く帰るつもりがすっかり遅くなっ ただおかさん安兵衛はどうだねありがとう よちっとべつかったっけ今はもうなんとも ねえだよあどっこいしょ 先へ腰かける母親を娘は座敷へ助けあげ親 へも共に座布団を取って出した兵は どっかり座りながら留守に誰も来なかった か日本末の吉さ来ただよ今日おかさんが 当時から帰ると聞いたで見舞に卵を持って きてくれたなそうかそりゃ済まなかったの 加平の妻おひでは青ざめた顔でしげしげと 家のうを見回していたがやがてとかから顔 を背けてそっと袖口を目押し当てたどうし ただお ひ加兵が見つけておめえ泣いているだな おとさんおらすまねえだよ何を言うだお秀 不幸続きの挙句がオの長いでとうとおを泥 の中へ沈めてしまっ たそれを思うとほら自分の体の治ったのが 恨めしいたバカなことを言うもんでねえ ぞ加兵はわるように言った沖身を売ったな おめえのためじゃねえ元はといえばみんな オの向こう水が立ったことだこの付近で神 はといえば電池三輪の56じ長部もある 大脈賞であった前代の貨幣までは代々名主 を務め平山大館の差を入れ念改めにも 預かったほどの家柄だったが今の貨幣が人 の口車に乗って武道の酒作りという新規な 仕事に手を出し大掛かりに武道の栽培を 始めたのが風雲の突き始め失敗につぐ失敗 を重ねた結果10年あまりの間に電池三輪 は手放す屋敷の辞書まで売って今はこの 家構えさえ面具や借金の型に取られている しになっていたしかもそのうち大口の借金 が今日に迫った返済でのっぴきならぬ登場

というあ様であるおめえが今更泣くよりも おのやつが自分からオを売ってくれろと 言われた時にゃ男のオが腹をかきられる ような思いだっただ兵は涙を押しってだが のにを飲んでもらったおかげで200両と いう金が手に入っただこれで今夜くる野村 屋の借金を返し後の残りで作るグレの電池 は取り返せる だこれ から親子3人が精一平働いて1日も早く きぬを受けだそうしまたおいときの修も あげる段取りもけるべさ何もかもこれから 良くなるだぞ分かっただかお ひよ加平は悲しみの中にも新しい希望を妻 に与えようとして笑顔を見せたこの有様が 手に取るように見える咳あげる夫婦の声 さえ痛いほど耳へ入ってくる杉林の中で さじはたまらず親分もうたくさんだ と根をあげ たもうたくさんだ親分どうか逃げさして おくん なさい弱を吐く な梅田はさじの腕を掴んで芝居はこれから 面白くなるんだ見ろかわずの遠音に 追いつきかわりからして本中もんだまあ 落ち着いてとっくり見物しねえだだって あしもううるせえ一端商売人になろうても がこんな集場にむせてどうするんだそんな 度胸で暗がりのお松の古文になれると思う の かへぐいと掴みあげる梅田の腕力にサジは 先方なく顔を振り向けた2人が問答して いる間に超を持った中年の男が1人この家 の訪れていたこれが今兵の話していた野村 屋という借金取りで あろう こんばんはお約束で野村屋から参りました おおこれはご苦労さんで兵は急いで 起き上がったさからお待ち申していました ああ今あしますてどうかそこへおかけ くだせましおしになさって と妻の押しある座布団へ野村屋の手代は江 ししながら腰を下ろした加兵は疲れた 足取りで仏の方へ去ると間もなくどしと いうひどい物音がしてたた大変だと貨幣の 凄まじい悲鳴が起こったおいねおいね ちょっとここへ行こうあいどうしただか娘 がクリアから転ぶように走ってきた医者こ こけ手をつけやしねえか いいえよりもしねだ よ妻のおひが不安におきながら乗り出し たおさんどうしただね金が金がねえだここ へしまっといた金がなくなってるだこの 仏壇の引き出しへ入れて上へ過去長を乗せ ておいたことまでちゃんと覚えてるだにあ

そういえばここへ過去長が落ちてるだぞけ それじゃあ妻も娘も点して声を飲んだ加平 は狂気のように部屋の中を走り回ったもし や他へしまい忘れはしなかったかタンスの 中は手文庫 はしかしどこからも金は出てこなかった あがりが町へ来てふと気づく板敷きに ありありと残る造りの 足跡泥棒だ泥棒が入った だカはしゃがれ声で娘の方へ 振り替えるおいねおめえ家を開けやし なかった かでもほんのちょくに開けたかただか おめえ家を空っぽにしただか おいねか忍してくろ父さん おらおらほのそこまでもちさを送っていっ ただけだにほのちょっくら 何がちょっくらだ おいねおめえ姉さはめやおっかを殺し しまっただ ぞおとっちゃんおいはわっとそこへ 泣き崩れた野村屋の手代はこの様子を さっきから見合っていたがやがて1度消し たちちへ火を入れて起き上がったお 取り込みのようですが約束のものは返して いただけますかね あ野村屋 さん加兵はどかりと座った今お聞きの通り じゃ娘を売ってえた200両の金をたった 今の間に盗まれてしまいましただそちらへ お返しもうかどころか親子さに明日から 生きる方とさえなくしてしめましたそりゃ どう も野村屋の手代は冷やかに言っ たとん誤なんでございましたなかって主人 にそう申し伝えますがしかし約束は約束 ですからお返し願えないとすると明日この 屋敷は明け渡していただかなければなり ませんどうかそのおつもりで今夜のうちに 荷物をまとめておいて くださいそそれじゃあこんな災難の中で この家屋敷を開けろとおっしゃるだかぎの ようかは知れませんが私どもでも商売で ございからな貸した金が取れなければ抵当 をいただくよりいし方がございませんどう かそのおつもり でそう言い捨てるとなおも言いすがろうと する貨幣の声を振り切るようにして野村屋 の手代はさっさと街道の方へ立ち去って しまっ たお日は泣くことも忘れて石のように 身動きもしなかった兵は呆然とをめたまま 肩で息をついている娘のおいだけは 投げ出された濡れ雑巾のように畳の上を 打ちふして泣きむせんでいただめだこれで

何もかもおしめ だやがて引き裂けように貨幣が言っ たこれおひでおい もこおひは方針したように振り向く 娘は泣きながら父の方へすり寄ったもう どうにもしようがねえ だ2人とも覚悟を決めて くれお ひ知んて くれほらもいそその方がいい た妻はうめくように答え た死ぬべとおさん3人して死ぬべらたちゃ こうなる運だった だ ただかわいそうななおだオたちが死んだと 聞い たら ひ加平は思わず妻の体を抱き寄せた席を 切ったように夫婦は愛用して泣き崩れ たの様子を杉林の中からじっと見守ってい たのびのさじは次第に色も青ざめいつか 全身をブルブルと振るわせていたがもう 我慢ができぬという風にきっと振り返った 親分なん だ一生のおげだ今の今の金を足に返して おくん なさいなんだ根を 返せサジは思い切った口調で言い出した ほらたった今夢から冷めたんだ今までおら 盗みをしてきた半分は欲だ半分はやけだ また敵のケチな米食い虫でつまらなく 終わるより一層ネズミ小僧のような大 ぬすっとになってわっと世間からさがれて 死にてそんな見えも手伝っていただがおら 今夜という今夜こそ自分の仕事がどんなに 無いものかってことを知った盗むこっちゃ どうせ酒か爆死に使っちまう金があそこ じゃ親子3人を生かすか殺すかの楔になっ ているこんなこんな無限わざ知らなかっ た3時の目からポロポロと涙が落ちた しかしお松の梅屋は眉も動か どうかその金を返しておくん で3時は続け た親分も江戸者ネズミ小僧の2代目とまで 言われなすった 貴族まさかこんな金はおんなさるめどうか その金をバカ 野郎つまらねえことを言う な梅田はせせら笑った おいら貴族 だ事もいい加減に しろ世の中にゃ泥棒はいるが義のつく泥棒 はいねえ人様のものを盗んで鼻くそほどの 施しをしたって何が貴族だ泥棒をする奴は したくってするんだ世間の毒虫人海の

ゴミ屑下道畜と相場決まっ てらこのお松はなしみったれた施しをして 自分の悪字の尻拭いをするようなケチな 野郎と種が違うんだそれじゃ今の金は返し ておんなさらねえのかあたりめよぬすっと が一度懐入れた金だてめえちんが逆立ちで キリキリ舞いをしても返すこっちゃねえ つらて出直してこいのびのがぎゅっと唇を 噛むどうしても行けませんか く 野郎わめいたと思うと掴まれた腕をパッと 振りなすふを食らって音松のタンが傾く 好きサジは右手にぎらりとトスを抜いた 抜きやがったな腕ずくでもだっと 飛びかかってくる相手はとっさに体を ひねってサジの利き腕を逆にぐいとひっ たって足を絡むくそ え捨て場の強引サジは腰を落として相手の 体勢を利用猛然とつっかけた梅田の足が杉 の根にかかる斜面で足が悪いから青の様に だっと倒れた折り重なった2人さは左で 相手の喉を閉めながら担当を逆手に胸を 狙ってたま待て突きおろす肘を必死に支え た梅だや待てさじ金は返してやるなんだと 金は返してやるよ それ梅田は懐から遠巻きを掴み出すとポン と向こうへ放り投げたさじは油断なく じりじりと腕を引いたが相手に敵のないの を見届けるとひりと飛びのいたそう出て くださりお手向いはせずに住んだのだそれ じゃいただきます ぜあえぎながら胴巻きを拾うこれで人殺し 教場だけは助かったごめんね言い捨て様 さじは杉林を飛び出すゆばを駆け抜けて いきなり主屋の縁先へ現れたどまを愛用し て泣いている夫婦の前へポンと 投げ出すお2人さん と声をかけた突然声をかけられてびっくり 振り返ると見慣れぬ若者が立っている しかも目の前へ投げ出された遠巻きカはあ と業転し たどうか勘弁しておん なさいさじは縁先へ手をついた明のびの3 というぬすっとでござんすこんな事情が あるとも知らず大事なお金を盗みましたが 今あそこの杉林の中で彩のお話を伺いあし 生まれて初めて目が覚めましたただ今限り ぷっつり悪字から足を洗いますきっと真 人間になりますからどうか勘弁しておくん なさい中のお金にゃビ1問手はつけてござ せんどうかめなすってお送んなさい カは聞く心もそに震えながら胴巻きを解い てみたが転げ出た金包を見るなり狂った ように踊りあがって おお戻った戻った金がとカキの叫びをあげ

た200両手つかず戻ったおひ おい金が戻った金が戻ったぞもう てわっ燃え上がるような親子の狂気を涙の にじみ出る目で見合ったさじは手早く懐 から財布を取り出すとそれからここに30 量ばかりござんすこれは爆で儲けた金 決してご迷惑にはなりませんからどうかお 使え捨てなすっておくん なさいまあお前さんそんなことを 慌てて下辺が出てくるのをさじは素早く 23元飛びのいて影ながらご飯盛を祈り ますと言うとそのままキビスを返して寄畑 の中へ逃げ込んでくると梅田のお松は杉林 の外れに腕組みをして佇んでいたやぶ じゃあねえ梅田屋さんさじの目は生き生き と輝いているあし生まれて初めて 腹の底からさっぱりいたしましたお前さん にも古文にしてくれと頼んだが改めて今 取り消し たそうか い合ね昔と思っておくんなさいこれでお 別れ申し ますどこへ行くん ださじは答えずに歩き出した梅田はその 後ろ姿を見送っていた が親子の感する声をとにっこり頷いて杉林 を出る足早に3の跡を追い始めた丘の上の 道は左へ曲がって手前寺へ通う裏街道へと 続いている中点へ登った月がよく冴えて 道端に咲いている雨降りボタンの花が白く 夢のように浮いて見えたどこへ行くんだ 若いのどこへ行くっ てサジが足を止めた どこへ行くもんかこれから三島の5番所へ 自訴して出るん だ1年や2年じゃ帰れねえ ぞ5年が10年でもいいほら立派に年を 納めて綺麗な体になってくるんだらこれ から新規巻き直しに始める気だアよ未練は ねえか冗談じゃねほら嬉しくてなんだか足 が地につかねえくれだお前には来いとは 言わねえがま達しでいなせ振り切るように してさじが行こうとする梅田屋はその様子 を見つめていた がちょっとちょっと待ったと呼び止めた まだなんかあるのか い選別を忘れていた梅田は紙入れを 取り出してそのそのまま3の手へ 渡す若いのと形を改めて言ったお前さんの 会心は本物だそこまで腹が決まったら今更 お仕置きを受けるまでもないわずかばかり だがその金を持って今日へおいでたこ役し 下がるところに桶屋がある武蔵や正吉と いう家だそこを訪ねていけばお前さんを 立派な肩にしてくれるだろう牢屋で5年お

務めをする気でみっしりお屋を稼ぐがいい わかったか言葉つきまでがらりと変わった 相手の様子をいぶかしそうに見返た さじその桶屋というのは何者で せ武蔵や正崇を洗えば暗がりの松というさ えさじはそったそそれじゃお前さんはお松 親分じゃねえのですか夕べ宿の亭主が言っ たのを聞かなかったか い私は沼津の酒屋で梅田や僧兵という若陰 居さ男はそう言ってすごみのある顔にやか な微傷を浮かべた それでもあのそのハブ は はあれ かえ梅田は笑い出し たあれはね今から3年前の秋妙なきっかけ で暗がりのお松と知り合いになりその時 あれから教えてもらったもの さお松が今日へ行ったのもその時のことで では職人の56人も使って立派に暮らして いるそうだ私のつまらぬシレがそれでも あの人を片にしたと思うとまんざら悪い 道楽じゃなさそうだねと言いなさるのは 商売人とミリ近づいて盗んだ後の集団を 見せるのが私の道楽 さ梅田兵の言葉は温かく力強くサジの胸へ 染み込んでいっ たさあ行こう今日へ登って手に食がつい たらそう言ってよすがいい店を出すくらい の金は都合して あげようさじは無言のまま万感溢れ出る目 でじっと梅田や生兵の横顔を見つめた遠の かわず OG

「一生に一度は読むべき名作」朗読チャンネルへようこそ🌙

「暗がりの乙松」は、山本周五郎の筆による、伊豆の修善寺を舞台にした人間ドラマです。物語は、盗みを生業とする若者・野火の三次が主人公。彼は、盗みに入った湯治宿で、隣室から聞こえる薗八節の端唄に心惹かれ、その歌い手がかつて江戸で名を馳せた大盗人「暗がりの乙松」であることを知ります。一見、ただの盗賊物語であるかのように見えますが、この作品は罪と罰、改心と救済の物語を描きます。野火の三次の心の変化、そして彼がとった意外な行動は、読者に深い感動を与えるとともに、人生の再生と希望について考えさせます。山本周五郎は、この作品を通じて、人間の弱さと強さ、そして何よりも人が人として成長していく過程の美しさを描き出しています。

【本チャンネルについて】
夜の帳(とばり)が下り、星が輝き始めたら、「眠りの森」が開かれます。
眠りの森で、女性の優しい朗読が夜の疲れを優しく包み込みます。
眠れないあなたの心を、森の中の穏やかな物語で安らぎへと導きます。
おやすみ前の静かなひとときを過ごしてください。
今日も一日お疲れ様でした。

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