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「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が東京オペラシティ アートギャラリー(東京・西新宿)で6月24日まで開催されています。 開幕前日の内覧会を取材しました。

シュルレアリスムを代表する作家たちの名品ずらり

シュルレアリスムは日本語では超現実主義と訳され、「現実を超えた」すなわち「現実ではない」ものとして認識されることが多いようです。シュルレアリストたちは超現実を視覚化するためにさまざまな方法でオブジェを提示してきました。マルセル・デュシャン、サルバドール・ダリ、マン・レイなどシュルレアリスムを代表する作家の作品が次々に登場します。

展示風景
展示風景
山高帽の男の向こう側に…

入口付近の小さな展示室を抜けると、ルネ・マグリット《王様の美術館》がお出迎え。山高帽の男は1920年代からマグリットの絵に登場する人物で、ただ佇むだけで個性を持たない、孤独で匿名的な存在とされます。

(中央)ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966 横浜美術館 展示風景

本作品では体の輪郭と目、鼻、唇という顔のパーツだけが残され、シルエットとして切り抜かれた姿の向こう側には、丘の連なる森に一軒の館が建つ静かな風景が広がっています。

(中央)ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966 横浜美術館 展示風景

絵の中に吸い込まれてしまいそう…と、思わず裏側に回ってみると、山高帽の男の後ろ姿を発見。ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》が展示されています。山高帽の男が表裏に展示されるという粋な演出でした。

(中央)ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》 1957 大阪中之島美術館 展示風景
ファッションとシュルレアリスム

シュルレアリスムは芸術の内部にとどまることなく、雑誌や広告、ファッション、室内デザインといった日常に密接した場面にも広がっていき、社会全体に影響をもたらしました。

特に見ごたえがあったのは、ファッションの展示です。イタリア生まれのファッションデザイナー、エルザ・スキャパレッリの作品が充実しています。斬新なデザインで人々を驚かせたスキャパレッリは、ジャン・コクトーやダリといった同時代のアーティストとコラボレーションし、瞬く間にパリのファッション界を席巻しました。

展示風景
エルザ・スキャパレッリ 香水瓶 展示風景

1930年代にはプリント生地のロング・ドレスが流行しましたが、《イヴニング・ドレス》の生地にプリントされているのは、色とりどりのマッチ棒です。マッチ棒という身の回りにある日常的で親しみやすいモチーフを、オートクチュールのドレスのモチーフとして採用することは、大変な驚きをもって受け止められました。いわば、このことは「価値の転覆」であったのです。

エルザ・スキャパレッリ 《イヴニング・ドレス》 展示風景

本展の出品作はすべて国内所蔵。これほどまでの質と量を誇るシュルレアリスム作品が日本に息づいている事実に圧倒されました。

「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」は東京オペラシティ アートギャラリーで6月24日(水)まで。詳しくは下に続くプレビュー記事をご覧ください。(美術展ナビ編集班・彩)

最後の展示室を抜けると、シュルレアリスムを代表する作家たちの言葉が壁一面にならんでいる

拡大するシュルレアリスム
視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ

会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)

会期:2026年4月16日(木)~6月24日(水)
[前期]4月16日~5月17日 [後期]5月19日 ~6月24日

開館時間:11:00-19:00(入場は18:30 まで)

休館日:月曜日(ただし5月4日は開館)、5月7日

入場料:一般 1800円/大・高生 1100円/中学生以下無料
*同時開催「幻想の景色と不思議ないきものたち|収蔵品展086 寺田コレクションより」、「project N 102 大上巧真」の入場料を含みます。
*障害者手帳、指定難病受給者証等をお持ちの方および付添1 名は無料。

お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
詳しくは東京オペラシティ アートギャラリー公式サイトへ。

プレビュー記事

「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」が東京オペラシティ アートギャラリーで4月16日(木) から 6月24日(水)まで開催されます。

「日常を変える」ことと「世界を変える」ことをひと続きに捉えていたシュルレアリスムは、芸術の内部にとどまることなく、雑誌や広告、ファッション、室内デザインといった日常に密接した場面にも広がっていき、社会全体に影響をもたらしました。本展では、国内に所蔵されている多様なジャンルの優品により、社会全体へと拡大した新しいシュルレアリスム像が示されます。

「拡大するシュルレアリスム」のみどころ

1. 芸術界にとどまらないシュルレアリスム!

オブジェ、絵画、写真などの芸術分野ではもちろん、広告やファッション、インテリアなど日常にも拡大していったシュルレアリスム。これまで本格的に検証される機会の少なかった視覚芸術以外の分野を併せて検証することでシュルレアリスムの発展、変遷をたどります。

2. シュルレアリスムの名品が大集結!

サルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ルネ・マグリットをはじめとするシュルレアリスムを代表する作家たち。本展覧会には、シュルレアリスムの名品が大集結します。

なかでも特筆すべきは、ルネ・マグリットの代表的なモチーフである山高帽の男が描かれた《王様の美術館》(横浜美術館所蔵)と《レディ・メイドの花束》(大阪中之島美術館所蔵)です。ふたりの山高帽の男が展示室を彩ります。

大阪中之島美術館で開催された大阪会場の展示から、一部作品や資料を追加・変更しさらに充実した展示を楽しめます。

ルネ・マグリット《王様の美術館》 1966 横浜美術館
ルネ・マグリット 《レディ・メイドの花束》 1957 大阪中之島美術館

3. ファッションとシュルレアリスム

シュルレアリストたちとの交流が深かったデザイナー、エルザ・スキャパレッリ。彼女の代名詞ともいえるショッキング・ピンクのドレス(イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」、島根県立石見美術館所蔵)をはじめ、独自のデザインが施された香水瓶やジュエリーなど、多岐にわたるスキャパレッリ作品が集結します。

エルザ・スキャパレッリ イヴニング・ドレス「サーカス・コレクション」 1938 島根県立石見美術館 ※前期展示
展示構成

第1章 オブジェ―「客観」と「超現実」の関係

シュルレアリスム。それは私たちが疑う余地なく現実だと認識しているものの中から、より上位の現実である「超現実」を露呈させることです。

客体(=objet[仏]/オブジェ)として事象をみつめることで「超現実」と向き合ったシュルレアリストたちのオブジェにより、シュルレアリスムの扉を開きます。

フランシス・ピカビア 《黄あげは》 1926 大阪中之島美術館

第2章 写真―変容するイメージ

19 世紀前半に誕生した写真術は、被写体をそのまま写すという本来の役割を超えて、20 世紀美術を彩る主要な表現のひとつになります。外界の事物をオブジェとして写し取る写真術の領域において、シュルレアリスムがめざした想像力の多様な広がりは豊かに開花しました。

シュルレアリストはさまざまな実験的技法を駆使して、日常的なモチーフを斬新で謎めいたイメージへと変えていきます。マン・レイを筆頭に、シュルレアリストらの多彩な写真表現を紹介します。

ヴォルス 《美しい肉片》 1939 個人蔵

第3章 絵画―視覚芸術の新たな扉

多様な領域にわたるシュルレアリスムの芸術運動において、絵画は最も親しまれている表現形式といえます。理性のコントロールから逃れようとする「オートマティスム」(自動筆記)や、関係のない物同士を脈絡なく並置して違和感や驚きを引き起こすデペイズマンといった手法を取り入れ様々な表現が生まれました。

また夢の中を思わせる幻想的雰囲気もシュルレアリスム絵画の特徴といえるでしょう。マグリット、デルヴォー、ダリ、エルンストらシュルレアリスムの代表的作家たちの表現をお楽しみください。

イヴ・タンギー 《失われた鐘》 1929 豊田市美術館

第4章 広告―「機能」する構成

本展覧会のテーマは「拡大するシュルレアリスム」。4 章からは、オブジェ、写真、絵画といった芸術と呼ばれる領域から、さらに広く目を向けます。デペイズマンやコラージュ、フォトモンタージュなどシュルレアリスムにおいて多用されたテクニックを発揮した、訴求力に富んだ広告に注目します。

フリッツ・ビューラー ポスター「ジオデュの帽子」 1934 宇都宮美術館 ※前期展示

第5章 ファッション―欲望の喚起

シュルレアリスムは、モードやファッションと近接する場にありました。衣服を纏うマネキンや身体への欲望は、シュルレアリストらのインスピレーション源となり、またファッション雑誌やモード写真も積極的にシュルレアリスムの表現を採り入れています。

ファッションデザイナーのエルザ・スキャパレッリは、ダリらともコラボレーションしながら奇抜なデザインで人を驚かせるドレスや香水瓶、ジュエリーを発表しました。ファッション界とシュルレアリスムの関係を探ります。

エルザ・スキャパレッリ、ルシアン・ヌケルマン(制作) クリップ “サーカスの馬” モチーフ c.1938 個人蔵
エルザ・スキャパレッリ 香水瓶「スリーピング」 1938 ポーラ美術館

第6章 インテリア―室内空間の変容

違和感を引き起こして現実に揺さぶりをかけるシュルレアリスムにとって、日常生活の場である室内の安定した秩序を転覆させることには大きな意味がありました。室内に置かれる家具もまた奇妙なオブジェへと変貌します。

また、シュルレアリストたちは、自然の有機的な形態に自身の内面世界の反映を見出しましたが、そのような有機的形態は家具のデザインなどにも取り入れられるようになりました。(美術展ナビ)

スタジオ65 ソファ「ボッカ」 1970/1972 国立国際美術館 撮影:福永一夫
ウジェーヌ・アジェ 《働く女性の部屋、ベルヴィル通り》 1910 東京都写真美術館 ※前期展示