“今の日向坂46”だからこそ表現できた『MONSTER GROOVE』

 そして、金村のパワフルなドラム演奏から、そのまま彼女が繰り出すビートに乗せて「あの娘にグイグイ」にてライブ後半戦へ。それ以前のメンバー楽器演奏は、あくまで次の曲への序章という立ち位置だったが、ここでは金村の演奏とメンバーのパフォーマンスが融合するという初の試みが実践され、おひさまを大いに驚かせた。日向坂46にはこうした生演奏とのコラボレーションの印象があまりなかったこともあり、個人的にはこうした実験は大歓迎だ。

『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演
『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演
『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演

 以降は「好きということは…」「アディショナルタイム」などでクライマックスへ向けてひたすら熱量を高めていく。もはや鉄板となった四期生楽曲「見たことない魔物」や、新体制における新たなキラーチューンとして育ちつつある「愛はこっちのものだ 2025」、本ツアーを先頭で引っ張ってきた金村&小坂の貫禄がしっかり伝わる「See Through」を経て、最後は最新ナンバー「お願いバッハ!」で本編を締め括った。

『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演
『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演
『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演

 アンコールでは久しぶりにデビュー曲「キュン」のパフォーマンスを目にしたのだが……オープニングで見せた新たなトライももちろん大切だが、日向坂46は何を武器にして、何を大切に守りながらここまで走ってきたのかを、今一度確認するタイミングではないか……という気持ちも芽生えてきた。試行錯誤を経て生み出された新境地と、グループの軸として染み付いているものとの違いを、この1曲から感じてしまったというのも因果なものだな、と個人的に思ってしまった。それくらい、この日目にした「キュン」からは日向坂46の“芯”が透けて見えたのだ。

 なお、この日はWアンコールとして、しばらく封印していた「誰よりも高く跳べ!2020」が披露されたのも印象深かった。本編以上に弾けた笑顔を見せた「誰よりも高く跳べ!2020」は、けやき坂46時代からライブを彩ってきたこの曲に頼ることなくこの半年を見事に乗り切ったメンバーへのご褒美のようにも感じられた。

『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演
『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』東京公演

 従来のカラーや得意とする武器に頼らず、五期生を加えた今の日向坂46だからこそ見せられるものを模索し続けた今回の『MONSTER GROOVE』。成功した部分や新たな課題も見つかり、メンバーにとって得るものが大きかった期間になったことだろう。と同時に、決して見失ってはいけない“芯”についても再認識できたのではないだろうか。ここ2年ほどはシングルリリースのたびにメンバーが卒業していき、決して安定した状況とは言い難い彼女たちだが、ここで獲得した自信を糧に、迷わず突き進んでほしい。そして、後年「『MONSTER GROOVE』での実験があったから、今の私たちがある」と断言できるよう、これからも失敗を恐れずに挑戦を続けてほしいと願っている。

※1:https://realsound.jp/2025/06/post-2041732.html
※2:https://realsound.jp/2025/05/post-2037078.html

■『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』
2025年11月21日@東京・国立代々木競技場 第一体育館

<セットリスト>
00. Overture
01. NO WAR in the future 2020
02. 夕陽Dance
03. キツネ
04. 君はハニーデュー
05. Love yourself!
06. 空飛ぶ車
07. What you like!
08. 足の小指を箪笥の角にぶつけた
09. この夏をジャムにしよう
10. どうする?どうする?どうする?
11. 恋した魚は空を飛ぶ
12. ナゼー
13. その他大勢タイプ
14. ハロウィンのカボチャが割れた 2025
15. あの娘にグイグイ
16. 好きということは…
17. アディショナルタイム
18. 見たことない魔物
19. 愛はこっちのものだ 2025
20. See Through
21. お願いバッハ!
アンコール
22. キュン
23. Expected value
Wアンコール
24. 誰よりも高く跳べ!2020

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西廣智一

西廣智一
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2006年にライターとして「ナタリー」立ち上げに参加。2014年12月からフリーランスとなり、さまざまな媒体で執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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