「コロナ禍以降、医療従事者を対象とした調査が増えました。浮気も多いですが、法的にグレーな行為もありました。彼らに共通していた背景は、経済的な不安でした」

こう語るのはキャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

これまで「探偵が見た家族の肖像」として山村さんが調査した家族のことをお伝えしてきたが、連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介している。

今回の依頼者は、2年前に夫の浮気調査を行った43歳の会社員・紗代子さん。2年前から再びの調査依頼だ。

2年前の調査のきっかけは、大学病院に医師として勤務していた夫から性感染症をうつされたこと。浮気を確信した紗代子さんの依頼を受け、不特定多数と性交渉をしている証拠を撮った。

当時、夫は過重労働と薄給に苦しんでおり、将来に不安を抱えていた。そのはけ口が、性依存へと向かっていた。またうつの傾向もあり、紗代子さんは山村さんのアドバイスに従い、夫を精神科に連れて行き、休職をさせ、回復へとサポートしていた。

しかし、それから2年、結婚12年目に紗代子さんから「夫が浮気をしている。離婚したい」と相談がきたのだ。

美容クリニックに転職し、年収は2倍に

2年前の浮気調査のあと、夫は給料が美容クリニックに転職。たちまち人気医師になり、年収も2倍になったそうです。しかしそれがさらに浮気の理由になったと紗代子さんは語ります。

カウンセリングをしたところ、浮気の他にも経済DVやモラハラがあったことを告白。また、12歳の娘に対するDVもあり、娘が「もうパパと暮らしたくない」と言われたことから、離婚の意思を固めていたのです。

その意思の強さの背景には、2年前の浮気をきっかけに、専業主婦から社会復帰したことがありました。シングルマザーになっても子供を育てられるという確信もありましたが、財産分与分や慰謝料、養育費をしっかり取ったほうがいい。そこで、有利に離婚するための証拠を掴むことにしました。

美男美女カップル

都内のマンションから夫が出てくるところを追います。朝9時に家を出て、10時に勤務先の美容クリニックへと入って行きました。

夫は背が高くプロポーションがいい。目が大きく鼻筋が通っており、美男子の部類に入ると思いました。依頼者・紗代子さんも若い頃にモデルをしており、すらっとしている。まさに美男美女カップルだと感じました。

勤務先に入ってからは、全く動きがなく、18時に出てきたところを追います。2年前に証拠を撮られたことを警戒しているのか、後ろを振り返りながら電車に乗ります。渋谷で降りると、比較的新しいマンションに合鍵を使って入って行きました。

20時に紗代子さんにそっくりな美しい女性と手を繋ぎながら出てきて、流行のフレンチビストロでワインを飲みながら22時まで食事していました。その会計は4万円。夫がクレジットカードで払っていました。

夫は何度か振り返りつつ、尾行がいないことを確信したのでしょう。信号待ちの間に女性の顔を引き寄せてキスをしていました。そして、マンションまで戻り、終電まで滞在して帰宅します。

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