Kati Chitrakorn, CNN
伝説的なハリウッド俳優から映画監督に転じたロバート・レッドフォードさんが今月16日に亡くなった時、あとに残されたのは絶大な影響力と文化的意義を持つ映画作品だけではなかった。レッドフォードさんが残したファッションのレガシー(遺産)は、ほぼ米国のメンズウェアの原型になったと言える。
風になびく柔らかな髪と、無造作ながら洗練された装いへの好みで一目に分かる存在感を放ったレッドフォードさんは1960年代から70代にかけ、クラシックかつ控え目なエレガンスの象徴になった。この時期のレッドフォードさんは米国映画界きっての頼れる主演俳優となり、「大統領の陰謀」や「追憶」などの映画に出演した。
レッドフォードさんの記憶に残る服としては、74年の恋愛映画「華麗なるギャツビー」で着用した優雅なパステルカラーのスーツや、75年のスリラー映画「コンドル」で着た杉綾のツイードスポーツコートなどが挙げられる。ツイードコートは青いシャンブレーシャツやストライプ柄のウールタイ、薄いブルージーンズの上に羽織っており、そのプレッピー(名門私立校風)な重ね着スタイルは、近年復活を遂げたアイビールックに混じっても場違いではないだろう。
実際、時代を超えた洗練を体現する存在になったレッドフォードさんは、プレッピーからウエスタンまで多種多彩な米国メンズウェアの原型を切り開いた。
レッドフォードさんが取り入れたボタンダウンのシャツやアビエーターサングラス、デニムのズボンといったクラシックな着こなしは、スクリーンの枠を超えて、自身の服のチョイスにも反映された。ズボンとおそろいのデニムのシャツを着て、「ダブルデニム」のスタイルを流行に先駆けいち早く実践したこともある。

レッドフォードさんが愛したデニムシャツは、シアリングやスエード、レザースエードのジャケットと合わせて着られることが多かった/Paramount/Kobal/Shutterstock
レッドフォードさんのイメージを模倣しようとする向きは多いが、再現に成功した例はほとんどない。「コンドル」でレッドフォードさんが着たグレーのツイードブレザーを手掛けたフランス人デザイナー、ニコラ・ガバール氏はHTSI誌の取材に、「すべてのメンズウェア関係者が一度はこのジャケットをコピーしようとした。ラルフ・ローレンさえも」「そして誰ひとり成功しなかった」と語っている。
影響力のあるファッションデザイナーも愛好家も、亡くなったレッドフォードさんから着想を得ることが多かった。例えば、マイケル・コース氏は「アプレスキー」のスタイルを念頭に置いた2016年メンズコレクションをデザインするに当たり、1969年の映画「白銀のレーサー」でレッドフォードさんが演じたさっそうとしたスキーヤーを参考にした。ラルフ・ローレン氏(「華麗なるギャツビー」で男性キャストの衣装をデザインした)も、ハリウッド黄金期や当時の大物俳優のスタイルへの尊敬の念を口にしている。
ラルフ・ローレン氏はCNNに寄せたメールで、「レッドフォードさんは『華麗なるギャツビー』から『明日に向かって撃て!』に至るまで、米国が誇る映画スターだった。ただ、彼の不朽の遺産として残るのは、自身の芸や愛する自然を守ろうと熱心に取り組んだことだろう。彼の明るさや楽観的な人生観が惜しまれる」とコメントした。

レッドフォードさんのプレッピーな装いは、ミア・ファローさんと共演した「華麗なるギャツビー」(1974年)のジェイ・ギャツビー役など、さまざまな役柄にマッチしていた。/HA/THA/Shutterstock
もっとも、日に焼け、茶色の髪に白髪が混じり始めた82歳のとき、レッドフォードさんはセックスシンボル扱いされたのは「驚きだった」と振り返っていた。英紙テレグラフの2018年の取材に明かしたところでは、「子どもの頃は格好いいなんて誰からも言われなかった。そんな風に言われたことは一度もない」という。
「髪は赤毛でボサボサだったし、つむじだらけだった。そばかすもあって、歯は大きすぎた。だから、私のところに来て『坊や、君は本当に格好いいね』なんて言う人はいなかった。そう言われるようになったのはずっと後のことで、心の準備ができていなかった」
レッドフォードさんの端正な容姿とカリスマ性は多くの場合、キャリアに有利に働いたが、良いことずくめではなかった。有名な話だが、1967年のコメディーロマンス映画「卒業」でレッドフォードさんが主演の役を逃したのは、女性から拒絶された経験が無かったためとされる(監督を務めたマイク・ニコルズ氏は2008年、米芸能誌バニティ・フェアの取材に応じた際、レッドフォードさんが「負け犬の役を一度も演じられなかったのは」それが理由だ、と語っていた)。
間違いなくニコルズ氏の見方は正しかった。「卒業」から58年が経った今なお、レッドフォードさんの魅力は色あせない。死去後もずっと、色あせることはないだろう。

プレッピーでアメリカンなスタイルで知られるロバート・レッドフォードさん。今なお多くの人が参考にするクラシックなメンズウェアのルールを打ち立てた/Herbert Dorfman/Corbis/Getty Images

1965年の映画「サンセット物語」の衣装テストを行うレッドフォードさん/Screen Archives/Getty Images

「サンセット物語」の撮影に臨むナタリー・ウッドさんとレッドフォードさん/Screen Archives/Getty Images

この1969年の写真に見られるように、レッドフォードさんのスタイルにはスポーティな側面もあり、赤、白、青のクラシックなトリコロールに身を包むことが多かった/Kobal/Shutterstock

レッドフォードさんの装いはシンプルでありながら効果的で、ぴったりとした白のTシャツに至るまでそれが貫かれていた。/Art Zelin/Getty Images

レッドフォードさんは仕立ての良いスーツとも無縁ではなかった。最高の装いの一つに挙げられるのが、クラシックで体にフィットするスラックスとスポーツジャケットの組み合わせだ/Silver Screen Collection/Getty Images

映画「スティング」のセットでのレッドフォードさん=1974年/The Legacy Collection/Shutterstock

レッドフォードさんの代表的な役柄の一つは、1973年の映画「追憶」でバーバラ・ストライサンドさんと共演したハベル役だ/TCD/Prod.DB/Alamy Stock Photo

1975年の映画「コンドル」は、70年代メンズウェアの傑作として今もなお参照されている/Paramount/Kobal/Shutterstock

オフの時のレッドフォードさんは、上下にデニムを着用し、黒のアビエーターサングラスにウエスタンスタイルのレザーベルトという格好だった=1975年/Robert Chiarello/Michael Ochs Archives/Getty Images

コーデュロイなどの触り心地の良い素材が、レッドフォードさんの衣装にボヘミアンな雰囲気を添えている。写真は1976年の「大統領の陰謀」のセットでのレッドフォードさん/Michael Ochs Archives/Getty Images

レッドフォードさんは1970年代の映画界で有数の知名度を誇るカウボーイだったかもしれないが、ウエスタンシャツやデニムジーンズ、装飾ベルトへの愛は、役で着る衣装にとどまらず、自身の服装にも及んでいた/Tom Wargacki/WireImage/Getty Images

1981年、監督デビュー作「普通の人々」でアカデミー監督賞と作品賞を受賞した後の様子。レッドフォードさんはアビエータータイプの読書用眼鏡とクラシックな黒のタキシードを身につけた/UPI/Bettmann Archive/Getty Images

レッドフォードさんは、柄物のネクタイや織りスカーフを通して、ブラックタイのドレスコードに個性を吹き込んだ/Robin Platzer/Images Press/Getty Images

「明日に向かって撃て!」の役を演じてから20年。エディス・ヘッド氏が衣装デザインを手掛けた「モンタナの風に抱かれて」で、レッドフォードさんは若きスカーレット・ヨハンソンさんと共演し、ダブルデニムの衣装を身にまとったカウボーイの役を改めて演じた/Moviestore/Shutterstock

2012年ヴェネツィア国際映画祭で妻のシビル・ザガースさんと写真に収まるレッドフォードさん。マンダリンカラーのシャツにタッセル付きのローファーという格好で、相変わらずメンズウェアに新たな風を吹き込んだ/Manfred Segerer/ullstein bild/Getty Images

レッドフォードさんはクラシックなスーツとネクタイを身につけ、2017年ベネチア国際映画祭でジェーン・フォンダさんに付き添った/Ernesto Ruscio/Getty Images
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原文タイトル:An icon of American style: Robert Redford’s fashion legacy(抄訳)
