記事のポイント
ファッションレーベル「ケイト・バートン」は、立ち上げから3年でNYファッション・ウィークに参加し、有力リテーラーでの取り扱いも始まるなど、目覚ましい成長を遂げている。
創設者のケイト・バートン氏は、ブランドを立ち上げるつもりはなかったものの、直感を信じて自然な方法でビジネスを進めてきたことが、現在の成功につながった。
収益につながるビジネスを確立するため、カテゴリー拡大やマーケティング強化に注力している。単なるクリエイティブではなく、成長するブランドとしての戦略を重視する姿勢だ。
ファッションブランドを立ち上げることは、ケイト・バートン(Kate Barton)がもともと意図したことではなかった。しかし、立ち上げから3年を経て、彼女の名を冠したレーベルは業界からの称賛を集め、トップリテーラーに採用され、各界の女性インフルエンサーからレッドカーペットに選ばれるまでになった。
2026年春コレクションを発表する2回目のニューヨーク・ファッション・ウィークのランウェイショーを9月11日木曜日に控えた3日前、彼女は自身の名前がより多くのファッションファンのレーダーに捉えられるようになったこの1年を振り返った。
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「間違いなく大きな1年だった」と彼女は言う。「そしてブランドを立ち上げて以来、ものすごいスピード感で駆け抜けてきたものがある」。
この1年半の間に、バートンは2024年の「CFDA/ヴォーグ・ファッション・ファンド(CFDA/Vogue Fashion Fund)」のファイナリストに選ばれた。彼女はこの出来事を「大きな節目」と表現し、ブランドを成長させていくうえで非常に役に立つ業界関係者とのつながりをもたらしてくれたという。その中には、メンターとして彼女に小売パートナーシップに関する貴重なアドバイスを提供してくれたという、デザイナーのジョナサン・シムカイも含まれる。また、29歳のバートンは2025年の「フォーブス30アンダー30」にも選出された。
大成功の裏にある非意図的な始まり
ブランドにとって、昨年10月からの大手リテーラーでの販売開始も大きなできごとだった。ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、ノードストローム(Nordstrom)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、リボルブ(Revolve)といった百貨店やECサイトに加え、トゥーツィーズ(Tootsie’s)などの専門店、さらにアントニア(Antonia)のような海外の店舗も含まれる。そして9月6日土曜日には、ブルーミングデールズで、Tシャツやタンクトップのカスタムステーションを備えた体験型イベントを開催し、来月まで続く店内ポップアップをスタートさせた。
バートンはGlossyに対し、「リテーラーに進出する前に、ブランドがある程度のシーズンを確立していたことはよかったと思う」と語った。「安定した生産体制やパートナー、資金調達など、強固なインフラが整っていることが本当に重要なのだ」。
彼女によれば、小売パートナーがもっとも関心を示したのは、高価格帯の「アドバンストコンテンポラリー」という価格帯で、もっとも売れ筋のカクテルドレスやイブニングドレスのカテゴリーに新鮮なルックをもたらしてくれる点だという。しかし、彼女は彼らに独占販売権は与えていないと話す。
「いまの私の焦点はビジネスサイドにある」と、彼女は会社のクリエイティブとビジネスの両面を管理していることに触れて言う。「成功し、繁栄するビジネスにしたいのだ」。
そのため、いまの大きな焦点はカテゴリーの拡大であり、それは9月11日のランウェイで明らかになるだろうとバートンは語った。現在、公式サイトKateBarton.comで扱うのは55型のみ。「これは私たちにとって非常に大きな成長の瞬間だ」と彼女は言う。「私たちはコアなスタイルと素材を増やし、より着用しやすく、身近で、スポーティなスタイルを導入しつつ、私たちのユニークさやDNAを失わないようにしている。ブランドの直販と小売売上を伸ばすこともまた、優先事項である」。
無邪気さがブランドの道を開いた
バートンが語るように、彼女はファッションブランドの創設者になるつもりはなかった。大学院在学中、彼女は「ミラノのCFDA」と形容するミッテルモーダ(Mittelmoda)というファッションデザインコンテストに参加した。そのコンテストは、受賞者がブランドを立ち上げるための指導と支援を受けることができるというものだが、言葉の壁もあり、彼女はそれを認識していなかった。結果的に、地元人材を支援してきた歴史を持つ同賞で初のアメリカ人受賞者となった。
「私は本当に無邪気な気持ちでこの世界に飛び込んだ。それがかえってすごく役に立ったのだと思う」と彼女は述べた。「物事を進めながら解決策を見つけ、私や私のブランドにとって本当に自然だと感じるやり方で物事を進めている。誰かの道筋をなぞっているわけではないのだ」。
ケイト・バートンというブランドが初めて話題になったのは、金魚鉢の中の金魚を模した、機能しないハンドバッグだった。これは、ノベルティの「イットバッグ」として大ヒットした。ハイディ・クルムやケルシー・バレリーニがこれを愛用している。バートンはこのバッグを、コロナ禍に大学院のアパートでデザインしたという。いまでもブランドのECサイトで275ドル(約4万878円)で販売されている。
「ひとつのことをやりすぎるのは避けたい。新しいことをやり、新しくてエキサイティングなアイデアをブランドに取り入れたいと思っている」とバートンは語る。「しかし、あの金魚は私たちのブランドに愛される一部となり、まるでマスコットのようになった。だから、これからも引き継いでいきたいと思っている。私たちの特徴である彫刻的な作品についても同じことが言える。私の目標は、うまくいっていることを継続し、それをさらに発展させることにある」。
ブランドの成長には戦略的な「意図」がある
ケイト・バートン2026春夏コレクション
受賞によって得た資金も活用しながら、バートンはスポンサーシップを通じてニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)に参加し、ブランドの自己資金を調達している。9月のショーに限定しているNYFWへの参加を、彼女は「非常に意図的」なものだと称した。
「ファッションカレンダーに載ることは常に名誉なことだ」とバートンは言う。「しかし、ファッションウィーク以外にも、コラボレーション、卸売、ポップアップ、編集者とのディナーなど、ブランドの存在感を確立し、関連性を保つための良い機会はたくさんある」。
コラボレーションといえば、ランウェイでは、おなじみの製品にケイト・バートン風のアレンジを加えた、新しいコラボレーションが発表されるだろうとバートンは明かした。昨年9月のショーでは、ペパリッジ・ファーム(Pepperidge Farm)社の金魚をかたどったスナック菓子「ゴールドフィッシュ(Goldfish)」ブランドと、まさにぴったりのコラボレーションを実施した。来場者にクラッカーを配布したり、ゴールドフィッシュのモチーフをあしらったタンクトップやキーホルダーを販売したりしたのだ。
ほかのマーケティング活動としては、新しい秋冬キャンペーンを制作し、ディー・ヒルフィガー、オリンピック体操選手のナスティア・リューキン、モデルのウィニー・ハーロウ、ファッションインフルエンサーのケイト・バートレットらをミューズとして起用している。
今年5月、コンテンツクリエイターのリビー・ダンが、スポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)』の2025年水着特集号(ダンが表紙を飾った)を祝うイベントのレッドカーペットで、同ブランドのミニドレスを着用した際、ケイト・バートンは多くのメディアの注目を集めた。バートンとダンは共通の友人を通じてつながったのだという。ダンがルイジアナ州立大学の体操チームに所属していたこと、そしてバートンの家族がルイジアナ州出身であることから、縁があった。
ダンが再びケイト・バートンを着用する計画がある、とバートンは語る。そして今後数カ月で、より多くのレッドカーペットやテレビ番組にもブランドが登場する予定だ。
現在、バートンのチームは生産マネージャーと、いくつかのフリーランサー、外部の広報担当者で構成されている。近いうちに最初の大きな採用として、最高執行責任者(COO)を迎え入れる予定だと彼女は言う。バートンはブランドの収益については明かさなかったものの、「良好な成長軌道に乗っている」と述べた。
[原文:The unlikely rise of Kate Barton]
Jill Manoff(翻訳・編集:戸田美子)