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【朗読】山本周五郎『日本婦道記 糸車』 名作朗読 作業用 睡眠導入用 女性 オーディオブック 青空文庫  癒し

糸車山本 清五郎 1かじ かやかじかを買えなさらん かカジカ や後ろからそう呼んでくるのを聞いておは 立ち止まっ た13歳の少年が担ぎびくをしって急ぎ足 に 来るお は見せて おくれと呼び止め た籠の中には粒の揃ったご寸余りある見事 なカジがまだ自らあげたばかりであろう 濡れ濡れと鱗を光らせて打ち重なって いる思い出したように激しく口を動かすの もありと突然ピシピシと跳ね上がるのも あって川の水の匂いが表を打つような感じ だっ たご10ばかりもらい ましょうそう言ってから入れ物のないこと に気がついたどうしようとあたりを見ある とつい向こうに荒物屋の店のあるのを 見つけこの間からメザが1つ欲しかったの を思い出 あの店で入れ物を求めますから一緒に来て おくれ な近くならタクまで持っていきます よ少年はさげな目でこちらを見たタは 微笑みながらそれには及ばないと言って 歩き出し た新しいメザへカジを入れて帰る道道おは 何と言いようもなく幸せで心豊かに ウキウキしてくるのを抑えきれなかっ たどうしてこんなに嬉しいのかしらなぜ こんなに心が弾むのかしら何度もそう自分 に問いかけてみ た会所では褒めていただいたし久しぶりで 父へのご好物のカがあったし空はこのの ようにはめて朝に晴れ上がっているしそれ でこんなに楽しい気持ちになるのだろう かそんな理由を色々集めてみたくなるほど だっ たそして通りすがりの人の目にもウキウキ して見えるのではないかそう考えると 恥ずかしくて顔が赤くなるようにさえ思っ た父は与田慶郎と言ってシナノの国松代班 に使える母国2人ぶの軽い侍だっ た実直一方の荒い声も立てない温厚な人 だった が2年前に卒中を病んで勤めを引き今でも ほとんど寝たり起きたりの状態が続いて いる10歳になる弟の松之助が名義だけ家 を継いでいたがまだ元服もしていないので おふは半分ほどしか下がら

ない母親は松之助が3つの年に亡くなって 家族は3人だけであるが病気の父と幼い弟 を抱えての家計はかなり苦しかっ たおは今年十になるが父に倒れられて以来 その看護や弟の世話やこまごました火事の 糸を盗んでせっせともめ糸を食っては整形 の足しにしてい た松代班では種油と面子は大切な産物だっ たので身分の軽い家庭には糸繰りを内食に 進め器具を貸したり指導したり製品を 買い上げたりするための会所が設けて ある10日ごとにできた品を届けるのだが 今日もタが食った糸束を持っていくといつ もかりになっている白髪のきつい目をした 老人が眼鏡越しにこちらを見ながら糸の 出来を褒めてくれ たわずかな間に体操上手になられたな こなたの糸はトヤでも評判になっている そう だ1つには高校の得かもしれぬ が少しでも良い仕事をしようと務めている ものにとってその仕事を褒められるほど 嬉しいことは ないことにそれが当たり前の内職ではなく にとって大切な産物になるのだからその 意味でも小高の喜びは大きかっ たもっともっと良い糸を くろうそう思いながら帰る途中でカジが 変え た卒中を患ってから1度やめたが医者の 進めで3日に1度5尺ずつ飲むようになっ た父の酒には何より鉱物の魚だっ た会所で受け取ってきたテマンの中から 焼きwhoseにしても良いからと思って 少したくさん買ったので ある貧しくつましい暮らしをしているもの には小さな喜びがどんなにも幸福に感じ られるのだおはおかしいくらい足も軽く 稲屋の住まに帰っ たただいま戻りまし たとっつきの2条で素読をさらっていた弟 にそう声をかけてあがったが松之助は顔を 隠すようにして何とも答えなかっ たその時は別に何の気もつかずメザを持っ たまま父の今へ行っ た 帰りにカジカを売っておりましたので少し 求めてまいりまし た挨拶をするとすぐそう言って父に見せた ご覧くださいましまだこんなに生きており ますほこれは珍しい見事なものだなもう こんなにかの太る季節になったのだ な郎は少し震えのある手を差し伸べてメザ の中の魚を好ましそうについてみ た随分数があるではないかまだ効果で

あろう にいえそれほどでもございませんでした 今晩のお酒にカロにと魚伝を作り申しまし て余った分は焼きwhoseにしても良い と思いました からこんな心配ばかりさせてどう もつぶやくようにそう言いかけるのをおは 聞こえぬ風に立ち ながらさ早くお支度いたしましょうと クリアの方へ下がっていっ た父の口ぶりや態度がいつもとは違って いるおはそれを感ずると同時に弟の様子も 普段とはまるで変わっていたことに気づい たどうしたのだろう何か留守に悪いことで もあったの かしらおはにわかに不安になったそして それを打ち消したいために弟を呼んでみ た松之助さん来てごらんなさい見事な生き たかです よしかし松の返事は突き放すようなもの だっ た今勉強していますから後 でそれだけだっ たおはつい今し方までの浮き浮きした 気持ちが悲しいほど重たく沈んでいくのを 感じながら包丁を取って魚を作り始め た2 夕食の後片付けを済ませてから小が糸繰り の仕事を広げると間もなく父に呼ばれ た少し肩を撫でてもらいたいのだ が父は床の上に置き直してこちらへ背を 向けてい た脇に置いてある安土の光が痩せた父の 高保を痛々しく映し出してい たおはすぐそのせへ捕まっ たお寒くはございませんです かまだ酒が効いていると見えてほかほかと いい心持ちだ力を入れなくとも 良いそうやって撫でていてくれれば良い からはいこのくらいでございます ねおかは父の背から肩へかけて静かに撫で 始め た松之助は少し前に寝てしまいひっそりと 静かになった組長屋の彼方から何か祝い事 でもあるのだろう小うの錆びた声が聞こえ てき たお前明日松本へ行くのだが な父がふと思い出したようにこう言っ た松本ではおかじ殿がご病気だそうでお前 に一目会いたいから45日のつもりで来て くれるようにとお使いのものが来られたの だ父上 様おは思わずそう言っ た手を休めては困るな 父は笑いながら肩を揺りあげ

たどうにも硬い笑いだっ た5病気ということだしせめて45日長い 滞在ではないのだから今度は大人しく言っ てくるがいいルスのことはもう石原のご 内儀に頼んである から少しはお前の骨休めにもななるで あろうそういう父の言葉を聞き ながらおかは弟の突き放すようなさっきの 返事を思い出してい たやっぱりそういうことがあったの だ松之助はそれを聞いて幼い頭でどれほど か悲しがったに違い ないおはそう思いやると鋭く胸が痛みだし たおタには実の親があっ たシノの国松本班に使えて西村金田ゆと いう初め身分も軽く大変困窮していた自分 に妻のおかじとの間に次々と子が生まれ 養育することにもこかあり様だったのでべ の世話で白の与田郎におをやったので あるそれから後金田は不思議なほどの幸運 に恵まれ次第に重く用いられて数年前には 感情型取りで550国の身分にまで出世を し たこのように立心して一家が幸福になると 親の情としてへやったものが不便になるの は当然のことで あるそれもその子が幸せであれば別だが人 をやって尋ねさせてみると与田け郎は妻に 先立たれおかをもらった後で生まれた強弱 な子を抱えてかなり貧しい暮らしをして いるとのことだっ た夫妻はたも相談をした上それまでの養育 量を払って引き取ることに決め叱るべき人 を間に立てて余田と交渉し たその時初めておは自分の身の上を知った ので ある刑郎はありのままに何もかも語った そして松本の家へ戻る方がお前の行末の ためだ からそう言って帰ることを進め たおは考えてみようともせずに嫌だと言い 通し たついには部屋の隅に隠れて泣き出した まま何を言っても返事をしなかっ た肝心のおかがそんなあり様だったので間 に立った人もどうしようもなく その時の話は結局まとまらず自前だったの で あるおかじ殿のご病気はかなり思い様子な のだと父はしばらくして言葉を継い だ一目会いたいという気持ちも置いたわい しお前も実の子として1度ぐらいはご病が したいだろうと 思う意地を張らずに行ってくるが良い ほんのわずかな引かずのことだ

からおはほとんど聞き取れぬほどの声で はいと答え たそこまでことを分けて言われるのを無に もできなかった し思い病にふしている海の母の一目会い たいとという言葉にも強く心を打たれ たちれをするとすぐ松代へもらわれてきた そうで西村の父母の顔は全く記憶には ないもしものことがあれば海の母の顔も 知らずに終わらなければなら ない1度だけお顔を見せていただこう そう考えて承知したのであっ た 同じ組長でもごく近しくしている石原と いう家の西城に後のことをこごまと頼んで そのある朝早く松本から迎えに来たという 火と老木に導かれ ながら後にも行く先にも落ち着かぬ気持ち でおは松代を立っ た季節はすっかりはめてい た遠い彼の山並にはまだ雪が見えるけれど 内開けた屋野面は柔らかな土の肌を ぬくぬくと日に温められ雪気の水の特々と 溢れている小川や他のほりにはもうかかに 草の目が感じられ た二重そこそこの道だったがひどく抜かの で馬やかに乗りながら3日も かかりまた冬が戻ったかと思えるほど ひどく冷える日の午後ようやく松本の城下 へ着い た 3西村の家は泉というところにあっ た長門を巡らせたかなり広い屋敷で 門を入ると前庭があり枝振りの良い室の木 が67本高がな配置でうってい たおは与田の家とあまりに違う家構えに目 を見張りながら老木の案内で脇玄関へ回っ たするとこちらの声を待ちかねていたよう に余りと見える夫人が 泣くような笑顔で出迎え たまあまあ遠いところをようおいになった お疲れだったろうね今すぐすぎを取ります よ心もここにないという様子でおには物を ゆきも与えず手を取らぬばかりにして奥へ 導いていっ たおは初め呆然としたがこれがおかじと いう方だと思いご病気だというのがこえ事 だということをすぐに悟っ たおかじという 方彼女の頭に浮かんだのはそういう呼び方 で母という表現はどうしても出てこなかっ たそしてこのこえ事の中には単純でない ものが隠されていること しかもそれがかなり決定的であるという ことは直感しつつその夫人のするままに

なってい たどんな大切な客ででもあるかのように 彼女は召使いを咳きたてておに風呂を進め た風呂に入っていると2度も床減を聞きに 来たし上がると下の高価な衣装が揃えて あっ たお好みが分からないものだから年頃を 頼りに私が選んだのだ けれど彼女は気つけを助けながらそう言っ たどうやらあなたには少し地味すぎるよう ですねあちらの顧問の方が良かったかも しれないでも今日はこれにしておき ましょう独り言のようににそんなことを 言いながら撫で回すような目でおかの姿を 富こみして飽きなかっ たおかはやはり黙ってされる通りになって い た問いかけられるとえとかはいとか答える が自分の方からは何も言わず魔女のどこ かしら熱を持ったようなまなざしにも できるだけ気ぬ風をよってい た西村の父や兄弟たちは夕食の時 引き合わせられ た父は思いのほ若かった一番上の兄は結婚 してもう男の子があり次兄は間もなく分け するとかむっつりしている3は顔もよく見 なかったし4番目の兄は江戸で 弟はまだ前髪立ちで名を安の町と言い背丈 の目立って高い体つきとまだ子供子どもし た日に焼けた赤いホトに特徴があっ た彼はその年頃のものらしく他の兄たち よりもおの来ることに興味を持っていた ようで横からしげしげと眺めたり必要も ないのに仕切りと話しかけたりし た席は広間に設けられ た駆けつらねた食材はまばゆいほど明るく 大和へを描いた平部の男性も浮くばかり 美しかっ たいくつもの日でうっとりするほど温まっ た部屋贅沢と言っても良いくらい品数の 多い色とりどりの食前 そして何の苦労もなくうれいも悲しみも 知らない親子兄弟の和やかに団欒を楽しむ 有 様これが自分の本当の家なのだここにいる 人たちが自分の海の親であり血肉を分けた 兄弟たちだ今座っているこの席は誰のもの でもなく正しく自分の席なの だ小はそう思いながらできるだけ素直な 気持ちでその部屋の空気に巡NUしようと し たけれども食材は明るすぎ病部はあまりに 美しく見Overでいかにも落ち着き にくく眩しかっ た数々の料理もいずれは高価な材料と

念入りな活beliによるものであろうが おたは何やらよそよそしくておいしいと いう気持ちは起こらないそしてその1つ1 つが松代の家のことに思いられ締めつけ られるように胸がいん だ切り張りをした生子古びた襖茶色になっ て減りのすれて畳やしみれのある歪んだ柱 すけた安土の光に映し出されるあの狭い 貧しい部屋のあり様がまざまざと 見える乏しい炭をまるでわるように使う あの日1つでは冷えの厳しいこいはどんな にが寒いこと だろう与田の父と松之助は今2人きりで あの貧しい部屋のつましい食前に向かって いる自分 ださの皿は1つシワのつくことさえ稀で 漬け物の蜂だけが変わらない彩りで ある今目の前にある豊かな全部から見れば 悲しいほど貧しいもの だしかしその人皿のサをどんなに心こめて 作るだろうまた父や松のすがどんなに喜ん で食べてくれること だろう頼んできた石原の西城はよく気の 回る親切な人だっ た父の鉱物も荒ま告げてきたがこいは どんな支度ができたであろうか父の気に いるものだ かもしかして先を上がりすぎはしない かしら んおの頭はこういう考えでいっぱいだっ た何を食べたかも覚えずどういう会話が 取り交わされたかも知らなかっ たそして終わるとすぐ自分のために用意さ れたという部屋へ 引きこもり何か話しかけたそうな女にも 疲れているからと断ってまだ酔いのうち からヤグの中に入ってしまっ た し明る朝起きてきたおの目が痛々しいほど 赤く腫れぼったくなっているので彼女が びっくりしてどうしだと訪ねたおは寂しげ に微笑ん だ寝疲れたのでございましょう少し休み 過ごしました からそれならいい けれど彼女は確かめるようにこちらを見て いたがすぐ思い返した様子 で今日は山辺の入湯へ行くから支度をする ようにと言った ここから一あり山の方へ行ったところで湯 も綺麗だし美しい眺めもあり疲れた時など には良い保になり ますありがとうございます けれどおは目を伏せながらそっとこう言っ た私今日はできますことなら小大地へ参り

たいと存じますが ああそれなら山部へ行く途中ですよ少し 回り道をするだけですから産経してまり ましょういいえおはかぶりを振っ た私今日はお参りだけにいたしとうござい ます初めてのことでございます から初めて祖先の破参るのに油を兼ねるの は不作法だと思うそういう意がはっきり 現れていた魔女はさすがに早そうだっ たそれなら山辺は明日のことにし ましょうこう言ってその日は墓参りという ことに決め た母大寺から帰る道で小は自分の生まれた 家が見たいと言っ た彼女は進まない様子だったが一緒に行っ た弟の安野城が先に立って案内し たふしというところの橋に近く身分の軽い 侍屋敷が一塊になっているその中でも貧し げな古びたイかの中にその家はあっ た目隠しというばかりの兵を取り回した中 にさやかな庭があり枝振りのいじけた勢い のない末が門の脇に立ってい た板の屋根は口乾いて松かさのようにはず 小さな玄関の柱や羽板は雨風にさらされて 洗い出したように木目が高く現れてい たのきは傾きひしは波を打って いる周りにゆりがあるのと部屋の数が少し 多いかと思えるだけでそのの他は松代の家 とは大差のない住まいだっ た私はこの家に5つまでいたのです よ安城はそう言って何の屈もなく笑っ たあの窓の下の地面に有り地獄がいまし たっけそれを取って手のひらをはわせるん ですするとそいつは手の川の中へ潜り込む とするムズムズしてくすぐったいんですが その格好が面白いのでよくやったものです ご存知です かそんなことを今ありげに言っ たおはふとこの弟も今の屋敷よりはこの 貧しい家の方に心引かれているのではない かそんなことを考えながら間もなく首を 返し た 翌日はカジに連れられて山辺の入湯へ行っ たそれは城から東北にあたる山懐にあり 清らかな流れと谷合の眺めの美しい場所 だっ た親子は一緒に湯につったり香り高い草の 目をあったひび昼を食べし たまだ珍しい山うどを土産に屋敷へ帰っ た3日目は家にいて兄弟たちと話したり 自慢の道具を見たりして暮らし たその世のことで ある自分に当てられた部屋で女と愛した 時おは明日松へ帰らせいくと言い出し

た彼女はそう言われるのを良きしていた らしいそっと部屋を出ていったがすぐに一 通の風潮を持って戻ってき た与田殿からあなたに当てた手紙です とにかくこれを読んでごらん なさいこう言ってそれを渡し た受け取ってみると田の父から彼女に当て たものだっ た今度松本へお前を返すにあたっては色々 考えたが西村からこれまでの養育料として かなり多額な大物をくれる話がありそれ だけあれば自分は電池でも買って松之助と 2人安能に暮らしていけるしお前も西村の 娘として幸せな生涯に入れるで あろう自分のためにもお前のためにもこう するのが一番良いと 思う直家にこの行たてを話した上心よく 別れを惜しみたかったが顔を見ていてば お前の気持ちが決まる前と考え無慈悲な ようだが偽りを言って立たせたどうか今度 ははわがままを言わずに承知してもらい たい西村へ行ったら両親に高校を尽くす よう兄弟と仲良う幸せな行末を祈って いるそういう意味のことが与田の父らしく 特日な筆つきで書いてあっ たよく分かった でしょう彼女はおの読み終わるのを待って じとこう言っ た今になってお前を取り戻そうというのは 勝手かもしれないけれど父上やこの母の 気持ちもさして おくれお前の生まれた自分は父上のゴミ分 も軽く子供を多く抱えて恥ずかしい話だ けれどその日のものにも差し違えるような ことさえある貧しく苦しい暮らしでした人 の親としてちれしたばかりの子をよえやら なければならないそれがどんなに辛い 悲しいことかやがてお前がこう思ったら 分かってくれること でしょう身を切られるようなというそんな 言葉では言い表せない辛い悲しい思いでし た 5それほどの思いをしてもお前をやら なければならなかったもう耐えきれない 一家が上地にをしてもいいから取り戻しに 行こう何度そう思ったかしれません暑さ寒 さ朝に晩に泣いていわしないか病気では ないかと心にかからぬ時はありませんでし た よ八女は袖口で目を押えながらしばらく声 を途切れせてい た父上のご運が開けてどうやら不自由の ない明け暮れを迎えるようになってから父 上と私はお前を引き取る相談ばかりしてい まし

た松へ人をやってさせると長く病んでいる 淀殿と幼い弟の面倒を見ながらお前が 糸繰りをして家計を立てていると いう品に迫られてやったお前が今は自分で その品と戦って いるそれを思うと私たちはとても安間と 暮らしてはいられなかっ たこれまでの苦労をいくらかでも償って あげなければ海の親としてどうしても心が 済まないの です与田殿には決して悪いようにはしませ んたかさんこちらへ帰っておくれこの西村 の娘になっておくれ [音楽] ねえ膝の上に揃えた両の手を固く握りしめ ながらおはこった顔をじっとうけていたが 魔女の言葉が終わると静かに目を上げ てお干し飯はよくわかりました本当に ありがとう存じますけれど私やはり松代へ 帰らせていただき ます欲yetのない声でそう言った彼女の 方の辺りがカカに引きずった でも淀殿とはもう話がついているのです どちらのためにもこれが1番いいと与田殿 も言っておいでなのです よそれをご本心だとおしめしますかおは そっとかぶりを振り彼女の目を見上げ た与田の父がそうおっしゃるのはこちらへ の定規からだとはお考えになれませぬか あなたは今人の親としてこよそえやること がどんなに辛いものかということを おっしゃいました血離れをするまでの親子 でもそれほどなのに18年も一緒に暮らし てきた親子はそうではないとおぼしめし です かおはそう言いながら松本へ行けと言われ た夜のことを思い浮かべた あの時与田の父はこちらへ背を向けておに 肩を揉ませながらあの話を切り出し た父はおの顔を見ることができなかっ た自分の辛い顔も見せたくなかったの だそれが今おたには痛いほど直家に 思い当たるああどんなにお辛い気持ちで元 へ行けとおっしゃっ たろうおは胸を刺されるように感じながら 静かに続け た与田の家はまずしござい ます私が糸をしてカツカツの暮らしを立て ているのも本当 ですけれどもそれはあなたがお考えなさる ほどの苦労ではございませ んこう申し上げてでは言葉が過ぎるかも しれません けれど今度のことさえなければ私幸せ者だ とさえ思っておりまし

た与田の父はもったいないくらい良い父で ござい ます弟も真味によく懐いていて母のように 頼っていてくれ ます私にはあの家を忘れることはできませ ん 今になって父や弟と別れることは私には できませ んそれだけの深い思いやりを私たちにはし て遅れでない の彼女はすがりつくような口ぶりでこう 言っ たここをお前のお部屋にと思って襖を 張り替えたり長を飾ったり新しく窓を切っ たりし た着物や帯を折らせたり染めさせたりして 今度こそ親子兄弟揃って暮らせると楽しみ にしてい たこれでこそ父上もご出世の会があると 喜んでいたのです よそれを考えて遅れではないのか いそれは愛願とも言うべき響きを持ってい た心を引き裂かれるような思いでこれが親 の愛情だと思いつつオは聞い たこのためにはこを愛する情のためには何 も押し切ろうとするそれが親というものの 心であろう悲しいほど真っすぐな愛おは よろよろとなり 母の温かい愛の中へ崩れかかりそうになっ た自分のために模様替えをしたというその 部屋新しい 長土塀を支え た自分はその愛を受けてはならない与田の 家を出てその愛を受けることは人の道に 外れるの だこう自分を叱りつけながらおはやはり 松代へ帰ると繰り返し た皆様のお幸せなご様子も拝見しました もう一生に書かれなくとも心残りはござい ませんどうぞおかはこの世にないものだと おぼしめしてこれ限り忘れていただきとう ござい ます彼女は静かに立っていっ たすぐに弟の安野城が来後から金だ言と 長けとが来たみんな言葉を尽くしてここに とまるようにと おはもう何も答えなかっ た送信したように目をつり片付きの硬い 姿勢で真と座ってい たそれはまさしく問題のように苦しい瞬間 であっ た 6明る朝まだほのくらいうちにおはを立っ た来る時の老木と家が共について魔女と安 の城とが城下から一ありの中原という辻

まで送ってき たそしてそこの掛茶屋で一緒に茶をすり しばらく別れを惜しんでから多元を分かっ た2人は小の姿が道を曲がっていくまで 見送っいたがおは1度も振り返らず まっすぐに並木の松の彼方へ去っていっ た道を急いだので松代へは3日目の昼前に 着い た城下町が見え出すともう胸がいっぱいに なりいくら吹いても後から後から涙が こみ上げてき たほんのわずかなルスだったが山々の姿も 千川の流れも 懐かしく目につくほどの子や丘や 断端路上の石こまで呼びかけたいような 懐かしさが感じられて国へ帰ったという 気持ちがし た松之助は稽古からまだ帰らず家には郎 ちょうど薬を煎じていたところだっ た老木の訪れる声を聞いて玄関へ出てきた が入ってくるおを見るとあっという表情を し たただいま戻りまし たおは簡単にそう挨拶をするとすぐ裏へ 回って自分のすぎをし友の2人にもがて 一晩止まっていくようにと言っ たしかし彼らは玄関で西村からの工場を 述べ手土産などを置いて上がらずに 立ち去っ たどういうわけで帰っ た差し向かいになって座るとけし郎は煎じ ていた薬を湯のみに継ぎながらそう言っ たてやった手紙は読まなかったの か拝見いたしまし たそれなら事情は分かっているはずだ俺も 安穏な余勢が遅れるしお前の一生も幸せに なるそう考えてしたことなのに目先の上に 溺れて何もかも打ち壊してしまうつもり かお許しくださいまし父上 様おはひしと父を見上げそこへ手をつい た私もっと働きますお薬にもご富重はかけ ませんお好きなものはどんなにしても整え ますもっとお見回りも綺麗にしてお 住み心地の良いようにいたし ますですからどうぞおタをこの家に置いて くださいまし お前には俺の気持ちが分からないのか俺が そんなことを不足に思っているように 見えるか俺がお前を西村へ返す決心をした の は分かっております私には分かっており ますの父上 様おは父にその後を続けさせまいとして遮 にっ た分かっております

けれどおは一度よそへやられた子でござい ます血離れをしたばかりで母の懐からよそ へやられたおを父上様はかわいそうだと 思ってはくださいません かもしかわいそうだと思いくださいまし たらここでまたよそへやるようなことは なさらないでくださいまし だが西村はお前にとって実の親だ西村へ 戻ればお前は幸せになれるの だいいえ幸せとは親と子が揃ってたえ 貧しくて一腕の飼を すり合わせだと思いますおたはあなたが 真実のたった1人の父上です亡くなった母 がおかにとって本当の母whe ですこの家の他に私には家はございませ んどうぞおたをおそばに置いてください まししよそはおやりにならないでください まし父様この通りお願い申し ます父上と叫びながら松之助がはってき た稽古から帰って表で2人の話すのを聞い ていたの だろう目にいっぱい涙を溜めながら入って くると姉と並んでそこへ座り半ばむせび あげながらこう言っ たどうぞ姉上を家に置いてあげてください 父上こんなにおっしゃっているのですもの どうかよえはやらないでくださいお願い ですけし郎は目をつり青ざめた表を伏せ 両手を膝に置いてじっと黙ってい たそれは大きな鋭い苦痛に耐える人のよう な姿勢だ そして長いこと小と松之助とのむせび あげる声だけが貧しい部屋の壁や襖へ 染みるように聞こえてい たでは家にいるが よいけし郎がやがてうめくような声でそう 言っ た西村どは父から手紙を書くもう松本へは やらぬ から松之助は姉の膝へ飛びつき涙に濡れた 方をすりつけながら声をあげて泣きだすの だっ た爽やかな朝の日光が明り商利いっぱいに さしつけているいかにもはらしく心を温め られような明るさ だおの来る糸車の音がブンブンとその うららかな朝の空気をふわせて聞こえて くる蜂の羽音にも似た静かな心の落ち着く 柔らかい音で あるけ郎はそれを聞き ながらお前成人したら姉を随分幸せにして あげなけれいけないぞと松之助に言うの だっ た大きくなれば分かるだろうが姉はこの父 やお前のためにせっかく幸せになれる運を

捨ててくれたのだ自分のためではない父と お前のために だ忘れてはすまない ぞ松は父の目を見上げて少年らしく はっきりと頷い た糸車の音はブンブンと歌うように静かな 唸りを続けてい た OG

山本周五郎『日本婦道記 糸車』(青空文庫)親と子の本当の幸せとは…。今年19歳になるお高は、父が倒れて以来その看護や弟の世話をしながら、松代藩の産物の木綿糸を繰って生計の足しにしていた。貧しくとも幸せに心豊かに暮らしていたが…。

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日本語の文章を読んだり文字を書いたりするのが大好きな元日本語教師です。
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