AIモデルで衣料廃棄ゼロへ。FEIDIASが始める次世代ファッションEC「VITONICA」 | TABI LABO

AIモデルで衣料廃棄ゼロへ。FEIDIASが始める次世代ファッションEC「VITONICA」 | TABI LABO

株式会社FEIDIASが2026年5月、AIモデルを活用した「Zero Waste Fashion」プロジェクトの本格始動を発表しました。

年間9,200万トンともいわれる衣料廃棄——その約85%が一度も袖を通されることなく捨てられているという現実に、テクノロジーで真正面から挑む取り組みです。

「売れ残り」が生まれる構造

ファッション業界の廃棄問題は、もはや誰もが耳にしたことのあるテーマかもしれません。しかし、なぜこれほどまでに大量の服が捨てられ続けるのか、その構造に目を向けると少し景色が変わってきます。

従来のアパレルビジネスは、企画→サンプル制作→撮影→販売→在庫処分という一方通行のフローで成り立ってきました。何十着、何百着ものサンプルを作り、モデルを起用して撮影し、店頭やECに並べてから「売れるかどうか」を確認する。つまり、需要がわからないまま大量に作り、余った分は廃棄するしかないという構造的な問題を抱えているわけです。

近年、サステナブルファッションへの関心は消費者の間でも確実に高まっています。環境配慮を購買基準のひとつに据える生活者が増えるなか、ブランド側にも「作りすぎない仕組み」が求められるようになりました。とはいえ、意識だけでは解決できないのがこの問題の根深さでもあります。

AIが生産の「順序」を変える

©株式会社FEIDIAS

©株式会社FEIDIAS

2022年設立のFEIDIASが提案するのは、この生産フローそのものの逆転です。同社が基盤とするサービス「ONE BRAND ONE MODEL(OBOM)」は、各ブランドが独自のアイデンティティを反映した「ブランド専属AIモデル」を持てるというもの。このAIモデルを軸に、3つの段階で廃棄を減らす設計がなされています。

まず、サンプルの極小化。1着のマスターサンプルさえあれば、AIが色違いやスタイリング違いなど無限のバリエーションを生成できるため、「作っては捨てる」サンプル制作のサイクルを大幅に縮小できるとのこと。

次に、在庫リスクの最小化。実物を作る前にAIが生成したビジュアル(同社は「AIルック」と呼んでいます)で市場の反応をダイレクトに確認し、予約販売につなげることで、過剰在庫という経営リスクそのものを排除する狙いがあります。

そして、返品の抑制。体型や利用シーンに応じた高精度なバーチャル試着を提供することで、ECにおける最大の課題ともいえる「届いてみたらイメージと違った」を未然に防ぐ——同社はこれを「リターンゼロへの挑戦」と位置づけています。

この3段階のアプローチが興味深いのは、製造・物流・小売というサプライチェーンの各段階にそれぞれ対応している点です。サンプル段階の無駄、在庫段階の無駄、そして販売後の無駄。ひとつの技術基盤で、廃棄が生まれるポイントを上流から下流まで一気通貫でカバーしようとしている構想は、なかなか野心的ではないでしょうか。

「見せてから作る」が当たり前に?

さらにFEIDIASは、2026年6月を目処に次世代ECプラットフォーム「VITONICA(ヴィトニカ)」のプロトタイプを公開する計画も明らかにしました。独自のLLM(大規模言語モデル)基盤を構築し、個々のユーザーに最適化されたクリエイティブ体験を提供するプラットフォームになるとのことです。

汎用的なAIツールではなく、ファッション領域に特化した独自基盤をあえて構築するという判断には、同社の「AI×クリエイティブで社会課題を解決する」というビジョンが色濃く反映されているように感じます。ファッションの文脈を深く理解したAIだからこそ、ブランドの世界観を損なわずに需要予測や体験設計ができる——そんな思想が根底にあるのでしょう。

考えてみれば、私たちの買い物体験はすでに大きく変わりつつあります。SNSで気になるアイテムを見つけ、口コミを確認し、ECで購入する。その流れのなかに「AIが生成したビジュアルで着用イメージを確認し、納得してから注文する。届くのは自分のために作られた一着」というステップが加わるとしたら、それは消費者にとっても決して悪い話ではないはずです。

技術と感性の交差点で

もちろん、こうした構想が実際にどこまで機能するかは、今後の実証次第という面もあります。AIが生成するビジュアルと実物との間にどれほどの一致度を担保できるのか、消費者がAIモデルによる提案をどこまで信頼するのか——乗り越えるべきハードルは少なくありません。

それでも、「作ってから売る」という長年の常識に対して「見せてから作る」という明確なカウンターを提示したこと自体に、大きな意味があるように思います。FEIDIASが掲げる2030年までの廃棄ゼロという目標は壮大ですが、テクノロジーが「無駄を生まない仕組み」として機能しはじめたとき、ファッションの楽しさと地球への配慮は、もしかしたら思っていたよりずっと自然に両立できるのかもしれません。

服を選ぶワクワクはそのままに、誰も着ない服が生まれない未来。その第一歩が、いま静かに踏み出されようとしています。

Top image: © 株式会社FEIDIAS