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背景にあるのが、「内側から整える」というインナービューティーの広がりだ。韓国ビューティーブランドを主力とするECプラットフォームのQoo10や、韓国のヘルス&ビューティーストア最大手の「オリーブヤング」では、自社ECサイト上でインナービューティーに関する大規模な特集ページを組むなど、関連商品への注目度の高まりがうかがえる。

【現地レポ】韓国で インナービューティー が台頭 美容と健康の「あいだ」で広がる消費

美容意識の高まりとともに、「内側から整える」という発想はすでに一定の広がりを見せていた。ただ、最新の韓国美容においては、それを概念や理想に留めず、プロダクトや売り場、そしてコミュニケーションを緻密に設計して具体化し、生活者が日常に取り入れやすい形へと落とし込んでいる点にある 。こうした動きは、新進ブランドの戦略や、既存ブランドの新業態などに鮮明に表れている。それぞれの動きから韓国インナービューティーの広がりを見ていく。

習慣・領域・思想で広がるインナービューティー

ニアル(NE:AR)
サプリメントを「義務」から「楽しみ」へ再設計する

グローバルマーケティングを統括するメイ・ミナミ氏

サプリメントを「特別な用途のもの」ではなく、「日常的に取り入れる習慣」へと再設計したのが、インナービューティーブランドの「NE:AR(ニアル)」だ。

ブランドを本格的に立ち上げたのは約3年前。当時、Kビューティー市場が拡大するなか、同社は「化粧品を塗るだけでなく、摂取する美容」への関心の高まりを見据え、インナービューティー領域への参入を決めた。10代から30代の若い層をターゲットにするブランドが不在だった点も、その背景にある。

ニアルが取り組んだのは、健康機能食品に付きまとう薬っぽさや古臭いイメージを見直し、体験そのものを再設計することだった。ニアルを象徴するのが、従来の錠剤ではなく「味のあるキャンディ(チュワブル)型」のサプリメント。多くのサプリメントが水とともに飲み込む必要があるのに対し、ニアルは「美味しさ」を前面に押し出した。味を持たせることで手に取りやすくし、継続しやすい形にしている。さらに、口内で溶かすことで、一般的な錠剤よりも口腔粘膜を通した吸収が期待できるといった点も、この形状を採用する理由の一つだ。個別包装とすることで、外出先でも手軽に摂取できるようにした。

10代から30代の若年層を中心に支持を広げている要素のひとつが、デジタルマーケティングの活用だ。インフルエンサーを自社で起用し、商品開発や販売にも関与させる体制を構築。単発の広告ではなく、継続的にブランド体験が発信される仕組みを作った。また、韓国の人気ガールズグループTWICEのサナを広告モデルに起用し、若年層に向けた認知拡大を図っている。

2026年は日本市場への取り組みも強化する。Qoo10での展開を起点に、今後はドラッグストアなどオフラインチャネルへの拡大を進める。同社によると、日本は韓国と比べてオンラインの比重がまだ高くないとみており、オフラインでの接点も重視する方針だ。あわせて、パートナー体制の見直しやリブランディングも予定している。製品はキャンディ型サプリメントにとどまらず、韓国ではすでにプロテインシェイクや、睡眠をサポートするメラトニン関連、紅参(高麗人参)など、複数のカテゴリーへと広げている。

ブランド名である「NE:AR」は、英語の「Near(近くに)」に由来する。生活者のそばに寄り添う存在でありたいという意図が込められている。グローバルマーケティングを統括するメイ・ミナミ氏は「生活者のそばで選ばれるブランドを目指す」と述べた。

シシベラ・ビューティー(CICIBELLA BEAUTY)
韓国のトレンドを取り込み、日本で品質を担保する

日本発ブランドのシシベラ(CICIBELLA)は、衛生マスクで認知を広げながら、スキンケアや食品へと領域を広げているブランドだ。4月14日に発表された「2026 Qoo10 メガデビュー アワード」では、スキンケア部門でライジングスター賞を受賞した。

同ブランドを運営するラベラ(La Bella)は現在、3つのブランドを運営する。衛生マスクと化粧品を主軸とする「シシベラ」、ハンディファンやクールリングなどの雑貨を扱う「シシライフ(CICI LIFE)」、そして食品を扱う「シシフード(CICI FOOD)」だ。外側のケアにとどまらず、内側から美や健康を支える領域へと視点を広げている。

同社が開発したスキンケア商品のなかで、特徴的なのがシートマスクだ。2026年に発売した個包装の7枚入りフェイスパックでは、「衛生面」や「持ち運びやすさ」に着目し、あえて個包装という仕様を採用した。一般的な大容量パックとは異なる設計とすることで、日常での利便性を高め、差別化を図った。

同社の商品開発の強みの背景にあるのが、韓国のトレンドの速さと、日本の品質や信頼性の両方を組み合わせている点だ。代表取締役の中村信仁氏は、韓国のトレンドが日本より数カ月早い点に着目し、その動きを商品開発に取り込んでいると語る。

ラベラ代表取締役の中村信仁氏

2025年には千葉県内の化粧品工場を買収し、原料調達から生産までを内製化。中間コストを抑えながら品質を維持する体制を整えた。また、トレンドをいち早く取り入れるため、韓国に開発センターを設立。現地の大学教授と連携した独自処方の開発や、韓国の有名デザイン事務所によるパッケージ設計を行い、「トレンドは韓国、品質は日本」というグローバル戦略を打ち出した。

同社の販売力を後押しするのが、既存の大規模な顧客基盤。コロナ禍に衛生マスク事業へと転換した同社は、売上を十数億円規模から100億円超へと伸ばした。衛生マスクは、ドラッグストアやホームセンター、スーパーなどを含め国内約3万店舗で販売し、日本国内で6000万人以上が利用、累計リピーター数は2800万人に達している。

この顧客基盤を起点に、同社はスキンケアや食品といった領域へも事業領域を拡大。商品企画から開発、自社工場での生産、物流までを一貫して担う体制を背景に、カテゴリを横断しながら商品を展開している。

現在、売上の約9割は日本市場が占めるが、同社はすでに中国や東南アジアなど海外での販売網も広がりつつある。日本発ブランドとして、品質だけでなく、デザインや価格、開発スピードを含めた商品力を磨きながら、世界で通用する商品を生み出すことを見据えている。

ヴィーガナリー(Veganery by d’Alba)
ヴィーガンを思想から習慣へ Veganeryが描くインナービューティー

韓国発のヴィーガンコスメブランド「ダルバ(d’Alba)」から派生したヴィーガンウェルネスブランド「ヴィーガナリー(Veganery by d’Alba)」。日本市場でも認知を持つダルバのブランド資産を背景に、インナービューティー領域へと拡張する形で立ち上げられた。外側からのケアと内側からのケアを横断し、美容を生活全体で捉える設計が特徴だ。

主力は植物性コラーゲン製品。魚由来コラーゲンに見られる匂いや味の課題に対し、ハイビスカスなど植物由来の原料から同様のペプチド構造を持つ成分を抽出する技術を採用し、摂取のしやすさを高めている。さらに、含有量を「2000mg」「3270mg」「5000mg」と段階的に設計し、生活者の習慣や目的に応じて選択できるラインアップを揃えた。

特徴的なのは、ヴィーガンという価値を「制限」ではなく「選択の基準」として提示している点だ。韓国では倫理やトレンドの文脈で語られることの多いヴィーガンだが、日本では「安全性」や「信頼性」といった観点で受け止められる傾向がある。ヴィーガナリーはその違いを踏まえ、食べる美容としての安心感を軸に訴求を強めている。

ヴィーガナリーディビジョンのシニアマネージャー、ビョン・ソンヒョク氏

こうした設計は、従来のインナーケア製品が重視してきた「何に効くか」という機能訴求とは異なる。味や食感、日々のルーティンまでを含めた体験として設計することで、インナービューティーを一時的な消費ではなく、継続的な習慣として定着させようとしている。

同ブランドは、ダルバの既存顧客を取り込みながら、スキンケアとインナーケアを横断したブランド体験の構築を進めている。こうしたアプローチはQoo10のユーザー特性とも相性がよく、レビューやライブコマースを通じて認知と理解を同時に拡大。2025年にはライブ配信1時間で300万円超を売り上げ、インナービューティーカテゴリー1位を記録した。

ヴィーガナリーディビジョンのシニアマネージャー、ビョン・ソンヒョク氏は、「今後は世界的にウェルネスがキーワードになる。食べることから美しさを引き出す習慣を、日本市場でもさらに定着させていきたい」と話す。