NECと明大、ファッション持続性高める効果研究
NECは、社会的価値が求められる製品や空間(環境製品など)を対象に、そこに内在する文脈をひも解き、生活者から選ばれる機会をつくる活動を行っている。データの活用や価値の証明方法に着目し、NECは顧客の実務現場に根ざした課題整理と仮説検証を行い、学術的な視点からの検証および妥当性の研究を、明治大学商学部 加藤拓巳准教授と共同で進めてきた。
今回は、ファッションが本来持つ価値と、消費者の認識との間に生じているギャップに着目した。調査を通じて、ファッションは“消耗品”として捉えられている傾向が見られており、経済成長と環境配慮を両立するためには、“半耐久財”としての価値を再構築することの重要性が見出された。本検証では、持続性を高める商品設計およびコンセプトが消費者心理に与える影響について検証している。
消費者は、企業の社会的責任に対する認識を重視する姿勢を見せながら、実際には購入行動に移さない傾向がある。この傾向は、多くの業界で観測されており、ファッション業界でも共通だ。安価で、かつ豊富な選択肢を提供してくれるファストファッションは急成長した。その反面、安価なファストファッションの普及は大量消費・大量廃棄を産み、環境問題の悪化が懸念されている。
日本人女性600名を対象としたオンライン調査結果に基づき、ファッションのロイヤルティの要因を共分散構造分析で分析したところ、その結果、快適性が最も強い正の効果を持ち、次いでデザイン性、経済性が続いた。一方、サステナビリティ(環境保護・人権保護)はロイヤルティに対して負の効果を示した。また、ファッションという半耐久財にもかかわらず、耐久性は有意な効果を持っていないことが確認された。つまり、消費者はファッションを「消耗品」として捉え始めている懸念を示唆しているとしている。
経済成長と環境配慮を両立するためには、ファッションを半耐久財に引き戻す価値づくりが求められる。従来のサステナビリティは、環境・人権の保護を訴求してきたが、それは利他的動機であり、消費者は価値を感じにくくなる。環境や人権に配慮した商品を購入する行動であるエシカル消費を促進するためには、利己的動機に基づいてエシカル特性を消費者価値に転換する必要がある。
このほか、ファッションにおいては、肌触りなどの快適性が最も重視される利己的動機であることが判明した。本研究では、「快適性の持続」というコンセプトを策定した。これは、長期間にわたり快適さを維持する衣服が、機能的に長く使用可能なだけでなく、衣服への愛着を育み、結果として衣服の購入量や廃棄量の削減につながるという、消費者価値と環境・人権保護を両立させる新しいサステナビリティの形だ。従来のサステナビリティが環境保護や人権保護という利他的動機を中心に訴求していたのに対し、本概念は消費者自身の価値を起点としたサステナビリティになっているとしている。
この記事を書いた記者![]()
田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
