日本のアイドルグループであるCUTIE STREETが、韓国で大きな注目を集めているのをご存じでしょうか?
最大のきっかけとなったのは3月26日に韓国の人気音楽番組「M COUNTDOWN」に初出演して、グループの代表曲「かわいいだけじゃだめですか?」を韓国語バージョンで披露したことでした。
さらに3月28日、29日には初の韓国単独ライブを成功させ、7月25日、26日にアンコール公演を開催することも発表。また、韓国の音楽チャートである「Spotify Viral Hits Korea」や「Instagram Viral Song」で1位になるなど様々なチャートにもランクインを果たして、大きな注目を集めているのです。
このCUTIE STREETの成功は、日本のアイドルの世界における可能性の片鱗を示していると言えますので、ご紹介したいと思います。
2022年に発足した「KAWAII LAB」のきっかけ
CUTIE STREETは、アソビシステムが2022年に発足した「KAWAII LAB」から誕生したアイドルグループの一つです。
「KAWAII LAB」は、総合プロデューサーの木村ミサさんのもと、FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEDAYと毎年のように新しいガールズグループを生み出しているプロジェクトです。
昨年末にはFRUITS ZIPPERとCUTIE STREETが紅白歌合戦への初出場を果たしたことをご存じの方も多いでしょうし、今年2月にはFRUIS ZIPPERがデビュー4年目で東京ドーム公演を成功させるなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いです。
ただ、「KAWAII LAB」が発足した2022年2月は、コロナ禍だったこともあり、日本で新たにアイドルグループを生み出すことには懐疑的な声も少なくありませんでした。
日本のアイドルはK-POPに勝てない?
特に2022年は、若い世代にK-POP人気が大きく広がっていたタイミングでした。
象徴的なのは、Z総研が実施した2022年上半期のZ世代が選ぶトレンドランキングの「流行ったアーティスト」部門に当時名前を連ねていたアーティストの顔ぶれです。
Z世代が選ぶ2022上半期トレンドランキング(出典:Z総研)
1位にBTS、3位にIVE、5位にTWICEと上位にK-POPグループが並ぶ結果となっています。
翌年のZ総研の発表からは、この部門が「流行ったアーティスト」部門と「流行ったアイドル」部門に分割されることになりますが、2023年上半期の「流行ったアイドル」部門では2位にTWICE、4位にIVE、6位にNewJeansと、トップ10のうち5枠がK-POPに占められる結果となっているのです。
参考:『Z世代が選ぶ2023年上半期トレンドランキング』をZ総研が発表!
中川さんも2022年頃は「K-POPのすごい勢いを感じる一方で、何十億もかけて長い時間育成しデビューさせるという形を今から真似しても勝てないと思いました。」と感じていたと、インタビューで当時の気持ちを吐露されています。
参考:「アソビシステムだからやれること、やる意味があること」 “原宿発カワイイ”で席巻 中川悠介社長が貫く信念
実際、2022〜2023年頃は、「K-POPグループに比べて日本のアイドルは歌唱やダンスのレベルが低いから世界では勝負できない」と厳しく批評する業界関係者が少なくなかったと記憶しています。
若い世代におけるアイドル人気をK-POPから取り戻す
ただ、そんな日本の若者の間でK-POP人気の時代が到来していたタイミングで、アソビシステムの代表である中川さんが木村ミサさんと共に選んだのが「”カワイイ”ジャパニーズアイドル」という路線でした。
ある意味で、「KAWAII LAB」はK-POPの日本における拡がりに対する逆張りからスタートしたわけです。
当時、多くの業界関係者から大きな賭けと考えられていたその「KAWAII LAB」の挑戦は、木村ミサさんによる「かわいい」の再定義や、メンバーも積極的にTikTokなどに取り組むSNS戦略、そして「ファンの自己肯定感につながる楽曲」などにより、大きく花開くことになります。
最も象徴的なデータと言えるのは、2023年上半期にはK-POPグループが半数を占めていたZ世代が選ぶトレンドランキングの「流行ったアイドル」部門が、2025年下半期においては、1位がFRUITS ZIPPER、2位がCUTIE STREET、5位がCANDY TUNEと、「KAWAII LAB」のグループがトップ5のうち3つを占める結果になったことです。
Z世代が選ぶ2025下半期トレンドランキング(出典:Z総研)
アソビシステムの中川さんと木村ミサさんは、K−POPのやり方を真似するのではなく、「KAWAII LAB」を通じて日本ならではの「”カワイイ”ジャパニーズアイドル」に特化することで、日本の若者におけるアイドルの主役の座を見事に取り戻してみせたわけです。
韓国でも評価されることを証明したCUTIE STREET
そうした中で、今回のCUTIE STREETの韓国の音楽番組出演と韓国公演の成功には、アソビシステムの日本ならではのアイドルに特化するという選択が、K-POPアイドルの本家である韓国においても評価されたという意味で、非常に大きな意味があると言えます。
もちろん、今回のCUTIE STREETの「M COUNTDOWN」出演が大きな話題になったのは、韓国語歌唱に挑戦したことが評価された面があることは間違いありません。
一方で興味深いのは、今回の音楽番組出演後、CUTIE STREETの日本語MVの韓国からの視聴数が約10倍に伸長して、韓国のYouTubeの「人気のミュージックビデオ トップ100」へのランク入りを果たしている点です。
参考:CUTIE STREET、韓国の人気番組出演で大バズリ 韓国語パフォーマンスに現地ファンも熱狂
明らかに韓国の音楽ファンが、CUTIE STREETの番組出演をきっかけに、彼女たちの日本語曲にも興味をもってくれた証と言えるでしょう。
日本の若い世代が、K-POPグループが日本語曲をリリースした後に、韓国語曲も聴くようになってきた歴史と同じ事が、日本のアイドルグループの海外展開においても発生しているわけです。
少なくとも2022年頃に言われていた「日本のアイドルは世界では勝負できない」という言説は迷信であったことは、今回のCUTIE STREETの韓国公演の成功によって証明されたと言えます。
デジタル鎖国を解けば国境を越えられるかもしれない
CUTIE STREETが今回韓国公演を成功させることができた要因の一つとしてあげられるのは、やはり「KAWAII LAB」がTikTokを積極的に活用して、国境を超えるレベルの大きなバズを生み出しつづけているからと考えられます。
特に今回の現象で興味深いのは、もともとCUTIE STREETのYouTubeでの海外の国での再生比率が7%程度だったものが、今回の韓国の音楽番組出演後16%近くまで上昇している点です。
これには当然韓国の比率が10%以上に膨らんだことが大きく影響しているのですが、インドや台湾、インドネシアなどの韓国以外の国における再生数も連動して上がっているのです。
(出典:YouTubeチャート)
これはやはり、Mnetの音楽番組のパフォーマンス動画が、YouTubeで本編はもちろん、メンバー毎のチッケムや、引きの固定カメラなど様々な形態で視聴できることで、国境を越えて拡がりを見せているからと考えられます。
こうした結果から考えられるのは、実は日本のアイドルグループの人気が海外でなかなか高まらなかったのは、アイドルグループの能力や、文化的な要因だけではなかったのではないかと言う仮説です。
実は、日本のアイドルグループが世界から見つからなかったのは、サブスク展開が事務所によって遅れていたり、日本の音楽番組の出演映像が海外から視聴できないなどの日本の音楽のデジタル鎖国によって、「見つけられなかった」だけだったかもしれないのです。
日本の「アイドル文化」は実は世界でユニークな存在
そう考えると、いままで世界では通用しないとされてきた日本の「アイドル文化」は、実は逆に世界においてユニークな存在として、拡がりを見せる可能性がある、ということが、今回のCUTIE STREETの成功から見えてきます。
最近では、ハロプロがサブスクを解禁し、所属グループのjuice=juiceの「盛れ!ミ・アモーレ」という楽曲がTikTokなどでもバズった結果、日本でも大きな話題になっていますし、他の日本のアイドルグループも積極的にSNSなどのデジタル活用を進化すれば、その魅力が海外に拡がる可能性も見えてくるはずです。
昨年はSnow Manが「カリスマックス」を韓国の音楽番組で初披露したことも話題になりましたが、ボーイズグループも同様の可能性があるのは明白です。
参考:Snow Manが新曲を韓国の音楽番組で初披露。日本の音楽番組は変われるか
また実は、2011年に日本国外で最初に結成されたAKB48のグループとしてインドネシアで活動を開始したJKT48は、現在YouTubeチャンネルの登録者数が296万人と、本家AKB48を超えるほどファン層を広げており、日本的なアイドルが海外でも評価されうることを証明してくれています。
今回のCUTIE STREETの成功は、まだ小さな一歩かもしれませんが、少なくとも「原宿から世界へ」という「KAWAII LAB」が掲げるコンセプトが、実現可能であることを示した重要な一歩だったと言えます。
引き続き、「KAWAII LAB」とアソビシステムが、日本の「”カワイイ”ジャパニーズアイドル」を世界にどのように拡げていくのか楽しみにしたいと思います。
