
泥酔大怪我事件の真相を明かす三ツ矢雄二(写真・福田ヨシツグ)
《目が覚めたら、病院のベッドで治療中でした。救急車で運ばれたのかなあ?覚えてない》
2026年1月30日、Xで“ボコボコになった”自身の顔面の写真をアップしたのは、声優の三ツ矢雄二だ。
アニメ『タッチ』の主人公・上杉達也のほか、アニメ『超電磁ロボ コン・バトラーV』の主人公・葵豹馬(あおい・ひょうま)など数々の名作に出演していることで知られている。また、洋画の吹き替えも多数こなしており、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などでマイケル・J・フォックスを担当している。高い声を生かした“オネエ役”でも第一人者だ。
三ツ矢は2026年で71歳。まさに日本を代表するレジェンド声優だが、いったいなにがあったのか。取材を申し込んだところ、実際の“事故現場”で顛末を語ってくれた。
「日本酒でね、ぐでんぐでんに泥酔しちゃったんですよ。ふだんはあまり日本酒を飲まないのですが、その日は蔵元さん主催の利き酒会のような感じで、さまざまな種類を出され、あまりにおいしいから次々飲んじゃって……。18時から飲み始めて、気がつけば23時でした」
だが、店を出たところまでははっきり記憶が残っているという。
「お店を出てごあいさつして、一緒に飲んでいた友人たちは駅の方向に向かったんですが、僕は逆方向に自宅があるので、タクシーを拾ううため大通りにひとりで向かったんです。足取りもちゃんとしてたし、意識的には酔っている感じもなかったんですよ。でも、ここら辺の道で記憶がなくなっているんです」
そういって三ツ矢が指したのは、渋谷区・代々木駅付近のガード下の横断歩道だ。
「ふらついたり、転んだり倒れたりした記憶はまったくないんです。交差点の信号を見た記憶がうっすらあるので、その後すぐ倒れたのかもしれません」
目が覚めた時は病院だったという。
「突然ベッドの上で目が覚めて、『いまからまぶたを縫いますよ』って声が聞こえました。そのときは酔いも覚めてたんですけど、何が起こったか自分でもわからない。ふっと自分の体を見たら、裸で紙パンツ穿かされてるんですよ。『4針縫いますからね』って言われて、あ、僕は倒れたんだって気づいたんです」
大混乱の中、三ツ矢はふと考えたことがあるという。
「あの意識のなくなり方って、死んじゃうってこういうことなのかもなって考えてたんですよ。パツンッてすべてなくなることが、死んじゃうってことかもね、と思って。全身麻酔をやったことあるんですけど、それとも感覚が違うんです。救急車に乗った覚えもないし、気がついたら救急病棟のベッドの上。そこで、おでこがズキズキしだして、これは転んだんだとようやく分かったんです。治療は終わったけど、何でここにいるのかとか、いまは何時とか、そういう説明は何もありませんでした。目の前に時計があって、それが6時だったんで、もう朝だって気づきました」
23時過ぎから約7時間ほど意識がなかったことになる。衝撃を受けたままの三ツ矢は、さらに病院側から「入院しますか?」と聞かれて、さらに驚いたという。
「『えっ、僕、どこか悪いんですか?』って聞いたら、そうじゃないけど不安だったら入院してくださいと。『入院しても、ご自宅に帰っても、ケガが痛いのは同じですよ』って言われた(笑)。じゃあ、うちのほうがゆっくり眠れるなと思ったから、帰りますって言ったんです。着ていた洋服がビニール袋に入って出てきたんですけど、ズボンが濡れてるんです。ああ、失禁したんだと思いましたが、それも覚えてない。マフラーは血まみれで、絞ると血が出てくるくらいでした。お医者さんが、頭や顔は出血が多いって教えてくれたんですけど、ダウンのコートから何から、上半身の着衣は全部、血だらけでしたね。血を拭いて、何とかタクシーで家に帰りました」
自宅に戻った三ツ矢は、昨夜のできごとを思い出そうとするが、どうしても思い出すことができなかったという。
「手のひらは、ケガもなくきれいなんです。普通は倒れるときに体を支えようとするはず。だから支えることもせずに、そのままバタンって頭から倒れたんだと思います。医者にも、打ちどころが悪かったら死んでいたと言われました」
三ツ矢は事故3日後にXにポストしたところ、713万回も閲覧されるなどという大騒動になった。
「たまたまXに載っけちゃったら、エライことになって(笑)。700万人の人が、泥酔で倒れた僕のみっともないケガを知っているんだと思うと、ちょっと恥ずかしいですね。あんまり目立ちたいほうじゃないんですけど……まさか71歳でこんなことになるとは、自分でもビックリです」
額は肉がえぐれており、鼻の骨は骨折。まぶたも切れて、脳内には出血も認められた。その後の治療は医者が宣言したとおり「痛かった」という。
「鼻の手術が地獄でしたね。局部麻酔で鼻にガーゼを大量に入れられるんですけど、これが痛い! 目も隠されてるから、どうやったかは見えなかったんですけど、ペンチみたいなものでグイッと鼻を真っ直ぐにしたみたいです。さらにつらいのは、そこから2週間、鼻呼吸ができないことですよ。口呼吸すると乾燥するから、声に影響が出るかもしれないと、心配で。お水飲んだり飴舐めたり、乾かないようにする2週間。人生であんなに飴、舐めたことないです。ようやくガーゼが取れたときはスッキリしましたね」
額の傷は肉がえぐれているため、現在も触るとへこんでいるという。
「擦り傷じゃなくてえぐれてるって、ビックリしましたね。皮膚ができるまでしばらく時間かかりますねって言われちゃって、来週に皮膚が再生していたら、薬を変えましょうと言われています。それと、頭を強く打ってるので、脳震盪の症状がすごかったんです。とにかく頭が痛いし、めまいもするし。座って立ち上がると立ち眩みがすごいです。頭痛自体は薬を飲めば治るんですけど、頭がジンジンする違和感がずーっと続くんです。太めのハチマキを締めてるみたいな感覚が、心臓の鼓動みたいにずーっとするんですよ。いまも違和感があります。立ち眩みなどの脳震盪の後遺症は、半年から長いと1年は続くって言われて、ゾッとしました。ただ、不思議なことにいまはすごい食欲なんですよ。あと、甘いものがほしくなる。甘いものを食べると頭がクリアになるんで、脳が栄養をほしがってるんだな、細胞が再生してるんだなと思ってます」
幸いなことに頭蓋骨の骨折はなかったが、脳内出血はあった。
「事故の当日、CTスキャンを撮ったときに、脳内に出血がありました。翌日、経過観察で再度、CTを撮ったら、吸収されて血液はなくなっているので大丈夫、ただ脳内の血管が切れやすい、出血しやすい状態なので、また1カ月後に来るようにと言われました」
事故当時の状況は、いまだにまったく分かっていない。ただ、救急車を呼んだのは警察官だったという。
「病院に尋ねたら、お巡りさんからの通報ってことは教えてくれたんです。僕の推測では、きっと倒れて、血だらけの僕を見つけた誰かが警察に通報して、お巡りさんが来て対処したんだろうなと。血まみれでピクリとも動かない人が倒れてるわけですから、“人が死んでます”って通報されたのかもしれないですね。警察にも問い合わせたんですけど、対応してくれたお巡りさんの名前や、通報してくれた人は教えてもらえませんでした。本当はお礼をしたいんです」
病院からは、とにかく1カ月は安静にしろと言われた三ツ矢。療養中に助けてくれたのは『アンパンマン』だ。
「とにかく寝ていろということだったので、2月はずっと家にいました。休んで映画を見ようと思ったんだけど、頭が痛くて集中できないし、困りましたね。友達がいろいろお見舞いに来てくれて、心配してくれました。中でも、アンパンマン役で知られる声優の戸田恵子さんは、何度もご飯作りに来てくれて助かりました。60年来の幼なじみなんですよ。ありがたいものですね。ものすごく怒られましたけど(笑)。
3月になって病院に行ったら、普通の生活は問題ないけど、しばらく仕事は控えめにしてくれとは言われました。いまは週に数日、ちょこちょこと声のお仕事優先で復帰しています。声以外の仕事だと、4月7日と8日に、田中真弓さんと冨永みーなさんと一緒に『Afour Live~昭和歌謡祭~』というライブを南青山でやります。これの打ち合わせや衣装合わせ、リハーサルをやっています。最初の音合わせには、包帯まみれの状態で行ったので、みんなを驚かせましたね」
ファンには“半分元気”になった姿をぜひライブで見てほしいという三ツ矢。禁酒はしないが、日本酒はもう飲まないと宣言する。
「今回の事故は、飲みすぎた自分が悪いから自業自得ですね。酔っ払って、足がもつれて倒れるとかならまだ分かるんですけど、失神して死にかけることもあるんです。大ケガすることもあるんです。大酒飲みの人は、本当に気をつけてください」
酒は飲んでも飲まれるな、というわけだ。