トリニダードでニットウェアデザイナーとして活動し始めたカンプスは、新たな課題の数々に直面した。1年を通して暑い現地では、クラシックなニットウェアを着る習慣がない。また、昔ながらのニットを作るのに必要な素材を入手するのも困難だった。「毎日35℃になるので、ウールやカシミアではなく、リネン、きつく撚られた粗いコットン、かなりドライな質感の糸を買いつけていました」と彼女は説明する。だが、従来とは違う素材を使うことが思わぬ突破口となり、革新的なニットウェアの誕生につながった。その一例が、2026-27年秋冬コレクションに登場した、たっぷりとしたボリュームのチャンキーなデザインや、ロング丈のタンクトップといった、シルエットを自在に操り、体に巻きつけることができるレイヤードピースだ。
クリエイティブな思考と技術的なノウハウが大いに役立ち、素材面などの課題を乗り越えていったカンプス。エンジニアとしての技術も、想像以上に簡単にニットウェア作りに応用できた。「ニットウェアを極めることに、とにかく熱中しました」と彼女は言う。織機のプログラミングはエンジニア時代を彷彿とさせる勝手知ったる作業で、扱う機械は多少違うものの、言語の多くは同じだった。また、機械の仕組みを深く理解していることが、生産の一部をイタリアに移す際に有利に働いた。
現在も製品の20パーセントはカンプスが手作りしている。ニューヨークの高級百貨店バーグドルフ・グッドマンやノードストロム、その他多くのリテーラーで扱われている駆け出しのブランドにとっては相当なことだ。それもあり、カンプスは生産の一部を海外で行うことを通じて、ビジネスの拡大に取り組んできた。1年間イタリアを行き来した彼女は、世界最大規模のニットウェア糸の見本市ピッティ・フィラーティを見学し、イタリア語を学び、工場のリード・プログラマーとの生産まわりのやり取りに必要な言語の理解を深めた。それ以降、ブランドは急成長している。
