女性の社会的立場は時代とともに変化してきたが、今もなお大規模ブランドを率いる女性クリエイティブ・ディレクターは少数派だ。しかしファッションの歴史は、表舞台に立つ存在に限らず、多くの才能ある女性たちの仕事によって形作られてきた。
『VOGUE BUSINESS』および『VOGUE RUNWAY』のディレクター、ニコール・フェルプスは、「男性が夢やファンタジーに寄る傾向に対し、彼女たちは自分のために作るリアリティがある」と記している。今、そうした視点から生まれるデザインこそが、より深く、そして持続的に消費者の心に届く時代に入りつつあるのかもしれない。
この流れは、ザ・ロウ(THE ROW)やケイト(KHAITE)といった、実生活に寄り添った機能的なフェミニニティを追求するブランドへの支持の広がりからも見て取れる。一方で、フェミニズムのあり方が単一ではないように、現代の女性たちが求める服も決して「実用性」だけに収まるものではない。
ミウッチャ・プラダ/PRADA & MIU MIU
プラダのコレクションのフィナーレにて。2020年より共同クリエイティブ・ディレクターを務めるラフ・シモンズとともに。
ミラノの皮革製品店として始まった家業を引き継ぎ、革新的な視点で世界的なモードブランドへと育て上げたミウッチャ・プラダ。プラダ(PRADA)とミュウミュウ(MIU MIU)という二大ブランドを率いながらも「ラグジュアリー」という言葉を好まず、見せかけの豊かさではなく「ユースフル(有益)な服」をつくりたいと語ってきた。
若い頃、イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)を着て女性の権利を訴えるデモに参加していたというエピソードが象徴するように、ミウッチャのクリエーションは自己表現と、社会や政治への態度に裏打ちされてきた。「自分に対しても他人に対しても正しく」ありたいという言葉どおり、その姿勢はデザインにとどまらず、環境や社会への取り組み、さらにはプラダ財団を通した文化活動にも反映されている。
