Search for:

2026年1月30日から2月1日までの3日間、サステナブルなファッションイベント「The First CIRCULAR -PLAY-」が「渋谷サクラステージ」と「フォレストゲート代官山」の2会場で開催されました。

主催は東急不動産と、ブランド認定リユース品を扱うフリースタンダード、そして施設運営を行う東急不動産SCマネジメント。今回は、2025年に続く2回目の開催で、20〜30代を中心としたファッション感度の高い層に向け、「服を買って使って、廃棄する」という従来のスタイルではなく、リユースやリサイクル、リペアを取り入れながらおしゃれを楽しむ、循環型の消費サイクルを体感できるイベントです。60以上ものブランドや企業が参加したこのイベント、早速、「渋谷サクラステージ」会場の様子をレポートします。

これがリユース品や訳あり品?

場所は渋谷駅に隣接し、人の往来が絶えない立地のいい場所にある「渋谷サクラステージ」。その会場内で、一番広い規模で展開されていたのが「CIRCULAR MIX(サーキュラー・ミックス)」のコーナーです。ここでは、バーニーズニューヨーク、ベイクルーズ、ビームス、シップスといった人気セレクトショップが参加し、製造過程で生じた少しのキズや汚れにより、店頭に並べられない商品(いわゆる訳あり品)や、リユース品を新品と組み合わせて提案していました。さらにスタッフによるコーディネートアドバイスサービスも受けられます。

ラックの商品タグを見ると、思わず「本当にこの価格?」と目を疑うほどのお手ごろさ。撮影を行っていると、隣で買い物を楽しむおしゃれな女性が。仕事帰りに立ち寄ったという彼女は、小さなお子さんを育てながら、日ごろから“フリマサイト”を利用しているそうです。

「子どもはすぐに大きくなるので、リユースは日常的に取り入れています。最近は、一枚板のテーブルを見つけました。使い込まれたからこその風合いがあり、むしろ新品よりも魅力を感じました」

リユース品には、新しいものとは異なる魅力があることを教えてくれました。

スニーカーが洗わずきれいに

次に足を運んだのが「MAINTENANCE BAR(メンテナンス・バー)」。衣類や革製品、スニーカーのメンテナンスやクリーニングが体験できるエリアです。英国発バブアーのブースでは、ワックスジャケットをリワックスするデモンストレーションに加え、持ち込みによるメンテナンスも受け付けていました。またGMT ファクトリーのブースでは、「シューシャイン グランプリ2025」で3位に輝いたシューシャイナー・富樫輝好さんによる靴磨きの実演が。その手さばきの早さと美しさはまるでエンターテイナーショーのよう。冨樫さんの卓越した職人技に多くの来場者が足を止めていました。

興味深かったのは、南アフリカ発のバイオテクノロジーによって手がけられたシューケアブランド「SNEAKER LAB」のブース。株式会社ビーズインターナショナルの岡本陽太さんが、設営準備の合間にクレンジングをしたという一足のスニーカーを見せてくれました。

左右で汚れの落ち具合がまったく違います。大袈裟ではなく、片方は新品同様の美しさ。一体、どんな洗剤を使っているのでしょう。

岡本陽太さん(以下、岡本)「『SNEAKER LAB』は100%天然由来成分で、洗剤成分を使っていません。液剤に入っている微生物が汚れを分解してくれるんです。スニーカーはさまざまな素材を使っていることが多いので、洗う際は迷いますよね。でもこの『SNEAKER LAB』なら、シート1枚で完結できるんですよ」

早速、実演を見せていただきます。岡本さんは、力を入れてこすることなく、メッシュやスエード、ソール部にシートの液体を染み込ませ、最後に乾いた布で拭きあげるだけでした。

岡本「『SNEAKER LAB』の魅力は、なんといっても洗剤成分を使っていないので、洗い流す必要がないことです」

つまり生活排水を出さずに済むということ。さらに言えば、子どもが汚れた上ばきを日曜の夜に出したとしても、呆然とせずに済むということではないでしょうか。地球を汚さず、靴をキレイにするクリーナーは、家庭の円満まで守る可能性も秘めていました。

「もったいない」が「美味しい」に

会場には、ひと息つけるカフェエリア「CYCLE CAFÉ(サイクル・カフェ)」も設けられ、オーガニックコーヒーやグリーンティー、アルコール類が来場者に数量限定で無料提供されていました。

カウンターに並んだ白い缶に目が留まります。ラベルには「bread」の文字。

“飲み物なのに、パン?”

スタッフの方に尋ねると、それは廃棄予定だったパンの耳を原材料に使った“サーキュラービール”でした。早速いただくと、アルコール度数4.5%と軽やかで、喉の渇いた昼下がりにもぴったりな口当たり。そしてパンの余韻を感じさせる香りと味わい。この新鮮な味覚体験を通し、サーキュラーエコノミーは「我慢すること」ではなく、「新しいおいしさを生み出すこと」でもあるのだと実感しました。

他にも会場には処分予定だった洋服を来場者に一着プレゼントする「FIRST PIECE(ファースト・ピース)」や、“サーキュラー”の背景を持つアイテムをクイズ形式で紹介する「CIRCULAR QUEST(サーキュラー・クエスト)」ブースも。

どのエリアにも“もったいない”を生かすアイデアや工夫があり、楽しみながらファッションのサーキュラーエコノミーのあり方を知ることができました。

また同時開催地だった「フォレストゲート代官山」では、公式リユース商品を取り扱うベイクルーズの「CIRCULABLE SUPPLY(サーキュラブル サプライ)」、シップスの「SHIPS CYCLE MARKET(シップス サイクル マーケット)」が共同で「CIRCULAR STORE(サーキュラー・ストア)」を開催。会期の3日間、多くの来場者が足を運びました。

東急不動産が「ファッション」と「循環」の架け橋になった理由

そもそも、不動産会社がなぜファッションイベントを開催したのでしょう。東急不動産株式会社の田中将之さんにお話を伺いました。

田中将之さん(以下、田中)「東急不動産ホールディングスでは“都市と自然をつなぐ。ひとと未来をつなぐ。”という理念のもと、『みどりをつなぐプロジェクト』を推進しています。渋谷は緑が少ない印象を持たれがちですが渋谷駅から徒歩圏内(広域渋谷圏と呼んでいます)には、明治神宮や表参道の並木道など豊かな緑が広がっています。私たちの商業施設は、その景観を分断するのではなく、緑と緑をつなぐ“エコロジカルネットワーク”を目指しています。

環境イベントはこれまでも開催してきましたが、ファッション分野は新たな取り組みでした。「The First CIRCULAR -PLAY-」共同主催のフリースタンダード代表・張本さんとのディスカッションで、アパレル業界の課題を知り、企業の枠を越えて協働できる場が作れないだろうかと話し、このイベントが生まれました」

協賛ブランドの処分予定の洋服を来場者に1着プレゼントする「FIRST PIECE(ファースト・ピース)。SNSの発信を条件に実施しました。

田中「サーキュラーエコノミーは、生産者も消費者の皆さんも“自分ごと”として考え、行動することが大切だと思っています。今回は、何かアクションを起こして、みんなで一緒にやっていきましょう、という思いを込め、副題に『PLAY』とつけています」

ファッションを楽しむ人が、環境問題に目を向けるきっかけになれば――。それが田中さんの思いです。

循環型へ――アパレル業界の取り組み

イベント開催に先立ち、プレス向けに、サステナブルな活動を続けている企業によるパネルディスカッションが行われました。進行を務めたフリースタンダード代表の張本貴雄さんが、アパレル業界の現状について言及します。

張本貴雄さん「世界では年間、製造される洋服の約60%が廃棄されています。枚数では約3000億着が埋め立てや焼却によって処分されています。日本では1995年以降、作り手も買い手も減少しているにもかかわらず、生産量は増え続けています。

一方で、消費行動には変化が見られます。それはリユースの利用。近年は若年層に限らず、40〜50代の約4割が中古品を購入しているというデータもあるそうです。二次流通が“当たり前”になりつつある今、アパレル業界がこの分野とどう向き合うかが問われています。以前からサーキュラーエコノミーの活動を続けてきた企業の皆さんにお話を伺っていきたいと思います」

登壇したのは、ゴールドウイン「ザ・ノース・フェイス」の畑野健一さん、三陽商会の松本一哉さん、バブアーパートナーズジャパンの坂下康平さん。

ザ・ノース・フェイスでは、2022年からキッズ商品のリユース事業がスタート。サイズアウトの早い子ども服に関する調査をすると、半数が廃棄されていることが判明。ショックを受けたことが取り組みのきっかけになったといいます。以来、キッズ商品は生涯無償修理を貫き、「長く使う」ことを大切にするという、企業の思想を具現化した取り組みを続けているそうです。収益面での課題はあるものの、ブランドとしてこの取り組みを継続する意義を尊重し、今後も推進していく考えだとお話ししていました。

また、三陽商会では、2019年から衣料回収を始め、2023年から本格的なリユース事業を展開。回収から販売までを自社で行い、すでにある物流システムを活用することで低コスト・効率化を図っています。リユース品は新たな顧客層との接点になり、買取サービスを利用した顧客にはポイントを譲渡することで、新たな商品の購入につながる循環が生まれているそうです。

そして、130年以上の歴史を持つ英国のアウトドアブランド、バブアーは、メンテナンスに注力。ワックスジャケットのリワックスメンテナンスや修理を通して、長く愛用してもらえるサービスを行っています。サーキュラーの取り組みに関しては、短期的な利益よりも長期的な視野で捉えており、ブランドのファンを獲得すること、そして長く付き合える関係を築くことが目的だと語っていました。

三社それぞれの方法で、従来の流通からサーキュラーエコノミーへの転換に取り組んでいることを感じました。しかし、企業だけに頼り切っていてよいのでしょうか。収益面の課題がありながらも継続しようとする努力を消費者も理解し、ともに考え、行動することが循環型社会への第一歩になるのではないでしょうか。

「循環」で広がるおしゃれの可能性

渋谷という発信力のある場所で実現できたこと。そして企業の枠を超え多様な企業・ブランドを集めることができた求心力。さらに東急不動産が長期にわたり、環境への取り組みを真摯に向き合ってきたからこその信頼感。「場所の提供」「企業間の架け橋」「信頼感」という三つの要素が重なったからこそ、このイベントは実現できたのではないでしょうか。

新しい洋服に袖を通す高揚感を楽しむことは、決して悪いことではありません。むしろ、私たちの日常を豊かにしてくれます。

一方で、誰かの手放した一着に、再び価値を見出すリユースには、これまで手が届かなかったブランドと出会える可能性も秘めています。そして着続けている洋服には時間とともになじむ心地いい肌ざわりや思い出が宿ります。簡単には手放せない存在でしょう。

リユースやメンテナンスという選択肢を増やすことは、おしゃれの可能性が広がることでもあるのです。「The First CIRCULAR -PLAY-」は、ファッションと環境の新しい関わり方を、私たちにそっと教えてくれました。

撮影/安田美優(講談社写真部)

取材・文/笹本絵里(FRaUweb)

Write A Comment