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武道館や紅白より緊張した大学での楽曲発表

「アメリカでの生活は充実しているか?」の問いに、アンジェラ・アキは笑顔を浮かべ、こう答えた。彼女がアメリカに移住したのは2014年のこと。生まれ育った日本を離れ、丸11年の月日が経過した。

2005年9月に『HOME』でメジャーデビュー。2006年に日本武道館での単独公演を実施、同年末には「NHK紅白歌合戦」に出場。2008年の『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』は合唱曲の定番となり全国の学生たちによって歌い継がれるなど、その活躍で日本の音楽シーンに確固たる地位を築いてきた。

「クラシックピアノやジャズに触れてはいましたが、音楽理論やアレンジメントなどの正式な学びをこの20年間一度も受けず、感覚と限られた知識だけで曲を作り続けてきました。例えると“音楽のパレットに5、6色しかない”状態。そんなんだから20年も経つと、当然その色の組み合わせを全て使い切ってしまって、そこから新しい曲を作ることが苦しくなってきたんです」

また、新たな出来事が彼女の意欲を駆り立てた。友人であるカナダ人の作家が、自著をミュージカル化するにあたり、一緒に作ろうと声をかけてきたのだ。かねてミュージカル音楽への憧れを持っていたため快く引き受けるも、思うように楽曲は完成しなかった。

「ミュージカル音楽制作は非常にレベルが高く知識も必要で。こんな直感で曲を作っている場合じゃないと実感したんです」

この経験から、音楽大学で一から理論と技術を学ぼうと決心した。日本の大学で学ぶ選択肢も浮かんだが、周囲も自分も気を使うだろうと判断。「自分を誰も知らない土地」であるアメリカに移り住み、知り合いの紹介でロサンゼルス・南カリフォルニア大学の音楽コースに通うことに。入学にあたり、彼女は大きく宣言する。

「『2年間で作曲科の生徒たちが学ぶものを全部詰め込ませてください! 朝から晩まで勉強します』と、学長にお願いしました」

彼女の熱意は通り、2年でミュージカル音楽制作に必要な知識・技術を学べるカリキュラムが組まれた。慣れない環境の中で、新たな音楽知識に触れる瞬間は驚きの連続だった。

「曲を作って、みんなの前で発表する授業があるのですが、これがものすごい緊張感。だって、私より20歳も下の才能のある若い人たちを前に披露して、しかも『ここはこうしたほうがいい』と分析されるんですよ。初めての発表の日は『やばい! 武道館で歌うより、紅白のときより緊張してるわ』ってなっていました(笑)」

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