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影響を受けた人物として、ロヴェルシが真っ先に挙げるふたりは、マン・レイとアーウィン・ブルーメンフェルドだ。ふたりはいずれも20世紀半ば、ファッション誌の内外で活躍し、暗室で写真にさまざまな操作を施すことでよく知られていた。

トーンや色見の調整、多重露光、引き伸ばし、ソラリゼーション[編註:現像中に意図的に過度の露光を行なう技法]など、さまざまな現像プロセスによって、その写真には鮮明で、時に見る者をはっとさせる鋭さが加えられていた。

ポラロイドを自身の代名詞に

ロヴェルシは、カラーにしろモノクロにしろ、ほとんどポラロイドのみを用い、その輪郭線はむしろやわらかく、印象派の絵画を思わせるふんわりとした光をまとっている。ポラロイドという媒体そのものが、素材や作品に対する実験的なアプローチをいっそう促すのだ。

ウィリアム・クラインの写真と同様に、ロヴェルシは偶然性を積極的に取り込む。光の揺らめきやブレ、さらには傷さえも。その結果、印刷されたときにはどれほど平板に見えたとしても、作品にはひとつの次元では捉えきれない物質性が宿る。

ロヴェルシによる最良のファッション写真には、まだ固まりきっていない生命の躍動感がある。まるで、いまこの瞬間にも、わたしたちの目の前で像を結びつつあるかのように。

ルカ・ビッグス:アレキサンダー・マックイーン 202122年秋冬コレクション(21年/パリ)

ルカ・ビッグス:アレキサンダー・マックイーン 2021-22年秋冬コレクション(21年/パリ)

ロヴェルシは、そのキャリアの大部分を通して、パリのスタジオで作品を制作してきた。そうすることで、自身の方法論の基礎を、絶えず進化し続ける写真の伝統にしっかりと根づかせてきた。

95年にパリの公園でファッション撮影を行なった際には、背景布を持ち込み、屋外に仕切られた空間を設けた。

これは、アーヴィング・ペンが『小部屋の中の世界(Worlds in a Small Room)』シリーズにおいて、ダホメ(現ベナン)やネパール、モロッコなどの遠隔地で、民族学的なポートレート群を撮影したことを思い起こさせる。だがペンと同様に、ロヴェルシもまたほとんどの場合、より馴染み深く、落ち着いた空間で仕事をすることを好む。

「わたしの作品はすべて偶然の賜物です」

パリでの展覧会の図録には、同展のキュレーターであるシルヴィ・ルカリエとの対談が収録されている。そのなかでロヴェルシは、「わたしには、部屋の中に閉じこもる必要があるのです。囲い込まれた場所にいなければいけないのです」と語っている。

図録に収められている特に印象的な作品のなかには、スタジオそのものを捉えた写真も含まれている。壁の鏡に一足のハイヒールが映り込んでいたり、彼のお気に入りの背景布であるしわくちゃの軍用毛布が剝き出しの壁にピン留めされていたりする。そうした細部を除けば、その空間は、ほとんど空っぽに見えるのだ。

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