
1989年開館の複合文化施設「Bunkamura」が、「渋谷ファッションウィーク」との共催により、「Bunkamura ザ・ミュージアム」にて「高木由利子 写真展 Threads of Beauty 1995 – 2025 ― 時をまとい、風をまとう。」を開催する。会期は、2026年3月10日(火)から 29日(日)まで。「Bunkamura ザ・ミュージアム」は新施設への拡大移転を控えており、現展示室における展覧会はこれが最後。入場無料なので、ぜひこの機会に訪れてみて。
2023年4月より一部の施設を除き休館している「Bunkamura」は、この休館期間を「自由な発想で新たな挑戦を行う機会」と捉え、2024年から参画する渋谷の街を舞台にしたイベント「渋谷ファッションウィーク」において、館内の特徴的な建築空間を生かしたアートインスタレーション・プログラムを開催してきた。
《India, 2004》
3回目となる本展では、「ファッションとは何か。」という壮大な問いの本質を追い求め、世界各地の伝統的な衣服をまとい生きる人々の日常を30年にわたり撮り歩いた写真家・高木由利子の〈Threads of Beauty〉シリーズを展示。精選された100 点以上の作品を見ることができる。
《Peru, 2003》
高木は、ファッションデザイナーとして活動した後に写真家へと転身。当初は風景やヌードを主題としていたが、やがてファッションブランドとの仕事にも携わるようになる。なかでも、クリスチャン・ディオールのアーカイブピースを独自の視点で捉えた作品群は、写真と衣服との関係性に新風を吹き込んだ。
衣服や人体を通して、自然界の一部としての「人の存在」を見つめ続ける高木の試みの中でも、本展で展覧される〈Threads of Beauty〉は、とりわけ長期間に及ぶ根幹的なプロジェクトだ。
《India, 2004》
高木は、日本における着物のように、世界各地の伝統服が日常生活の場から姿を消しつつある現状を惜しみつつも、現代の生活様式へと移行する上での自然な営みとして受け入れている。何より〈Threads of Beauty〉を民俗史的な記録としてではなく、被写体となった人々の文句なしの「格好良さ」に魅せられて撮影している。
「格好良さ」の追求は、すなわちアイデンティティーの探索でもあり、それは渋谷であれ、世界のどこであれ、さらには時代をも超えるいわば永遠の命題とも言えるだろう。本展を通じて、その普遍性を感じとってほしい。
高木由利子。東京生まれ。武蔵野美術大学にてグラフィックデザイン、英国のTrent Polytechnicにてファッションデザインを学んだ後、写真家へと転身。独自の視点から衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続ける。近年は自然現象の不可思議にも深い興味を持ち、〈chaoscosmos〉シリーズを発表。映像を含めた新たなアプローチに挑戦し続けている。© Shinnosuke Miyachi
また、作品が内包する世界観を体感できる会場の構成を手掛けるのは、場所が持つ「記憶」を掘り起こし、未来へとつなぐ建築家・田根剛。高木とのコラボレーションは、2023年に京都・二条城で開催されたKYOTOGRAPHIEでの展示に続き2度目だ。
田根剛。東京生まれ。ATTA – Atelier Tsuyoshi Tane Architects を設立、2006年よりフランス・パリを拠点に活動。主な作品に『エストニア国立博物館』『弘前れんが倉庫美術館』『アルサーニ・コレクション財団・美術館』など。主な受賞に、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞がある。photo: Yoshiaki Tsutsui
《Colombia, 2016》
本展は、テーマ性・先見性・話題性をもった多彩なジャンルの展覧会を開催してきた「ザ・ミュージアム」という空間において、「ファッションとは何か。」という問いをあらためて見つめ直す試みとなる。
Photos: © Yuriko Takagi
text: Tomoe Tamura
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