アイリス・アプフェルが「十分な時間待てば、すべては戻ってくる」と語ったように、実際には、今回話題にするネイルカラーが表舞台から消えたことは一度もない。しかし、2026年の春、この色が再び王座に就くことは間違いないだろう。
その色とは、黒に近い深紅。「黒に近い赤であり、赤に近い黒」とも評されるこの色は、1994年、カール・ラガーフェルド率いるチームによってシャネル(CHANEL)のランウェイで誕生した。当時、わずか24時間で完売したという伝説を持ち、映画『パルプ・フィクション』のユマ・サーマンや、ミュージックビデオ『Take a Bow』のマドンナの指先を彩ったことで世界的な名声を得た。
そう、シャネルの「ルージュ ヌワール」(米国での最初の名称は『ヴァンプ』)のことだ。現在、この色はメゾンのメイクアップ・クリエイティブ・コレクティブの一員であるアミィ・ドラマが手掛ける新しい限定コレクション「ルージュ ヌワール」の絶対的な主役となっている。彼女はこの色の持つ意味を再発見し、メイクアップやブラシのレンジへとその可能性を広げた。
「ミクソロジー」から生まれたビューティー界の歴史的傑作
世界中の、そしてあらゆる世代の女性たちが忠誠を誓うこの「黒に近い赤」の物語は、ブランドが語るように、ビューティー界の歴史を塗り替えることになった「創造的な狂乱」の中から始まった。
1994-95年秋冬コレクションのショーを翌日に控えた夜。ラガーフェルドと当時のメイクアップ・クリエイティブ・ディレクター、ハイディ・モラヴェッツとドミニク・モンクルトワは、これまでのランウェイにはなかった新しい色を求めて、いくつかのネイルエナメルで実験を繰り返した。
「ミクソロジー・セッション(調合セッション)」と呼ばれたそのプロセスで、彼らは赤と黒を混ぜ合わせ、翌朝モデルたちの指先を飾るガーネット色を完成させた。それは当時のバッグ「2.55」に完璧にマッチする色だった。その成功は凄まじく、ニューヨークのバーニーズには行列ができ、メディアはこの熱狂をこぞって報道。発売からわずか24時間で完売し、数ヶ月待ちのキャンセル待ちリストが作られた。結果として、シャネルの歴史上最も需要の高い製品のひとつとなり、売上は100万ドルに達したのだ。
